ビジネスパーソンインタビュー
休み方で人生を変える
【無料試し読み】東松寛文『休み方改革』
新R25編集部
目次
- 仕事の評価も上がる。人間関係もうまくいく。「休み方改革」がもたらす3つの価値
- 休み方改革の価値① 人生の幸福度が上がってしまう
- 休み方改革の価値② 刺激を取り入れることで、1年を長く感じられる
- 休み方改革の価値③ 仕事の効率も評価も上がる
- 「こんな最高な環境はほかにない」“休み”を使った自己分析のやり方
- 休みを使って、自己分析ができる
- 自分と向き合う時間を決めておく
- 「休み方改革」を使った自己分析のやり方
- 「上司に根回し→決定」というプロセスは取らない。革新的な“休みを取る”交渉術
- 「休み方改革」の最大の鍵は「根回し(交渉)」のタイミング
- 魔法の休み方STEP1: 休みを取ることを決定する
- 魔法の休み方STEP2: 休みを取るための根回し術
- 今までの「休み方」から抜け出したい方はこちら!
「働き方改革」の一環で、有給休暇消化が義務付けられました。
ただ、「休む」ことを推奨されても、結局その休みを“体力回復”にあててしまいがちな僕たち。
しかし、「そんな休み方はもったいない!」と主張するのが、「リーマントラベラー」を名乗る東松寛文さん。
東松さんは、大手広告代理店に勤務していながら、おもに土日を活用して「働きながら世界一周」を成し遂げました。さらには、旅で人生を豊かにするオンラインサロン「リーマントラベラーサロン」を主宰しています。
そんな彼の新著では、「休みを会社のためではなく、自分のために使う」「自分のために休みを使うと、人生の主体性を手に入れられる」という「休み方改革」を提唱しています。
今回は、同書のなかから「休み」の価値観が変わる内容を紹介します。
仕事の評価も上がる。人間関係もうまくいく。「休み方改革」がもたらす3つの価値
休み方改革の価値① 人生の幸福度が上がってしまう
僕は、休み方改革を通じて、自分で決めることを、楽しく習慣づけることができました。
その結果、人生に主体性が生まれて、社畜寸前時代には考えることができなかった、幸せな毎日が待っていました。
そうです、毎日がめちゃくちゃ幸せなのです。
実はこの考え方、正しいうえに、誰にでも当てはまることが、すでに証明されていました!
京都大学の西村和雄名誉教授と同志社大学の八木匡教授の共同研究論文「幸福感と自己決定─日本における実証研究」(2018年9月)のなかに、こう記されていました。
幸福感と自己決定―日本における実証研究幸福感を決定する要因としては、健康、人間関係に次ぐ変数としては、所得、学歴よりも自己決定が強い影響を与えることがわかった。
なんと、「所得や学歴よりも自己決定」、つまりは「自分で決めること」が幸福感を決定する大きな要因であると証明されていたのです。
また、続けて、こうも述べられています。
幸福感と自己決定―日本における実証研究自分で人生の選択をすることで、選択する行動への動機付けが高まる。そして満足度も高まる。
そのことが幸福感を高めることにつながっているであろう。
僕が、休み方も、働き方も自分で決めるようになったことで、行動に主体性が生まれて満足度が高まり、さらに幸福度も高められていたことは、学術的にも証明されていたのです。
たしかに、思い返してみると、僕が幸せになる前のサラリーマン時代は、自分で決められることなんてひとつもないと思い込んでいましたし、自分で決めることから意図的に逃げてもきていました。
でもそれは、幸せから逃げているのと同じだったのです!
働き方改革は、会社が決めることであって、やはり今までの働き方同様、自分で決めることがなかなかできないので、個人の幸せには直結しません。
しかし、休み方改革は違います。
休み方改革をすればするほど、自然と自分で決めることに慣れてきます。
休み方改革の価値② 刺激を取り入れることで、1年を長く感じられる
大人になると、1年ってあっという間に感じませんか?
