ビジネスパーソンインタビュー
万博は、世界規模の“人生交差点”
人生を変える184日間になる。催事企画プロデューサー・小橋賢児に「大阪・関西万博」に“乗っかる”メリットを聞いた
新R25編集部
2025年に大阪・夢洲で開催される「大阪・関西万博」。
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした、184日間のイベントがあと3年で開催されます。
過去に日本で開催された万博というと、R25世代なら2005年「愛・地球博」を思い出すかもしれませんが、当時小中学生だったこともあって、万博そのものに馴染みのない方のほうが多いのかもしれません。
そもそも万博とは、地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から叡智が集まるイベント。
過去には万博をきっかけに「電気自動車」「動く歩道」「ICチップ入り入場券」「AED」などが生まれたんだそうです(知らなかった…)。
そんな新しい技術が生まれてきた「万博」ですが…今回の「大阪・関西万博」は僕らの日常にどのような影響があるのでしょうか?
催事企画プロデューサーに就任された、クリエイティブディレクターの小橋賢児さんにお話を伺いました。
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
【小橋賢児(こはし・けんじ)】1979年生まれ。東京都出身。日本のクリエイティブディレクター、音楽イベントプロデューサー。The Human Miracle株式会社代表取締役。1988年に8歳で芸能界デビュー、以後数々のドラマや映画、舞台に出演。27歳の時に俳優活動を突如休業。その後、世界中を旅しながら多様な文化に触れる事でインスパイアを受け、映画やイベント製作を始める。「STAR ISLAND」「ULTRA JAPAN」のクリエイティブディレクターも務め、東京2020パラリンピック競技大会では、閉会式のショーディレクターを務めている
「正直、国が主導するイベントって冷めた目で見てしまうんですが…」
福田
今回は「大阪・関西万博」が僕らビジネスパーソンにとって、どんな意義のあるものなのか? を小橋さんに教えてもらいたいです。
というのも僕、「大阪・関西万博」の開催ニュースを見たとき、「大阪だし多分行かないだろうな…」と思ってしまいまして…
忖度してもしょうがないので本音でぶつかってみました。どう答える…?
小橋さん
…そうですよね。
今の日本で生きていると、国をあげた大きなイベントに対して「よし、参加しよう」と積極的に思えないのは当たり前だと思います。
というのも、そういうイベントって、基本的には「こういうことをやります!」「これに決まりました!」って結果のアナウンスしかしてませんから。
結局、受け手にとっては“他人事”になってしまうんですよね。
福田
それはありますね…
自分が蚊帳の外にいると思ってしまうから、冷めてしまうというか…
小橋さん
それって現代の日本だと当たり前だと思うんですよ。
僕たちの世代が生まれたときって、日本社会はある程度完成していたんですよね。街のビルはもうたくさん建っていて、あらゆるビジネスは成熟してしまっている。
「自分たちの生きる世界は、すべて先人たちによってつくられている」というような感覚ってありませんか?
福田
…!!!
めちゃくちゃわかります。結局誰かが決めたルールのなかで生きているというか…
小橋さん
もしこれが戦後まもないビジネスパーソンだったら、「自分たちが社会をつくっている」という感覚がすごく強かったと思うんですよ。
だから1970年の「大阪万博」には“エネルギーを感じるとんでもないイベント”というイメージがあった。
でも現代では、どうしてもその感覚が薄れてしまっているんですよね。
万博は世界規模の“人生交差点”。参加することで、間違いなく人生が変わる
小橋さん
それでも僕は、「大阪・関西万博」に大きな可能性を感じています。
なぜかというと、万博には人の人生を変えるパワーがあるから。
福田
人生を変える…!? ちょっと大げさではないでしょうか?
とても失礼だとは思うのですが…!
小橋さん
たとえば地方出身の方が東京に出てきたときって、人生が大きく変わる感覚があるそうなんです。
福田
それはありました。
僕も大学進学がきっかけで上京してきたのですが、地元で暮らしていたときよりも圧倒的に人生の選択肢が広がったと思います。
小橋さん
そうですよね。東京って、東京生まれの人よりも、福田さんのような地方出身者のほうが多いじゃないですか。
つまり、全国から集った人とすれ違って、新しい価値観を知る“人生の交差点”がたくさんありますよね。
世界規模で開催される万博は、世界各国の価値観が集まる場所になると思います。それが184日間も開催される。
そんな交差点、経験したことがありますか?
