ビジネスパーソンインタビュー
睡眠不足はあらゆる病気のきっかけ。睡眠界の権威が語る“コスパよく眠る方法”

日本人の睡眠時間は、世界ワースト1〜2位

睡眠不足はあらゆる病気のきっかけ。睡眠界の権威が語る“コスパよく眠る方法”

新R25編集部

2019/05/30

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R25世代を含め、多くの現代人が悩まされているのが「睡眠不足」

夜遅くまで残業して、帰宅後にも自分の時間が欲しいとなると、どうしても睡眠時間を削りがち。翌朝は寝不足で眠い目をこすり通勤電車に揺られる毎日…。

このままじゃいけないのはわかってても、どんなふうに習慣を変えればいいのかわからない。

そこで今回は「睡眠」の世界的権威に、

・最適な睡眠時間は何時間?

・睡眠不足が続くとどんな影響があるの?

・長く眠るのではなく、睡眠の質を上げて“睡眠負債”を減らす方法は?

こんな疑問をぶつけました。

その権威とは、発行部数30万部突破のベストセラーとなった『スタンフォード式 最高の睡眠』の著者であり、スタンフォード大学教授の西野精治さん

スタンフォード大学の最新研究によると、僕らが知っている“睡眠の常識”には間違いが多くあるようです。

【西野精治(にしの・せいじ)】1955年大阪府出身。スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCN ラボ)所長。医学博士。精神保健指定医、日本睡眠学会睡眠医療認定医。1987年に渡米以来、30年に渡り、睡眠・覚醒のメカニズムを幅広い視野で研究している。米国睡眠学会学会誌「Sleep」編集委員、日本睡眠学会学会誌「Sleep and Biological Rhythm」編集委員なども務める。令和元年5月に、睡眠に特化した企業への睡眠コンサルティングやITを活用したサービスなどを手がける株式会社Brainsleepを設立し、最高経営責任者(CEO)兼最高医療責任者(CMO)に就任する

〈聞き手=サトートモロー〉

日本人の睡眠時間は世界最低レベルで不足している

ライター・サトー

「現代人は睡眠が不足しがち」ってよく聞きます。実際、睡眠不足になりがちなんでしょうか?

西野さん

日本人は特に睡眠不足だということが、さまざまな調査でわかっています。

調査対象は数千人~100万人規模とかなりバラバラですが、そのほとんどで日本人の睡眠時間は、たいてい世界ワースト1位か2位なんですよ。

ライター・サトー

え、そんな状況なんですか!?

西野さん

厚生労働省が毎年実施している「国民健康・栄養調査」の平成29年のデータを見ると、1日の平均睡眠時間が6時間未満という方が、男性 36.1%、女性 42.1%いるという結果になりました。十分に睡眠がとれていない人の割合は、年々増加しています。

さらに私たち、スタンフォード大学の研究チームがおこなった調査では、他国の主要都市と比較して、睡眠時間の理想と現実のギャップが東京の人はとくに激しいという結果が出ています。

日本は類を見ないくらいの、「睡眠不足大国」なんです。

『スタンフォード式 最高の睡眠』より

睡眠不足がもたらす恐ろしい悪影響

ライター・サトー

想像以上に深刻な状況なんですね…。本来はどれくらい寝るべきなんでしょう?

西野さん

理想的な睡眠時間は個人差があるので、「これだけ寝ればいい」っていうのは難しいんです。ただ、一般論として理想を言うなら、やはり1日7時間~8時間は寝たほうがいいでしょうね。

ライター・サトー

ということは、先ほどの調査結果によると、約40%の方は睡眠不足が続いていそうですね。寝られていないことによる悪影響って、どんなものがあるんですか?

睡眠不足の悪影響① ありとあらゆる病気のリスクが高くなる

西野さん

睡眠不足は、ありとあらゆる病気の発症リスクを高めることがわかっています。

〈発症リスクの高まる病気の例〉
・高血圧
・糖尿病
・精神疾患
・うつ
・ガン
・感染症

西野さん

これに関しては大規模な研究があります。2002年、サンディエゴ大学のダニエル・F・クリプケ氏が、米国ガン協会の協力を得て、100万人規模で睡眠時間を調査しました。そのときの平均睡眠時間は7.5時間でした。

そして6年後、前回と同じ人々を追跡調査したところ、病気で亡くなったのが最も少なかったのは、平均値である7.5時間寝ている人々でした。

一方で毎日3~4時間しか寝ていない人は、平均的な睡眠時間だった人々の1.3倍、死亡率が高かったんです。

ライター・サトー

「日中眠い」だけじゃ済まないんですね…

睡眠不足の悪影響② 睡眠不足が続くと太る

西野さん

この実験ではもう1つ、おもしろい結果が出ました。それは「睡眠不足の人は太っている」というものです。この傾向は男性よりも女性に、顕著に表れていました。

ライター・サトー

うわぁ、何でそうなっちゃうんでしょう?

