

「まともに観た経験もなかった」というまま業界入り…
女性AV監督・鈴木リズが語るプライドと野望「性の教科書になるAVをつくりたい」
新R25編集部
ほとんどの仕事で、男女の差なく働くことが当たり前となっている現在。
ただ、勝手な偏見ながら、いまでも“男性向け”なイメージが強い業界もあります。そのひとつが「AV業界」。
アダルトビデオメーカー「桃太郎映像出版」の広報・営業として活動する鈴木リズさんは、“女性AV監督”として、男性向けAVをつくりつづけています。
“女性AV監督”っていったいどんな仕事なの? なぜその仕事を選んだの?
今回、普段はなかなか知ることのできないその実態に迫ったところ、女性AV監督ならではの視点で、R25世代が直面しがちな「性の課題」と、リズさんの目指す「エロ」の未来について、やさしく、熱く教えていただきました。
〈聞き手=高城つかさ〉
【鈴木リズ(すずき・りず)】AVメーカー「桃太郎映像出版」の広報・営業を務めるかたわら、男性向けAV監督としても活動。主な代表作は「ヤリマンワゴンシリーズ」。講演会やコラム執筆など、さまざまな形で性についての意見を展開している
なぜAV監督になろうと思ったんですか…?

高城
今日の取材に向けて、リズさんの代表作「ヤリマンワゴンが行く!!」シリーズ、観てきました!
※「ヤリマンワゴンが行く!!」シリーズ=(リズさんと女優さんが一般男性をナンパして
ワゴンの中であんなことやこんなことをしちゃう
企画)

鈴木さん
ありがとうございます!
あれじつは、私が中学生のころ逆ナンするのが大好きだったところから生まれたシリーズなんですよね!(笑)
えっ

鈴木さん
当時、制服姿の男の子を見つけては声をかけまくっていて、噂が広まったのか他校の全校集会で「最近下校中に声をかけてくる人がいるので注意してください」って言われてたらしいです。

高城
伝説残してるじゃないですか…
もしかして、学生時代からAV業界に興味があったんですか?

鈴木さん
学生のころから「いつか性に関する業界で働きたい」とは思ってましたね。

高城
それはなぜなんでしょうか…?

鈴木さん
高校生のころ、食べ物を踏みつぶして興奮する人や、風船が割れる様子を見て興奮する人がいるってことを知る機会があって。

高城
ふ、風船で!? 全然わからない…!

鈴木さん
でしょ!?
でも、セックスとはまったく関係ない部分で性的に興奮できる人がたくさんいるんだ、もしかして人間は一人ひとり違う性癖を持っているんじゃないかと性の奥深さに惹かれて、性業界に興味をもちました。

高城
それで、桃太郎出版に入ったと。

鈴木さん
いや、結局AV業界ではなく一般企業に就職したんですけど、前職をやめたくなったときに「そういえば私、性業界で働きたかったじゃん!」と思い出して。
ちょうどそのころ、“美人すぎるAVメーカーの広報”として桃太郎出版の広報女子・さやかさんが話題になっていたので、「AVの広報ってどんな仕事なんだろう」と好奇心から話を聞きにいったんです。
そしたら、いつの間にか面接になってたんですよ。
たまに聞くけど、ホントにあるんだその展開…

鈴木さん
当時は性に興味はあっても、まともにAVを観た経験もなかったのですが…
退職しようか迷っていることを話しているうちにあれよあれよと話が進み、AV監督&営業&広報を務める今の私が誕生しました。

高城
リズさんは、監督デビューしてからというもの男性向けAVを撮りつづけてますよね。
勝手に、女性は女性向けAVを撮りたいものかと思っていたんですが…

鈴木さん
私自身が完全に男性向け作品のほうが好きだからです。
女性向けって、部屋もものすごくキレイで、キラキラ日が差し込んでいてすごく素敵な雰囲気なんですけど、ちょっと夢見がちで個人的にはじれったくなっちゃって心の声が騒ぎ出すんですよね…
「いやもっと本能むきだしでリアルな作品観せてくれよ!」って。
男性的な職場で、大変じゃないの…?

高城
お仕事現場は、やっぱり男性向けの作品をつくる場所じゃないですか。
そんなところで、「女性監督」をやるのは大変じゃないんでしょうか? 変な目で見られたり、からかわれたりとか…

鈴木さん
業界内ではほとんどないですね。そんなイメージないかもしれませんが、じつは、AV業界って女性がけっこう多いんです。うちのメーカーはスタッフの半数は女性なんですよ。
AV業界にいる女性って「これが撮りたい」という確固たる意志をもって活動してることが多い。
だから、「女だから◯◯できないだろう」みたいな声もあんまり聞こえてこないかな。

高城
そうなんですね…!

鈴木さん
ただ、SNSではめっちゃからかわれます(笑)。

高城
うわ、なんかわかる気がする…
どんなことを言われるんですか?

