ビジネスパーソンインタビュー
「実は、“世界初”製品を100以上も開発してます」
「実は、QRコードを開発したのもウチなんです」PRが苦手な大企業・デンソーのスゴさとは?
新R25編集部
「デンソー」という会社をご存知ですか?
トヨタ自動車の”電装”部門が前身で、現在、自動車部品企業として世界で第2位という言わずと知れた大企業ですが…何をやっている会社なのかイマイチわからないという人も多いのではないでしょうか。
HPをみてみても…
やばい。やっぱり全然わからない。
そんなデンソーさんから「社名は知られているけど、何をやっている会社か伝わっていないんです…」と悩みを打ち明けられた新R25編集部は、「クルマに乗らない編集部員(女)でもわかるように説明してください!」というメッセージを送付のうえ、愛知県刈谷市にある本社までお伺いすることに。
ネタバレしますが、デンソーがあのQRコードを開発した会社だということを、知っていましたか?
本日お話いただくみなさん! (左より)広報・渉外部 武政担当課長、塩澤担当課長、神戸部長、森担当係長、松原担当係長
武政さん
僕たちから最初に聞きたいんですけど、宮内さんは「自動車部品」と聞くとどんなイメージですか?
宮内
そうですね…ネジとか…
「え、ネジ!?」(一同爆笑)
武政さん
やっぱり、先進的なイメージは持っていないですよね(笑)。
森さん
自動車部品と聞くと金物のイメージがあるかもしれませんが、実はデンソーがやっていることはIT企業に近いんです。
宮内
…どういうことですか!?
デンソー=IT企業的!?
武政さん
クルマ1台のなかには、コンピューターに相当するものが何百と入ってるんです。
クルマって、テクノロジーの塊なんですよ。
宮内
ごめんなさい…ピンときてないです…
武政さん
クルマのなかにあるエアコン、エンジン、カーナビなどのそれぞれにコンピューターが入ってます。
スマートフォンがいっぱい入ってるみたいな感覚ですね。
宮内
なるほど。すこしわかってきました。
神戸さん
デンソーはもともとトヨタの電装部品をつくっていた部門が独立してはじまった会社ですが、今では売り上げの半分以上がトヨタ以外の会社との取引になっています。
多分、みなさんが知っているクルマのメーカーで取引していないところはないぐらい、世界中のクルマにデンソーの製品が載っているんですよ。
武政さん
世界中のクルマに使われているので、どんな環境下でも機能するものでないといけないんです。
わかりやすい例でいうと、車内のエアコン。室内のエアコンならその環境に対応できればいいんですけど、クルマの場合は雨や風など過酷な状況下でも耐えられる性能が求められます。
神戸さん
自動運転になると、もっとすごいことになります。
どんな雨風の中でも、真夜中でも、交通ルール・信号・様式が違う国でも、クルマや人を見分けながらコンピューターが安全に運転してくれることが必要になります。
宮内
たしかにすごい…
神戸さん
クルマそのものが、コンピューターの塊だと言われていますが、クルマの部品もまたコンピューターそのものなんです。
今、クルマを開発しようと思うと、ハードの開発よりも、ソフトの開発をする時間が多くかかるようになっているんですよ。
宮内
だから先ほど、「IT企業に近い」とおっしゃっていたんですね。
松原さん
デンソーは、「ハードとソフトの両面から、クルマに関わるさまざまなテクノロジーを開発している会社」だと思ってもらえればわかりやすいかもしれません。
デンソーの技術は自動車以外の分野にも転用されている
神戸さん
またデンソーでは、クルマの部品で培ってきた技術を活かして、社会課題を解決するためのさまざまな事業を立ち上げています。
最近だと、農業への転用に力を入れていますね。
宮内
農業ですか!?
塩澤さん
ハウス農家さんにとって生命線って、ハウス内の環境をいかに最適に制御できるかなんです。
そこに、車内の空調をコントロールし、最適化するためのデンソーのエアコンやセンサーの技術を使えないかなと。
塩澤さん
ハウスのなかの温度や湿度、日照時間をどうコントロールするのが効率がよいのかも、デンソーの技術で計算できます。
実際にハウス栽培用に環境制御装置の開発を進め、農業法人さん協力のもと設置したのですが、収穫高は1.5倍に、糖度もかなり高いトマトが収穫できたという結果が出ています。
武政さん
加えて、今後はAIを活用して色や状態を見極めてベストなタイミングで作物を収獲できるようにしていきたいと考えています。
神戸さん
あとは、自動運転で培った技術も応用できますね。
どんどん出てきます
神戸さん
自動運転には、暗闇でも人を正確に認識するためのセンシングという技術が必要です。
これを農業に活かせば、夜の作物の見極めはセンシングに、収穫はデンソー内で開発している部品の組み立てロボットに任せて、一気に生産性をあげることが可能になります。
宮内
お〜! そうやってデンソーの技術が活かせるんですね!
“世界初”製品は100個以上! 実はQRコードも開発していた
神戸さん
実は、デンソーはこれまで“世界初”がつく製品を100以上も開発してきたんです。
また、戦後間もない頃にラジオや洗濯機、1990年代には携帯電話や浄水器を作ったこともあるんです。洗濯機や携帯電話は大ヒットしたんですよ。
こちらがデンソーの洗濯機。ちなみに、浄水器の名前は「Ms(ミズ)純子」だそうです
塩澤さん
今や世界中で使われているQRコードも、実はデンソーが開発したものなんですよ。
宮内
えっ、それは知らなかったです!
