ビジネスパーソンインタビュー
堀江貴文・藤田晋著『心を鍛える』より
たくさん悪口を言われてよかった。堀江貴文・藤田晋は、バッシング・炎上にどう向き合う?
新R25編集部
仕事で大きな壁にぶち当たることってありますよね。
そんなとき、「一流のビジネスパーソンならどのように乗り越えるのか?」を知ることで、なにか解決の糸口が見つかるかもしれません。
そこで、実業家・堀江貴文さんとサイバーエージェント社長・藤田晋さんの初の共著『心を鍛える』から、「苦境で考えていたこと」や「バッシングの受け止め方」などを一部抜粋してお届けします。
お二人はなぜ、苦境でもくじけることなく“強いハート”を持ち続けられたのか。時代を築いた名経営者の頭のなかを覗いてみませんか?
堀江貴文「人の評価に引きずり回される生き方なんて、バカらしい」
あなたは、周囲の反応が一瞬にして変わるのを感じたことがあるだろうか?
悪目立ちすると、世間の人たちに突然叩かれ始めることがある。
2004年11月、仙台の新球団を楽天に「取られた」形になったライブドア。
当時の僕は、既得権益層に斬り込む“若い世代のニューヒーロー”的な持ち上げられ方をした。
しかしその後、一転してヒール役(悪役)として報じられるようになる。
きっかけは、2005年2月。
「ライブドアがニッポン放送の筆頭株主となり、TOB(株式公開買い付け)する」と発表したことだった。
「ニッポン放送を買収することで、その実質子会社であったフジテレビを、ライブドア傘下に収めることになる」、つまり「ITベンチャー企業が、日本の巨大放送局を乗っ取る」。
マスコミは、自分たちが「やられる側」に回ったと感じたのだろう。
突然、僕をこきおろし始めた。
象徴的だったのが写真の使い方だ。
僕を支持する方向の記事のときは“好青年っぽく見えるもの”を、嫌悪感を表したいときは“悪人面”を採用するのである。
そんな印象操作が重なり、いつしか「堀江=悪人」「ホリエモン=金の亡者」というイメージが形成されていくわけだ。
とはいえ、僕自身は「人からどう思われようと構わない」と開き直っている。
「堀江を嫌いかどうか」なんて、相手の問題だ。
相手の心を変えられるわけがない。
そんな無意味なことに、貴重な時間や手間を割いていられない。
僕は、この「ニッポン放送買収騒動」でバッシングにさらされるうちに、心を守る手段としてこの境地に至った。
矢面に立たされがちな方には、この思考法をおすすめしたい。
「金で何でもできると思いやがって」「ITベンチャーが、テレビ局を乗っ取ろうとするなんて」
メディア各社は、過剰なほどのバッシングを繰り返した。
「そんなつもりじゃないのに」というのが僕の本心だったが、彼らにはまったく伝わらなかった。
僕はニッポン放送やフジテレビに乗り込み、リストラや番組改編などを断行したかったわけではない。
「番組」というコンテンツが欲しかったわけでもない。
僕がやりたかったことは、ただ1つ。
「テレビ画面にライブドアのURLを貼りつけること」、それだけだった。
その後、「敵対的買収行為」というような言葉で報道が過熱し、約3ヶ月もの間、攻防が続いた。
その結果、ご存じのように最終局面で和解した。
フジサンケイグループはニッポン放送を守り抜いた。
そして、クロスオーナーシップの悪弊は生き残った。
日本のマスメディアの悪弊は、テレビ、ラジオ、新聞などが系列化してグループ化していることだと思う。
そのため、テレビ局は新聞の批判をしない、新聞もテレビ局の問題を積極的には取り上げない。
欧米の先進国の多くでは、言論の多様性や「メディアの相互チェック」を徹底するため、新聞社が放送局を系列化するクロスオーナーシップを制限・禁止する制度や法律が設けられている。
しかし日本では、残念ながら放置されたまま。
そんな閉塞した現状に、僕は風穴を開けたかった。
それだけじゃない。
どんな魅力的なビジネスが生み出せるのか、もっと建設的な議論もしたかった。
でも、僕の意図は一向に伝わらない。
最後は「フジテレビ本体の株を狙うしかない」という思考になった。
もちろん、それには莫大な資金が必要だから、資金調達の方法まで考えていた。
僕は徹底的に勝負を賭けるつもりだった。
でも、ライブドアの他の取締役たちに「待った」をかけられた。
「これ以上続けるなら全員、反対側に回ります」という声が上がり、撤退を余儀なくされた(社長を解任されることを覚悟しろ、という意味だ)。
最終的に、当社の取締役、財務担当者だった熊谷史人さんが中心となり、フジテレビとの和解案を詰めていった。
同年4月18日、お台場のホテルで和解会見が行われた。
フジテレビは当社の持つニッポン放送株を全部買い取った。
そして当社の第三者割当により、440億円分の株式を取得した。
結果、フジテレビはライブドア株の12.75%を持つ大株主になった。
金銭的には悪くない取引だ。
でも「業務提携」の面では何も決定権を得られなかった。
つまり僕は「試合に勝ったが、勝負に負けた」。
この騒動で強烈なバッシングを経験して以降、僕のメンタルは強くなった。
人の評価に引きずり回される生き方なんて、バカらしい。
あなたはどう思うか?
