

FISHBOY著『“なりたい自分”になる技術』より
世界一になっても、世間から注目はされなかった。FISHBOYが逆境から“役割”を見つけた方法
新R25編集部
「好きなことで生きていく」が叶いやすい時代。
ただ、好きなことで生きていても、「これが自分の理想の姿だっただろうか…」という壁に当たる人もいます。
ダンスの世界大会で優勝する経歴を持ち、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんの弟としても知られているFISHBOYさんもそのひとり。
FISHBOYさんは、著書『“なりたい自分”になる技術 ―「好きなこと」×「理想の姿」を両立できる人の考え方』の冒頭で、「『好きなことをする』のと『なりたい自分になる』というのは、まったく別のことだった」と語っています。
「好きなことが見つかり、理想の自分になる方法」とはどのようなものなのか?
同書より抜粋してお届けします。

世界一になっても、世間から注目はされなかった
ダンスの世界大会で優勝を手にした夜、私は興奮していて、まわりの景色が違って見えていました。
ステージを降りてからも海外の人たちが声をかけてきてくれます。
帰りの飛行機のなかでも、私の興奮は冷めることはありませんでした。
ずっと優勝が決まったステージ上のテンションのまま、きっと日本のみんなも喜んで待っていてくれるに違いないと、信じて疑っていませんでした。
機内ではずっと、「空港に降りたらたくさんの人たちが待っていて祝福してくれ、記者に写真を撮られて、インタビューをされる」という景色をイメー ジしてニヤニヤしていました。
ところが、私たちを出迎えてくれる人は、ひとりもいなかったのです。
「昨日、世界一になってあんなに脚光を浴びていたのに、なぜ自分はいま、こんなふうに荷物を持って、ひとりでいつも通り電車に揺られているんだろう...」
テレビや新聞で大きく取り上げられるメジャーなスポーツとダンスは何が違うのか。
それを考えたとき私は、ひとつのシンプルな答えにたどり着きました。
「そうか、誰もダンスに興味がないからか」
メディアは「強いから取材してくれる」のではなく、「みんなが興味を持っているから取材して報道するのだ」ということに、私はこのときはじめて気づいたのです。
それが不平等だとは思いませんでしたが、興味を持って取材してもらえるポジションを得るにはどういう動きをすればいいのだろうと、私は知りたくなりました。

フェンシングに学んだ、マイナースポーツが人々の興味をひくための仕掛け
そんななかで、人々の興味をつくるため戦略的に動いている人たちがいることも知りました。
「フェンシング」がそのひとつです。
私は同い年という縁もあり、オリンピックで銀メダルを獲得した太田雄貴さんと親しくさせてもらうようになって、フェンシング界の話を教えてもらう機会に恵まれました。
フェンシングももともとマイナースポーツで、本当に興味を持っている人が少ない状態でした。
これではプレーヤーのモチベーションにつながらないということで、太田さんが日本フェンシング協会の会長に就任してから大改革をはじめました。
PR部隊を置き、見ている人に楽しんでもらえることを考えると同時に、メディアが興味を持ちそうな文章や写真をストック。
魅せられるストーリーを用意して、的確なタイミングでそれを出す。
そんな地道な努力をおこなっていることを教えてもらいました。

ダンスの価値を知らせるために「自分の役割」を見つけた
「ダンスでも、人々の興味をつくる努力をしなくては...」
いつしか私の心には、そんな使命感が芽生えていました。
そうして私がイメージした「みんながダンスに興味を持っている世界」というのは、「みんながダンサーである世界」でした。
みんながダンサーであれば、自ずとみんなダンスに興味を持つ。
みんながダンスに興味を持ってくれれば、ダンスの価値が高まり、いいダンサーのすごさがわかり、正しく評価してもらえる。
それが、私が導き出した結論でした。
「競技人口を増やせば興味を持ってもらえるなら、みんなにダンスをしてもらおう!」
これは私ひとりの問題ではないと思ったのです。
私の以前にも、世界一を獲っても、世間からは全然注目されない先輩がいたということです。
このままでは後輩たちも同じような思いをすることになります。
それでは、夢がないではありませんか。
「大会で勝ち続けることは、自分の役割ではない」
私のなかに芽生えたのは、そんな考えでした。
人には得意不得意があり、できることとできないことがあります。
それぞれが得意なところをやるから、社会はうまく回っていきます。
すべてを自分ひとりでやる必要はありません。
自分にしかできないこと、自分でなくてもいいことを冷静に考えると、自分が果たすべき役割が見えてきます。
それを考えたとき、私には世界の舞台で戦って強い力を見せ続けるより、「まだダンスに興味を持っていない人に、ダンスの魅力を伝える」という役割がある気がしました。