僕も、休み方改革をする前は、驚くほどあっという間に1年が過ぎていました。
かつての僕は、毎日同じように過ごして、それを1週間、1カ月、1年と繰り返すだけの日々でした。
あまりにすごい勢いの時の流れに、最初は自分自身流されないように必死に食らいついていましたが、いつしか、その流れに身を委ね、ただ過ぎ去る日々を淡々とこなしていくことしかできないようになっていました。
そんな生活を変えたのが休み方改革です。
今まで、休日をダラダラとしか過ごしてこなかった僕にとって、主体性をもって過ごす週末は、どれも「非日常」。
そんな「非日常」に身を置くと、常に五感が刺激されつづけるため、そうでない週末と比べると、圧倒的に充実した気持ちになりました。
さらに、そんな「非日常」から「日常」に戻ってくると、「日常」すらも色濃く映ります。
普段気がつかないことにも気がついたりして、日常でも五感が刺激されました。
そうやって、日常と非日常を行ったり来たりすることで、日常でも五感を使えるようになり、たくさんの気づきを得られるようになって、充実を感じることが多い人生が待っていました。
実はこの考え方も正しいし、誰にでも実践できることが、すでに証明されていました!
千葉大学の一川誠教授が認知科学の視点から、大人になるとなぜ1年が短くなるのか証明しています。
著書『大人の時間はなぜ短いのか』(集英社新書)で、こう述べられています。
大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書)感情の状態によっても、時間の長さは異なって感じられる。
何かしらの感情が起こっている状況のほうが、時間の長さは長く感じられるというのです。
また、同書で、こうも述べられています。
大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書)(略)時間の経過を気にしながら待つという行為は、時間がなかなか経たないと感じることにつながる。
ここにも、大人の時間はなぜ短いのか、という問題を解くカギがありそうだ。
つまり、子供と大人との時間の感じ方の違いに関して、子供のほうが待ち遠しい行事(あるいは時間が速く経過してほしい事柄)が多いこと、それに対して、大人では日常の多くの出来事がルーチンワークとなっており、待ち遠しいことも子供ほど多くないことが関与している可能性もある。
たしかに、子どものときは、待ち遠しいことが定期的にありました。
運動会や文化祭、遠足や修学旅行など、さまざまなイベントが毎月のようにあり、年齢や学年に応じて、その内容も変化して、毎日が新しいことの連続でした。
だから、「認識をする時間」が長いので、1年を長く感じます。
一方で、大人になると、人生で起こる出来事の多くが“体験済み”になります。
それゆえに、無意識のうちにやれてしまうことがどんどん増え、「何も認識をせずに過ごしている時間」が増えていきます。
ですから、1年のなかで記憶に残っている場面、出来事がみるみる少なくなっていき、1年があっという間に感じるようになってしまうのです。
確かに、今、僕はめちゃくちゃ充実した人生を過ごせているのですが、思い返してみると、僕が充実する前のサラリーマン時代は、毎日、終わりの見えないルーティンワークに追われ、どんどん「認識している時間」が減っていき、歳を重ねるごとに、どんどんどんどん1年が早くなっていきました。
しかし、この気づきは、全大人にとってのチャンス!
これを逆手に取ることで、人生のなかで感じるスピードをどんどん遅らせていき、充実を感じることができるのです。
その方法は簡単で、今すぐルーティンワークを減らして、定期的に非日常を感じるような“刺激的な人生”を過ごすようにすればいいのです。
休み方改革の価値③ 仕事の効率も評価も上がる
休み方改革が最高の効果をもたらすことは、ご理解いただけたことと思います。
え、それでもまだ始められない?
その理由は、職場の上司やまわりの目が気になるからでしょうか。
でも、ご安心ください! 休み方改革がもたらすのは、幸せで、充実した休日だけではありません。
ふざけているように見えて、実は、本業の仕事においても、大きな成果をもたらすのです!
