

「ビジネスで勝ちたきゃ、ポケモンマスターになれ」
「ポケGOって脳のジムみたいなもの」茂木健一郎が脳科学で語り尽くす『ポケモン GO』の魅力
新R25編集部
世界的大ヒットとなり、熱狂を巻き起こしつづけているスマートフォン用ゲーム『ポケモン GO』。
GPS機能とAR技術を活用することにより、現実世界を舞台にポケモンの世界観を楽しめ、2016年の配信開始から3年以上経過した今なお、全世界で遊ばれ続けている同ゲーム。
このたび新R25では、そんな『ポケモン GO』の魅力をさまざまな角度から再発見する特集を展開することになりました!
第一回目の企画は…
脳科学者・茂木健一郎さんによる、「ポケモン GO×脳科学」。
「ポケGOって脳科学的にものすごく興味深いんですよ」とめちゃくちゃ乗り気でご参加いただいたものの、正直、小難しくてよくわかんない話になりそう…(茂木さん、すみません)。
そんな不安もあり、重い足取りで取材場所である株式会社ポケモン本社に向かった筆者でしたが…
新R25的には、「茂木さん、もうポケGO公式アンバサダーでいいのでは?」と思っちゃうくらい面白いお話をしていただけたので、みなさんもぜひ最後までお楽しみください!
〈聞き手=サノトモキ〉
【茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)】1962年、東京都生まれ。脳科学者。脳科学を切り口にさまざまなメディアに出演している。著書多数
スティーブ・ジョブズが会社のまわりを歩き回っていた理由

サノ
さっそくですけど、ポケGOは脳科学的にどんないいことがあるんでしょうか?

茂木さん
いっぱいあるんですけど…逆に、何だと思います?
いきなりキレッキレの「カウンター」をかます茂木さん。わざマシンどこで手に入れたんだ…

サノ
なんだろう。
現実世界とゲームの世界を融合させたことで、何かいいことがある…とか?

茂木さん
おっ、目の付け所がいいですね!
ポケGOは、現実世界のマップに配置されたポケストップ(※)をめぐりながら、街中に出現するポケモンを捕まえていくわけですが…
※『ポケモン GO』では、現実世界の旧所名跡などが「ポケストップ」という施設になっており、ゲーム上で使える道具がもらえる

茂木さん
この「外の世界を歩き回る」というのが、脳科学的には非常に重要なんですね。
ん…? なんかめちゃくちゃ当たり前の話のような…

サノ
そ、それって、身体を動かすことで脳が活性化して…みたいな話ですか?

茂木さん
全然違います。
サノさん、スティーブ・ジョブズが重要な意思決定をするとき、何をしたかご存じですか?

サノ
えっ。
すみません、知りません。

茂木さん
会社のまわりを、何時間もぐるぐる歩き回っていたんです。

茂木さん
「歩く」ってつまり、空間移動をするなかでベストな決断をしつづける行為なんですよね。
信号が赤になったからこっちへ進もうとか、こっちが楽しそうだから寄り道しようとか、現在地とまわりの状況を把握し、次の行き先を決める。
これって、脳科学的に見れば「ビジネスのビジョンを見極めるとき」と同じ回路を使ってるんですよ。

サノ
つまり、歩けば歩くほど「ビジョンを決定する力」のトレーニングになるってこと…!?

茂木さん
そう。逆を言えば、歩かない人はビジョンを立てる脳が育たない。
パソコンにかじりついてるだけじゃ、一流のビジネスパーソンにはなれないんですよ。

サノ
でも「ビジョンを決定する力」って、たとえば “将棋”とかでもカバーできるんじゃないですか?
何手も先を読んだりしますし。

茂木さん
実際に自分自身の身体が空間を移動したほうが、副次的に得られるメリットが非常に多いんですよ。
外を歩くと景色が変わったり身体の筋肉を動かしたりして、座っているよりはるかに豊富な種類の回路を使うわけです。人間の脳って、回路を切り替える回数が多いほど強靭になっていくんです。

茂木さん
要は「いかにいつもと違う使い方をするか」。同じ環境だけで脳を使っていると、いつも同じ回路を使うので、それなりの能力しか引き出せなくなっちゃう。
サッカーもホームゲームとアウェイゲームを必ず同じ数やりますが、そのように違う環境でプレーすると、ホームだけでやるより、脳の働きが向上するという調査もあるんです。

サノ
へえーー!!

茂木さん
でも、最近のビジネスパーソンってみんな朝から晩までオフィスでパソコンに向かってるでしょ?
これ、脳科学的に見るとけっこうやばい状況なんだよ。脳を多面的に鍛えるチャンスを失ってるんだから。

サノ
僕も最近、朝から晩まで仕事のことにしか頭使ってないかも…

茂木さん
やばいね(笑)。昼休みとか帰り道とか、1日5分でもポケGOやったらいいじゃん。
多くのポケストップを経由できるルートを組み立てながら、ポケモンをゲットしたり、ジムで他のトレーナーと戦ったり、脳の回路を総動員できる…
もう、ポケGO自体が「脳のジム」みたいなもんなんだからさ(笑)。
ピカチュウ、茂木さんに座布団1枚もってきて!
「ポケモン GOには、次世代の働き方のヒントが詰まっている」

茂木さん
あと、ポケGOって「レイドバトル」があるじゃないですか。
※特定の場所に出現した「ボスポケモン」を、その場に集まった見ず知らずのトレーナー同士がオンラインでつながって共闘する協力プレイ

茂木さん
じつはこれ、「次世代の働き方」のヒントがめちゃくちゃ詰まってる体験なんですよね。
次世代の働き方…?

