ビジネスパーソンインタビュー
時代を生き抜く羅針盤『新・魔法のコンパス』より
集客とは、人の不安を取りのぞいてあげる作業だ。ボクがたどり着いた「集客の本質」
新R25編集部
「僕たち人間は“知らないものを嫌う性質”を持っている」
現代の革命家・キングコングの西野さんはそう話します。しかし、「なんかよく分からないけど、怪しい」と蓋をしてしまったモノのなかに未来は眠っています。
今回は、激動の現代にあっても変わらない「お金」や「広告」のルールについて、自身の経験をもとにわかりやすく書かれた西野さんの著書『新・魔法のコンパス』のなかから、しなやかに時代を歩くための羅針盤となる4本の記事をお届けします。
集客したければ、「お客さんの1日」をコーディネートしろ
吉本興業は全国に10個近く劇場を持っている。
だけど、1年間を通して安定してお客さんが入っているのは大阪にある「なんばグランド花月」ぐらいで、あとの劇場は、お客さんが入っている日があったり、入っていない日があったり。
お客さんが有名人(強いコンテンツ)に釣られてやってくるのであれば、東京の劇場は常に満席のハズだ。
だって、テレビの人気者達が出ているんだもん。
しかし、東京の劇場が毎日満席ということはない。
どうやら「有名人をブッキングすれば、お客さんが集まる」というわけでもないらしい。
だとしたら、「なんばグランド花月」と他の劇場は、どこで集客力の差が生まれているのだろう?
答えは、「お客さんの1日がコーディネートできているか否か」だ。
当たり前の話だけど、大阪にある「なんばグランド花月」に来てもらうには、大阪に来てもらわないといけない。
「なんばグランド花月」のためだけに大阪に来てもらうのは難しいけど、USJに行って、たこ焼きを食べて、なんばグランド花月で「吉本新喜劇」を観て、お好み焼きを食べて、夜はミナミで吞むことができるのであれば、「大阪に行こう」となるわけじゃない?
多くの人が大分県の「湯布院」にイイ感じの温泉があることは知っていて、「いつかは行ってみたい」と思っているけど、多くの人が「湯布院」に行ったことがない。
でも、「湯布院で友人の結婚式がある」となったら、前泊して、前々から行ってみたかった湯布院に行く。
答えが見えてきたかな?
お客さんは時間を持てあますことを極端に嫌う。
裏を返せば、参加理由を複数個用意して、時間を持てあまさないことを担保してあげれば、参加ハードルがグンと下がる。
以前、こんな実験をしてみた。
1日目は、「ライブのチケット」だけを売り、2日目は、「ライブのチケット」+「終演後の交流会の参加チケット」を売ってみたんだ。
すると面白い。チケットが売れるスピードがまるで違ったんだ。
お客さんが支払う金額は2日目の「ライブ+交流会」のほうが高いのに、お客さんは問答無用で2日目を選んだ。
「なんばグランド花月」や「湯布院の温泉」も、これと同じ理屈だ。
キミがお店を出す時やイベントを開催する時は、キミのお店やイベントの力だけでお客さんを呼ぶのではなく、「ここに来たら、前後の時間にこんなコトができますよ」と案内して、1日をコーディネートしてあげるといいと思うよ。
人は「確認作業」でしか動かない
「集客」の根幹にあるのは「人間は確認作業でしか動かない」という現実だ。
ボクらは、すでに知っているものにしか、反応しないんだ。
旅行先を決める時だってそうだよね。
「20万円を払ってくれれば、とっても素敵な場所に連れてってあげる」という誘いには誰も乗らない。
ボクらは、テレビやネットやパンフレットで、“一度見た場所”を旅行先として選ぶ。
「モナリザ」を観る時だってそう。
教科書で「モナリザ」を見たから、「本物を観てみたい」という“確認作業”で、ルーヴル美術館に展示されている「モナリザ」を観に行く。
「ルーヴル美術館の奥に、何かよく分からないけど有名な絵があるよ」という誘い文句では、ボクらはルーヴル美術館には行かない。
つまり、ボクらはネタバレしているものにしか足を伸ばさない。
ときどき、「ネットで(無料で)見られたら、会場に来てもらえない」という理由からスマホの撮影やSNSの投稿を禁止しているイベントがあるけど、「集客」のことを考えるとまったく逆だね。
当たるかハズレるか分からない場所には誰も足を運ばない。
人は冒険に憧れて、冒険を避ける生き物だ。
ネタバレを恐れちゃダメだよ。
ネタバレから始まるから。
「インスタ映え」で客が増えるとは限らない
「インスタ映え」という言葉が生まれてから、お店の内装をとにかくオシャレにしたがる人が増えた。
「お客さんのインスタに、自分のお店の写真が並ベば宣伝になるから」といった広告的な狙いだろう。
気持ちは分かるけど、それが「集客」に繫がるかどうかは、時と場合による。
何かにつけて、「オシャレ」を追い求めてしまうボクらだけど、
たとえば、店内をオシャレにしすぎたり、ホームページをオシャレにしすぎたり、ポスターをオシャレにしすぎたりしてしまうと、