1. 仕事の効率も評価も上がる
休み方改革を行い、週末の休み方を変えると、どんどんどんどん、おのずと働き方も変わってきます。
その結果、僕は、休み方を変えて旅行に行きまくったにもかかわらず、仕事の評価が上がっていったのです。
まずは、週末まで仕事を絶対に残さないと、みずから決めるようになるため、仕事に対して、より主体性をもち、優先順位を意識して取り組むようになります。
だって、週末に海外旅行に行くと決めたら、絶対にチケットは無駄にしたくないですよね。そうすることで、仕事の効率がぐんと上がるのです。
また、休日を全力で過ごすようになるので、仕事以外のインプットを多く得られるようになります。
これは平日も同様です。
休み方改革が進んで、仕事の効率が上がると、平日も仕事が早く終わるようになるわけなので、休日だけではなく、平日も読書をしたり、映画を見たり、友人に会ったりと、インプットを得る時間を多く取ることができるようになります。
仕事で学べるインプットとはまったく異なるインプットをたくさん得て、それを仕事に生かせば、あなただけのアイデアや仕事が生まれ、仕事の評価にもつながるのです!
2. 自分に自信がつく
“成功体験”から自信は生まれてきますが、仕事では、年次が上がるにつれて、どんどん成功体験を味わいにくくなります。
年次が上がって、大きなプロジェクトになればなるほど、もちろん成功したときの達成感は大きくなりますが、簡単には成功体験を味わうことができないので、仕事から自信をつけるのは簡単にはできません。
しかし、休み方改革は違います。本業じゃないからこそ、小さな成功体験をたくさん得やすいのです。
とくに旅なんかがそうですが、地元の人に道を聞いてホテルにたどり着いただけでもレベルアップした気になりますよね?
旅の間は小さな成功体験をたくさん得ることができると思います。
旅じゃなくても、仕事ではないことを始めてみると、同じように「できた!」と感じるタイミングは、仕事に比べて多々あると思います。
その積み重ねが自信につながっていくのです。
3.人間関係がうまくいく
仕事以外の軸をもつようになることで、人間関係もうまくいくようになります。
仕事だけの人生であれば、職場の人間関係が人生の満足度に直結します。嫌いな上司がいたりした日には、毎日、愚痴や不満しかこぼれてこないでしょう。
しかし、休み方改革で仕事以外の軸をもっておくと、会社から帰りさえすれば、自分が没頭できる「休み方」が待っているので、そちらに没頭することで嫌な上司を忘れることができます。
そうやって、自分の居場所を会社以外にももつことで、心のバランスを保ちやすくなるのです。
それができれば、嫌いな上司にももっと優しくすることができたり、割り切って接したりすることができるようになります。
また、会社以外の軸ができることで、自分に武器ができます。
飲み会や大勢が集まる場でも、仕事の話となるとまわりの目も気になりますが、プライベートの話であれば、自信をもって話すことができるようになるでしょう。
僕は元々は仕事の飲み会がめちゃくちゃ苦手で人見知りな性格でしたが、その性格が治るくらい、コミュニケーションを取ることが好きになりました。
結果、人間関係がうまくいくようになっただけではなく、仕事はもちろん、趣味のネットワークもどんどん広がって、人生がワクワクするようになったのです。
「こんな最高な環境はほかにない」“休み”を使った自己分析のやり方
休みを使って、自己分析ができる
僕は、社会人になって忙しい日々のなかで、毎日を乗り越えることに精一杯で、自分と向き合う時間を取ることは一切できませんでした。
また、誰かから「自己分析をやりなさい」と言われるわけでもないですし、忙しい日々のなかでは、そんなことをする必要すら感じることはありませんでした。
そんなふうに、今を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、僕は休み方改革を始めてから、仕事の効率が上がって、空いた時間が生まれました。
そのなかで、自分と向き合う時間を意図的につくるようにして、自己分析を繰り返していった結果、どんどん自分のことがわかるようになったのです。
休み方改革によって、日常ではなく非日常を感じる週末は、普段以上に五感を使って生活しています。