「オリラジあっちゃんの弟」のレッテルを武器に変えた
私の兄は「オリエンタルラジオ」というコンビ名で活動しているお笑い芸人のひとり、中田敦彦という男です。
彼が有名になってから、私を表す言葉は多くの場面で「オリエンタルラジオあっちゃん(兄の愛称)の弟」になりました。
私は最初、そのことがものすごく嫌でした。
学生時代から私はダンスで全国大会を制覇したり、それによってダンスイベントに呼ばれて報酬を得ていたりして、ダンサーという自分の価値を確実に積み上げているつもりでいました。
それが、兄がお笑い芸人として売れた瞬間、世界がまるで変わってしまったのです。
昨日まで「ダンスがうまい中田」と言われていた私が、急に「オリラジあっちゃんの弟」と呼ばれるようになりました。
だから兄の弟であることは隠していたし、ましてや兄の名前を使って仕事をしようなんて露ほども考えていませんでした。
ところがあるとき、このことについての悩みをある先輩に相談すると、こんなことを言われたのです。
「家族が有名になることなんて、めったにないことなんだから、どんどん使えばいいじゃないか。そういうフックは手に入れようとしたって得られるものでもない。でもそれをお 前は手にしたんだから、手にしたお前がやらなければならないことがあるんだ。そんな強 みを持っているダンサーは他にはいないんだから」
この言葉を聞いて、私のなかで何かが吹っ切れました。
そうして気づいたのです。
「ダンスを知らない人にダンスの魅力を伝えよう」と思ったときに、こんなに強力なフックは他にないのではないかと。
兄の名前があれば、ダンス界の外の人にもアプローチができるのではないだろうか。
そう思うと、「オリラジあっちゃんの弟」と言われることも、兄の話をされることも、嫌でなくなりました。
嫌どころか、私が日本人全員を踊らせるために兄が与えてくれた大きな武器のように思えてきたのです。
そのことに気づいてから、私は行動を変えました。
「オリラジの弟」という枠で入ってくる仕事も罪の意識なく受けるようになり、私自身もテレビに出るようになりました。
「有名人の弟」になったのは私の実力でも何でもなく、たまたまかもしれません。
でも、自分で勝ち取ったフックではなくても、目の前にチャンスがあると気づいたことで、私は「自分がやらなくては」という使命感に駆られ、これが自分の役割なのだと確信することができたのでした。

役割は“不自由さ”から見つかる
人にはそれぞれ、持って生まれたものや与えられた環境から見出だせる役割があるのではないかと、私は考えています。
役割に気づくための鍵は「不自由さ」にあります。
不自由さを自由にしようと考えると、なんだか心が熱くなるような気がしませんか?
何かに対して違和感を抱き、よりよくしようとする気持ちが湧く。
それが、その人の役割なのだと思います。
ダンス界でも、世界タイトルを獲って帰ってきて、空港にメディア関係者がひとりもいなくても、その状況を受け入れるのはきっと普通のことだったのでしょう。
でも私には、それがとても不自由なことに感じられたのです。
その不自由さに気づいてしまったから、そこを自由にするために動くことが私の役割となった。
そういうことなのです。
「踊らされるな、みずから踊れ」。FISHBOYさんの本が、背中を押してくれる
SNSの発展によって、世界中の誰にでもアクセスしやすくなり、好きなことを仕事にしやすくなりました。
その一方で、「自分のなりたい姿」や「実現したい世界」がない、わからないという声も聞こえてきます。
『“なりたい自分”になる技術』では、自分のビジョンを見つけ、それを実現し、「なりたい自分」になるために必要なことが、FISHBOYさんの体験談とともに紹介されています。
あふれる情報に踊らされ、 世間の評価に踊らされ、 誰かが言った“正解らしさ”に踊らされる。
そんな現代の世の中で、「踊らされるな、みずから踊れ」というFISHBOYさんのメッセージは、力強くもやさしく背中を押してくれるはずです。

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