ビジネスパーソンインタビュー

「私も痛手を負ったことがあります」上念司が考える“気をつけるべき”銀行サービス3選

上念司著『もう銀行はいらない』より

「私も痛手を負ったことがあります」上念司が考える“気をつけるべき”銀行サービス3選

新R25編集部

2019/07/25

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「iDeCo」「積み立てNISA」「個人年金」など、将来へ蓄えとなる金融商品が増えてきました。

ただ、数ある選択肢のなかから、自分にあったものを選ぶのも難しいし、調べるのもおっくう…という人も多いはず。

だから、つい人や銀行で勧められたサービスをそのまま使ってしまう、ということもありますよね。

しかし、経済評論家の上念司さんは、新著『もう銀行はいらない』のなかでその思考に警鐘を鳴らしていました。

同書のなかから、上念さんが「十分に理解して納得せずに利用してはいけない」と語る「銀行サービス」を紹介します。

“気をつけるべき”銀行サービス①「住宅ローン」

どんな状況であっても、銀行から比較的高い金利で借りてくれるカモはいます。それは個人、いや庶民と言ったほうがいいかもしれません。

住宅ローン」と「消費者ローン」を借りてくれるカモたちです。住宅ローンの金利は低いと言われますが、市場金利と比べればかなり割高です

2019年6月4日時点における、主要銀行の住宅ローン金利(新規借り入れ)は10年固定で0.590〜1.540%ですが、同時期の10年物国債の利回りはマイナス0.094%と、買う側が金利を払うマイナス金利です。

この差分が丸々銀行の利益だと考えれば、これはオイシイ商売です。

しかも、住宅ローンの場合、借り手が購入する物件に「抵当権」を設定したうえ、「団体信用生命保険」にも加入させます。登記費用も保険料も、借り手が負担しますから、銀行はほぼノーリスクなのです

抵当権とは、銀行が不動産を担保に融資する際、債権者(銀行)が債務者(借り手)に不動産を使用させながらも、その不動産の価値を支配できる権利です。つまり、借り手が住宅ローンを返済できなくなれば、銀行は不動産担保を処分できるのです。

団体信用生命保険は、住宅ローン契約時に加入するもので、契約者(借り手)が死亡したら銀行に残債が支払われるというものです。

つまり、借り手がローンを払えなくなっても銀行は住宅を売り払って補てんできますし、借り手が死んでしまっても団体信用生命保険でとりっぱぐれがありません。

しかも、住宅の売却額が返済額に満たない場合、ローンは消えません。

家を失っても借金が残るのです。これは「住宅ローンの残債問題」として注目されました。一方的に銀行に有利で、個人に不利な“地獄のような仕組み”と言っていいでしょう。

ちなみにアメリカの住宅ローンは、返済が担保の範囲内に限定される「ノンリコースローン」( 非遡及型融資)で、借り手が返済できなくなった場合、住宅を手放せば残債がゼロになります。

家を失っても借金が残ることはないので、ホームレスになったとしても、少なくとも住宅ローンで多重債務者になることだけは避けられます。このほうが、よほどフェアだと思いませんか?

マイホームを欲しがって住宅ローンを組む庶民は、銀行にとっていいカモです。テレビCMなどで「理想の家」を欲しがる人を煽るのは、このためとも言えます。

こんなことを言っている私ですが、かつて住宅ローンを組んでマイホームを買った“黒歴史”があります。

マイホームを買うことの最大の弊害は、引っ越しが事実上できないことです。

かつてのように終身雇用で同じ会社にずっと勤められるならいいのですが、それでも転勤はありますし、平成に入ってからは転職が当たり前になっています。

私も何度か転職していますし、独立してからも何度か商売替えをしています。そんなときに、マイホームを所有し続けていたらとても大きな制約になってしまうことは、サラリーマンを辞めた時点で十分予想されました。

そこで1998年に購入したマイホームを2002年に売却したのですが、総額で1000万円以上の損失を出しました。当時の私にとっては、本当に人生が終わったかと思うくらいの痛手でした。

年数にして3年半ぐらいしか住んでいなかったマイホームです。住宅ローンの返済や手数料など、消えたお金を家賃に見立てて月割りにしてみたところ、毎月30万円以上払っていたのと同じ計算でした。これなら都心の賃貸マンションに、余裕で住めていたことになります。

繰り上げ返済を何度かしていたこともあり、売却後の残債はなかったことが、せめてもの救いでした。

とはいえ、マイホームを買うときにあれほど盛り上がったのに、売るときは本当にみじめなものでした。

もう二度と家は買わない、銀行のカモにはならない

そう誓ったのは言うまでもありません(このときの顛末については拙書『家なんて200%買ってはいけない!』(きこ書房)をお読みください)。

“気をつけるべき”銀行サービス②「カードローン」

企業の経営が傾けば、そこで働く人の給料は不安定になります。最悪の場合、給料が減らされたり、支払われなかったり、さらには失業することもあり得ます。

企業と同じく、個人も日々のキャッシュフローがないと生きていけません。お金に困った企業や個人は、足らなくなった収入を補うため、商工ローンや消費者ローンに走りました。

銀行は貸し倒れを恐れて、こうしたハイリスクな借り手にはお金を貸しません。

銀行が触りたくないハイリスクな借り手にお金を貸すのが、商工ローン消費者ローンというわけです。

だから、彼らがリスクに見合った金利を要求するのは当然です。これら高利貸にとって、強い味方となったのがグレーゾーン金利でした。

2000年前後には、中小企業の経営破たんや個人破産が相次ぎました。商工ローンの日栄が「家売れ、腎臓売れ、目ん玉1個売れ」と返済を迫る暴力的な取り立てで、社会問題化したのは1999年でした。

