

「20代は自分のダメさ、不幸さから目をそらすな」
「弱みがない」という人はつらい思いをしてしまう。家入一真が“ダメなところ”を重視する理由
新R25編集部
「機械に代わられない働き方をしよう」「自分らしく働こう」
AI時代にシフトする中で、そんな言葉が世の中に溢れるようになったけれど、そもそも“人間らしく働く”ってどういうことだろう?
さまざまなキャリアの大人たちに、これからの未来に、働く上で大事なことを聞いた。
今回登場してもらうのは、株式会社CAMPFIREの家入一真さんだ。
【家入一真(いえいり・かずま)】株式会社CAMPFIRE 代表取締役CEO。1978年、福岡県出身。22歳でpaperboy&co(現・GMOペパボ)を創業。29歳でJASDAQ市場に当時最年少で上場。2011年、クラウドファンディングサービスを手掛けるCAMPFIREを設立。他にIT企業のBASE、ベンチャーキャピタルのNOW、新しい働き方を提唱するLivertyなど、多数の企業や組織で代表や役員を務める

AI時代の到来で心の課題が顕在化する
先日ある美術館に行ったら、チケットを買って入場するまでにものすごく時間がかかったんです。
理由は、購入窓口の対応も入場口でのもぎりも全部人間がさばいていたから。
チケットを電子化して機械に任せれば、スタッフの人たちは展覧会のキュレーションや作品の解説といった仕事ができます。
きっと彼らも、もぎりをやりたいわけじゃなく、感性を生かしたクリエーティブな仕事がしたくて美術館で働いているはず。
だからテクノロジーを導入すれば自分たちのやりたい仕事ができてハッピーじゃないか。
そう思ったので僕がそのことをTwitterでつぶやいたら、「スタッフの食い扶持を奪うつもりか」という否定的なリプライがたくさん来て驚きました。
僕は世の中の仕事を全て機械に置き換えろと言ったわけではなく、「人間がやる必要のない仕事はやらずに、人間だからこそやる意味のある仕事をやればいい」と言ったつもりだったのですが、AIやロボットが人間の仕事を奪うことに対する嫌悪感や不安感は根強いのだと実感しました。
一方僕自身は、そういった大きな変化の流れがやって来た時に、それに抗うのでも楽観視するのでもなく、「変化に対して自分はどうあるべきか」を自問自答し続ける人間でありたいと思っています。
だからAIを否定するつもりもないし、かと言ってAIで皆が幸せになれるとも思わない。
そのフラットな視点でAI時代に何が求められるかを自分に問うと、「心の課題を解決する仕組みがより必要になるのではないか」という答えに行き着きます。
そもそも「働くとは何か」というのは「自分は何のために生まれ、何のために死んでいくのか」という問いみたいなものだと思っています。
だから働くことによって、その答えらしきものとして生きがいややりがいが得られる。
でもAI時代が到来し、それさえも機械に代替されてしまったら、人々は「自分は何のために生きればいいか」が分からなくなる。
よって孤独や深刻な心の課題が顕在化するというのが、僕の想像する未来です。だから僕は、その心の課題を解決する仕組みをつくっていきたいと思っていて。
どう生きるべきか迷っている人や、やりたいことがあっても実現が難しい人たちを支えるために、「人の居場所をつくり、誰もが声を挙げられる世の中にする」というのを人生のミッションとしています。
例えば僕の会社はクラウドファンディングを手掛けていますが、これも「お金がなくて学校に通えない」とか「お金がなくて事業を始められない」といった人たちが自分から声を挙げて、お金を調達できる仕組みの一つです。
学校でも会社でもどこでもいいので、誰もが「自分はここにいていいのだ」と思える居場所を持てる世の中であって欲しいし、僕も経営者として、社員全員が「ここで働いていてよかった」と思える居場所にすることを目指しています。

「やりたくないこと」をリストにしよう
では、心の課題が顕在化しがちな時代に、人間らしく働くにはどうすればいいか。
僕は「自分の弱みと向き合うこと」が一つの答えになるんじゃないかと思っています。
僕は自分の会社の採用面接をする時、強みや得意なことは質問せず、「あなたのダメなところを教えてください」とお願いします。
なぜなら、強みとなるスキルや特技は、常に上位互換が存在するからです。「英語が話せます」「プログラミングができます」と言っても、より高度なスキルや技術を持つ人が現れたら、簡単に取って代わられてしまいます。
でも、弱みやダメさは代替不可能です。僕は若い起業家への投資もしていますが、応援したいと思うのは、今までの人生で生きづらさを感じていたり、劣等感や怒りを抱えている人ばかり。
そういう弱さにこそ、人間らしさがあると思うからです。
そして、弱さが生まれた経緯は人それぞれ違います。「幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」という名言があるように、つらい体験や感情はその人だけのものであり、それが替えの効かない個性になるのです。
それに自分の弱さを認識できている人は、他人に正しく頼ることができます。
「自分には弱みなんてない」と思っている人は、自分で何でもやろうとして、結局つらい思いをしてしまう。
でも「自分はこれが苦手」と分かっていれば、「じゃあ、この仕事は得意な人にお願いしよう」と素直に頼れる。しんどい思いをしながら一人で頑張る社会より、お互いに支え合う社会の方がいいですよね。
また同時に、これから働くにあたってお勧めしたいのが「絶対にやりたくないことリスト」を作ることです。
「絶対にスーツは着たくない」とか「満員電車は乗りたくない」とか、何でも良い。するとそれに該当する会社は候補から外せます。
やりたくないことを可視化すれば、逆に自分はどんな時に幸福度が高いのかも分かります。
やりたいことをベースにすると、「やりたいことのために何かを犠牲にする」という生き方になりがちです。
でも、「仕事のために何かを犠牲にする」という生き方は過去のもの。もちろん社会に出れば、つらいことや嫌なこともあります。
でもその中でできるだけ幸福度の高い働き方を選択することができれば、一人一人がもっと人間らしく働けるんじゃないか。僕はそう思います。
〈取材・文=塚田有香/撮影=赤松洋太〉
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知的好奇心旺盛で、働くことにワクワクしたい学生に向けて、これから必要になるビジネスマインドやプロフェッショナル企業で働く面白さを伝えています。
今回の2021卒向けの同誌には、箕輪厚介さんや家入一真さん、さらにオードリー春日俊彰さんなどのインタビューを掲載。
就活生だけでなく、今まさに働いているR25世代も読んで役立つ学びが詰まっています!

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