ビジネスパーソンインタビュー

「報連相からイノベーションが生まれると思う?」土屋Pが語る3つの“アイデア企画術”

新企画「NO BORDER」にも挑戦する“伝説の企画男”

「報連相からイノベーションが生まれると思う?」土屋Pが語る3つの“アイデア企画術”

新R25編集部

2019/06/10

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「若者の○○離れ」はさまざまなパターンがありますが、一番よく聞くのは「テレビ離れ」ではないでしょうか。

実際、自分も子どものころに比べるとテレビを見てない気がしますし、まわりには「家にテレビがない」という人も多いです。

そこで今回は、あの伝説のテレビマンに取材できることとなりました。その男とは、土屋敏男さん。またの名を「T部長」「土屋P」。

『電波少年』シリーズや、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などの人気番組を手がけてきながら、今年7月から開催される3Dアバターを使ったエンタテインメント「NO BORDER」でも企画・プロデュースを務めるなど、チャレンジを続けるレジェンドです。

いったいどんなお話が聞けるのか…?

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

【土屋敏男(つちや・としお)】1956年生まれ。1979年に日本テレビに入社。『進め!電波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などの人気番組をプロデュースする。現在は、東京大学大学院情報学環教育部で非常勤講師も。2019年7月7日から、大阪城COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールにて吉本興業が開催する超新感覚エンタテインメント「NO BORDER」でも企画・プロデュースを務めている

天野

今日は、「若者のテレビ離れをどうしたら食い止められるのか」を、土屋さんに考えてもらおうと思ってきました!

土屋さん

その質問自体、古いと思うけどなあ。

天野

え…古いですか…!

まずい、質問が刺さってない

土屋さん

届ける“ルート”はどうでもいいんじゃない?

テレビの前に座ってもらって、○時に見てもらうっていうスタイルでも、YouTubeみたいに見られるスタイルでも。

それぞれに合わせて、面白いもの作ればいいだけだと思ってやってるけどな。

天野

最近は、テレビのようにリアルタイム視聴する「AbemaTV」なども話題になりますが…そこはどう見ていますか?

土屋さん

「Abema」が若い人に向けて商売の目があるというのは、それはそれでいいんだけどさ。

でも、「Netflix」が来てる、「Disney+」や「Apple TV+」がこれから出てくる、っていうときに、オレらからすると、メジャーリーグが話題になってるときに「国内球団もう1個つくってる」って言ってるようにしか聞こえないのよ。

そう思わない?

天野

え…、いや、どうなんですかね? ノーコメントで!

※『新R25』はAbemaTVと同じサイバーエージェントグループで運営されています

土屋流アイデア術①「報連相」をしない。誰にも相談しない

土屋さん

そうじゃなくて、面白いことを考える「企画者」でいたいよね。

天野

それは失礼しました…

どうしたら面白いものを考えられますかね?

仕事で企画を提案しなきゃいけないビジネスマンのために、教えてほしいです。

土屋さん

まず、「アイデアを提案する」っていう姿勢がすでに違うと思うなあ。

提案なんかしてちゃダメなのよ。自分の役割を判断して、黙ってやる。

さすが、「企画」の話はどんどん出てきます…!

土屋さん

日本ってすぐ「報連相」っていうじゃない。

報告、連絡、相談。あれがダメ。バカじゃないんだから自分で決めればいいんだよ。報連相からイノベーションが生まれると思う?

天野

そう言われればそうですね…

土屋さん

電波少年』のときも、誰にも相談なんかしてないもん。「議員会館にアポ無しで行く」とか。

※『進め!電波少年』では「
村山富市の長い眉毛を切ってあげたい!
」という企画で、議員会館をアポ無し訪問。眉毛の長さがトレードマークだった村山富市氏(当時日本社会党委員長、のちに首相)の眉毛をハサミで切るという企画をやっています。
ヤバすぎるだろ…

土屋さん

議員会館に刃物持って突撃してもいいですかね?」なんて相談してたら、絶対誰か止めるでしょ(笑)。

“ストライクゾーン”のコーナーギリギリって、現場でしか狙えないんだよ。上に相談してたらダメだね。

天野

そのスタンスで、怒られたことってないんですか?

