ビジネスパーソンインタビュー

部下のモチベーションが上がらないときに考えるべきは、マネジメント術ではありません

小林慎和著『リーダーになる前に知っておきたかったこと』より

部下のモチベーションが上がらないときに考えるべきは、マネジメント術ではありません

新R25編集部

2019/08/20

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いちプレイヤーとして成果を追い求めるフェーズが終わり、プロジェクトのリーダーを任されたり、部下を抱えたりしているR25世代のみなさんも少なくないと思います。

はたまた、スタートアップに飛び込んだり、自分自身で新しいプロジェクトを始めている方もいるかもしれません。

リーダーになると、プレイヤーだった頃に比べ、格段に多くの問題にぶつかります。

タスクを任せている部下が思うように動いてくれない

プロジェクトの進行が思ったより遅れている

そんな悩みの解決策を、先回りして教えてくれる本が『リーダーになる前に知っておきたかったこと』。

実業家・小林慎和さんが、17年のリーダー経験から得た「もっとこうしておけばよかった」気づきを、30編に渡り記した書籍です。

そのなかから、部下のモチベーションを高めるリーダーシップについての記事を抜粋してお届けします。

部下のモチベーションが上がらない原因は自分にある

企業に勤めているビジネスパーソンにとって、あるプロジェクトを任され、何人かの部下を持ったとき、大きな興奮を覚えるものです。

しかしながら、プロジェクトを進めていると、必ずと言っていいほどこういう場面に出くわします。

タスクを任せている部下が思うように動いてくれない

部下が自主性を持ってタスクに取り組んでくれない

そんなとき、リーダーの頭のなかに浮かぶ問いは、「どのように部下をマネジメントしたらいいか?」といったことでしょう。

しかし、部下のモチベーションが上がらない状態にあるときに考えるべきは、部下のマネジメント術ではなく、リーダーである自分のあり方です

現場のスタッフにモチベーションがない、部下が自主的に動いてくれない…。

そんな場面に出くわしたとき、リーダーはとかくタスクの内容をさらに詳細に伝えようとしがちです。

あるいは、スケジュール管理をより強固にしようとしがちです。

でも、それでは何も変わりません。部下も変わりません。

部下はタスクの詳細が知りたいのでも、進め方の具体的で細かい指示を求めているわけでもないのです。

そもそも、人はどういうときにモチベーションが湧くのでしょう。

それは「重要なものに取り組むとき」、そして「必要とされているとき」。

その2つ以外にありません。

部下に任せているタスクがいかに重要なものか、プロジェクト全体の中の何に影響し、それがプロジェクトの命運をどのように握っているのかを伝えましょう。

そして、その命運の鍵を握るのが自分(部下)であり、タスクが完了しなければ困る(つまり、必要とされている)ということを理解してもらうのが重要なのです。

私は野村総合研究所で経営コンサルタントとして9年ほど働いていました。

その間に携わったプロジェクトは100本くらいあったかと思います。

リーダーとしてプロジェクトをまとめる役割になったとき、最初のうちはメンバーを動かすことにいつも苦労していました。

そうしたとき、最後はリーダーである自分が尻拭いをして、どうにか報告書にまとめていかなければなりません。

プロジェクトチーム全体の力を十二分に活用できなかったとき、困るのは自分なのです。

メンバーのモチベーションを高めるリーダーシップとは、いかに重要か、いかに必要かをメンバーに伝え続けることである…。

そう気がついて以来、私はひとつ必ずしていることがあります。

たとえば、クライアント先へのプレゼンが終わった帰り道、オフィスに戻るタクシーのなかで、チームメンバーにこう語りかけるのです。

「今日のプレゼン資料の、あのページには助けてもらった」

私は、チームメンバーが手がけた資料を見るとき、最も注力したであろうポイントをいつも探していました。

クライアントにとって重要かどうかはどうでもいい。

そのメンバーが一番力を入れたところはどこなのか。

メンバーがプレゼンしているときは、いつもそのことを考えながら聞くようにしていました。

そして、その注力した点について、帰り際に上のように語りかけるのです。

リーダーが語りかける「助かった」という言葉には、2つの意味が込められています。

ひとつは、そのタスクが重要であるから、やってもらって助かったという意味。

そしてもうひとつは、あなたを必要としているから、いてくれて助かったという意味です。

お互いがお互いを必要としている。そういう共通認識を持ったチームは、必ず伸びていくでしょう。

プロジェクトの立ち上げに最も必要なのは、課題(ビジョン)の共有と徹底

私はこれまで国内外で7社創業し、いわゆる0から1のフェーズを経験しています。

創業時というのは特殊な環境です。新たな門出ということで、ほとんどの場合、チームは興奮状態にあります。

やってやる!成功してやる!社会を変革してやる!そんな闘志でみなぎっています。

一方、事業を進めることは非常に困難です。なぜなら、やるべき仕事やタスクが明確に定まっていないからです。

これを進めてよいものか。ここに力点を入れてもよいのか。目の前に広がるすべてのタスクに不安を覚えるのがこのフェーズです。

そんなときのリーダー、すなわちスタートアップの社長の悩みは、どうやったらもっと事業が進むのか、という一点に尽きます。

タスクをさらに細分化するべきか、仮説をもっと考え直すべきか、チームメンバー全員での合宿でサービス機能の詳細化を図るべきか。

そうした視点は、どれも間違ってはいません。プロジェクトを進める過程で必ず必要なものです。

しかし、0から1を立ち上げるフェーズでリーダーが最も注力するべきは、意外なことに、「事業をいかに進捗させるか」ではないのです。

リーダーがやらなければならないこと。それは、立ち上げようとするサービスの課題設定の深堀りです。

違う言い方をすれば、「ビジョンの設計」ともいえるでしょう。

なぜ、そのサービスが必要なのか。なぜ、このチームがそれに取り組むべきなのか。なぜ、この会社が存在するのか。なぜ、社会がそれを必要とするのか。

0から1のサービスを立ち上げるとき、創業者や立ち上げメンバーの胸の中には、否応なく、どうしようもなく、そのサービスを世の中に届けることで解決したい課題があります。