知らないことや聞いたことのないことを、目で見て、耳で聞いて、鼻で嗅いで、舌で味わって、手で感じる。
そうすることで、日常とはまた違った、それも普段よりも色濃い感情を感じる。そんな経験は、誰もが幾度となくしたことがあると思います。
たとえば、知らない土地へ旅行に行ったときの記憶は、より鮮明に残っていますよね。
しかし、そんなふうに、日常のなかで記憶が色濃く残ることって、なかなかないと思います。
その色濃く残ったことこそ、自己分析の材料となるのです。
それらすべてが、自分らしさを見つけるヒントとなるでしょう。
その休み方を選んだ理由。そして、普段よりも色濃く残る、楽しい、うれしい、つらい、悲しいといった感情の理由。同じ経験をしたとしても、その理由は人それぞれです。
自分と向き合って、その理由をじっくり考えてみてください。きっと、自分なりの理由が眠っていると思います。
だからこそ休み方改革は、自分のことをもっと知るチャンス! 自分のことをもっと知って、自分らしさ、そして新しい自分を見つけましょう。
自分と向き合う時間を決めておく
忙しい日々のなかで、自分と向き合う時間をつくるのはなかなか難しいです。
自分と向き合い、考えごとをしていたはずが、ついついスマホを見てしまい、気が散ることもしばしば。
となると、休み方改革でせっかく時間をつくり、考える材料まで獲得したのに、もったいない!
そんな、スマホという誘惑に負けがちな僕が、自分をなんとか律するために採用したのが、「移動時間を自分と向き合う時間と決めておく」ことです。
あくまで“自分のため”の自分と向き合う時間ですから、誰も決めてはくれません。この時間ばかりは、自分で決めるしかありません。
しかし、ほかにやることがあったりすると、だんだん優先順位が下がり、気がつくと、自分と向き合うことを忘れてしまいます。
つまり、もうこれは“決めの問題”でしかないのです。だからこそ、終わりのある時間を「自分と向き合う時間」と定めておいて、時間を区切り、そこで集中して向き合うようにしましょう。
そう考えたときに、いちばん手っ取り早いのが移動時間。移動しながらでも考えることはできますし、必ず終わりがやってきます。
だから、休みのなかで考えるヒントを得て、そのあとの「帰りの移動時間」を自分と向き合う時間、と決めておいて、毎回そこで自分と向き合うようにするのです。
僕の場合は、旅から帰ってくる“飛行機の時間”が自分と向き合う時間。その限られた時間に集中して自己分析をして、新しい自分を見つけるようにしています。
そう決めておくことで、旅先でも自分と向き合うためのキッカケを意図的に見つけようとします。
また、飛行機の中であればスマホは機内モードのため、Wi-FiをオンにしなければSNSや業務連絡メールを気にせずに、集中して自分と向き合うことができます。
こんな最高の環境を、僕はほかには見つけられていません!
ちなみに、必ずしも毎回新しい自分が見つかるとは限らないので、移動時間中に見つからなければ、目的地に到着した瞬間、スパッと諦めることも重要です。
そうやって、自分と向き合う時間を意図的につくっておいて、自分と向き合う。
すると、どんどん自分がわかって、自分が変わっていくでしょう。
「休み方改革」を使った自己分析のやり方
では、どうやって自己分析をするのか、具体的な方法を説明していきましょう。
たとえば、旅から自己分析をするとします(旅好きじゃない方は、「旅」の部分をあなたの好きなアクティビティに置き換えて考えてみてくださいね)。
■旅に行く前
まずは、旅に行く前の「考えるヒント」から自己分析します。
『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』・旅が好きな理由は?
・そもそも旅に興味をもったキッカケは?
・キッカケとなった出来事のなかでも惹ひかれたポイントとその理由は?など
すでに旅に行く前の気持ちから、考える材料はたくさんあります。
これらすべてと向き合うわけですので、取っ付きやすいものから向かっていけばいいと思います。
■旅に行っているとき
続いては、旅に行っているときの「考えるヒント」です。
出典 『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』・旅先で、毎回必ずやることと、それをする理由は?