土屋さん

ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」のときは、技術の人たちに怒られた。

あれ、猿岩石とディレクターの3人でヒッチハイクしてるんだけど、ディレクターが、運動会で撮るようなハンディカメラで撮影してるの。撮影部隊が行くと10人ぐらいになっちゃうからね。

天野

あれ、ほんとに3人で行ってたんだ…!

土屋さん

撮ってきたら、技術の人が「テレビの電波で、こんなクオリティ低い映像流せない」って怒るわけ。「プロとしてありえない」とか。

でも、「そんなこと言われたってもうこれしかないですから!」ってなんとか押し切ったの。

放送したら、「画質が悪い」なんて誰にも言われなかったよ。「面白い」としか言われなかった。

天野

カッコよすぎるエピソード…

今いろんなバラエティであの手持ちのカメラ見ますよね。

土屋さん

今では当たり前でしょ? でも、オレが無謀なことをやったから、それで業界で当たり前になったわけ。

だからあれ、いまだにアメリカとかほかの国ではやってないんだよ!

土屋さん

でも、怒られるより、怒られないことのほうがはるかに多い。これはオレの経験から言えるね。「え、これセーフなの?」ってことがけっこう多いのよ。

怒られるだろうなと思ってやったのが、『いけ年こい年』でやった「21世紀になるカウントダウンの時間を2分間違える」ってやつ。

※『いけ年こい年』は、土屋さんがプロデューサーを務めた年末カウントダウン番組。2000年から2001年になるときに、
時間表示をわざと2分早め、フライングで21世紀を祝った

土屋さん

問い合わせが殺到してね。

オレは何も言ってなかったんだけどさすが優秀なヤツがいて、「あれは“電波少年”的年越しです」って文章を出したらしいんだけど、オレはそのころには成田空港に向かって高飛びの準備してた(笑)

でも、怒られもしなかったし処分もなし。そんなもんだよね。

土屋流アイデア術②ターゲットをリアルに想像する。自分の見た目も変える

天野

ほかに、アイデアを出す方法ってありますか?

土屋さん

誰に刺したいのかを、リアルに想像すること

『電波少年』は、ずっと「中学2年生の男の子」に向けてつくってたの。

天野

へえー! なぜ中2なんですか?

土屋さん

一番多感だし、それまでは「お兄ちゃんたちの“笑い”」を背伸びして見てるんだけど、中2ぐらいからは「自分たちの笑い」がほしくなる時期なんですよ。

天野

すごいわかる気がします。

多くの会社員も、「仕事上のターゲットと自分の年齢が違う」って、よくあると思うんですが、それってどうしたらいいですかね?

大人なのに、どうやって中2的な発想を持てるんですか?

土屋さん

見た目から自分を変えることだよね。金髪になるとか。

そこですか?

天野

だから土屋さんは金髪なんですか?

土屋さん

っていうと笑われるけどさ(笑)。

でも自分の姿って毎朝鏡で見るじゃん。すっごく影響大きいと思うよ。

鏡で見てる自分がジジイだと、もう自分のことはジジイとしか思えなくなっちゃう。なら、そこを変えるといいよね。

土屋流アイデア術③「ライバルでも、“いい空気”の組織を真似る」

天野

土屋さんの経歴を調べたんですけど、最初バラエティの制作をやって結果が出なかったんですよね? それで編成に“飛ばされた”と。

土屋さん

そうそう。最初はね、上司に言われてパクリ番組を作ってたわけ。

『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ)のパクリで『恋々!!ときめき倶楽部』。

『風雲!たけし城』(TBS)のパクリで『ガムシャラ十勇士』っていう。

名前からして…パクリ感がすごい

土屋さん

それが視聴率的にも大失敗して。

でも、やれって言った人は責任取ってくれないんだよね。「土屋はダメだ」って言われるだけ

「そういうもんなんだ」と思ったよね。今考えると、この失敗から学んだことが大きいから感謝してるけどね。

天野

そこから、30代で別の部署へ異動になるんですね…

そのときは何をしてたんですか?