西野さん

カンタンに言うと、睡眠不足により食欲を増す「グレリン」というホルモンが出るのにくわえて、食べすぎを抑える「レプチン」というホルモンが出なくなるからです。

ライター・サトー

寝ないと食べすぎてしまうから、太るのか…

睡眠不足の悪影響③ 起きている間のパフォーマンス低下

西野さん

6時間睡眠が1週間続くと、2日徹夜したのと同じくらいの覚醒具合になってしまうと言われています。別の言い方をすると、血中アルコール濃度が0.8~1.0%くらいのほろ酔いと似た状態です。

睡眠不足になると、それくらいパフォーマンスが下がってしまいます。

ライター・サトー

ほろ酔いで仕事…そりゃ効率なんて上がるはずないですね。

西野さんの奥様、智惠子さん

水分不足は「『喉が渇いたな』と感じたときには危険な状態だ」って言われますよね。睡眠も同じで、自覚症状が出にくいぶん、常に注意を払わないといけないんです。

具合が悪いと思ったら、すでにアウトですよ!

(隣にいらっしゃった奥様が急に熱弁…!)

ライター・サトー

肝に銘じます。

「睡眠負債」は土日に少し多く寝るくらいでは解消できない

2017年の流行語大賞トップテンに選ばれた「睡眠負債」という言葉。睡眠不足が長期にわたり続いたことで、足りないぶんが借金のように膨れ上がった状態を指します。

実はこの睡眠負債、ちょっとやそっとでは解消できない、厄介な存在らしいんです。

ライター・サトー

「平日の睡眠時間が短いぶん、土日で取り戻そう」という声をよく聞きます。あれって効果あるんでしょうか?

西野さん

慢性的な睡眠不足は、1日や2日多く寝たぐらいでは解消できません

ライター・サトー

バッサリだ! もう少し詳しく教えていただけますか?

西野さん

1994年におこなわれた実験でご説明しましょう。この実験では、若く健康的な8人の被験者に、無理やり14時間ベッドに入る生活を4週間続けてもらいました。(※1)

つまり寝られるだけ寝かせてみて、どれくらいの睡眠が必要なのかを確かめようというわけです。

ちなみに、実験前の彼らの平均睡眠時間は7.5時間。働き盛りの20代から見れば、十分な睡眠時間と思いますよね。

ライター・サトー

たしかに。

西野さん

最初の2日間は、みんな13時間ほどぐっすり眠っていました。次第に睡眠時間は減っていき、実験を始めて3週間後には平均8.2時間に固定されました。彼らにとって、必要な睡眠時間は8.2時間だったというわけです。

7.5時間も睡眠をとっていて健康的かのように思える彼らも、実は1日40分くらい足りなかったんです。

ライター・サトー

十分に見えた睡眠時間が、本当は不足していたんですね。

西野さん

しかしここで大事なことは、理想の睡眠時間を知ることじゃありません。たった1日40分の睡眠負債を“返済”するために、寝たいだけ寝る生活を3週間も続ける必要があったということなんです。

『スタンフォード式 最高の睡眠』より

ライター・サトー

土日にちょっと多く寝るくらいじゃ、慢性的な睡眠負債は解消されないってことですね。

西野さん

ですので、普段の睡眠時間を少しでも増やすように工夫しましょう。

睡眠時間が十分にとれないなら、入眠から90分の質にこだわろう

ライター・サトー

睡眠不足の怖さは良くわかりました。でも多くのビジネスマンは、なんだかんだ平日は睡眠時間を確保できないことが多いです。何か対処法はありませんか…?

