

橋口幸生著『100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』より
単純明快、具体的、物語性がある…いいアイデアを見抜く6つの基準とは
新R25編集部
サービスの発案、売れるプロダクト企画、人の心を動かすプレゼンや提案内容…
ユニークなものを生み出すには、そもそもの「アイデア」がないと始まりません。
でも、「そう簡単にだせない…」というのが本音ですよね…。
ギャラクシー賞やグッドデザイン賞など多数受賞をしているコピーライターの橋口幸生さんは著書『100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』(マガジンハウス)で「才能やセンス、道具がなくても、コツを掴めば誰でもアイデアメーカーになれる」と言っています。
100案とは言わずとも、数多くのアイデアをだすためのコツを同書より一部抜粋してお届けします。

ヒット作が持つ「2つの基準」
数多くのヒット広告を手がけ、社内でエースと目されている先輩コピーライターの下につくことになった時の話です。
入社以来、初めてのチャンスに張り切り、100案どころか数百案の、辞書のような厚さになったコピーの束を抱えて会議室に向かいました。
当時の会議はアナログそのもの。
A4用紙に印刷されたコピーを、机に並べていきます。
机はすぐにいっぱいになってしまうので、床に並べます。
床もいっぱいになると、次は壁です。
セロテープでペタペタと張っていきます。
最終的には、視野のすべてが文字で埋め尽くされます。
先輩はズラリと並べられた案を、1つひとつ、ていねいに見てくれました。
そのあと、こう言いました。
「たくさん考えてくれてありがとう。
これだけあると、何がいいかわからなくなってくるよね。
いいコピーには“共感”か“発見”が、あるものなんだよ。
この基準で、書いてくれたものを見ていこうか」
今でも先輩の表情や会議室の風景とセットで記憶しています。
このとき、僕は初めて気づいたのです。
コピーとは、読み手に「共感」と「発見」を与えることを目的にした文章なんだ。
主観的な好き嫌いでなく、明確に良し悪しを判断できるものなんだ、と。
たとえば、みなさんの記憶に残る名コピーを思い出してみましょう。
『100案思考』「想像力と数百円」(新潮文庫)→発見
「恋は、遠い日の花火ではない。」(サントリー)→共感
「四十才は二度目のハタチ。」(伊勢丹)→発見
「Justdoit.」(ナイキ)→共感
あなたの好き嫌いにかかわらず、「共感」か「発見」があるという点は共通していることがわかると思います。
この話はコピーにかぎったことではありません。
どんなアイデアも「好き嫌い」で選ぶのは厳禁です。
必ず具体的で客観的な「基準」を持つようにしてください。
アートディレクターの佐野研二郎さんは自身のデザインの指針を「シンプルであること。明快であること。太くあること。」と語っています。
また、チップ・ハースとダン・ハースの著書『アイデアのちから』(日経BP社)では人々の記憶に残りやすいアイデアの条件として、次の6項目を挙げています。
『100案思考』◇単純明快である
◇意外性がある
◇具体的である
◇信頼性がある
◇感情に訴える
◇物語性がある
佐野さんも、『アイデアのちから』も、同じことを別の言葉で表現しているのだと思います。
あなたもぜひ、自分なりの基準をつくってください。
そのためにはいいアイデアにできるだけたくさん触れて、目を養わなくてはいけません。

