ビジネスパーソンインタビュー

マンション広告で「家」という言葉は使わない。相手の心を動かす3つの説明テクニック

齋藤孝著『頭のよさとは「説明力」だ』より

マンション広告で「家」という言葉は使わない。相手の心を動かす3つの説明テクニック

新R25編集部

2019/09/23

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ミーティングや営業、企画プレゼンなど、仕事のありとあらゆる場面で必要とされる説明力

しかし、説明力そのものを鍛える機会は少ないし、具体的に何をすればいいのかわかる人も少ないのでは?

だったら、説明のプロにその鍛え方を聞いてみましょう。

明治大学文学部教授の齋藤孝さんによる『頭のよさとは「説明力」だ』のなかには、最低限の意識で説明力を底上げする手段が載っています。

本当にわかりやすい説明を体得し、相手に「頭がいい」と思わせる方法を、同書から学んでいきましょう!

テクニック①「ファストとスローの相乗効果」

上手な説明とは、聞き手に「なるほど」とすっきりとした納得感を与えるだけではなく、場合によっては相手の心まで動かします

商談における説明などはまさにそれで、うまい説明をすれば、相手は商品を買ってくれたり、ビジネスに協力してくれたりするわけです。

はたして、相手の心まで動かす説明とはどのようなものなのでしょうか。

行動経済学者のダニエル・カーネマンが書いた『ファスト&スロー』という本があります。

そのなかで、怒った人の顔写真を挙げて、怒った表情というのは情報伝達スピードが速く、一目見ただけでこの人が怒っていることがわかるということを述べています。

文章、言葉で怒っていることを伝えられるよりも、圧倒的に表情のほうがすぐ伝わります。

感情表現というものが、最速の情報伝達手段なのです

このようなファストな情報伝達と、言葉のようなスローな情報伝達の両方が私たちの思考に影響を与えているということなのです。

ゆっくり丁寧に説明されてわかることもありますが、その一方で、感情表現のような瞬間的にわかるものがあって、この二つが相乗効果を持つと、とてもうまい説明になります。

たとえば、「マンションポエム」というものも、一つのファストな伝達手段だと私は思っています。

マンションポエムとは、マンションの広告などに使われる独特の詩的なコピーのことです。

「息づく静謐」とか、「華やぎの街に佇む」、「邸宅と呼ぶべき思想」などといった独特のキャッチコピーのことです。

こういったコピーをマンションポエムと名づけて研究していらっしゃる方がいるのですが、その方によると、マンションの広告では、「家」という言葉は使わないらしいです。

「邸宅」や「屋敷」と表現するのが基本で、マンション自体の説明はほとんどしないそうです。

マンションの内装や設備となると、結局、どのマンションもほとんど同じなので、その立地の紹介になるのです。

「この街に住まう」とか、「この高台に屋敷を構える」といったコピーになり、そこに「美麗な」とか「誇り高き」といった修飾語を重ねます。

「屋敷」と言ってもマンションなのですが、それをこのように表現するところに独特の技を感じます。

これは、その街に住む誇りみたいなものをくすぐって、読み手の感情を動かす手法といえるでしょう。

まさにイメージに訴えかけるファストな説明の部類といえます。

このファストな部分で興味を持った人が、細かな情報はどうなっているのかな、と小さな文字で書いてある情報に誘導されていきます。

頭金はいくら、分割払いだと条件がどうなのか、そういったスローな情報が、ファストをフォローしているのです。

行動経済学でも、ファストとスローの両方が作用することが、相手の意思決定に重要だと言っています。

説明するというのは、相手に何かを伝えたいということであり、それは相手の意思を動かしたいという場合がほとんどです。

そのときに、ファストとスローの両方を駆使することが、相手を動かすことにつながるのです。

テクニック②「比較を使った説明」

わかりやすい説明の技術に、「比較で説明する」という方法があります。

私はこれから教師になっていく学生さんたちに大学で講義をしていますが、授業には説明が不可欠です。

その授業のつくり方としては、ほとんどのことは、AとBの比較で進行できるものだと教えています。

たとえば、「普通の文章で書くとこうなります、ところが芥川龍之介が書くとこうなります」「今昔物語の原文はこうです。それを芥川が料理するとこうなります」といったふうに進めると、誰もが「あっ、全然違うな」とすぐ理解できます。

一枚の絵を見ているだけではわからないのですが、同じテーマを描いた別の画家の絵と見比べると、その違いがよくわかり、それぞれの特徴がわかるのと同じです。

カップ焼きそばのつくり方を文豪たちが書いたらどうなるかといったテーマの本がヒットしましたが、これもさまざまな作家が「カップ焼きそばのつくり方」という同じテーマで文章を書いたという設定で、それぞれの文章の違いを際立たせる面白さがウケたのだと思います。

