ビジネスパーソンインタビュー
ジル・チャン著『「静かな人」の戦略書』より
「ビル・ゲイツもウォーレン・バフェットも内向型だ」“静かな人”がリーダーに向いている理由
新R25編集部
あなたのビジネス上での性格は外向型でしょうか? 内向型でしょうか?
「自分は内向型だ」と思った方は「ビジネスで活躍する人ってみんな外向的じゃない?」「自分はうまくマネジメントができるのだろうか...」と感じるのではないでしょうか。
それに対してむしろ逆なのだ、と論じるのはジル・チャン著の『「静かな人」の戦略書』。
同書では内向型の人の持つ底知れぬポテンシャルや具体的な能力の活かし方について述べられています。
一般的な考えとは逆で、静かな人はなぜ輝くことができるのでしょうか?
本記事では、その理由について迫る内容を抜粋しています。
自分は内向型だと思っており、不安を感じているあなたに朗報です。
リーダーに「カリスマ」はいらない、マスクもゲイツもバフェットも内向型
映画『アイアンマン』を観るたびに、ロバート・ダウニー・ジュニアの演技を称賛せずにはいられない。
彼の演じるトニー・スタークは自信に満ちた超天才で、この上なく傲岸でありながら、なぜか嫌味がない。
もっとも魅力的なスーパーヒーローのひとりだろう。
だがテスラ社のCEOイーロン・マスクは、そういうタイプではない。
「基本的に、私は内向型のエンジニアだ。壇上でスピーチをする際にどもらないようにするため、苦労して訓練を積んだ。……CEOとして、避けては通れなかったからだ」とマスクは語る。
マスクのほかにも、マイクロソフトのビル・ゲイツ、投資の達人ウォーレン・バフェット、メタのCEOマーク・ザッカーバーグ、アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック、グーグル共同創業者のラリー・ペイジも、内向型として有名だ。
彼らは世界を動かす大物の実力者たちだ。
派手で人目を引く外向型のリーダーとは異なるが、内向型のリーダーたちの気質にも大いに学ぶべきところがある。
カリスマより大事なもの
では、優れたリーダーにとって、カリスマ性はどれほど重要なのだろうか?
現代経営学の創始者といわれるピーター・ドラッカーは、長年にわたってさまざまなタイプのCEOと仕事をした。
プライバシーを重視し、自分の殻に閉じこもりがちな人もいれば、過剰なまでのコミュニケーション能力をもつ人もいた。
稲妻のごとく瞬時に決断を下して会議室を飛び出していく人もいれば、慎重に時間をかける人もいた。
そうした人たちを知った上でドラッカーは、「カリスマ性は、リーダーとしての有能さを保証するものではない」と言っている。
経営管理や企業の持続性・成長に関するコンサルタント兼講師であるジム・コリンズは、飛躍を遂げた数多くの企業や事業を調査した。
その結果、そうした企業において、魅力的でカリスマ性のあるリーダーだと思われているCEOは、ひとりもいなかった。
彼らが成功したのは、きわめて謙虚でありながら、徹底的なプロ意識の持ち主だからだった。
コリンズは『ビジョナリーカンパニー2』において、そのような人びとを「第五水準の指導者」と呼んでいる。
彼らは非常に野心的だが、彼らが企業家精神を発揮するのは、組織の利益のため、集団の目標達成のためであり、個人の利益や名声を得ようとする野心のせいではない。
さらに、内向型の人は孤独に慣れており、内なる精神世界を漂っている時間が長い。
内向型はよく内省し、観察や計画においても注意深く、想像力や創造力を発揮して、問題の解決策の提案に集中することができる。
くわえて、入念な調査を行い、決定したことを完璧に遂行しようと努める。
また、コリンズは彼らの特徴として、謙虚で穏やかでもの静かであり、自己抑制や自制心に優れ、控えめで内気といった点を挙げている。
企業コンサルタントのジェニファー・B・カーンウェイラーは、長年、研究や教育、研修指導に携わってきたが、2009年の著書『内向型リーダー』を出版した時点では、内向型に関する研究や調査はまだあまり行われてはいなかった。
彼女は同書において、こう述べている。
「外向型が内向型よりも優れたリーダーであることを示す証拠はない」
そして同書の第2版が出版されたとき、彼女は私にこう言った。
「基本的には同じ本だけれど、かなりの部分を書き直したんですよ。驚いたことに、職場における内向型についての認識が、10年もしないうちに一変したんです。内向型がこれまでいかに軽視されてきたか、よくわかるでしょう」
私の好きなことわざ「深い川は静かに流れる」が、この状況をよく言い表している。