藤田晋「いい人と思われ続けることには、リスクもつきまとう」
「炎上は、ホリエモンの専売特許」、そんなイメージがあるかもしれません。
でも、何を隠そう私自身も、20代で上場した頃から、相当炎上して叩かれてきました。
それが堀江さんの登場により、経営者としての私は「礼儀正しい“いい人キャラ”」として再認知され、「生意気」「不遜」というイメージから自動的に遠のいたのです。
世間が下す評価とは、なんと相対的なものでしょうか。
「いい人」と思われ続けることには、実はリスクもつきまといます。
周囲からの期待値が上がるため、マイナスのことが起こると過剰に落胆・失望されてしまうのです。
つまり、ささいなミスに対しても、「許せない!」と怒りを買ってしまうイメージです。
もっと言うと、評価を「さらに上げること」が難しくなります。
一方、逆のケースの場合、イメージアップは比較的容易です。
たとえば、強面の男性が電車内でお年寄りに席を譲ったとしましょう。
外見のイメージとは裏腹に「とてもいい人」に思えませんか。
それが、いわゆる「ギャップ萌え」です。
そのため、まったく炎上しない優等生キャラよりも、時折「波紋を呼ぶ」くらいのキャラを確立したいと個人的には捉えています。
なぜなら、SNS上のバッシングを経験することで、心は確実に鍛えられるからです。
とはいえ、炎上において真の意味で悔しいのは、「自分のマイナス面が拡散されること」より、「誤解が広まること」ではないでしょうか。
特にネット上では、誤解や勘違いが、悪意とともにあっという間に拡散されます。
当事者が、真実や本音を釈明したくても届かないことがほとんどです。
その一例として、2019年の「FC町田ゼルビア」(以降「ゼルビア」と略します)の改名にまつわる顛末をお話ししましょう(結果的に改名はしていません)。
2018年10月、弊社が「ゼルビア」の経営権を取得したのは、一過性のブームに乗りたかったわけではありません。
シンプルに、私が「サッカーが大好き」だったからです。
「できることなら、自分が大学時代を過ごしたゆかりのある“町田”で、大好きなサッカーを応援したい」そんな思いが以前からありました。
だからこそ、「世界からよりメジャーな選手を獲得できるように」「よりメジャーなスポンサーを取れるように」という思いで、世界で認知されている「東京」という言葉をリブランディングとしてチーム名に入れるのはどうだろうか、と思い至りました。
そこで2019年10月、サポーターミーティングの場で、チーム名を「FC町田トウキョウ」に変更する意思があると表明したところ、ファンやサポーターの皆さんから大変な反響をいただきました(出資時の契約から、チーム名に「トウキョウ」を入れることは決まっていたのですが)。
その場では経緯を説明し、それを解決するための対話をざっくばらんな雰囲気で行えればと思っていました。
しかし「反対」のお声を多くいただき、改名案はいったん「保留」としました。
私たちが得ていた事前情報では、「同クラブは『FC町田』がルーツだから、『ゼルビア』という単語はそれほど重要ではないのでは」という話でした。
そこで、「東京」という言葉を加えた新名称を提案したわけです。
しかし、事実は異なりました。
クラブを支えてきたファンやサポーターの皆さんにとっては、声が枯れるほど応援してきた「ゼルビア」という言葉も、とても重要だったわけです。
「ゼルビアという言葉への愛着の深さに気づけなかったのは、私のミスだった」という思いがあります。
とはいえ、記念すべき「初めてのご挨拶の場」が紛糾しただけでなく、その後にSNSでの炎上まで招いてしまったのは、残念なことでした。
なぜなら、その直後、炎上したときの文脈と、現場の空気感は少し違うものだったからです。
当時のYouTube動画は今でも残っていますが、きちんと通して見てもらえると、賛成派の人も存在したことがわかるはずです。
しかし、動画の一部だけを見て誤解をした方や、「反対派の人しかいないのだろう」と早合点した方が多かったのです。
いわば、そんな“事実誤認”をTwitterで感情的な形で拡散され、それを見た方が元の動画に立ち返ることはせず、誤った情報を鵜呑みにしてさらに拡散させる…。
そんな“炎上の王道パターン”に陥りました。
私たちはいち早く「改名は保留にする」と発表しました。
そして、10月、11月とサポーター懇親会を開き、より良い関係づくりに努めました。
結果的に「雨降って地固まった」と思っています。
また矢面に立ったことで、かえって前面に立つ資格をいただいたような気がしています。
何より「ゼルビアをなくす名称変更に強い反発があった」という事実が世に知れ渡ったことで、クラブに新たな歴史を刻めたのではないかと、前向きに捉えています。
それと、強がりでもなんでもなく、久しぶりに炎上してたくさん悪口を言われて良かったと思っています。
先にお話しした通り、最近“いい人キャラ”になってきて、何かあったときにはそのギャップから、余計に非難されるというリスクが高まっているように感じていたからです。
また、たまには心に負荷をかけて鍛えておかないと、私自身の「心の筋力」だって落ちてしまうことでしょう。
IT業界を牽引してきた“盟友”が初めて語り合う「これまで」と「これから」
藤田さんは書籍の冒頭で、「『自分は心が弱い』と思う人でも心配することはありません。『ハートの強さ』は、努力や意識の持ち方次第で、後天的にどんどん伸ばしていくことができるはずです」と言います。
10代〜40代の4章立てで、お二人の「生い立ち」「起業」「キャリア」「未来のこと」を語り尽くす『心を鍛える』は、どの時期にどのような試練があって、それをどう乗り越えたのかを知れる一冊。
行き詰まったときに読めば、“強い心”を持って再出発するための新しい視点や発想が、きっと浮かんでくるはずです。
〈撮影カメラマン=HARUKI〉
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