ある一つのテーマで比較していくと、A対B、あるいはA対B対Cというふうに、それぞれの違いを通じて説明は一気に頭に入ってきます。

Aを説明しようとして、Aを細かく掘るだけではなく、Bを持ってくる、あるいはCを持ってくる。

それによって生まれるコントラストで、頭にすぽっと入ってくるのです。

この手法は、それぞれ別の「物や人」の比較ではなく、時間的な経緯、つまり「時間軸」で比較する場合も使えます。

たとえば、「10年前は〇〇でした。5年前は△△でした。そしていまは、××です」という手法です。

AとBの違いを比較するのではなく、時間的な変化というものを比較することで、納得してもらうという狙いです。

このような比較を説明に取り入れる際には、二つのパターンがより効果的です。

それは、「似ているけれど、実は違う」というパターンと、「まったく違うように思えるが、実は似ている」という二つです。

この二つの説明を組み合わせることで、ほとんどのことが説明できます。

「似ているように見えますけど、差異はここです」「ぜんぜん違うように見えますが、共通点はここです」という、共通点と差異点の組み合わせで説明を構成するのです。

たとえば、紫式部と清少納言は比較することで、どちらの説明もうまく組み立てられます。

共通点はもちろん『源氏物語』を書いた紫式部も、『枕草子』を書いた清少納言もともに女性作家で、同時代に生き、中宮に仕えるといったところになります。

しかし、違いもかなりあります。その感性はまったく違いますし、残した作品も物語と随筆の違いがあります。

こういったところを入口に、二人の説明をすれば、両方が一度にすんなりと理解できるでしょう。

比較すべきぴったりの対象を設定できたら、必ずうまい説明になるはずです

あとは共通点と差異点をうまく組み合わせて、説明を構築してみてください。

テクニック③「問いかけを説明の推進力にする」

問いかけ」をうまく使って、説明の質を上げるという方法もあります。

マキャヴェリの『君主論』は名著ですが、目次を読んでいるだけでも、なかを読みたくなってきます。

それは、目次が問いかけ調でできていて、その答えを知りたくなって、ぐいぐい引き寄せられてしまうからです。

説明のときも、うまい問いを立てることで、聞く人の気持ちをぐっと引き寄せることができます。

立問力と言ってもいいと思いますが、問う力が聞き手を説明に引き込んでいくのです。

以前、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』といった題名の本がヒットしましたが、これも問いかけをうまく使って、読者を引き寄せているといえます。

説明の際も、「なぜ、〇〇は△△なのでしょうか?」と、聞き手が興味を持つような問いを考えてみましょう。

冒頭でうまい問いを提起できれば、聞き手は「なぜだろう?」と説明に引き込まれていきます。

このときの注意点としては、答えを聞きたいと思っている相手をあまりじらさないということです。

問いをふったら、スパッと答えを述べて先に説明を展開してください。

あまり引っ張りすぎると、聞き手も次第に興味が薄れてきますし、難しいクイズを出されて試されているような気がして嫌悪感を持つ人もいます。

日常会話でも、「で、どうしたでしょうか?」と聞いておきながら、なかなか答えを言わない人がいますが、ちょっとイライラしてきますよね。

ですから問いかけた際は、パッと答えを言う。

「問いかけ、答え」「問いかけ、答え」を適当に挟みながら、たたみかけていくと、聞き手はどんどん説明に引き込まれていきます。

いわば、「問い」が説明の推進力になっているのです。

問いかけがあって聞き手は初めて「おお、そういえばなんでだろう、考えたことなかったなあ」と思い、答えを聞いて、「ああ、そうだったのか」と驚きます。

つまり、疑問の「?マーク」と驚きの「!マーク」で、説明の勢いがぐいぐい増してくるのです。

たとえば、「AとBとではどちらがお得だと思いますか?」「コストパフォーマンスがいいのはどちらと思いますか?」と聞かれたら、「どっちだろうな」とつい考えてしまうのが普通ですが、もうそれがすでに説明に引き込まれているということなのです。

そしてその問いを受けて、説明するほうが、「実は、こうなるのです」と意外な答えを明かすことができればさらに説明に勢いが出るのです。

みなさんも、こういった「問い、答え」の構造を、所々に入れ込んで説明を構成してみてください。

これがテンポよく展開していくと、非常に回転のいい、いい説明になっていくと実感できるはずです。

相手に「頭がいい」と思わせる説明力をもっと鍛えよう

会議やプレゼンで「何が言いたいかわからない」「つまりどういうこと?」と言われ、説明に苦手意識を持っている方も多いはず。

しかし齋藤さんは、「説明は、意識して取り組めば必ずうまくなる」と断言します。

頭のよさとは「説明力」だ』は、日々のなかで無理なく説明を鍛えられる方法が詰まった一冊。

同書の内容を実践して、最短ルートで説明力を向上させましょう!

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