ビジネスパーソンインタビュー
北野唯我Voicyより
「空気を読め」と言う人に振り回されなくていい。キャリアのプロが考える“マイペース”の利点
新R25編集部
組織のなかで「あいつ、マイペースだよね」「空気読めないよね」という話になることはありませんか?
職場やチームでの人間関係はもちろん、友人づきあいにおいても、大人になればなるほど「空気を読むこと」「和を乱さないこと」が重視される傾向にあります。
もしかしたら自分も影で「空気読めないよね」と言われていたら…と思うと、ちょっと傷つきますよね。
でも「空気を読め」と言い合う世の中って、本当に幸せなのでしょうか? そもそも「マイペース」って、そんなに悪いこと?
『転職の思考法』『天才を殺す凡人』の著者として知られ、IT企業の役員も務める北野唯我さんのVoicyでは、北野さんと謎の歌人Tさんのふたりが、そんな疑問について率直に議論を繰り広げています。
「マイペースな自分を変えたい」と悩む人も、「チームにマイペースな人がいて困る」と内心イラついている人も。
“マイペースという生き方”について、ふたりと一緒に考えてみませんか?
【北野唯我(きたの・ゆいが)】兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業後、博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後ボストンコンサルティンググループを経て、2016年にワンキャリアへ参画、執行役員に就任。2019年1月から子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問も兼務。30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が15万部、続く著書『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩むすべての人へ』(日本経済新聞出版社)は発売3ヶ月で9万に。2019年に2作の新作を刊行予定。
「マイペース」な人は「空気が読めない」?
北野さん
「マイペース」という言葉って、なんとなく悪い印象で使われることが多いじゃないですか。
Tさん
「あいつマイペースで困るよね」とか「お前、ちょっとは空気読めよ」とかね。
北野さん
そうそう。以前、とあるイベントに登壇したんだけど、講演が終わったあとに「北野さんって空気読めないタイプでしょ」って言われて。
Tさん
おお…
北野さん
「ノってくると、自分のペースで喋っちゃう人でしょ」って。
間違ってないんだけど、それって「空気読めない」ってことなのかな?って思ったんですよね。
「空気を読む」って、そもそもなんなんだろう?
Tさん
僕はずっと「空気読めよ」って言ってくる人に問題があると思っていて。
北野さん
ほほう。どうして?
Tさん
たとえば、あるチームが課題に向き合っていて、その解決のために奮闘している人に対して「空気を読め」って言うのって実際は何もしてない人なんですよ。
ノーアクションで「空気を読め」って指摘するだけ。だから、その人のおかげでチームが変わったり、よくなったりはしていない。
北野さん
なるほどね。
Tさん
本当に「空気を読む」っていうのは、場の空気を察知するだけじゃなくて、「この場でどういうアクションをするのがベストなのか?」という答えを示すまでがセットだと思うんですよね。
だから自分なりに考えて動いている人に対して、何もしていない人が「空気読めよ」って言うのは“後出しジャンケン”をしてるようなものなんです。
「自分は空気を読める人だ」ってまわりに主張したいだけ。
それって、人の個性を潰してしまっているのと同じだと思うんです。
北野さん
なるほど。Tさんからしたら、「マイペース=空気を読めない」っていう認識自体がちょっとずれてると感じるのかもしれないですね。
全員が同じ波長だと、イノベーションは生まれない
Tさん
「空気読めよ」を繰り返すと、結局ただの“我慢大会”になっちゃうと思うんですよね。
北野さん
というと?
Tさん
「こっちは自分のペースを崩してまでがんばってるんだから、お前だけ自分のペースでやるなよ、我慢しろよ」っていう。
北野さん
ああ…それだとお互いが息苦しくなっちゃうかも。
Tさん
そう。でも、そこからハーモニーは生まれない。音楽でいうと「軍歌」みたいになっちゃうと思うんです。
北野さん
みんなで同じものを歌う感じね。
Tさん
そんな環境で「ハーモニー」は生まれないですよね。波長が違うものが奇跡的に合わさることで、美しいハーモニーができ上がるはずだから。
よく言われる「イノベーション不足」も、全員が無理やり同じ波長にチューニングされてるのが原因だと思いますよ。
北野さん
たしかにね。やっぱり「マイペース」を悪いものとして切り捨てるのはもったいない。
“我慢大会”が続くと、どんどんいいものが生まれにくくなりますね。
「マイペース」より「マルチペース」がちょうどいい
北野さん
多分、僕自身は、まわりの足並みを考えるより、最短を目指してしまう気質があるんですよね。
だから「こっちの道が最短ルートなのに、なんでみんなは大通りに行くんだろう?」って考えちゃう(笑)。
Tさん
それこそ「空気読めよ」って言われるタイプだ(笑)。でも、それで結果を出せたら十分かっこいいですけどね。
北野さん
ただ、チームやマネジメントのことを考えると、やっぱり足並みを揃えないと意味がないし、大きな成果も出せない。
だから、みんなが来るまで待っていたり、みんなで動きやすい大通りを選んだりする必要があるよね。
Tさん
そうですね。社会で生きる以上、そういう場面は避けられない。
北野さん
別にそれが辛いとは思っていないつもりだけど、僕みたいなタイプにとっては、「足並みを揃えよう」ってがんばってる時間が本質的にはストレスなのかもしれない。
Tさん
どこかで「マイペース」を守る時間が必要だと。
北野さん
そう。自分のペースを保てる時間をとって、ストレスを発散している。
僕の場合は、「本を書くこと」。物語をつくるのは、自分と向き合って一番心地よく走れる作業だから、自分のペースを維持できる。
そうすることで、またまわりに合わせたギアチェンジができて、ストレスを感じずにみんなと同じペースで走ることができる。
僕は本を書く時間にすごく救われてるなって思います。
Tさん
チームにとっての最善の行動を考えながら、自分のペースを大切にする時間もとる。みんなそうやってバランスを取っているのかもしれないですね。
北野さん
だから「マイペース」じゃなくて「マルチペース」な人が最強なんじゃないか?って話だよね。
ひとりだと「5速」が楽だけど、仕事ではもっとゆっくり「1速」にギアを入れて走ることもできる、みたいな。
いたずらに「マイペース」な自分を否定しないで「マルチべース」だと捉えてみたら、もっと生きやすくなるんじゃないかな。
キャリアに“ゆっくり効く”ラジオ。「そもそも論」について考えてみよう
「そもそも、これってどうなの?」と感じたキャリア論や働き方について、北野さんとTさんがゆるく語る『そもそもラジオ with T』。
働くなかでふと感じる「つい忘れがちだけど、本質的なキャリアの話」について改めて考え、突破口を開くきっかけを与えてくれるエピソードが満載です。
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〈撮影=土田凌(@Ryotsuchida)〉
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