その後の2006年1月、バブル崩壊から16年も経って、最高裁はやっとグレーゾーン金利を否定する判決を下しました。

簡単に言うと、利息制限法の上限を超える金利でお金を借りるのは、よほど本人が強く望まない限り無効ということです。

消費者金融からお金を借りた人は、高金利を強く望んだはずがありません。

だから、たいていの債務者が金利を払いすぎていたことになり、利息制限法を超えて支払った利息は法的に無効となりました。

過去に払いすぎた利息(過払い金)は、本来なら元本に充当されて、債務はずっと少なかったはずです。

その分をさかのぼって計算すると、逆にお金を返してもらわなければならない人がたくさん出ました。そういう人たちを弁護する弁護士業界が、“貸金訴訟特需”に沸いたのは言うまでもありません。

テレビやラジオのCMまで使って、「過払い金を取り戻しましょう!」と煽りまくったので、多くの人が消費者金融業者を訴えました。その結果、消費者金融業者は多額の賠償金支払いで経営難に陥り、銀行の傘下に入ったのです。

主なものは、次の通りです。

プロミス:三井住友銀行グループ

アコム:三菱UFJ フィナンシャルグループ

SMBCモビット:三井住友銀行グループ

ダイレクトワン:スルガ銀行グループ

ノーローン:新生銀行グループ

他にもたくさんありますが、顧客が過去に払いすぎた利息(過払い金)の返還負担に耐えられず、2010年秋に経営破綻して会社更生法の適用を申請した消費者金融大手の武富士の例もあります。

2019年6月時点で、銀行系ではない大手消費者金融はアイフルぐらいです。

問題はここからです。このように訴訟を抱えて経営難に陥って経営が傾いていた消費者金融を、なぜわざわざ銀行は傘下に収めたのでしょうか

儲からないから経営が悪化したのに銀行が買収したからといって経営がよくなるわけでもないはずです。

ともあれ、銀行は買収した消費者金融のイメージを変えようと、必死でキャンペーンを打ちました。

かつて「サラ金」といえば、何かうしろめたくて暗いイメージがありましたが、いまはそうでもありません。

でも、金利をよく見ると、利息制限法の上限に近くなっています。限度額も500万円とか800万円とか、消費者金融と何が違うのでしょうか?

正真正銘の消費者金融業者、アイフルのキャッシングローンは金利3.0%〜18.0%(実質年率)、限度額は800万円です。三井住友銀行のモビットとまったく変わらないではありませんか!

有名タレントを使って、全体のイメージを柔らかくして、「銀行がやっているから大丈夫そう」という妙な安心感を演出していますが、要するにこれは消費者金融なのです。

“気をつけるべき”銀行サービス③「手数料の高い投資信託」

消費者ローン(カードローン)の他に、銀行の収益改善の柱として期待されたのが投資信託の窓口販売(窓販)です。

読者の中にも、銀行から「お得な情報」として電話やダイレクトメールを受けた人もいるのではないでしょうか? 

NISA(少額投資非課税制度)やiDeCO(個人型確定拠出年金)といった、掛け金が所得税控除の対象になったり利益が非課税になったりと、節税効果のある金融商品の勧誘が多いです。

いずれにせよ、銀行は投資信託を売ることで「手数料」を稼ごうとしているのです。

私の知人に、某大手証券会社から銀行に出向して、投資信託の窓販を担当した人がいましたが、その知人はあまりのストレスに出向先の銀行を去ってしまいました。

その知人曰く、「銀行が販売する投資信託は、売買手数料、信託報酬、信託財産留保額などが割高で、とても初心者にお勧めできるものではない」とのことです。

例えば、三井住友銀行の公式サイトで2019年4月の販売額ナンバー1だったのは「ダブル・ブレイン」という投資信託です。この商品の手数料は次のようになります。

1億円未満の場合、購入時に3.24%、それに加えて毎年約2%の手数料が抜かれることが明記されています。

もちろん、投資のリターンが、この手数料を大きく上回るのなら問題は生じません。しかし、毎年そんなにうまくいくでしょうか?

また、このファンドには、次のような特徴があることも明記されています。

・ 外国投資証券等への投資を通じて、世界各国(新興国含みます)の株式、債券等を実質的な主要投資対象とし、株式、債券、商品等に関連するデリバティブ取引、為替予約取引等を実質的な主要取引対象とします。

・ 実質的な通貨配分にかかわらず、原則として対ドルで円ヘッジを行います。

これはいわゆる「ファンド・オブ・ファンズ」というもので、海外の投資信託をまとめて1つの商品とし、その持ち分を小口で販売する商品です。

海外の投資信託の主要投資先が「株式、債券、商品等に関連するデリバティブ取引、為替予約取引等」となっていますから、かなり値動きの激しい運用をするようです。

要するにハイリスク・ハイリターンの金融商品ということです。当たったときは手数料のことなど忘れられるぐらい儲かるでしょうが、ハズレたときも逆の意味で手数料のことを忘れるぐらい大損するかもしれません。

デリバティブ(金融派生商品)などの複雑な金融商品の最大の問題点は、損失が発生したときに、それが無限に拡大する恐れがあるということです。

とても初心者にはお勧めできない代物だと思いますが、名の知れた金融機関が販売する投資信託ということで、マジメなお父さん方や投資に詳しくない高齢者の警戒レベルは一気に下がります。

そこには、かなり高い手数料が待ちかまえているのです。

自分たちの生活に密接に関わる「銀行」について学ぼう

もう銀行はいらない』では、上念さんが考える銀行の問題点と、今後変化すべき点についてまとめられています。

銀行の人が言うから正しいはずだ」と盲目的にならず、「自分のお金のことは自分で考えなければ…」と気づかされる一冊です。

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