ビジネスパーソンインタビュー
岡本太郎著『自分の中に毒を持て』より
危険だと思う道は、自分の行きたい道なのだ。「ダメになってやろう」と決意して、とことん闘え
新R25編集部
世の中に流通しているビジネス本は数知れず。
日々たくさんの本を読んでなんとなく学びになっている気もするけど、せっかくだから確実に僕らの資産になる「珠玉の1冊」が知りたい。
そこで新R25では、ビジネスの最前線で活躍する先輩たちに「20代がいいキャリアを積むために読むべき本」をピックアップしてもらいました。
それがこの連載「20代の課題図書」。
第4回の推薦者は、日本最大級のプログラミングスクール「TECH::EXPERT」「TECH::CAMP」を運営する株式会社divの代表・真子就有さん。
選んだのは、真子さんの人生を変えたという、岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』です。
大阪万博の「太陽の塔」などの作品や「芸術は爆発だ」という名言で知られる芸術家・岡本太郎さん。
戦後間もないころ、「絵画の石器時代は終わった。新しい芸術は岡本太郎から始まる」という宣言し、批判をもろともせずに自身の芸術を突き詰めたその姿勢に、多くの方が影響を受けました。
真子さんのYouTubeチャンネル「マコなり社長」でも紹介された同書より、「人生」「対人関係」「成功」についての3記事を抜粋してお届けします。
青春に年齢は関係ない
夢を見ることは青春の特権だ。
これは何も暦の上の年齢とは関係ない。十代でも、どうしようもない年寄りもいるし、七十、八十になってもハツラツとして夢を見つづけている若者もいる。
だから年齢の問題ではないが、青年の心には夢が燃えている。だが、そういった夢を抑圧し閉ざしてしまう社会の壁がこの現代という時代にはあまりにも多すぎる。
ぼくは口が裂けてもアキラメロなどとは言わない。
それどころか、青年は己の夢にすべてのエネルギーを賭けるべきなのだ。勇気を持って飛び込んだらいい。
仮に親の顔色をうかがって就職し、安定を選ぶとしようか。が、それが青年自身の人生なんだろうか。“俺は生きた!”と言える人生になるだろうか。
そうじゃないだろう。親の人生をなぞるだけになってしまう。そんな人生に責任を持てるだろうか。若者自身のほんとうの生きた人生には決してならない。
自分自身の生きるスジは誰にも渡してはならないんだ。この気持ちを貫くべきだと思う。
どこにも属していないで、自由に自分の道を選択できる若者だからこそ決意すべきなんだ。新しく出発するチャンスなのだから。
夢に賭けても成功しないかもしれない。そして、そのとき、ああ、あのとき両親の言うことを聞いておけばよかったと悔やむこともあるかもしれない。
でも、失敗したっていいじゃないか。不成功を恐れてはいけない。人間の大部分の人々が成功しないのがふつうなんだ。パーセンテージの問題でいえば、その99%以上が成功していないだろう。
しかし、挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とではまったく天地のへだたりがある。
挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などはない。
ただただ成り行きにまかせてむなしい生涯を送るにちがいないだろう。
それに、人間にとって成功とはいったい何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。
夢がたとえ成就しなかったとしても、精いっぱい挑戦した、それで爽やかだ。
戦後、ぼくが猛烈に闘いはじめた頃、親しい友人や、好意的なジャーナリストは真剣に忠告してくれた。
「あなたのようなことを言ったりやったりしたら、この社会から消されてしまいますよ。西洋なら別だが、日本では通らない」
随分何度もそう言っていさめられた。ぼくは答えた。
「消されるなら、それで結構。とことんまで闘うよ」
ぼくはあの若い日の決意を絶対に押し通すのだ。とことんまで危険な道を選び、死に直面して生きるーー確かにぼくは異端者扱いされ、村八分を食った。
しかし、それは逆に生き甲斐だ。その悲劇に血を流しながら、にっこりと笑って筋を貫いた。
だから外から見れば、あいつはいい気なやつだと思われたりする。だが見えない裏での絶望的な闘いはきびしい。言いようがない。しかし貫くのだ。