西野さん

そういう場合は、睡眠の“ゴールデンタイム”である最初の90分の質にこだわりましょう

私たちは通常、眠りに落ちたあとにノンレム睡眠(脳の活動が低下する深い睡眠)とレム睡眠(脳が活動している浅い睡眠)を、4~5回の周期で繰り返します。

この周期のなかで、最も深い睡眠をとれるのが1回目の周期。特に入眠直後のノンレム睡眠が、最も深くなるんです。

『スタンフォード式 最高の睡眠』より

ライター・サトー

最初が最も深いんですね! てっきりだんだん深くなるものかと。

西野さん

この“ゴールデンタイム”で、私たちは眠気(睡眠圧)を解消し、自律神経を整えるなど、さまざまなコンディションを整えます。

記憶の定着や悪い記憶を忘れるなど、精神的にも大切な作業がおこなわれています。

ライター・サトー

ということは、“ゴールデンタイム”の質が悪いと…

西野さん

“ゴールデンタイム”の睡眠が乱されると、明け方まで眠気のサイクルがぐちゃぐちゃになって、本来の睡眠の機能が阻害されてしまいます。

8時間寝たのに眠気が取れない人と、6時間の睡眠でスッキリ起きられる人の差も、ここにあります。

つまり「最初の90分」で深い睡眠を得られる努力をすることは、改善の効率がいいんです。

睡眠の“ゴールデンタイム”の質を高める2つの方法

ライター・サトー

具体的にどんなことをすれば、“ゴールデンタイム”を有効活用できるんですか?

西野さん

特に大事なのは2つです。

“ゴールデンタイム”の質を高める方法① 寝る90分前に15分、お風呂に入ろう

西野さん

睡眠は体内リズム、特に「体温リズム」と密接な関係があります。

そもそも体温には2種類があって、体の表面の温度である「皮膚温度」と、脳や臓器など、体の内部の温度である「深部体温」に分けられます。

特に深部体温のリズムは強固で、朝は高くなって夜には低くなるパターンにほぼ固定されているんです。

ライター・サトー

ふむふむ。

西野さん

通常、皮膚温度よりも深部体温のほうが高く、活発に動いている日中は最大2度ほどの差があります。

それが夜になると、毛細血管を通じて深部体温の熱が手足から放出されます。深部体温と皮膚温度の差が小さくなるわけです。そのタイミングに合わせて、私たちの眠気は強くなります

このメカニズムに合うように体の温度を調節すると、スムーズに入眠でき、“ゴールデンタイム”の質が高くなります。

『スタンフォード式 最高の睡眠』より

ライター・サトー

温度がカギなんですね! 具体的にはどういったことをすべきなんでしょう?

西野さん

体温の調整方法はいくつもありますが、活用しやすいのは入浴ですね。

私たち人間は恒温動物なので、体温を一定に保とうとする機能が備わっています。入浴はこの性質を、上手に活用できるんです。

西野さん

私たちがおこなった実験(※2)では、被験者が40度のお風呂に15分入ると、深部体温が0.5度上がりました。

そしてお風呂を出ると、約90分かけてゆっくり入浴前の体温に戻ったものの、毛細血管は拡張したままなので、血管から熱が放散されて、さらに深部体温は下がっていきました。

つまり体の芯まで温めると、皮膚温度は上がり、深部体温は下がっていくということです。

ライター・サトー

眠気が強くなる典型パターンですね!

西野さん

その通りです。だから入浴後90分ほど経ったタイミングでベッドに入れば、より早く、より深く眠れます

もし「忙しくて入浴後に90分も待てない」という場合は、深部体温が高くなりすぎないようにシャワーやぬるめのお風呂にするといいでしょう。

“ゴールデンタイム”の質を高める方法② 脳の活動をオフにしてリラックスする

西野さん

私たちは普段、仕事などで脳をフルに活動させています。いわば日中は、常に興奮状態と言っていい。しかし眠るときに大事なのは、脳をなるべくリラックスさせてあげること。

就寝前の1時間は頭を使わないようにするのが大事ですね。テレビやスマホなどは見ず、明かりを消してリラックスしましょう。

ライター・サトー

そういう方法よく耳にしますが…1時間何もしないのはちょっとツラいです。「これならOK」みたいなものってありませんか?

西野さん

あえて言うなら、ドキドキしない作品に触れるのはいいんじゃないでしょうか。たとえば犯人が知りたくて夢中になってしまうミステリードラマではなく、軽く読めるエッセイ本とか。

よりリラックスできるものや退屈なもののほうが、睡眠の観点ではおすすめです。

スッキリ起きるための2つのコツ

ビジネスマンにとって、夜グッスリ眠るのと同じくらい、朝スッキリ起きる方法も知りたいところ。西野さんに、すぐできる2つの方法を聞きました!

