ビジネスパーソンインタビュー

もはや「若者=流行の最先端」ではない。個性的よりも“協調”を重視する、15~29歳の消費傾向

松下東子&林裕之著『日本の消費者はどう変わったか 生活者1万人アンケートでわかる最新の消費動向』より

もはや「若者=流行の最先端」ではない。個性的よりも“協調”を重視する、15~29歳の消費傾向

新R25編集部

2022/11/16

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「現代の若者は20年前の若者に比べて、人より先に新しいものを試す傾向が半減している」

野村総合研究所(NRI)の生活者研究・マーケティングコンサルティングチームが実施するNRI「生活者1万人アンケート調査」によると、若者の流行感度は減少傾向にあるそうです。

若者といえば流行の最先端をいくイメージがありますが、実際はどのようになっているのでしょうか?

今回は、松下東子さんと、林裕之さんの著書『日本の消費者はどう変わったか 生活者1万人アンケートでわかる最新の消費動向』(東洋経済新報社)より、現在の若者の傾向について一部抜粋して紹介。

データから読み取らなければ、間違った認識をしてしまうかもしれません…。

この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・消費者の動向を把握したいマーケター
・Z世代向けの商品を開発する人
・現代若者の特徴を知りたい人

コロナ禍で「こだわり」が復権した

「こだわり」への意識がスタイルやデザインに表れやすいのは、若者の特徴である。

図表3‐3‐5に示す消費意識は、いずれも20代以下ないしは30代以下の若年層で高い傾向がみられるものだ。

ライフスタイルへのこだわりも、品質へのこだわりと同様に、スマートフォンの普及と多すぎる情報により消費とそのための情報収集に向ける時間やエネルギーが抑制された2015年以降で飽和する傾向にあった。

しかし、これも品質へのこだわりと同様、2021年に反発、再び伸びている。

コロナ禍で時間ができたことによる「こだわり」復権は、中高年層でも若年層でもみられるということになる

「自分の好きなものは、たとえ高価でもお金を貯めて買う」は過去も増加トレンドにあったが、今回2021年ではそのトレンドを超えて大きく伸びている。

欲しいものは貯金して買うということは、他の分野ではおそらく節約をしながら、その分のお金を特定の商品に選択的に投資しているということになる。

コロナ禍でライフスタイルが変容した消費者は、余剰時間から新しいライフスタイルに合ったものを取捨選択・優先順位づけしており、ここでもその選択的消費の傾向が確認できる。

日本人のスタイル追求は、「周りの人と違う個性的なものを選ぶ」という主張的な側面は弱く、伸びてもいない

この意識は10代女性で26%、20代女性と20~30代男性で20%とやや高いが、全体的に支持する割合は低く、自己主張よりは和を大切にする意識の高い国民性を反映しているように思われる。

また、「使いやすいかよりも、色やデザインを重視」については長期的には減少傾向がみられる項目で、今回2021年も伸びていない。

機能性を犠牲にしてまでデザインを選ぶというのは、日本の消費者にはあまりみられない考え方であるといえよう。

Z世代の流行感度は、減少傾向にある

「周りの人と違う個性的なものを選ぶ」というイノベーター(流行創出・発信)型の意識や、「流行にはこだわる方である」というアーリーアダプター型の意識は若者で高いが、その水準は低く、時系列トレンドも低調維持である。

日本の人口構成比が高齢に寄っている中で、流行感度が低迷していくことは当然という見方もできる。

しかし、図表3‐3‐8をみると、人口構成比の要因というよりは、若者自体の流行感度が下がっていることの方が要因としては大きそうである

左側の全体(15~69歳)で流行感度の時系列推移をみると、「人より先に新商品やサービスを利用したりする」というイノベーターと、「少し様子をみてから新商品やサービスを利用したりする」というアーリーアダプターの割合が微減し、「一般に普及してから」とするレイトマジョリティの割合が増加している

同じ項目を、流行感度の高い15~29歳の若者で追いかけてみたのが右側である。

右側の若者のグラフでは確かに「人より先に」のイノベーターや、「少し様子をみてから」のアーリーアダプターの割合は高いが、イノベーターの割合は2000年には13%だったものが2021年には7%まで落ちるなど、はっきりとした減少傾向を示している。

現代の若者は20年前の若者に比べて、人より先に新しいものを試す(そしてそれを流行として創り上げていく)傾向が半減しているということになる

ルーズソックス、ガングロメイク、アムラーなど、1990年代から2000年代初頭にかけて、若者は独自の文化を創り出してきた。

最後の流行発信世代といわれるのが、ポスト団塊ジュニアの後半世代(1980年代前半生まれ)がちょうど思春期から成人を迎えるころである。

その後、「競争より協調」を大事にするさとり世代・デジタルネイティブ世代が若者となるが、彼らの消費意識は保守的で、「外したくない」「失敗したくない」「モノ」より「コト」、キーワードは「つながり志向」などの特徴がみられており、下手に個性を主張して外してしまうよりは、仲間内でつながりながら、楽しくうまくつきあっていきたいという価値観の世代である。

この世代が流行の「発信」に消極的なことは不思議ではない。

また、彼らが成長期から使い続けるデジタル技術とそれを介してのオンラインコミュニティの台頭により、「流行」としてみるべき参照集団が小粒化した。

世の中全体の流行ではなく、仲間内についていければそれでよいのである。

若者が一斉に「コギャル」ファッションをしたり、プラダの三角マークのついた黒ナイロンバッグを持ち歩いたり、という時代はもう来ないのだろうか。

デジタル化で“ルーズソックスのリバイバル流行”

実は最近、前述のコギャル文化やプラダのナイロンバッグがリバイバル流行している

現代の若者は、新しい文化を創出はしないまでも、アーカイブ化された流行を発掘してデジタルで「ネタ」として配信、再流行させることもある

東日本大震災、コロナ禍など暗い世相の中で思春期、青春時代を送る彼らは、二昔前の、もしかしたら自分たちの親世代が経験していた「明るい」若者文化を発掘して、ネタとして楽しんでいるようだ。

プラダのナイロンバッグはデザイン性に加え機能性の高さから日本では1990年代に大流行したが、その後、「皆がもっていすぎ」として反動ですたれていった。

しかし、近年異素材ミックスなど新規性を加えたものが発表され、海外ファッショニスタが活用するシーンがデジタルで拡散された。

20年前を懐かしみながら、新しいデザインを楽しんだ向きも多いだろう。

デジタル化の進展がリバイバル流行、ロングテール流行をもたらすというのもまた、面白い現代文化である

日本人のリアルがわかる一冊

1997年より、3年に一度、生活者1万人アンケート調査を実施しているNRI(野村総合研究所)。

同書では、その豊富なデータから見えてくる消費者の動向について詳しくまとめています。

消費者を対象にした仕事を行うマーケターなどはもちろん、コロナ禍で変化した世の中について知りたい人などにおすすめの一冊になっています。

なんとなく感じていること・わかることを、データからきちんと読み取ることで根拠を持った意見にしてみてはいかがでしょうか。

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