鈴木さん
「エロいことを発信してる女性だからヤレそう」みたいな感じかな。
でも、それって個人的にはラッキーというか、しめしめみたいなところがあるんですよね。

高城
えっ、嫌じゃないんですか?

鈴木さん
その声があればあるほど、「エロい女性が作っているAV」というブランディングができるので。
私はエロを商売にしているので、それによってさまざまなメディアに出られたり、意見を発信しやすくなったりするのはとても好都合なことなんです。
だからもう、「どんとこい! エロい女が作ったAV観てみろ!」といった気持ちで構えてますよ(笑)。
強い
女性AV監督に集まる「女性の悩み」とは

鈴木さん
でも、私はそうですけど、一般の女の子は、性についてオープンに語って「ビッチ」「簡単にヤレる」みたいな扱いを受けるリスクは極力負いたくないから、性についてオープンに話せる機会なんてほとんどないですよね。

高城
それはめっちゃ思うな…

鈴木さん
だから、私の「質問箱」には、女の子たちから匿名の性の悩み相談が毎日のように押し寄せているんですよ。
普段から性にオープンな私になら偏見なく答えてもらえるという期待があるんだと思うんですけど…裏を返せば身近に相談できる環境がないってことなので、正直複雑な気持ちです。
※質問箱=匿名で質問を送ることができるWebサービス

高城
具体的には、どんな悩みがくるんですか?

鈴木さん
「AV女優みたいに○○できるようになるにはどうしたらいいですか?」がとくに多いですね。
「恋人がいろいろ頑張ってくれるのに、AV女優みたいに反応できない。自分の身体はおかしいんじゃないか」って。

高城
うわ…じつは私もまったく同じ内容で悩んだことあります。

鈴木さん
ときどき男性からも質問が来るんですが、それも「恋人がAV女優さんのように反応しないから、満足させてあげられていないかもしれない」という内容がかなり多いんです。
これ、何が起こってるかわかります?

高城
ええー…! なんだろう…

鈴木さん
これってようは、女性が性についてオープンに語れず一人で悩みを抱え込んでしまうがゆえに、AVに「性の正解」を求めてしまっている状況なんです。
AVはあくまでも、視聴者の性欲を満たすことに特化させたファンタジー。ドラマや映画で女優さんが涙を流すように、AV女優は「気持ちよさ」を表情や身体で表現できる、“演技のプロフェッショナル”なわけで。
AVみたいなプレイをされても実際には気持ちよくないことなんて、ホントはたくさんあるわけですよ。
「素人のみなさんがAV女優を目指す必要はないんです」

鈴木さん
だけど、女性は女の子同士でも性のことを話せないから、正解がわからなくて自分の感覚を疑ってしまう。
そうなると男性に「気持ちよくない」と言うこともできないから、男性もますますAVを信じて、的外れなプレイを女性に要求してしまう…という悪循環が生まれているんです。
教科書のようなAVを作りつつ、性についてオープンに話せるイベントを

高城
リズさんは今後、AV監督としてどんな活動をしていきたいと思っているのでしょうか?

鈴木さん
ひそかな野望は…性の教科書になり、かつ興奮できるAVを作ることです(笑)。
真面目な人だけが観て勉強するんじゃ意味がないので、今ふつうにAVを楽しんでいる人たちがつい手にとってしまうような「AVらしいエロさ」を保ちながら、正しい性教育に貢献できる作品ができたら、みんなハッピーだなあって。

鈴木さん
それと、女性が性について話し合えるリアルイベントもやりたいですね。
今はSNSで匿名で相談してきてくれるけど、そこでオープンに発信する感覚に少し慣れたら、今度はぜひ直接お話できるステージを用意したいんです。
もっと女性向けのイベントを増やしていくことで、女性が性についてオープンに語ったり関わったりすることを、少しずつ当たり前の景色にしていきたい。

高城
じつは私も以前、鈴木さんが登壇した女性限定イベントに参加したんですけど、普段は面と向かって話せない内容ばかりで、すごく貴重な時間でした。

鈴木さん
そういう場が少しずつ増えて、男性も女性も性についてフラットに語り合えるのが当たり前になって、いつか私の質問箱に悩み相談が来なくなったらいいな。
だって…女性が匿名でなければ性の悩みを相談できないような世の中、嫌じゃないですか。
「女性AV監督という立場を思う存分活かして、性に悩んでいる人に寄り添いたい」とお話してくださった、鈴木リズさん。
「女性AV監督」ってどんな人かまったく想像がつかなかったけれど、リズさんは「エロ」を愛し、誰もが平等に「エロ」を楽しめる未来を目指す、素敵な女性でした。
帰りには最新作「ヤリマンワゴンが行く!! ハプニング ア ゴーゴー!! 麻里梨夏とリズの珍道中」のプレゼントも。
リズさんの目指す未来、やってくるといいなあ。
〈取材・文=高城つかさ(@tonkotsumai)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/写真=二條七海(@ryuseicamera)〉
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