スッキリ起きるコツ➀ アラームは20分の間隔で2回鳴らす

西野さん

私が提唱しているのは、「タイム・ウィンドウ(余白)アラーム」といって、起きたい時間に合わせて20分の間隔で2回アラームを鳴らす方法です。1回目はごく微音で短くしておくのがコツ。

ライター・サトー

その方法のメリットはなんでしょう?

西野さん

より自然に起きられることです。

朝に近づくほど浅い眠りであるレム睡眠は長くなります。そのタイミングであれば小さな音でもムリなく起きられます。1回目を小さな音にする理由はここにあります。

加えて朝方になると、ノンレム睡眠の出現時間は短くなるので、たとえばアラームの間隔を20分にしておけば、レム睡眠のタイミングに2回のうちどちらかは当たる確率は非常に高くなります

目覚めが悪くなるタイミングで、ムリやり起こされるのを避けられる方法なんです。

スッキリ起きるコツ② 起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びる

西野さん

地球の自転は24時間周期ですが、人間の体内リズムは24.2時間で、若干のズレがあります。このズレを放置するとリズムが後ろにずれがちで、日中の活動も睡眠も質が落ちてしまう。

そこで大事なのが、午前中に太陽の光を浴びることです。

私たちの体は、太陽光によって体内のリズムを調整しています。たとえば眠気をひきおこすホルモンの「メラトニン」は太陽の光を浴びることで分泌が抑制されるメカニズムになっているんですよ。

ライター・サトー

なるほど。

西野さん

曇っていても、数分でも構いません。起きてすぐ太陽の光を浴びることで、体内リズムがリセットされ、活動と睡眠がよりスムーズにできるようになります。

睡眠にまつわる“常識”は正しい?間違い?

ライター・サトー

睡眠の基本的なところは理解できました。ただ、世の中的に「こうするといいよ」と言われてる定説の真偽が気になります。

ズバリ答えていただけませんか?

西野さん

お任せください。

睡眠の“常識”① 「電車でのうたた寝はNG」はホント?

ライター・サトー

電車で帰宅していると、ウトウトしてしまうビジネスパーソンをよく見かけます。でもうたた寝をすると、いざ家で眠るときの質が下がる、なんて話も聞いたことがあります。

自宅でグッスリ眠ることを考えると、うたた寝は我慢したほうがいいんですかね?

西野さん

もちろん家でちゃんと眠るのが最優先ですが、そのために我慢するのはとても大変です。

眠気があって眠れる環境であれば、総睡眠時間を増やすのを優先して、無理せず休んでください。眠気は睡眠がとれるチャンスなので短時間でもとったほうがいいです。

ただし細切れの睡眠では、まとめて寝るほどの効果は期待できません。「家で5時間、通勤で2時間の合計7時間睡眠だ」という考えはやめましょう。

睡眠の“常識”② 「お酒は睡眠の妨げになるから避けるべき」はホント?

西野さん

お酒の飲みすぎは睡眠の質を阻害します。利尿作用のせいで夜中に目覚めることも増えるでしょう。なのでたくさんお酒を飲むのはNGです。

一方で、お酒には入眠作用もあります。寝る100分前くらいまでに、350mlの缶ビール1本、あるいは日本酒1合くらい飲むのであれば、ほどよいリラックス効果が得られて翌日のコンディションも問題ないでしょう。

ライター・サトー

おお、そうなんだ!(酒好き大歓喜)

西野さんの奥様、智惠子さん

でも、お酒って飲んでいるとクセになってどんどん量が増えちゃうんですよね。そこは気をつけたほうがいいですよ。

(またもや登場の奥様)

ライター・サトー

き、気をつけます!

睡眠の“常識”③ 「寝る前にスマホを触ると、ブルーライトで睡眠を阻害される」はホント?

ライター・サトー

スマホを寝る前に触ってると、ブルーライトという強い光のせいで脳が覚醒状態になり、睡眠の質が落ちるってよく聞きます。あれは本当でしょうか?

西野さん

間違ってはいませんが、照度や照射時間によっては、それほど気にする必要はありません

たしかにブルーライトには脳を覚醒させる効果があるんですが、睡眠に影響を及ぼそうとするなら、かなり画面に顔を近づけてじっと長く見つづけるぐらいのことをする必要があります

ライター・サトー

つまり普通に使うぐらいだったら、問題ないと。

西野さん

そういうことです。ただし、これはブルーライトに限った話。

スマホを操作しているときはいろんな刺激的な情報に触れますよね。それで脳が興奮して眠れない。そちらのほうが問題なので、スマホを寝る前に触ることはおすすめしません

睡眠の“常識”④ 「睡眠のサイクルは90分だから、それに合わせて睡眠時間を決めるべき」はホント?

