ビジネスパーソンインタビュー
西成活裕著『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』より
頭がよい人の共通点とは? 東大生が“よく口にする言葉”から気づいた「考える体力」の鍛え方
新R25編集部
仕事・勉強ができる人や成功している人をみて、「なんでこんなにできるんだろう...?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
東京大学先端科学技術研究センター教授・西成活裕さんは、「考える力の使い方は人によって差があり、できる人は“思考習慣”が身についている」と言います。
できる人に共通して身についている「思考習慣」とは、一体なんなのでしょうか?
そこで今回は、西成さんの著書『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』より、頭のよい人・成功をおさめている人に共通する「思考習慣」について抜粋してご紹介します。
頭がよい人の共通点は「考え続けている」こと
「考える力の使い方は人によって大きな差がある」と私が意識し始めたのは、東京大学に入った頃でした。
東大には、全国から集まったとんでもなく頭のよいスーパー大学生がたくさんいて、日々、ダメダメな自分を痛感したからです。
彼らに、「なんでそんなにできるの?」と聞くと、「考えれば分かるじゃん」という言葉がよく返ってきました。
在学中、東大生がよく口にする言葉「考えれば分かる」をヒントにして共通点を探ったところ、いくつか分かったことがあります。
頭がよい人は、ただ「考える」だけでなく、「考え続けている」のです。
これは、筋トレやマラソンのような運動と同じで、鍛えれば鍛えるほど力がつく「考える体力」とも言えます。
何か問題に直面したとき、考えることをやめてしまえば、そこで終わりです。
しかし、考え続けている限り、思考は広く、深くなり、最良の答えに近づくことができます。
さらに考え続ければ、その答えをどんどん発展させていくこともできるのです。
考え続けるために必要な7つの「思考体力」
私はこの考え続けるために必要な7つの考える力を、身体の「体力」になぞらえて「思考体力」と名づけました。
私自身も、思考体力を鍛え、思考体力を使って考え続ける「思考習慣」を身につけることができたのです。
そのおかげで、数理物理学者として「渋滞学」「無駄学」といった学問を立ち上げ、42歳で東大の教授になることができました。
仕事を通じて出会った一流の経営者やさまざまな分野の第一線で活躍している人たちも、やはりみなさん「思考習慣」が身についています。
成功者とそうでない人の差は、「思考習慣」が身についているかいないかの差と言っても過言ではありません。
① 自己駆動力
車のエンジンと同じように、自分で考えて動き出す力が「自己駆動力」です。
これがなければ何も始まらない、「思考体力」の原動力となるもっとも大切な力と言ってもいいでしょう。
自己駆動というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、この言葉は私の専門の「渋滞学」で、人や車など「自らの意思で能動的に動けるもの」を表す意味として、世界共通で使われています。
他人に言われて決めたことは、思い通りにいかなかったり、失敗したときに、「自分が決めたことじゃない」と言い訳をしたり、「誰々のせいだ」と責任転嫁しがちです。
しかし、自分で目標設定して、積極的に動いていけば、どんな難題にぶつかっても、「自分で決めたことだから」と覚悟を決めて乗り越えていけます。
やる気が出ない人やすぐに挫折する人は、「自己駆動力」を高める必要があります。
② 多段思考力
自分で目標を立てたら、そこがスタート地点。
「自己駆動力」で走り出したら、ゴールまで上っていきます。
その過程において、「もういいや」「分からない」と投げ出したり、適当な妥協点を見つけるのは簡単です。
しかし、決して諦めることなく、「もう1段先」「あともう1段先」と考え続ける力が「多段思考力」。
「自己駆動力」がエンジンなら、こちらはアクセルを踏み続ける力。
運動能力でいうところの「持久力」と同じようなものです。
何でもすぐ短絡的に考えてしまう人や自分で考える前に他人の意見や情報に影響されやすい人は、特に鍛えたほうがいい力です。
③ 疑い力
車のブレーキのように、思考のアクセルを踏みすぎないように、いったん立ち止まる力です。