その課題とは何か。なぜその課題を解くことが重要なのか。

0から1のフェーズにおけるリーダーに求められることは、事業の推進やメンバーのタスク管理などよりも(それらも大変重要な仕事ですが)、チームが立ち向かうべき社会課題をより深く理解し、それを繰り返しメンバーに伝え、議論すること。

それこそが何よりも重要です。

スタートアップ時のリーダーに求められていること

2012年の暮れ、私はシンガポールで起業しました。初めての起業でした。それが海外でした。

その会社が最初に取り組んだものは、the CHAOS ASIAというイノベーションピッチイベントでした。

それはITに限らず、教育、NGO、映画、飲食、建築など8分野のあらゆる国籍の面白い人材を集めて、3分のピッチイベントを催すというものでした。2日間で登壇者は88人と設定しました。それが初めて取り組もうとした事業でした。

イベントにあたって、私はタスクを分解し、役割を分担しました

まず、分野別の担当者を決める。ターゲットとする国を決める。

各国、各分野でピッチに適した人材の情報の調査を始める。

めぼしい候補が見つかったら、その人にコンタクトを取り、ステータス管理をしていく…。すべて必要なタスクです。

私は役割分担を明確にし、進めるための方策を練り上げました。

しかし、それだけでは進んでいかなかった

私の「なぜ」、つまり課題設定がメンバーたちに伝わりきれていなかったのです。

なぜ、そんなピッチイベントを作りたかったのか。

私はアジアにイノベーションの聖地を創りたかったのです。

アメリカのテキサス州オースティンにおいて毎年3月にSXSWというイベントが開催されています。映画と音楽、そしてITを融合させたお祭り騒ぎのようなイベントです。

そのイベントで2人のイノベーターが生まれました。

1人は、2002年3月にこのイベントに登場した、当時無名のノラ・ジョーンズでした。

心を揺さぶる、あの少しハスキーな歌声で彼女は歌いはじめ、人々は魅了されました。

SXSWというお祭り騒ぎの中、この歌声は凄いということで、Myspace(当時のソーシャルネットワークサービス)などを通じ世界に一気に広まりました。

もうひとつは2007年のツイッターです。

ジャック・ドーシー(ツイッター社の創業者)はオーディエンスに語りかけました。

「俺はちょっとつぶやくサービスを作ってみたんだ」。

その後、お祭り状態の音楽ステージにおいて、ちょっとツイートしてみようぜ、というムーブメントが広がっていきました。

音楽とITが融合したイベント。

それがツイッターとノラ・ジョーンズがその後世界に広がるきっかけのひとつだったと言われています。

まったく異なる分野の人間が交われば、そこにはイノベーションが生まれるキッカケが生じます。

だから、8分野、国籍も問わず、登壇者を集めるのです。

88人の登壇者の持ち時間はわずか3分。主催者側から紹介もしません。その3分の中に、登壇者は自分の人生の生き様をぶつけるのです。

アジアにイノベーションの聖地を。人生で出会ったことがなかった分野の魂のピッチが聞ける。

それがthe CHAOS ASIAです。

歌う者、ITアプリを披露する者、NGOとしての社会課題を訴える者…。その予期せぬ融合がイノベーションを産む。

そうした舞台をアジアで作りたい。

それがthe CHAOS ASIAを私が進めたかった理由でした。

こうした私の課題意識を会う人会う人にぶつけていきました。チームメンバーにも何度もぶつけました。シンガポール政府にもプレゼンにいきました。

幾度となくその課題を伝えることで、ようやくチームの中にそれが浸透し始めました。そこからプロジェクトは大きく動きだしたのです。

現在は、スタートアップで働く人や、副業を始める人、フリーランサーの人、または、R25世代のような方がこれから新しいことを始めようとする人、そんな能動的に動く人のためのSNS、bajjiを展開しています。

2019年5月に5人で始めたこのスタートアップは、3ヶ月で10人に膨れ上がりました。

これまでとはまったく違うタイプのSNSです。

私はそれを、INS(Innovators Network Service)と呼んでます。人と人との間にある信頼を可視化して、社会変革を加速してやろう、これまでにない価値観、カルチャーを提供しようという野心的なサービスです。

その事業推進の中で、私が日々行なっていることは、来る日も来る日も、課題、ビジョンの深掘りとメンバーへの共有です。

毎週でも、毎日でも、同じ話を繰り返し語りかけます。そうすることが、一番の近道だと思っているから。

優れたリーダーになるための心得を学ぼう

小林さんが、リーダーとして苦しみ、大失敗しながら得た学びが集約された『リーダーになる前に知っておきたかったこと』。

リーダーになる前に、これを知っておけば、もっとプロジェクトをうまく推進できたのに。もっとプロジェクトをスピーディに完了できたのに。

そんな「早く知っておきたかった」リーダーの心得がまとまった一冊です。

リーダーとしての振る舞いに悩む方、部下や後輩との関わりに困っている方は、ぜひ手に取ってみてください!

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