茂木さん
現代のチームのあり方って、完全にオンライン上になりつつありますよね。
情報共有ツールが発達して、オフィスで顔を合わさなくても働ける時代がすでに始まってる。

サノ
たしかに、コミュニケーションのほとんどがチャット上、という組織も多いですよね。

茂木さん
今、「オンライン上でのリーダーシップや協調性」という新しいスキルが、ビジネスの世界で求められ始めてるんですよ。
ここ最近、アメリカの最先端の企業で、「オンラインゲームの経験値が高い人材」がジョブマーケットで歓迎されるようになってきてるの、ご存じでした?
!?

サノ
オンラインゲームが得意だと就職や転職に有利ってことですか!?

茂木さん
そう。僕らは「オンライン・チームワーク」という新時代のコミュニケーションに対応できるよう、脳をアップデートしなくちゃいけないんです。

サノ
その経験値として、オンラインゲームの成績が認められつつあるんですね。
すごい時代だ…

茂木さん
東京を歩いてると、何十人も大人たちが集まって「レイドバトル」やってる景色をよく見るけど、あれはもう完全に最近流行りの「ギグエコノミー」と同じ体験だよね。
※ギグエコノミー=インターネットを通じて単発の仕事を受ける働き方。見ず知らずの人同士でチームを組むこともしばしば

サノ
でも、オンラインゲームって知らない顔も名前も知らない相手と協力するからこそ、足を引っ張っちゃわないか不安で苦手なんですよね。

茂木さん
その感覚に慣れないと、次世代のコミュニケーションに追い付けなくなるかもしれませんよ?
ポケGOのレイドバトルは、チャットみたいに他人とコミュニケーションをとるツールもないし、誰かに自分を特定されることもない。
安心してプレイなさってください。
もしかしてポケGO広報の方ですか?

茂木さん
でも日本って変に真面目だから、ゲームを「ビジネスの邪魔者」みたいに敬遠しがちなんですよね。
これって世界的に見ると、かなり特殊な文化なの。
ゲームって、脳機能を向上させるとか、ビジネスに役立つとか、ポジティブな意味で研究してる国が多いんだから。

サノ
そういえば、アメリカではゲームが全米の小学校に配布されたって聞いたけど、日本はそういう動きもないもんな…

茂木さん
ゲームだからってナメてると、きっといつか大きな差がつきますよ。
ポケGOはおじいさんでもプレイできるくらい操作が簡単だし、オンライン・チームワークを体感するにはもってこいだから、普段オンラインゲームをしない人にもぜひ挑戦してもらいたいね。
「多様性の認知」という観点からみる『ポケモン GO』

茂木さん
あと僕は、ポケGOをきっかけに「多様性」を認知できる人が増えたらいいなあと思ってるんです。
「多様性」の認知?

茂木さん
最近、ようやく「チームには多様な人がいたほうがいい」という価値観も定着しつつあるけど…
いまだに、「性別」とか「年齢」とか「肩書」みたいに、自分に理解できるジャンルにカテゴライズしようとしてくる人、けっこういない?
「君、何歳?」とか「出身大学はどこ?」とか…ひどい場合だと、「何歳の」「若い女の子」程度でしか女性を識別できないおじさんとかさ。

サノ
たしかに…そういう人、ときどきいますね。
「そういうやつって、ほんと迷惑だよな…」

茂木さん
なんでそうなっちゃうかっていうと、「多様性」に触れてこなかったからなの。
多様性を認知するために必要なのは、似たものの微妙な違いを見極める「パターン認識能力」。
僕は幼いころから昆虫採集が大好きで、日本に生息する蝶がすべて識別できる程度には「パターン認識能力」を養うことができたんですけど…

サノ
(なんか今サラっとすごいこと言ったな)

茂木さん
…でもね?

茂木さん
そこでポケモンのことを考えてほしいんですよ!
何百種類と見た目の違うポケモンがいて、それぞれ能力や技、得意・不得意も違って、どこに出現するか、どれくらいの頻度で出現するかまで、事細かに違いが設計されている。
これがどういうことかわかります!?
熱弁が止まらない

茂木さん
ポケモンは我々の世界に、「第2の自然」を作ったんです。
昆虫採集のような「パターン認識能力」を必要とし、「多様性」を体感できる “生態系”を、仮想空間に生み出した。

サノ
「第2の自然」…! めちゃくちゃかっこいい!!