・旅先で、人と違うことをしているなと感じることと、それをする理由は?など
とくに、毎回必ずやることには、かなり個性が出ます。旅であれば、世界遺産は外さずに行く人もいれば、ガイドブックに載っていないところに好んで行く人もいます。
また、旅先だと必ず朝起きてジョギングする人もいると思いますし、夜は必ずナイトクラブに行く人もいるでしょう。
また、旅をしている最中に気になるものや、違和感があったものも「考えるヒント」にします。
そういったものを見つけたら、その場でスマホで写真を撮り、帰りの飛行機の機内などで気になった理由を考えます。
そういったヒントは、記録しておかないと忘れてしまいますし、旅の途中でメモを取るのはなかなか大変ですので、僕はいつもスマホで写真を撮り、あとからすぐに見つかるようにしています。
■旅に行ったあと
もちろん、旅から帰ったあとも「考えるヒント」が眠っています。
出典 『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』・いちばん感動した出来事とその理由は?
・いちばん忘れられない出来事とその理由は?
・いちばん楽しかった出来事とその理由は?など
旅のなかで印象に残っている出来事から、自己分析をするようにしましょう。
色濃い出来事のなかの、とくに色濃い部分ですから、きっとそこには、あなたを見つけるヒントが眠っているはずです。
過去の旅を振り返って、そのなかで突出した感情が残っているものから考えましょう。
■最後に共通点をまとめる
そうした出てきた理由を集めて、最後に共通点を探しましょう。
出典 『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』・今まで考えて出てきた答えの共通点は?
・共通点の根底にある理由は?
共通の行動を起こすくらい、強い感情です。
ですので、この共通点にこそ、あなたの自分らしさがいちばん隠れています。
ここにたどり着くまでは、辛抱強く、自己分析を続けましょう。そうすれば、その先にきっと答えが見つかるはずです。
このように、「旅」というだけでも、行く前も、行っている最中も、行ったあとも、すべてが自己分析をするための「考えるヒント」になるのです。
この自己分析を、あなたの好きな休みの過ごし方を使って、やってみてください。
こればかりは、答えはあなたにしかわかりませんが、本気で向き合えば、きっと自分らしさに出会えると思います。
「上司に根回し→決定」というプロセスは取らない。革新的な“休みを取る”交渉術
「休み方改革」の最大の鍵は「根回し(交渉)」のタイミング
休みを取るとき、あなたならどうやって休みますか?
多くの方は、次のように休みを取ると思います。
出典 『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』①上司や同僚の顔色をうかがって、休めるかどうかの「根回し(交渉)」をする。
②その結果次第で、休みを取ることが「決定」する。
しかし、この流れだと、休めるかどうかは上司や同僚次第。
もしも、根回しが決裂してしまった場合や、上司が休むことに対して理解のない人だった場合は、なかなか休むことができず、そもそも休み方改革を始めることすらできません。
僕は、従来の「根回し」→「決定」というプロセスは取りません。
僕が提唱する、人生の主役になれる休み方は、この順番が革新的なのです。
それは「根回し」→「決定」ではなく、「決定」→「根回し」。最初の順番をひっくり返した方法で、自分の力で休みを勝ち取ってきたのです。
まずは休むことを自分で「決定」して、そのうえで、「根回し」に臨む。
そうすることで、根回しという名の上司との戦いにも、圧倒的な勝率で勝利を収めてきたのです。
魔法の休み方STEP1: 休みを取ることを決定する
ということで、まずは休むことを、自分のなかで「決定〈Decide〉」して、揺るぎないものにしましょう。
これから、その「休み」に意味をもたせて、揺るぎないものにしていく方法を伝授しますので、今の時点では、「自分が休みたいから」以上の目的や意味はなくて大丈夫です。
■チケットや航空券を先に予約してしまう
揺るぎない覚悟をつくることが一歩目だと前述しましたが、そのために、いちばん簡単にできる方法は、チケットや航空券、ホテルなど、休みを取った場合に必要なものやコトを、先に予約してしまうことです。
そうやって、上司に相談する前に、先にチケットを買ってしまいます。
すると次に「買ってしまったのだから、行かないのはもったいない」という気持ちが、おのずと湧いて出てきます。
それが、休むための自分への言い訳をつくるにはいちばん手っ取り早い方法だと思います。
しかし、チケットを買うこともなかなか勇気が必要だったりすると思います。でも、勇気は必要ありません!
