ビジネスパーソンインタビュー

橋下徹「永久不変の“強み”は存在しない。それに固執すると、自分の可能性を狭める」

橋下徹著『異端のすすめ』より

橋下徹「永久不変の“強み”は存在しない。それに固執すると、自分の可能性を狭める」

新R25編集部

2020/02/05

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人のことはよく見えても、自分のこととなると、知っているようで知らないもの。

「個の時代」と言われて久しい今、所属組織ではなく、自分個人の「市場価値」を知る重要性がますます高まっています。

しかし、自分の市場価値をいかにして捉えればいいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。

その答えになるのが、橋下徹さんの新著『異端のすすめ』。

同書より、「相場感」と「ウリ」をキーワードに事例を交えて「自分の強み」論を展開しています。

仕事の「相場観」を押さえよ 

組織に属さないフリーランスの場合は、「今の仕事=自分の商品価値」という感じで、金銭面にわかりやすく表れます。

たとえば独立したての頃は依頼主の「言い値」で仕事をしていたところ、自分のウリを明確に打ち出し、量をこなし、そうしているうちに自分の商品価値が高まるにつれて、依頼主から提示される報酬額が上がっていきます。

こういう変化は、ハッキリと表れるものです。独立して仕事をしていく上では、「相場観」を押さえておくことも非常に重要です。

「相場観」とは、自分の商品価値によって舞い込んでくる仕事のだいたいの報酬額、すなわち世間は自分の仕事に対してどれくらいの金額をつけてくれるかという認識です。

依頼主あっての仕事ですが、自分の商品価値を過小評価する必要はありません。

一番避けなくてはいけないのは、相場観をつかまないまま、相手に金額を丸投げしてしまうことです。

ただし、逆に自分を過大評価し、相場観を無視した高値をつけると、仕事がなくなるという事態に陥ります。

では、どうしたら自分の今の商品価値を把握し、妥当な相場観を定められるか。

それぞれ方法があります。

まず今の自分の商品価値は、自分自身の感覚に問いかけてみることです。

●「量」をこなしてきたという自信があるか

●手を抜かず、「ウリ」を明確かつ圧倒的に打ち出してきたか

●そのウリに磨きをかけ、仕事の「質」を上げてきたか

これらの問いに対して、自信を持って「イエス」と言えるのなら、過去の自分の商品価値より今のそれのほうが、確実に高まっていると見て正解です。

それに見合った報酬額になっていないと思った場合には、自分から報酬単価を上げる交渉をするのも、もちろんありでしょう。

一方、組織に属している場合も、これまで手を抜かずに量をこなしてきた自信があるのに、一向にやりがいのある仕事を任せてもらえないなどの不満があるなら、転職を視野に入れてもいいでしょう。

自分の商品価値が高くなっていると実感していても、任される仕事の質が高くなっていかないような場合には、今いる土俵を変えるのです。

永久不変の「強み」は存在しない 

これまで、自分のウリを明確にする、自分の商品価値を高める、という話をしてきました。

ここで注意しておきたいのは、自分のウリは常に移り変わるということです。

一度ウリになったことが、永続的にウリになるということはありません

他人や世間からの評価などは「固定的」なものではなく、「流動的」なものです。

僕は弁護士時代に「スピード」をウリにしていましたが、当時こそ評価されたスピードも、今ではごく普通で驚くことではないかもしれません。

弁護士が増えたことで業界内の競争が激しくなってきており、かつての殿様商売では仕事が成り立たなくなってきています。

約20年前にウリになっていたことが、今もウリになると思ったら大間違いです。

ここを見誤ると、一度ウリになったことにしがみつき、そのウリが通用しなくなったことにも気づかずに、古びたウリを押し通そうとしてしまう

たとえば、人気観光地の一つだった神戸が、近年のインバウンド需要の盛り上がりの中で苦戦している。それがなぜだか、わかりますか?

神戸は港町であり、旧外国人居留地の雰囲気を今でも観光の目玉、神戸のウリにしていますが、それはかつて、日本人の観光客にとって「異国情緒漂う魅力的な風景」だったというだけです。

外国人観光客のインバウンド需要を取り込むために、かつてのウリがそのまま通用するわけではないのです。

西洋風の建物が立ち並ぶ風景は、日本に育った人には「おしゃれ」に見えますが、西洋から日本に訪れる外国人観光客にとっては面白くもなんともないでしょう。

自分たちの本国に帰れば、西洋「風」どころか、本物の洋館が普通に並んでいるのですから。

アジア圏、特に中国からの観光客にとっても、多くのアジアの諸国には西洋列強による植民地時代の名残の街並みがあるので、やはり神戸の旧外国人居留地は珍しくはありません。

たとえば上海の外灘(バンド)地区などは、数キロにわたる旧居留地区です。さらに神戸の中華街は、中国人にとっては地元の小さな商店街くらいの感覚でしょう。

要するに、大きなテーマパークもなく、神社仏閣など歴史遺産も乏しい神戸は「異国情緒漂う港町」という、かつてのウリにしがみついている

しかし、そのウリは日本人に効果を発揮しても、今取り込まなければならない外国人に対しては効果がない。

それが、世界から観光客を呼び込もうという流れが高まっている日本の中で、神戸が苦戦している原因です。

時代とともにウリも変化していくのです。

仕事における例でいえば、たとえば自分が所属している会社の「社名」に、こだわってはいないでしょうか。

あるいは自分の職種に対する妙なこだわりが、自分のウリを幅広く活かすことを邪魔してはいないでしょうか。

社名や職種に対するこだわりが、かつてのウリに対する単なる執着なのであれば、それは周囲の変化に合わせて柔軟に自分の活躍範囲を広げる足かせとなるだけです。

特に激変する世の中では、かつてのウリに対するこだわりが、自分の可能性を狭める可能性が高くなる。

◯◯社の社員だから」「私の職種はこれだから」という、固定化されたウリにとらわれないことも、これから働いていく上で重要な鍵の一つなのです。

時代とともに、自分のウリも新しく

自分の「商品価値」を問われると、途端に不安になってしまう人は少なくないかもしれません。

しかし橋下さんは「永久不変の強みは存在しない」と断言します。

自分が強みだと思っていたものが強みではなくなる場合がある。

逆にいえば、思いもよらなかった自分の強みが生まれる可能性は無限にある。

異端のすすめ』はそういった新しい考えをもたらしてくれます。

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