ビジネスパーソンインタビュー
制度面の準備から人脈のつくり方まで
“お試しフリーランス”をしないと危険。働き方の専門家が語る「フリーランスになるためのステップ」
新R25編集部
「フリーランスになりたい!」と思っても、はたしてお金をちゃんともらえるようになるのか、どう仕事を取ってくればいいのか…とさまざまな悩みを抱えて踏みとどまってしまう人は多いはず。
そこで今回は、複業研究家兼、働き方改革の専門家として個人向けのコンサルもおこなう、西村創一朗さんに話を聞きました。
フリーランスになるタイミング、独立前の事前準備など、未経験者がフリーランスになる前に知っておくべき話を詰め込んでいます。
〈聞き手=いしかわゆき〉
【西村創一朗(にしむら・そういちろう)】複業研究家・株式会社HARES代表取締役・ランサーズ株式会社 タレント社員 PRスペシャリスト。2011年に新卒でリクルートキャリアに入社。2015年、株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、2017年に独立。現在は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングをおこなう
ただ独立するのは一番危険。まずは副業を始めて、タイミングを見計らおう
いしかわ
「フリーランスになりたい!」と思っても、何から始めたらいいのか悩む人が多いはず。
事前にやっておくべきことってあるんでしょうか?
西村さん
はい。一番危険なのは、何のツテもないまま会社を辞めて独立してしまう「ゼロフリーランス 」ですね。
ゼロフリーランス…!
西村さん
当然ながら「フリーランスになりました! 仕事ください!」と言ってもいきなり仕事をもらえるわけではありません。
最近では「新卒フリーランス」という言葉もあるくらいで、「とりあえずフリーランスになればなんとかなる」と夢を抱いている人も多いですが、かなりリスクが高いのでやめておきましょう。
いしかわ
そういう人、ネットを見ているとたまに見かけますね…
西村さん
一度も会社に所属しないまま独立すると、必要最低限のビジネスマナーも身につかないので、かなり雑な仕事をする人が多い印象です。
いしかわ
じゃあまずは会社員として働くほうがいいってことですね。
西村さん
そうです。そして、いきなり独立するのではなく、会社員をやりながら副業をする「お試しフリーランス」から始めるのがおすすめです。
たとえば平日の夜に時間をとってライティングの仕事を受けるとか、週末だけ稼働して撮影の仕事をするとか。そうすればリスクヘッジをしつつスムーズにフリーランスにもなれるはずです。
いしかわ
なるほど。「お試しフリーランス」って、どれくらいやればいいんでしょう?
西村さん
独立前の理想は「行列ができている状態」であること。
つまり副業としては受けきれないほど仕事がくるようになったら、それがフリーランスになるタイミングだと思います。
いしかわ
その状態になるまでにけっこう時間がかかりそうですね…
西村さん
僕が独立したのは副業を始めて3年半後でした。急いでフリーランスになる理由がなければ、それぐらいの準備期間を取ったほうが安心だと思いますね。
フリーランス初期は、クラウドソーシングで実績をつくるのがおすすめ
いしかわ
「お試しフリーランス」の最初のころって、どうやって仕事をもらってくるんですか?
西村さん
手っ取り早いのは「ランサーズ」や「クラウドワークス」など、仕事の受注を仲介してくれるクラウソーシングサービスを活用すること。
ホームページ制作、アプリ開発、デザイン、ライティングなど幅広い案件が常に用意されてるので、自分のスキルに合うものに応募しましょう。
西村さん
また、単発ではなく長く働きたい場合は、そういった案件に特化した「ランサーズエージェント」や「クラウドテック」といったサービスもあります。
まずはクラウドソーシングで実績をつくり、それから本格的にフリーランスとして仕事を受けるといいでしょう。
仕事をもらうための人脈のつくり方
西村さん
フリーランスになってみると、仕事の8割くらいはすでにつながっている人からの発注になるケースが多いんです。なので人脈をつくることは、とても重要ですね。
ありがたいことに、僕は独立してから一度も営業をしたことがないんですよ。
いしかわ
それはすごい!
西村さん
もし独立を考えているのであれば、会社員のころから社内と社外でつながりを構築していきましょう。
いしかわ
人脈をつくるおすすめの方法ってありますか?
西村さん
人脈のつくり方は「空中戦」と「地上戦」の2通りあります。
いしかわ
空中戦と地上戦…
西村さん
まず空中戦というのは、ネット上でつながりをつくることを指します。発信が得意な人は、SNSやブログなどを活用したブランディングで人とつながっていきましょう。
軌道に乗りさえすれば少ない工数で幅広くアプローチできるので、かなり効率がいいです。
いしかわ
ここ数年はSNS上での個人ブランディングが流行ってますよね。では地上戦は?