そこで、勇気の代わりに、忖度を使いましょう!
チケットを買ったからといって、上司によっては休みが取れないこともあるかと思います。
そんな上司に忖度して、「休みが取れない可能性があることも承知で買う」と、自分に言い聞かせましょう。
金銭的なリスクをみずから取るのです。
■言いやすい人たちに宣言してしまう
上司には「休みたいです!」と、なかなか気軽に言えないかもしれませんが、先輩や同僚のなかには、言いやすい仲間もきっといるはずです。
そういった人たちに、まず「休みます宣言」をすることで、自分の意志を固めていくという手法も効果的です。
まわりから固めていくことで、ある意味、「宣言しちゃったからなあ」と、自分にとってももうあとには引きにくい状況をつくり、それさえも言い訳にして、休む覚悟をつくりましょう。
しかし、この作戦を遂行する場合、ひとつだけ気をつけてほしいことがあります。
その話す相手の人たちが、もし「なかなか休みが取れない人」たちであれば、話し方だけには十分気をつけるということです。
なぜなら、そういう人たちは、ときに敵になる可能性があるからです。
そういう人に話す場合こそ、忖度を使いましょう。
「休みを取って、仕事にも生かせるインプットをしてくる」とか「休みを取って、今までできていなかった家族サービスをする」など、休みが取れない人にも「それならしかたがないね」と思ってもらえる理由を並べましょう。
ゴールはあくまで、まわりに共感してもらうこと。
本当の理由ではなくても大丈夫ですので、相手が共感してくれそうな理由を並べに並べて、まわりの人に「休みます宣言」をしましょう。
■もういっそのこと人のせいにする
でも、まだその覚悟ができていない人は、この手段を使ってください。
「もういっそのこと、人のせいにしよう」作戦です。
たとえば、その休みを誰かと一緒に過ごすとしたら、「〇〇くんに、そこは絶対に休んでほしいと言われてしまったから…」と一緒に行く〇〇くんのせいにして、気持ちを固めていきましょう。
自分の気持ちを固めるために、〇〇くんを活用するだけなので、実際に〇〇くんに迷惑をかけることは一切ありません。安心して活用させてもらいましょう。
これもある意味、忖度です。
休む覚悟がきちんとできないまま、中途半端な覚悟で、上司に「今度、休みたいのですが」と言いはじめたものの、上司の渋い顔を見た瞬間に、「やっぱり、いいです」だなんて取り下げたりすれば、その場は微妙な空気になります。
そして、その後の人間関係を悪化させるかもしれません。
また、上司から、本当はそうではないのに、「仕事のことはどうでもよくて、とにかく休みたいと思っているやつ」と思われる可能性もあると思います。
そういった、上司や周りの同僚からの、無駄な誤解を防ぐための、「もういっそのこと、人のせいにしよう」作戦でもあるのです。
魔法の休み方STEP2: 休みを取るための根回し術
「絶対に休むんだ!」という強い気持ちをもつことができたら、次は上司への「根回し〈Doing the spadework〉」です。
上司にうまく休みを取りたい旨を伝えて、気持ちよく承認してもらいましょう。
■交渉には欠かせない「BATNA」を用意
BATNA(バトナ)は、ビジネスにおける交渉には欠かせないテクニックです。
Best Alternative to Negotiated Agreement の頭文字の略称で、交渉時に交渉相手から提示されたオプション以外で、もっとも望ましい代替案のことを指します。
つまりは、“落としどころ”です。
これは、MBAの教科書でもよく使われる、ビジネスにおける交渉術の基本中の基本です。
交渉には欠かせないから、相手がどのように出てくるのか、いろいろなパターンを想定しておいて、ちゃんと“落としどころ”を見つけておくことが重要です。
そのために、この交渉におけるBATNAは必ず準備しておきましょう。
では、休みを取るための交渉における、BATNAは何でしょうか。