リーダーとしての魅力が見えやすい人とはちがって、内向型のリーダーは、限りなく深い影響力を静かに発揮しているのだ。
状況に合わせて強みを発揮する
「人と話すのが苦手なのにマネージャーになれるでしょうか? 人の上に立つなんて考えられないのですが」
「マネージャーになるなんて怖すぎる! いっそ昇進を断ったほうがいいでしょうか?」
困り果てた人が私のところへやってきてこんなことを訊くたび、相手をハグしてこう言ってあげたくなる。
「大丈夫、道はあるから。ビル・ゲイツがどれほどすごいか、知ってる?」
パーソナリティや動機付けの分野で国際的に高い評価を受けている心理学者のブライアン・R・リトルは、著書『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(大和書房)において、個人や職場に影響を与える行動に関する調査を行った。
人は一般に、リーダーは外向型でなければならないと考えている、とリトルは指摘している。
映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の主人公のように、同僚や仲間をどんどん引っ張っていき、競合相手さえも魅了するほどのリーダーシップを発揮しなければならない、と思っているのだ。
だが実際には、リーダーシップのスタイルは、ひとつのタイプに限定されるべきではない。
もの静かで内省的な内向型も、企業のトップとして、リーダーシップの役割を果たすことができる。
ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットは、その典型例だ。
重要なのは、リーダーとしてどのように状況を認識し、自分の強みを最大限に生かすかということだ。
ビル・ゲイツはかつて次のように語っている。
「賢明な内向型は、『物事を深く考えるための時間を惜しまない』『文献に慎重に目を通す』『期待を超える頑張りで問題を解決する』といった長所をみずから見つけることができるだろう」
個性より「適応能力」が重要
内向型の人は、外向型のふりをしたり、外向型がリーダーシップを発揮する方法を研究したりする必要はない。
内向型ならではの、人とつながる方法をもっているからだ。
トゥー・ビー・ア・ウーマン・グローバル・エンパワーメント・プラットフォームのCOO(最高執行責任者)兼CMO(最高マーケティング責任者)であるリサ・ペトリリは、内向型の人の多くは非常に魅力的で、チームに刺激を与える存在であり、リーダーとしての魅力もカリスマ性もあると考えている。
それは批判的思考が得意で、目標指向型であるという内向型の資質が、リーダーシップのスタイルにも生かせるからだ、とペトリリは考えている。
あなたが取り組むべきことは、自分の時間と知識を惜しまずに、チームと共有することだ。
マネージャーとして、自分の内向性に引け目を感じたり、申し訳なく思ったりする必要はない。
ただ、自分なりのやり方を身に付ければいい。
そういう誠実さは、ちゃんと伝わるものだから。
内向型と外向型は両極端な性質に思うかもしれないが、まさに両端に当てはまる人はほとんどいないだろう。
多くの人はその中間のどこかにいるはずだ。
内向寄りか、外向寄りか、といった程度の問題なのだ。
私はアダム・グラント、スーザン・ケイン、ブライアン・R・リトルが制作したポッドキャストの、あるエピソードのエンディングがとても気に入っている。
「あなたの個性は重要ですが、適応能力はさらに重要です。あなたがどんな人になるかは、性格の特性ではなく、それをどう生かすかによって決まるのです」
人間社会が興味深いのは、サバイバルの方法や成功する道筋はいくつもあるということだ。
それはどんな職場にも当てはまる。
自分の強みや才能、長所、かけがえのない価値をアピールして輝くことができれば、子羊のように静かな人でも、誇り高いライオンの群れを率いることができる。
ライオンが羊の群れを率いるよりも、よっぽどすごいことだ。
内向型に勇気の出る一冊
内向型の人に自信を与えるような同書。
実は、著者のジル・チャンも内向型であり、その内容にはとても説得力があります。
静かな人にとってはとても苦手に感じるような、ネットワーキングやプレゼンの場でどのように強みを発揮してふるまえばいいか?などのテクニックもまとまっています。
「自分は外向型ではない」と諦めず、リーダーになれるポテンシャルを同書で開花してみてはいかがでしょうか。
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