「私なんかが中に入っても大丈夫なのだろうか?笑われないだろうか?」という、「自分のセンスに自信がない人」を不安にさせてしまうということを忘れちゃいけない。
そして、そういう人達のほうが多数派だ。
「集客」というのは、「楽しめるかな?」「置いてきぼりにならないかな?」といった“不安を取り除いてあげる作業”だ。
「お客さんの安心を担保する作業」と言ってもいい。
たとえば、突如として、田舎に「インスタ映えするオシャレ店」を出しても、そこに生まれるのは「私なんかが店に入ったら、恥をかかないかしら?」という不安で、集客に繫がらない。
先日、愛知県豊橋市にある青果店「一期家一笑(いちごやいちえ)」のオーナーさんから相談を受けたんだけど、2000万円をかけて店内をオシャレに改装したのに、その後、客数が40%減少したそうだ。
地元の方にインタビューをとってみると、「オシャレで素敵」という若いお母さん方の声もあった一方で、「私なんかが中に入ってもいいのだろうか?」という声もあった。
素敵なお店なので、是非、遊びに行ってみてください。
集客活動をするオーナーに迫られている選択は「オシャレをとるか?集客をとるか?」で、「オシャレ」を選んでしまうとオシャレ感度の高いお客さんは呼べるけど、一方で、自分のセンスに自信が持てないお客さんが離れてしまう。
オシャレには「排除」の力学が働くわけだ。一方、「集客」を選ぶのであれば、「少しダサイ」は受け入れなきゃいけない。
たとえばコチラは、ボクがやっているオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」のチラシ。1枚目が東京で配っているチラシで、2枚目が地方で配っているチラシ。
東京にはオシャレじゃない場所を避ける人も多いので、東京で配るチラシは、ダサ過ぎないように。
一方、地方で配るチラシは「私が入っても大丈夫」と思ってもらえるようなデザイン。デザイナーには「近所のスーパーに貼られているレベルのデザインで」と発注した。
地域や年代によって、デザインレベルはコントロールしなくちゃいけない。
リピーター獲得の方程式は「満足度−期待値」
ボクの活動の本丸は国内最大のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」で、絵本にしても、WEBサービスにしても、美術館建設にしても、ここからすべてが始まっている。
サロンメンバーの入退会は毎日おこなわれていて、その数字(グラフ)に引っ張られてボクが活動内容を変えることは滅多にないんだけれど、
「◯◯をしたとき、人はこう動く」ということを把握した上で活動したいので、ボクは「西野亮廣エンタメ研究所」の入退会の数字を毎日見ている。
なんだか、新しい匂いのする「オンラインサロン」だけど、抱えている問題はさて「リピーター」はどう作る?
この問いには明確な答え(計算式)があって、次のとおり。
「満足度」−「期待度」=リピート度
満足度というのは「行ったあとの実感値」のことで、期待度というのは「行く前の期待値」のことね。
リピーターを作るには、この計算式の答えを「プラス」で終わらせなきゃいけないわけだ。
なので、集客に焦るあまり、
「ウチのオンラインサロンに入れば、人生が変わりまーす!」
「大学に行くぐらいなら、ウチのサロンに!」
みたいな誇大広告は、上げすぎた期待度を、満足度が超えられないので、一度お客さんが来てくれたとしても、「一見さん」で終わる。
そして、ここが大事。
一度離れたお客さんは簡単には帰ってこない。
誇大広告は、「簡単には帰ってこないお客さんを増やす作業」と捉えておいたほうがいい。
話を「オンラインサロン」から、お店に置き換えてみるね。
たとえば観光地のパンフレット。パンフレットに掲載する写真に、「奇跡の一枚(超絶景)」を使っちゃダメ。
足を運んでくれたお客さんが期待した超絶景を、現地の景色が超えないから、「来年、また来ますね」とはならない。
でも、だからといって、見映えの悪い写真を掲載してしまうと、そもそも現地に足を運んでもらえない。
足を運んでもらって、かつ、計算式がプラスで終わるような、ちょうどいいラインの期待度(宣伝)を狙わないといけないわけだ。
リピーター作りの要は一にも二にも「期待値コントロール」で、くれぐれも、「広告効果があるから!」といって、満足度を超えてしまうような広告は出しちゃいけない。
西野さんの経験が詰まった『新・魔法のコンパス』で“時代の歩き方”を学ぼう
「発見だらけ。おそるべき具体性。なにより、『今日からなんかやってみよう』という活力がみなぎった(又吉直樹)」
昨日までの常識が、今日非常識になる。
そんな激動の現代における「時代の歩き方」について西野亮廣さんが書いた『新・魔法のコンパス』。
逆境の乗り越え方からお金の稼ぎ方まで教えてくれる、挑戦するあなたへぴったりの一冊です!
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