土屋さん

当時の日テレって「振り返ればテレ東」って言われてたぐらい視聴率がボロボロで、足りないものばっかりだったの。だから、「伸びてる会社はどんな感じなのか」を見に行ってた。

フジテレビに勝手に入り込んで、スタジオで番組収録してるのをずっと見てたわけ。

天野

え、ライバル局ですよね? いいんですかそれ。

土屋さん

どうなんだろうね(笑)。

ダウンタウンの松本を迎えにきた吉本のマネージャー」みたいな顔して行ったら意外と入れたんだよね。

こうやってテーブルでお菓子とか食べてたけど平気だった。

これ読んでテレビ局に侵入しようとするヤツが出ませんように

天野

当時の日テレとフジテレビは何が違ったんですか?

土屋さん

空気が違った。自由でのびのびとしてて、現場が楽しそうに働いてるんだよ。

そのとき、「組織が伸びるかどうかって、すべて空気で決まるんだな」と思ったんだよね。

組織の空気が「閉じてる」か「開いてる」かって、ユーザーに伝わるの。ところがなぜか、だいたいの組織って負けはじめると管理が強くなって、“閉めはじめる”わけ。

天野

すごくわかる気がします。

土屋さん

それで35歳のときに、たまたま日曜夜の30分枠が3カ月だけ空いて、「土屋につなぎでなんかやらせろ」ってことになった。

「もう絶対パクリはイヤだ」「やりたいことをやろう」と思って、『電波少年』をはじめたの。

番組ってだいたい4月とかからはじまるんだけど、ほんとに「つなぎ」だったから、92年7月からはじまってるんだよ。

天野

ついに土屋さんの“やりたかったこと”ができるときがきたんですね!

初回はどんな内容だったんですか?

土屋さん

渋谷のチーマーを更正させる」っていう企画。

あと、イランの言葉(ペルシア語)で「イラン人AD募集!」ってテロップを出してた。

天野

(…やっぱこの人めちゃくちゃだな…)

心の障壁、国境…みんなが「閉じ」はじめている

土屋さん

ちょっとさっきからテレビの話ばっかりしてない?7月からやる「NO BORDER」の話もさせてよ。

天野

あっ、すいません…

3Dスキャナで観客を撮影して、「自分の分身」がステージで踊るのを見られるパフォーマンスなんですね。

世界初のライブエンタメが誕生! 国境なし!年齢なし!性別なし! 「NO_BORDER」

土屋さん

そう、テレビは出演者をみんなが見てる状態だったけど、今はSNSで自分たちもプレイヤーになった。

人が次に見たいものは何か?って考えたら「自分だろうな」って思ったんだよね。

天野

「NO BODER」っていうのはどういう意味なんですか?

土屋さん

今、トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を造ってるじゃない。日本と韓国とか、EUにしてもどんどん「ボーダー」の話になってると思ったんだよね。

「電車内で赤ちゃん泣くのが許せない」とかいう話題も、心の障壁だし。

土屋さん

政治家は「アイツは敵だ」「あの国は敵だ」と“閉じようと”してしまう。

それを見てて「これはダメな組織になっちゃうんじゃないか」と思って。隣の人と手をつないで踊るようなステージを、エンタテインメントの側から発信していくべきタイミングだなと。

やっぱり国でも会社でも、うまくいってないと閉じてしまう。逆に開いていかないと、イノベーションが起こらないから。

天野

なるほど…。テレビ局の組織の話を聞いて「開いていかないと」と感じてたので、すごく納得しました!

土屋さん

ちなみに、この企画も会社(日テレ)にはずっと黙って、1年ぐらいずっと準備してたんだよね。

記者会見の1週間ぐらい前に、はじめて言ったから。

本気の企画は、やっぱり黙って進めなきゃダメだよ!

天野

徹底してる…!!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=土田凌(@Ryotsuchida)〉

土屋Pプロデュースの「NO BORDER」はこちらからチェック!

土屋敏男さんが企画・プロデュースを務める「NO BORDER」。

最新型3Dスキャナで撮影し、観客ひとりひとりのアバターを会場で生成。自分自身が踊り、演劇の一員になるという新感覚のライブエンタテイメントです!

スケジュール、チケットは公式サイトから。

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