茂木さん
最近の若い世代の人たちって、多様性認知のレベルが上がってるんですよ。
「この人はここが得意で、ここが苦手なんだな」と、相手の人間性や個性を、フラットかつ繊細に識別できる。
今20~30代で「イケてるビジネスパーソン」とされている人たちも、みんな「フラット」だと思うんです。幻冬舎の箕輪君とか、SHOWROOMの前田裕二君…あとキングコング西野君とかさ。

サノ
たしかに、相手によって態度を変えないイメージはあるかもしれません。

茂木さん
上の世代に比べて「多様性を受け入れてチームを作る」ことに圧倒的に慣れてる。
たとえば今日はじめてお会いしましたけど、サノさんはおそらくちょっと変わった人なんですよ。
初対面の相手を前にピカチュウ抱きながら取材できる人は、なかなかいませんから。
必死に抵抗しましたが、「変人認定」は取り消せませんでした

茂木さん
でも脳科学的に見ると、「みんなと同じことができない人」って、何かしらの特殊能力を持ってる可能性が高いんです。

サノ
特殊能力?

茂木さん
たとえばトム・クルーズは、識字障害であることを公表しているけど、だからこそ言葉や表情で表現する能力が抜群に長けてて、俳優として大成功したと思うんですよね。
多くの人が使ってる回路を使ってこなかった分、誰も使っていないような回路を長年使って発達させつづけ、唯一無二の才能を手に入れたわけです。

茂木さん
多様性認知のレベルが低い社会は、そういう「才能の芽」となるサインを認識できず、摘んでしまう。
だからこそ、ポケモンのような「第2の自然」は、「多様性の認知」を向上させ現代日本にさまざまな才能の種を蒔いた、影の立役者だと僕は考えています。

サノ
そんなすごい話につながるのか…!

茂木さん
そして、ポケGOが実空間と「第2の自然」を結びつけたことで、「多様性の認知」の機会が、よりリアルな体験として提供されるようになった。こうしてまた次の世代に、「多様性」のバトンが渡されていくわけ。
ほらね!? ポケGO、めちゃくちゃ面白いでしょ!?
茂木さんめちゃくちゃ楽しそう。でも、たしかにホントに面白いお話です
茂木さんがポケモン GOに期待する「フリン・エフェクト」…ってなに!?

茂木さん
よし、最後にダメ押しさせてくれ。
「フリン・エフェクト」ってあるじゃないですか…あっご存じでない?
知ってるはずがない

茂木さん
これはニュージーランドの心理学者・フリンによる研究結果なんですが…
「人類の平均IQは、年々向上しつづけている」んですよ。

サノ
!? そうなんですか!?

茂木さん
そしてその理由は、「我々が接してる情報が、どんどん高度化しているから」。
簡単にいえば、最先端の技術に触れてる人は、それだけ脳の働きも高度化していく、という話です。

サノ
たしかに、僕たちひと昔前に比べたらものすごい量の情報を処理してるし、処理速度もかなり上がってる気がします。

茂木さん
でしょ?
で、「フリン・エフェクト」に則って考えると、「ポケGOのユーザーは、時代の変化にともなうIQ向上の、最前線を走りつづけられる可能性がある」んですよ。

サノ
めちゃくちゃすごそうな話ですけど…どういうことですか?

茂木さん
ポケモンって、今年で23年目を迎える息の長いコンテンツ。ポケGOも、間違いなくこの先何年も続いていくと思うんですよ。
その時代ごとの、最先端の技術を吸収しながらね。

茂木さん
つまり、ポケGOのようなゲームをやることで、最先端の情報技術を常に体験し、IQを向上させられるだろう…と、個人的にものすごく期待してるわけです(笑)。

サノ
なんかもう楽しみ方の次元が違いすぎますけど…
でも、ポケGOの魅力を、脳科学的な観点で解説できちゃう茂木さん、すごすぎました…!
今日はありがとうございました!

茂木さん
いや、俺じゃなくてポケGOがすごすぎるんだよ。
こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました!
最後にピカチュウを茂木さんにプレゼント。こちらまで幸せになる笑顔でした
ついついオフィスに閉じこもってしまいがちなのは、絶対に筆者だけじゃないはず。
重要なのは外出時間ではなくあくまでも「回路を切り替えること」らしいので、ほんの気分転換にでも外にポケGOしに行くのはホントにありだなと思いました。
(なお、雨の日に外を歩くのは「いつもと違う環境」でさらにプラスで脳にいいらしいので、雨の日も「雨の日にしか姿を見せないポケモン」を捕まえに行こうと思います。)
(なおなお、回路を切り替えることは認知症予防にも効くらしく、母国語と外国語を日常的に切り替えるバイリンガルの方々は認知症になりにくいという研究結果も出ていると茂木大先生が仰っていました)
なおなおなお…って、このままだと筆者の「わるあがき」が永遠に終わらなさそうなので、断腸の思いで終わりにします。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=土田凌(@Ryotsuchida)〉
©2019 Niantic, Inc. ©2019 Pokémon. ©1995-2019 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

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