西村さん
地上戦というのは、いわゆる“足で稼ぐ”方法。つまりイベントへの参加や、飲み会などで人と会うことを指します。
地味なんですが、ネット上での発信よりも人となりを理解してもらいやすいですし、より強固な関係を築きやすい。
両方の「戦」を並行でおこなって、つながりの幅と深さをつくっていくのが理想ですね。
フリーランスになる際に押さえておくべき制度
いしかわ
会社員のうちは税金とか、面倒なことは会社がやってくれていて、よくわかってない人が多いと思うんですよね。税金とか制度面で事前に準備しておくべきことはありますか?
西村さん
まず、独立して開業したら個人事業主として国税庁への申請が必要です。
国税庁のサイトにある「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を記入し、納税地の税務署に送付・または持参してください。
西村さん
フリーランスは税金を支払うために必要な「確定申告」も自分でやらなきゃいけません。もし申告しないと、追加で税金を払うペナルティが発生します。
いしかわ
うわぁ、でも確定申告って自分でやるとめちゃくちゃ面倒なんですよね…?
西村さん
そうですね。ただ最近では、「マネーフォワード クラウド」や「freee」などのクラウド会計サービスが、作業の大部分を自動化してくれます。ぜひ利用しましょう! 僕はずっと「freee」を使っています。
いしかわ
フリーランスの強い味方ですね!
西村さん
次に、保険は基本的に会社員以外を対象とした「国民健康保険」に入ることになります。
ただし、一定の条件を満たせば会社で加入していた保険をそのまま継続し、2年間は保険料の支払いを安く抑えられるケースがあります。ぜひ加入している保険のサイトをチェックしてみてください。
西村さん
任意継続するためには退職の翌日から20日以内に手続きをしなければならないので、退職前からしっかり調べておくことをおすすめします。
フリーランスとしての寿命を長くするため、生活サイクルを死守しよう
いしかわ
続いて、独立後に気をつけるべきこともお聞きしたいです。
西村さん
つまずきやすいのは、時間や案件の管理を含めた「セルフマネジメント」ですね。会社員と違い、フリーランスは24時間を自由に使えるため強制力がなく、効率よく仕事をさばけないケースが見られます。
また、独立初期は「ご祝儀発注」で案件の依頼が急増し、パンクしてしまう恐れもあります。
いしかわ
際限なく働かなきゃいけなくて、“ひとりブラック企業”になってしまうんですね…!
西村さん
そうなんです。僕は、自分のパフォーマンスを最大限発揮できるサイクルを大事にしています。
毎日23時に寝て5時に起き、7時から16時まで働く、という生活サイクルを死守しています。フリーランスとしての寿命を長くするためにも、自分の生活を守りましょう。
受ける仕事の金額設定はどうすべき?
いしかわ
なるほど。あと、気をつけるべき点としてお金の話がありそうです。
特に会社が負担してくれてた税金や保険料などがどれくらい自分に降ってくるのか…会社員のころと同じくらいの生活をするにはどれくらい稼げればいいんでしょう?
西村さん
ざっくりいうと、会社員時代の1.5倍ほどは稼いだほうがいいと言われています。単に会社員時代と同じくらいの給料が稼げればOK、と見くびっていると、痛い目を見るでしょうね。
いしかわ
受ける仕事の数と単価もそれを基準に設定しないといけませんね。
西村さん
目安として僕の話をすると、はじめは会社員のときの時給を計算し、それを下回らないように受ける仕事の値段を設定してました。
そして需要が高まって“行列”ができてくると、どうしても仕事を断らなければならないときがきます。それが単価を上げるタイミング。
似た例として、航空券は旅行需要が増える夏の時期などに値段が一気に上がりますよね。あんなイメージです。
いしかわ
「早く仕事を依頼したいんだったら、その分お金ください」ってことですね。
最後に、フリーランスで成功していくために大切な考え方はありますか?
西村さん
フリーランスは、いわば「株式会社“自分”」の経営者。なので、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」をちゃんと持つことが成功のコツだと思っています。
最終的に何を成し遂げたいのか(ビジョン)。そのために、どんな使命を果たすのか(ミッション)、そして、どんな仕事で価値を出していくのか(バリュー)。
この3つを言語化しておくと、いざ仕事がきたときに、受けるかどうかの判断基準にもなります。
いしかわ
会社でいう「社訓」みたいなものを持つべきなんですね…!
西村さん
やりたくない仕事の依頼がきてしまうのは、そもそも自分がやりたいことを提示していないのが原因であることが多い。
ミスマッチを防ぐためにも、“3つの軸”をきちんと持って、何のためにフリーランスになったのかを度々立ち返りながら進んでいってほしいですね。
会社員として不満のたまる生活を送っていると、「早くフリーランスになりたい!」と考える人も多いかも?
気持ちもわかりますが、フリーランスはなることよりも、長く続け、成功することのほうが大切。
まずは「お試しフリーランス」で仕事と人脈をつくり、万全の状態で臨みましょう!
〈取材・文・撮影=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉
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