「長所・短所」で判断するのはNG
アイデアをたくさん出せば出すほど、いいものが含まれている可能性は上がります。
しかし、たくさんのアイデアを見るうちに混乱して、何がよくて何が悪いのかわからなくなってきますよね。
こういうとき、多くの人はアイデアの長所と短所を書き出して、比較しはじめるのですが…最悪です!
絶対にやってはいけません。
最高のアイデアにも短所はあり、最低のアイデアにも長所があるからです。
『鬼滅の刃』を例に、考えてみましょう。
社会現象となったヒット作であり、疑いようもなく最高のアイデアです。
しかし、連載作品を決める会議で、短所ばかり指摘する上司に当たってしまったら、どうなるでしょうか?
「『鬼滅の刃』?キメツって読むの?やっぱり少年漫画のタイトルは『ワンピース』とか『ドラゴンボール』とかさぁ、カタカナのほうがいいよね。
キャラクターの名前も難しいなぁ。竈門炭治郎や禰豆子、子どもは読めないよ。
煉獄杏寿郎なんて論外。敵が鬼というのも地味だよね。桃太郎じゃないんだからさ。
やっぱり巨人とか、宇宙人とか、派手にしないとPRに乗らないよね。連載は見送ろう!」
僕たちはもう『鬼滅の刃』の大ヒットを知っているので、ありえないやり取りだと思ってしまいます。
しかし、こうした会議が日夜、日本中で行われているのはみなさんもご存じのとおり。
そして、数多くの素晴らしいアイデアがつぶされていくのです。
アイデア会議は、本来、世の中になんらかの効果をもたらす案を選ぶための場所です。
しかし、ビジネスにはリスクがつきものです。
責任や面子だって気になります。
もし失敗してしまったら…と、どんどん不安になっていきます。
そして、始まるのはあら探し大会です。
ありとあらゆる方向から短所を指摘され、アイデアは死んでいきます。
それなら、「長所で選べばいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、こういう場合、長所は「短所がないこと」とされてしまいがちです。
短所がないというのは、言い換えれば「特徴がない」ことです。
結果、最高のアイデアではなく、誰も反対しない凡庸なアイデアが選ばれてしまいます…。
「長所・短所」ではなく、「基準」で選ぶことを心がけてください。
とはいえ、会議が長引けば長引くほど頭が混乱してきて、長所・短所の議論が始まってしまうものです。
そんなときは「そもそも、このアイデアで何をしたかったのか?」と、話を振り出しに戻すようにしましょう。

「ホンモノ」をたくさん見ておく
美術品を鑑定する人気テレビ番組があります。
壺や掛け軸などさまざまなものが出品されますが、素人目には価値があるのかないのか全然わからないですよね。
由緒ある日本画に見えたものがただのお土産品だったり、ガラクタのおもちゃにしか見えないものが数十万円の価値があったりーそのギャップに、毎回驚かされます。
アイデアも同じです。
価値を見抜く目がなければ、いい案は選べません。
あなたもこれまで、数百万円の価値がある提案を、知らずしらずのうちにドブに捨てたことがあるかもしれません…。
プロの鑑定人は、「目を養うには、とにかく本物を数多く見るしかない」と言います。
素晴らしい作品を実際に見る機会をたくさん持つ。
そうすることではじめて、価値が見抜けるようになるのだ、と。
アイデア・パーソンになるために、あなたもぜひいいアイデアを浴びるように見る習慣をつけてください。
僕がおすすめするのは世界の「広告賞」を見ておくことです。
代表的な広告賞には、東京コピーライターズクラブ(TCC)が開催しているもの、東京アートディレクターズクラブ(ADC)のもの、カンヌライオンズ(正式名称は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」といい、世界中の広告やデザインを表彰する、年1回のお祭りです)といったものがあります。
これら国内外の広告賞は、「いいアイデア」のサンプル集のようなものです。
広告業界の人以外にも大いに参考になると思います。
本がたくさん出ていますし、検索すればネットでも情報が手に入ります。
活用しない手はありません。
特に「個人的には好きじゃないけど、世の中では受け入れられている物事」に注目して、理由を分析してみることをオススメします。
その積み重ねが、あなたなりの「基準」になっていくのです。
日常的なインプットからアイデアは生まれる
『100案思考』「クオリティ度外視で、とにかく100案出す。
これは鉄則です。
よほどの天才ならいざしらず、なんとなく考えた1案が優れていることなんて、ありえません。
量と質はセットなのです。」
と、橋口さんは言います。
同書には、より数多くアイデア出しができるようになるノウハウが詰まっています。
自分ならではのアイデアで周りと差をつけていきたい、結果を残したい人におすすめの一冊です。

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