休み方改革は、なぜ行うのか。そこから考えていきましょう。
休み方改革の目的─それは、休み方を通じて「自分で決める」ことに慣れて、人生の主役になることです。
決して、やりたかったことを1回だけやってみる、がゴールではありません。
上司との交渉で、「休みを取って、やりたかったことを実現する」ことができれば、それに越したことはありませんが、必ずしも、最初から思いどおりにいくとは限りません。
では、休み方を通じて、自分で決めることに慣れて、人生の主役になるために、今のあなたに必要なことは何でしょうか。
それは、「まずは休んでみる」ということだと思います。
ですので、この上司への交渉においては、BATNAとして、「まずは休んでみる」という“落としどころ”も用意しておきましょう。
たとえば、次の週末に有休を1日足して、2泊3日で海外旅行に行きたいと上司にプレゼンテーションするときのことを想像してみてください。
すると、上司が渋い顔をしてきました。上司は、何に対して渋い顔をしているのでしょうか。
もしも、渋い顔の理由が行き先であれば、違う行き先にすれば大丈夫です。
しかし、そんなことはないでしょう。
上司は、行き先にケチをつけたいわけではなく、「1日休みを取ること」もしくは「海外旅行に行くこと」にケチをつけたいのだと予想されます。
でも、僕たちの交渉におけるBATNAは、有休を取って海外旅行に行くことではありません。
まずは休んでみること、そして、一歩を踏み出してみることです。
ですので、そんなことを言う可能性がある上司には、「国内でいいから、1日休みを取って行かせてほしい」、もしくは「週末だけで海外へ行くので、金曜日の夜だけは仕事を定時で切り上げて、空港に向かわせてほしい」などといった、「まずは休んでみる」ことをBATNAとして準備しておき、提案しましょう。
負けられないプレゼンテーションだからこそ、きちんとBATNAまで想定して臨むことが重要です。
■夢を語る
僕がいちばん使っている作戦が、夢を語る作戦。いわば、お涙頂戴作戦です。
休みを取る理由は、小さいころからの夢を叶えるためだと、熱く語りましょう。
たとえば、あなたが僕の上司だとして、僕が休みを取るときに、こう言われたらどうでしょう?
「小さいころからバスケットボールが大大大大大好きで、中学・高校はバスケ部に所属しておりました。それゆえ、小さいころから、ずっと世界最高峰のリーグ、NBAに憧れて育ってきました。そんな僕だったのですが、ひょんなことから、NBAのチケットを、偶然にも、手にすることができたのです。これは奇跡、そして運命としか言いようがありません。神様からのご褒美かも。そんなことで、小さいころからの夢が叶うチャンスを手に入れたのです…だから休みをください!」
これは、僕が初めて休みをもらって、ひとりで海外旅行に行くときに使った、上司へのプレゼンテーション方法です。
このプレゼンテーションの結果、見事、初勝利を収めた僕は、同僚が誰も休まない時期に休みを取ることができ、小さい頃からの夢を叶えることができました。
ただ「休みたいです!」と一方的に伝えても、このプレゼンテーションに勝つことはできません。
小さいころからずっとやりたかったことに、このタイミングであれば挑戦することができる。
このタイミングを逃すと、次にできる機会は、数年後かもしれない。もはや生きているうちにはこないかもしれない。
最後のは言い過ぎですが、こんなふうにとにかく夢を熱く語りましょう。
夢を語れば、それを断る上司はなかなかいないはず。
むしろ夢を出されると、上司が世間体を気にするタイプであればあるほど断りづらいはず。夢を壊した上司だなんて、まわりには絶対に言われたくないですからね。
だからこそ、夢を語ることも、ある意味、上司への忖度なのです。
上司にとって、休みを取らせていいのかどうかの判断をしやすくなる材料であり、上司にとっての「言い訳」を提示することなのですから。だから、積極的に使っていきましょう!