万博は世界規模の人生交差点…そう聞くと、たしかに何か変わりそうな気がする
小橋さん
あとは僕の「ULTRA JAPAN」の経験ですが、やっぱり圧倒的なエンタメに触れることで、人生って変わるんですよ。
※「ULTRA JAPAN」とは…毎年9月にお台場で開催されていたエレクトロニック・ダンス・ミュージックのイベント。アメリカのマイアミで開催されている世界最大級の音楽フェスティバル「ULTRA MUSIC FESTIVAL」を、2014年に日本の音楽レーベルavexと共に小橋さんが日本に上陸させました。小橋さんは2018年にクリエイティブディレクターを退任されています
小橋さん
僕が出会った人のなかには、「これまで海外に興味がまったくなかったんですけど、『ULTRA JAPAN』がきっかけで海外に行くようになりました」と言ってくれる人がたくさんいて。
福田
へええ…!
じゃあ万博でも「ULTRA JAPAN」のような人の人生を変えるエンタメを用意してくれると!
小橋さん
もちろん、僕ひとりでつくるものではないですが、今ありとあらゆる才能が集まって本気で考えているんですよ。
そんな想像もつかないようなエンタメを体験できるなら、来てみる価値はあるんじゃないでしょうか?
この数分で参加意欲がどんどん湧いてきました。ハードルが上がって大変かもしれませんが…!
国民全員が参加できる最大の祭りに、どうやって人を巻き込んでいくのか?
小橋さん
でも万博でより人生に影響を与えるような体験をするなら、運営側になることがいいなと思いました。
先日、長野県の野沢に行っていたのですが、そこでは日本三大火祭りと呼ばれる「道祖神祭り」が毎年開催されているらしく。
野沢温泉に関わる人々がその祭りを通して、年間70日間以上も集まって議論し合うんです。
福田
たった1日のためにそこまでするんですね…
小橋さん
そうです。その1日のために、多くの大人が喧嘩したり泣いたりして準備するんです。
それってやっぱり人生に大きな影響を与えることになりますよね。祭りって、本来はこういうものだと思っていて。
「万博」は国民全員が参加できる最大の祭り。圧倒的な感動体験を通じて“人生観が変わっていく”場を、みんなでつくっていくべきなんです。
だから今、どうやったらみんなが万博という“祭り”に参加してもらえるのか、ということを構想しています。
運営側にする…それってとても難しそうですけど…
小橋さん
「ULTRA JAPAN」の例で言うと…
当時の若者たちは、ネットであらゆる情報が手に入るぶん、新しい体験に対しては消極的で。
でも、彼らのなかにも「俺はこんなもんじゃない」「もっとできることがあるはずだ」という無意識な野心みたいなものがあると思ったんです。
福田
まわりに合わせて冷めた考えを持っているけど、モヤモヤはしていたと。
小橋さん
そこで僕は、彼らの無意識になる感情を開放するには、我を忘れるような感動や興奮を味わえる体験が必要だと考えていて。
だから「ULTRA JAPAN」にぜひ参加してほしかった。
福田
でも、そんな人がフェスに行くのはかなりハードルが高そうですよね。
小橋さん
そうです。彼らと相性がとてもいいのがSNS。
SNSって、本来なら知るはずのなかった“他人の人生を覗き見できるツール”じゃないですか。現状にモヤモヤしている人ほど、日頃からSNSを見ていると思っていて。
だからSNSで、彼らが“フェスに行きたくなる”ようなプロモーションを考えたんです。
小橋さん
お客さんが「ULTRA JAPAN」に関する投稿をシェアしてくれたら、彼らはもうプロモーションメンバーのひとりになったも同然ですよね。
このように、シェアという形でプロモーションに参加してくれる人を増やすことで、「あらゆる人を運営側に参加させる」状態を目指したんです。
小橋さん
もちろん「大阪・関西万博」は音楽フェスとはまったく違うので、盛り上げ方も巻き込み方も同じようにはいかないでしょう。
でも、みんなが思わず乗っかりたくなる設計にすることは、万博でも共通しているのかなと思っています。
福田
乗っかりたくなる設計…
小橋さん
万博は「みんなにとっての実験場」なんですよ。
それは、「自分がわくわくしたい世界・心地よい世界」を真剣に考える機会になる。
2025年は、昭和が始まった1925年からちょうど100年。
僕はこの万博が、昭和から続いてきた社会の文化・風習などがリセットされるチャンスだと考えています。
福田
昭和の開始からちょうど100年…運命的なものを感じますね。
小橋さん
そう。「どうせこの世界は誰かがつくったものだ」という感覚を持っている人は、万博に参加することで社会に対して主体的になれる。
つまり、「今の社会は自分たちがつくった」という実感を得られて、社会に対する向き合い方がポジティブになるはず。
そう考えると、「万博に参加しないと損」って思いませんか?