もちろん怖い。だが、そのときに決意するのだ。よし、駄目になってやろう。そうすると、もりもりっと力がわいてくる。
食えなけりゃ食えなくても、と覚悟すればいいんだ。それが第一歩だ。その方が面白い。
いい方を選ぼうとしたら、安全な方に行ってしまう
みんな、やってみもしないで、最初から引っ込んでしまう。
それでいてオレは食うためにこんなことをしているが、ほんとうはもっと別の生き方があったはずだ、と悔いている。いつまでもそういう迷いを心の底に圧し殺してる人がほとんどだ。
たとえ食えなくても、ほんとうの生き方の方向に進みたい、そう決意したいという情熱が自分をつき動かしてくる。
確かに危険を感じる。そっちへ行ったら破滅だぞ、やめろ、と一生懸命、自分の情熱に自分で歯止めをかけてしまう。
しかし、よく考えてみてほしい。あれかこれかという場合に、なぜ迷うのか。
こうやったら食えないかもしれない、もう一方の道は誰でもが選ぶ、ちゃんと食えることが保証された安全な道だ。それなら迷うことはないはずだ。もし食うことだけを考えるなら。
そうじゃないから迷うんだ。危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ。ほんとうはそっちに進みたいんだ。
だから、そっちに進むべきだ。ぼくはいつでも、あれかこれかという場合、これは自分にとってマイナスだな、危険だなと思う方を選ぶことにしている。
誰だって人間は弱いし、自分が大事だから、逃げたがる。頭で考えて、いい方を選ぼうなんて思ってたら、何とかかんとか理屈をつけて安全な方に行ってしまうものなのだ。
かまわないから、こっちに行ったら駄目だ、と思う方に賭ける。
たとえば、いま勤めている会社をやめたい、何か他にやることがあるんじゃないか、と考えている人は実に多い。だがそれは未知の道に踏み込むことだし、危険だ、と躊躇して迷いながら日を過ごしている。
現在のサラリーマンのほとんどはそういう悩みを、多かれ少なかれ持っていると思う。
内心では、もっと別な会社や、別な道に進みたい希望を持っているんだが、踏みきれない。身の安全、将来を考えて仕方なく現在の状況に順応している人が驚くほど多いのだ。
いつも言っていることだが、ただ、自分で悩んでいたって駄目だ。くよくよしたってそれはすこしも発展しない悩みで、いつも堂々めぐりに終わってしまう。だから決断を下すんだ。
会社をやめて別のことをしたいのなら、あとはどうなるか、なんてことを考えないで、とにかく、会社をやめるという自分の意志を貫くことだ。
結果がまずくいこうがいくまいがかまわない。むしろ、まずくいった方が面白いんだと考えて、自分の運命を賭けていけば、いのちがパッとひらくじゃないか。
何かを貫こうとしたら、体当たりする気持ちで、ぶつからなければ駄目だ。
体当たりする前から、きっとうまくいかないんじゃないかなんて、自分で決めて諦めてしまう。愚かなことだ。
ほんとうに生きるということは、自分で自分を崖から突き落とし、自分自身と闘って、運命をきりひらいていくことなんだ。
それなのに、ぶつかる前から決めこんでしまうのは、もうその段階で、自分の存在を失っている証拠じゃないか。
人生を真に貫こうとすれば、必ず、条件に挑まなければならない。いのちを賭けて運命と対決するのだ。
そのとき、切実にぶつかるのは己自身だ。己が最大の味方であり、また敵なのである。
今日の社会では、進歩だとか福祉だとかいって、誰もがその状況に甘えてしまっている。システムの中で安全に生活することばかり考え、危険に体当たりして生きがいを貫こうとすることは稀である。自分を大事にしようとするから、逆に生きがいを失ってしまうのだ。
己を殺す決意と情熱を持って危険に対面し、生き抜かなければならない。今日の、すべてが虚無化したこの時点でこそ、かつての時代よりも一段と強烈に挑むべきだ。
時代を超えて今も突き付けてくる、岡本太郎の言葉
岡本さんが生前に記した『自分の中に毒を持て』は、今もなお色褪せずに、僕らの心を揺さぶってきます。
人と同じ道を歩まない不屈の姿勢、自分のなかにもつ反骨精神。
風化しない岡本太郎さんの哲学をぜひ一度手に取って確かめてみてください。
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