ビジネスパーソンインタビュー
北野唯我著『これからの生き方。』より
職場の人間関係がうまくいかないのは、「相手に求める水準」に問題がある
新R25編集部
働き方や生き方が大きく変わった2020年。
人と気軽に会えなくなったことで自分の時間が増え、「今のままのキャリアでいいのだろうか」と見つめなおす人が増えました。
作家でワンキャリア取締役の北野唯我さんの新著『これからの生き方。自分はこのままでいいのか?と問い直すときに読む本』では、現代人が陥りやすい、働き方や人間関係などの「悩み」を解決するヒントを、漫画とテキストの両方で示しています。
これからの時代に必要な働き方、生き方の本質とは一体何か?
同書より、北野さんが語るヒントを抜粋してお届けします。
人の好き嫌いは「2階建」構造である
ほとんどの場合において、職場での衝突や、人間の好き嫌いというのは、価値観の違いによって起きており、それも「2階建」でできています。
1つは、「身体的な好き嫌い」です。これは、衣食住と深く関係しています。
たとえば、「こういう服を着たい」「こういう食べ物は嫌い」「こういう家に住みたい」などをイメージするとわかりやすいでしょう。
この身体的な好き嫌いは、とても大事ですが、キャリアを積み上げていくにつれて、重要度が下がっていく傾向になります。
なぜなら、身体的な好き嫌いのほとんどは、お金によって解決できる問題だからです。
お金があれば、嫌なものを取り除くことができます。好きなものを選択することができます。たとえば、食事や、住む場所、衣服などがわかりやすいでしょう。
こういうものは、ほとんどが「お金の問題」なのです。その意味で、キャリアを着実に積み上げていけばいくほど、それほど重要な問題ではなくなっていく傾向にあります。
一方で、もう一つの「思想的な好き嫌い」はもっと厄介な問題です。
これは、職業観や生き方に紐づいています。
これらは、複雑で、お金によって解決できないのが特徴です。なぜなら「正解」がないからです。
たとえば、学生時代は部活なんて頑張らずに勉強することが善だ、という考えと、若い頃は勉強なんてせずにガンガン遊べ、という意見があったとします。
二つの意見は、衝突しています。この衝突は、もはや、「思想の衝突」であって、答えがありません。どちらも正しく、どちらも間違っているからです。
したがって、どれだけ、相手に論理的な説明をしたとしても、本質的に相手を変えることは極めて難しいものです。
「自分と、他人は違うものだ」そう思うことは人を楽にする面もあります。
これは職場でも同じです。自分と他人は全然違うから、価値観が違って当然である、そう考えると少しだけ気が楽になります。
ただ、本当にこれだけで終わってしまうと、人と人は相容れないまま、平行線を辿ります。
ではどうすればいいのか?
それは、「仕事への価値観」という言葉の解像度を上げることです。
より具体的には、要素に分けて考えること。次の2つを行うことだと私は考えます。
①自分の価値観を要素に分けて理解し、忘れないように何度も何度も確認する
②その上で、相手の価値観とは何が同じで、何が違うのかを確認する
どこが違い、どこは同じであるか。違う部分と、同じ部分を確認し合うこと。それを粘り強く、丁寧に探っていくことが、人が大人になっていくことだと私は思っています。
本来、自分と価値観が違う人は、できることなら、一緒に働きたくないはずです。避けて済むなら避けたい。
それでも、多くの働く人にとっては、「とはいえ、職場に自分とは気が合わない人もいる」のは事実でしょう。
その際大事なのは、要素に分けて考えること、だと私は考えます。
というのも、身体的な好き嫌いは、お金で解決できても、思想的な好き嫌いは、抜本的に仲良く交わることがしづらいからです。
これは悲しいですが、真実ですし、何より歴史が証明しています。
常に、「自分が正しい」という考えを持つ人は存在し、その人たちは、他人に自分の考えを強要しようとしてきました。人類がたくさん繰り返してきた、戦争の歴史、宗教の対立などを考えるとわかりやすでしょう。
思想がぶつかったとき、人は強くぶつかり合うのです。
私が認識する限り、本質的には、働く理由は、完全に一つのものが、まとまってドスンとあるものではありません。
複数の価値観が構成されており、要素に分かれているものです。
求めていることは「分散」して満たそう
もう一つ、重要なことは、人によって「職場で求める水準は全然違う」ということです。
当然ですが、人が「どれだけ高い水準を仕事に求めているか」は差があります。
仕事に対して強い要望を持っている人ほど、「たくさんの要素を求める」傾向がありますし、「仕事はほどほどの水準でいい」と思う人は、それほど多くの要素を求めていません。
これはどちらが正解か、などはなく、ただ単に違いがあるだけです。当然です。
そして、一般的には「わがままであること」は、悪いことだと思われがちですが、一方で、たとえば、スティーブ・ジョブズをイメージすればわかりやすいですが、わがままな人間のほうが、新しいものを生み出す可能性がある。
これも私たちは事実として認める必要があるでしょう。
起業家(経営者)というのはある意味でとてもわがままな存在です。多くを求めます。
それが、ときに、周りの人からすると、とても過度な要求に見えるかもしれません。
しかし、その要求が新しいものを作り出すエネルギーになり、この世の中を変えてきた側面もあります。
新しいものを作るというのは、過剰なエネルギーを必要とするものだからです。
皆さんも、ワーカホリックで有名な経営者を尊敬はするけれど、その人の下では働きたくないな、と思ったことが一度はあるのではないでしょうか。
では、私たちはどのようにこれらを考えればいいでしょうか?
それは「分散して満たすこと」だと私は思います。
「今の仕事に100%満足していますか?」と聞かれて、どれだけの人がYESと答えられるか、というのは難しい問いです。
ほとんどの場合は、なかなか100%の自信を持ってYESと言い切れないのが、現実ではないでしょうか。
仕事内容は楽しいけれど、人間関係はもうちょっと良くなってほしい、給与がもうちょっと高ければ嬉しい、など、100%完璧な職場というのはなかなかないものです。
この際に大事なことは、一つの場所ですべてを無理に求めようとしないことです。
ほとんどの人は、世界的に有名なアーティストや、創業者ではありません。
仮に私たちが、そのレベルの才能と意志を持っていれば、すべてを一つの職場から手にすることができるかもしれませんが、現実的にはかなり難しい。
ほとんどの人にとっては、「ある要素は、Aという仕事で満たして、他の部分は、違うところで満たすこと」が現実的だと思います。
たとえば、私は、普段は東京で会社の役員をしていますが、一方で、作家としても活動をしています。今風にいうならば、兼業という感じでしょう。
私が2つの仕事において求めるものは全く違います。
会社では「達成」や、「ライフスタイル」などを大事にしています。他方で、作家としては「創造性」や「美的追求」を強く求めています。
つまり、自分が求めるものを分散させているわけです。
柔軟に、いまを生きる
北野唯我さんは書籍の「はじめに」で、幼少時代に阪神淡路大震災に遭ったことを回想しつつ、「日常は一瞬でなくなる」と語っています。
現在、人々はこれまでの常識を変えざるを得ない状況にあります。
一つに固執しては生き残れない時代において、同書は、能動的な変化の重要性を訴えているようにも思えます。
ぜひ、あなた自身の視点で「これからの生き方」を考えるきっかけにしてみてください。
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