反対意見を送ったっていい。その意見が、過渡期の日本を変えていく
小橋さん
今回の「大阪・関西万博」が掲げるキーワードは「共創」、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
つまり、「あなたの意見や考えをもとに、日本の未来をみんなでつくっていきましょう」ということ。
その一環として早速、3月2日から万博の「キャラクター意見募集」が始まっています。
※「キャラクター意見募集」は終了いたしました。
小橋さん
最終候補に残った3つのキャラクターデザインに対して意見を送れるというものなのですが…
これこそ、万博に参加する第一歩になると思います。
福田
おお…でも、実際に僕らの意見が反映されていくのでしょうか?
小橋さん
されるようになっていくと思います。
だって今、政府が何をするにもすごく批判が上がるじゃないですか。
福田
そうですね…コロナウイルスへの対応やオリンピックのときには、さまざまな意見がネットに上がっていました。
小橋さん
でもそれって、見方を変えれば、多くの人が声を上げやすくなっているってことですよね。
「批判」って、僕は「こうなったら社会はよくなるはずだ」という声だと思っていて。それを誰しもが主張できる時代になっています。
そして政府は、その声を無視できなくなってきている。SNSで誰かが発信したことが、ニュースで取り上げられることもありますから。
福田
なるほど…そう考えると、じつはいい方向性に向かっているかもしれませんね…
小橋さん
今の世の中の流れを踏まえると、「大阪・関西万博」は、これまでのように政府が一方的に「こういうのをつくります」と宣言するようなやり方はできないはずです。
今回の「キャラクター意見募集」では、最終候補に残った3つのキャラクターに対する意見を募集するのですが…
「私はこれがいいと思いました」という意見だけでなく「どれも違うと思います」という反対意見でもいいし、「そもそもキャラクターなんているの?」という根底を覆すような意見を送ってくれてもいいと思っていて。
福田
そんな意見でもいいんですか!?
小橋さん
もちろんです。
それを取りまとめて反映させていくのはとても大変だと思うのですが…でも大変って「大きく変わる」って書くでしょう?
きっと、「万博」から日本のあり方が変わっていくんだと思っています。
正直、このインタビューが始まるまで「万博」の価値がイマイチわかっていませんでしたが…
「自分の人生が大きく変わる“祭り”」という小橋さんのお話を受けて、万博のイメージがポジティブに変わった気がします。
じつは「大阪・関西万博」に対してのさまざまな意見募集は、以前から始まっていたそう。
知らなかっただけで間口はずっと開いていました。
「大阪・関西万博」では意見募集以外にも、「TEAM EXPO 2025」プログラムという、さまざまな人たちがチームとなり、多彩なチームと活動で万博とその先に未来に挑むみんながつくる参加型プログラムも始まっています。
「TEAM EXPO 2025」プログラム
さまざまな人たちがチームとなり、多彩なチームと活動で万博とその先の未来に挑むみんながつくる参加型プログラムです
「共創」を掲げている万博ではこれからも、誰もが参加できる取り組みをどんどん展開していく予定だそうなので、ぜひいろんな形の“運営側に回る”体験をしてみてはどうでしょう?
意見を送って万博に“参加”しよう。「キャラクター意見募集」開始
※「キャラクター意見募集」は終了いたしました。
「大阪・関西万博」では3月2日から10日まで、「キャラクター意見募集」を実施しています。
小橋さんがお話されていたとおり、キャラクターに対する意見はもちろん「そもそもキャラクターなんているのか?」「キャラクターがこんなふうに使われていったら面白いのでは?」というような意見でも受け入れてくださるそうです。
「どんな意見でもすべての言葉に目を通す」と約束していただいたので、ぜひこの“祭り”の参加者になって盛り上げていきましょう!
「2025年大阪・関西万博キャラクターデザイン意見募集」概要
応募期間:
2022年3月2日(水) ~3月10日(木)17時
応募方法:応募受付期間内に、下記リンクの応募フォームからご応募ください
※電話やFAXでの受付は実施しておりません。
※
「キャラクター意見募集」は終了いたしました
。
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