ライター・サトー

「睡眠はレム睡眠・ノンレム睡眠が90分間隔で訪れるから、睡眠時間は1.5の倍数(4.5時間、6時間、7.5時間など)で計算するといい」って言いますよね。

西野さん

あれは間違いです。睡眠はノンレム睡眠・レム睡眠を繰り返しますが、あくまで平均値が90分であるだけで、80分の方もいれば110分の方もいます。

これは個人差だけでなく、天気や体調、眠る場所などのシチュエーションによっても変化するんですよ。だから90分のサイクルで考えて、気持ちいい起床を目指すのは難しいでしょう。

ライター・サトー

そうだったんですね…よく聞く話だったので、信じ切ってました。

睡眠の“常識”⑤ 「訓練すればショートスリーパーになれる」はホント?

ライター・サトー

1日3、4時間の睡眠時間で元気に活動できるショートスリーパーの方っているじゃないですか? あれは訓練次第でなれるんでしょうか?

西野さん

これは難しい問題ですね。睡眠は遺伝的要因が強いので、生まれつき睡眠時間が短くて済む人は存在します。なので素因の有る人は訓練次第では可能かもしれません

2週間~3週間ほど同じ睡眠時間で生活してみて、もしも体調不良などなければ、続けるといいでしょう。

ライター・サトー

おー、そうなんですね!

西野さん

ただ、覚えておいてほしいのは、睡眠時間を削ることだけが目的を達成する手段ではないということ。

1日10時間以上眠るロングスリーパーのなかにも、アインシュタイン、ウサイン・ボルトなど偉大な功績を残している人はたくさんいますし、たいていは起きてる時間のムダを削るほうが簡単です。

自分の理想のライフスタイルなどを踏まえたうえで、本当にショートスリーパーにならないといけないのかを考えてみてください。

睡眠の“常識”⑥ 「昼寝は夜に眠れなくなるから避けるべき」はホント?

ライター・サトー

睡眠時間が短いぶん、昼寝で補うのはどうなんでしょうか? 夜眠れなくなるからダメだ、なんてことも聞いたことありますが…

慢性的な睡眠不足にさらされている現代人にとっては、30分程度の短時間の昼寝は効果が大きいです。

日中のパフォーマンスは上がりますし、認知症のリスクを下げることもわかっています。たとえば2000年に、日本の国立精神・神経医療研究所センターで、アルツハイマー患者337人とその配偶者260人を対象に、昼寝の習慣を調査しました。

すると、昼寝の習慣が1日あたり30分未満のグループは、昼寝の習慣がない人よりも認知症の発症率が約7分の1程度だったんです。

ライター・サトー

おお! だいぶリスクが抑えられてますね。

西野さん

ただし興味深いのは、この先。1時間以上の昼寝を習慣にしてる人は、昼寝の習慣がない人に比べて認知症の発症率が2倍も高かったんです。

ライター・サトー

え!?

西野さん

これは慢性的な睡眠不足の表れと捉えるべき。もし昼寝で1時間以上も寝てしまうという人は、すでに疾患のリスクを抱えていると言えます。

昼寝は30分未満に抑えるのがいいでしょうね。短時間であれば、非常におすすめしたいです。

ライター・サトー

短時間の昼寝、やってみます。

この取材をしたのが、週末の金曜日。その直後の土日、試しに昼寝をしてみました。結果は見事に爆睡。2時間も寝てしまいました。よっぽど睡眠負債がたまっていたんでしょうね…。これじゃ認知症リスクが高まってしまうだけでダメだ…!

寝不足気味で体調がよくないと感じている方は、今日からでも“睡眠のゴールデンタイム”を意識するなど、睡眠習慣を見直してみませんか?

〈取材・文=サトートモロー(@tomorrow_p_sato)/編集・撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

※1 Dement, W.C.,Sleep extension: getting as much extra sleep as possible. Clin Sports Med, 2005. 24(2): p. 251-68,viii.

※2 Uemura-Ito, S., et al.,Sleep facilitation by Japanese hot spring; EEG, core, proximal, and distal temperature evaluations.Sleep and Biological Rhythms, 2011.9(4): p. 387.

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