自分が進んでいる方向が間違っていないか確かめるときにも必要な力が「疑い力」です。
失敗が許されない仕事に就いている人はもちろん、受験生や資格取得を目指す人など、数字で結果が求められる目標に向かって努力している人には不可欠。
ネット上の玉石混淆(ぎょくせきこんこう)の情報を見極めるためにも必要な力です。
④ 大局力
人というのはどうしても目の前のことに気をとられがちです。
やるべきことに集中するのは重要なことですが、1つの「点」ばかり見ていると全体の「面」が見えなくなります。
そこで、アリの眼のようにズームインして周りが見えなくならないように、鳥の眼でズームアウトして全体を俯瞰する力が「大局力」です。
全体の中で自分がいる場所が客観的に理解できれば、次に進む道や次に取るべき行動が見えてきます。
たとえるなら、カーナビやGoogle Earthのようなもの。
「大局力」には、空間全体を見渡す「周辺視野」と時間軸で考える「先読み」の視点があります。
「多段思考力」で1段ずつ思考の階段を上っていくことも大事ですが、時折この「大局力」で全体を俯瞰することで、より適切な判断ができるようになります。
⑤ 場合分け力
車の運転をしているときも、渋滞につかまりそうになったときは、一般道を走るか高速道路に乗るか、それよりも迂回して抜け道を選んだほうが早いか悩むことがありますよね。
仕事も同じで、どのルートを選ぶかで、途中で見える景色や到着時間が変わります。
最適なルートを選び取るためには、分岐点で選択肢をきちんと分類・整理する「場合分け力」が必要なのです。
この能力は、「疑い力」を一緒に使い選択肢を増やすことで可能性が広がり、さらなる力が発揮されます。
重要な場面で決断を迫られても、正しい判断ができるようになるでしょう。
⑥ ジャンプ力
問題に直面したとき、誰にも打つ手がなく行き詰まっているような場面で、パッと解決策を提示できる人がいます。
このような人は、思考を何段も飛ばして、全く違う角度から問題解決の方法を見出すことができる「ジャンプ力」があります。
車でたとえると、電車やバスなど交通手段自体を変えてしまうような発想の転換ができるイメージです。
逆境に立たされたときは特に、ピンチをチャンスに変えるような“ひらめき”を得る才能が求められます。
八方塞がりになったときや想定外の事態に陥ったときも、「ジャンプ力」があれば打開策を見つける可能性が高まるでしょう。
⑦ 微分思考力
「微分」という言葉に対して数学のイメージをお持ちの方は多いと思いますが、これは簡単に言うと「細かく分ける」ということです。
階段を1段ずつ上っていくように考える力が「多段思考力」だとすると、「微分思考力」は段差の大きい階段の1段を数段に分ける、つまり物事を分解して、構成要素を論理的に確認する力です。
たとえば、「人工衛星を月に飛ばそう」という計画はいかにも壮大で難しそうに思えますが、やるべきことを細分化してみると1つひとつは実現可能です。
真空状態でも外れないネジを作ろう、遠隔操作できるカメラを作ろうなど、そういった細かいことを組み立てていけば、できないことはないのです。
7つの「思考体力」があれば、どんな悩みや困難も解決できる
7つの考える力は、それぞれ独立してはいますが、問題を解決するときにはいくつか組み合わせることによって、その効果が発揮されます。
つまり、どれか1つだけ身につければいいわけではなく、多少の得意・不得意があったとしても、意識的にそれぞれの力を身につける訓練をしたほうがいいのです。
普段から、この7つの考える力を意識して、物事を考え続ける思考習慣を身につければ、どんな悩みや困難をも解決することができます。
人・情報・仕事...複雑な社会だからこそ「思考習慣」が大切
「渋滞学」を専門とする西成さんから見ると、人も、情報も、仕事も、あらゆることが複雑に絡み合っている現代の社会は、まさに渋滞を引き起こしているような状態。
しかし、世の中が複雑になって「どうしよう?」と不安ばかり感じて立ち往生する人もいれば、「面白そう!自分次第でチャンスをつかめるぞ」と、ワクワクしながらチャレンジを楽しむ人もいます。
激動の時代に“自分の軸”を持って進んでいくために、最強の思考習慣が身につく『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』を読んでみてはいかがでしょうか。
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