とはいえ、小さいころからの夢なんてない…と思った方、ご安心ください。
これは、あくまで休みを取るためのプレゼンテーション方法なので、休みを取るのに十分な理由、つまり上司が納得できる理由になっていればOKなのです。
ですので、夢がないのであれば、“夢があったこと”にしてしまいましょう。ちなみに、ここだけの話ですが、僕が使った小さいころからのNBAを観るという夢。
確かに、高校まではバスケ部でしたが、NBAにはまったく興味がありませんでした。でも、いいんです。それで僕も休みが取れて、上司も納得できるのであれば。
■断りづらい理由を使う
この根回しは、いってしまえば、上司との休みをめぐる戦い。われわれにとっては、確実な勝利が求められます。
だからこそ…ここで、忖度。
上司が判断に悩まないようにアシストするのも、部下の役目。
ということで、あえて、こちらから、上司が断りづらくなる理由を、やんわりと伝えましょう。つまり、上司に、「断らなくていい理由」を与えるのです。
たとえば、あなたが僕の上司だとして、こう言われたらどうでしょう?
「死ぬまでに一度は参加してみたかった、スペインのトマト祭り(ラ・トマティーナ)。今年はお祭りの日がちょうど日本の休日と重なっていて、もし今年行くとすれば、数日の休みを足すだけで行けるのです…だから休みをください!」
また、こう言うのもどうでしょう?
「いつか行きたいと思っていた、ギリシャのサントリーニ島。ですが、いつも休める
時期に限って航空券が高くて諦めていたんです。でも、このタイミングの休みであれ
ば、いつもより10万円近く航空券の値段が安くなっていて、ここだったら予算的にも
行けそうなんです…だから休みをください!」
いつでもできること、いつでも行ける場所を、休む理由として提案したとしたら、上司に、「だったら、別のタイミングでもいいじゃん」と、断る理由を与えてしまいます。
しかし、このタイミングじゃないとできないこと、このタイミングじゃないと行けない場所を提案すれば、上司もさすがに断りづらいでしょう。
結婚記念日、パートナーと付き合って○年記念日、家族や友人の誕生日など、記念日も有効ですね。
また、金額的な制約があることを伝えるのも効果的です。
その日程を逃したら、金額的にあなたが損をするのであれば、それを断ることで、あなたの恨みを買う恐れもあると考えてくれて、あなたの休みを断れなくなる上司もいるかもしれません。
日程や金額的な制約などがあって、断りづらい理由であれば、上司から休みをもらえる確率はぐんと高まると思います。
とはいえ、やりたいことが、いつでもできることだったり、金額的にもそんなに困らないことだと思った方も、ご安心ください。
繰り返しになりますが、これは、あくまで休みを取るためのプレゼンテーションなので、休みを取るにあたって、上司にとって断れない“十分な理由”になっていればOKなのです。
ですので、いつでもできることだとしても、その休日でないとできない理由をつくってしまいましょう。要は、作文をすればいいのです。
仕事でも、成果を報告したり、上司に根回ししたりするときに、承認してもらいやすいように、理由を作文したりしますよね? 同じことを、ここでも使うのです。
その日にしか見られないものが見られるとか、その日であればいちばん高い時期と比較するとかなりお得だとか、上司が断りづらい理由を作文して伝えましょう。
休みを取って休み方改革を始めた先には、明るい未来が待っています。
しかし、まだこの段階では、成果を出したわけではないので、そんなに強がらずに、ときには下手に出まくって、まずは確実に休みを獲得しましょう。
それでやっと、あなたも、休み方改革のスタートラインに立てるのです。
今までの「休み方」から抜け出したい方はこちら!
マイクロソフトやヤフーが週休3日を導入するなど、積極的に休むことが推奨されるようになりつつありますが、全会社員が休みやすくなっているわけではありません。
人の顔色を伺うばかりで、会社を休むことも出来なかった東松さんが、勇気をふり絞って休んだことからはじまった「休み方改革」。
仕事ばかりで自分の時間がない…と少しでも思ったことがある方にこそ読んでほしいです!
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