塩澤さん
もともと製作所で大量の部品を管理するために開発したもので、QRコードそのものは開発当初から無償で提供したんです。
2000年にISO規格に採用され、その後2002年には馬券、2004年には車検証にも使われ始めたし、スマートフォンのカメラでも読み取りができるようになって、世界中に普及したんですけど…
神戸さん
何せ「無償提供」だから、QRコードからは利用料として1円も入ってこないんだよね(笑)。我々は、良くも悪くも上手な儲け方を考えるのも、自分たちをアピールするのも苦手なんです。
でも一方で、それこそが社員がデンソーを好きな理由でもあると思うんですよ。
宮内
…どういうことですか?
神戸さん
できないことをできると誇張しない。
デンソーは年間5,000億円もの資金を研究開発費に充てているのですが、これは日本の会社で第4位の水準なんです。
常に自らの技術力に磨きをかけ、モノづくりの手を止めないことが、いつか社会のためになると信じて、一人ひとりが真剣に、愚直に仕事に向き合ってるんですよね。
松原さん
社是に「時流に先んず」という言葉があるのですが、これはまさにデンソーの姿勢を表していていると思います。次の社会を捉え、課題に対して新しい発明をするカルチャーがあるんですよね。
画期的な発明だけが「技術力」ではない
武政さん
僕、最後にひとつ絶対にアピールしたいことがあるんですけどいいですか?
並々ならぬ気迫…ぜひおねがいします!
武政さん
デンソーでは、製造部門でモノづくりをしている人たちのことを、リスペクトを込めて「作業員」ではなく「技能員」と呼んでるんです。
製造現場って、なんとなく「言われたものをつくる」仕事のイメージがありませんか?
宮内
正直、そうですね…
武政さん
でも、デンソーの技能員は違うんです。
マニュアル通りではなく、「どう改善すれば質を落とさず1円でも安く製造できるか」という発想でモノづくりをしているので、現場から新たな提案がどんどん出てくるんですよ。
神戸さん
技術力って、画期的な発明のように“世の中にないものをつくり出す力”だと思われがちなんですけど、それだけじゃないんですよ。
神戸さん
高品質を維持しつつ「どれだけ安くつくれるか」を追求することも、ものすごい技術が必要なんです。
クルマの技術って、20年前と比べてはるかに進化しているのに、実は価格ってほとんど上がってないんですよ。
宮内
たしかに。それって、よく考えるとすごいことなのかも…
神戸さん
そうなんです。現場の継続的な改善がなければ絶対に実現できません。
こういう部分こそが、偉大な発明や大きな技術進化を支える技術力の根幹だと思うんです。
これからは「クルマ」の枠を越え、人々が便利に移動できる未来をつくりたい
森さん
我々は技術力には一定の自信を持っていますが、デンソーがここまで成長できたのは、世の中でクルマがどんどん売れてきたからでもあります。
でもこれからは、それだけではダメなんです。
宮内
日本でクルマは売れなくなっていますもんね…
森さん
はい。なので、これからはクルマに限らずモビリティ、移動全般に関わるサービスにもデンソーの技術を活かして貢献していきたいと考えています。
武政さん
わかりやすくいうと、クルマがスマートフォンのようになるイメージですね。
僕たちはあまり意識していないですが、スマートフォンってネットにつながっているからこそ、いつでもマップが使えたり情報を自由に調べられたりするわけじゃないですか。
武政さん
だから、クルマもネットにつながることでいろんなサービスが展開できるんです。
たとえば、スマートフォンからいつでも自動運転車を呼ぶことができて、支払いも移動距離に応じて自動決済。
そうすれば、クルマはもはや買うものではなくなるかもしれないですよね。
宮内
なんという未来…!
神戸さん
手持ちのタブレットがクルマとつながれば、たとえば自宅で観ていた映画の続きが、クルマに乗った瞬間から再生されるなんてことも可能ですね。
宮内
すごい…それもワクワクします!
武政さん
ただ、こうしてお話してもなかなか伝わりづらいので、ぜひ10月25日から開催されるモーターショーでその未来を体感していただきたいんです。
神戸さん
昔も今も、「クルマの部品」には、最先端のテクノロジーがいくつも詰まっています。
その技術を活かして、これからのデンソーはクルマづくりはもちろん、世界中の誰もが“より安心して”“より便利に”“より快適に”移動できる社会づくりに貢献していきたいと思っています。
宮内
今日の取材で、デンソーとクルマのイメージが両方変わりました!
もうネジなんて言いません…
自動車オンチの編集部員にも優しいみなさんでよかったです(笑)。わかりやすいお話をありがとうございました!
デンソーが何をやっている会社なのか、100パーセント理解できたかはわかりません。
ですが、穏やかな取材の雰囲気や、広い敷地内を丁寧に案内してくれる社員のみなさんの対応から、デンソーの「愚直な姿勢」は120パーセント理解することができました。
そんなデンソーの未来への取り組みが体感できるモーターショーが10月25日から開催されます。興味を持った方はぜひ会場へ足を運んでみてください!
こんな感じで体験できますよ〜!
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=中澤真央〉
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