ビジネスパーソンインタビュー

「働き方改革」に関する8つの法改正を弁護士がわかりやすく解説! 中小企業は残業代アップ!?

「これからはみんなが一緒の働き方ではなくなります」

「働き方改革」に関する8つの法改正を弁護士がわかりやすく解説! 中小企業は残業代アップ!?

新R25編集部

2019/03/28

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2019年4月から実施される「働き方改革」(正確にいうと「働き方改革関連法」が施行)。

「改革」という言葉に踊らされて「一体何が起きるんだろう!?」とワクワクする反面、不安を抱えている方も多いのではないかと思います。

今回は、そんな「働き方改革」の目的や私たちの働き方への影響、そして具体的な法改正の内容などを、アディーレ法律事務所の弁護士、落合亮太さんにわかりやすく解説していただきました!

〈聞き手=いしかわゆき(新R25編集部)〉

【落合亮太(おちあい・りょうた)】大阪府出身。弁護士・弁護士法人 アディーレ法律事務所、東京弁護士会所属。慶應義塾大学総合政策学部卒業。労働トラブルや債務整理、夫婦問題などに詳しい。悩める相談者の一歩を全力でサポートする、もっとも「身近な」弁護士

働き方改革=8つの法改正を含めたパッケージ

働き方改革とは、一億総活躍社会の実現に向けて、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための改革。

厚生労働省HP

いしかわ

最近、耳にすることが多くなった「働き方改革」ですが、一概に「改革」と言われても一体何が起きるのやら…

具体的に私たちの働き方がどうなるのかを教えてください!

落合弁護士

勘違いされているかもしれませんが、そもそも、「働き方改革」という法案はないんですよ。

法案がない!?

落合弁護士

「働き方改革」というのは、「法案」そのものではなく「パッケージ」の名前なんですよね。「働き方改革」というパッケージがあって、その趣旨や理念に則ったような法律の改正が8本ある、という認識が正しいです。

そして、それらの法律を、「働き方改革関連法案」といいます。

いしかわ

なるほど、その8本分の法律の改正を全部ひっくるめて「働き方改革」と言うんですね。

具体的に「働き方改革」というのは、どういった現状を、どのようにしていく改革なのでしょうか?

落合弁護士

端的に言えば、「多様な働き方を選択できる社会」の実現を目的にした改革ですね。

今まで当たり前とされてきた固定の時間勤務や終身雇用などではなくて、フリーランスや正規・非正規などの働き方のスタイルを労働者自身が選択し、自己実現ができるような社会を目指していこう、というのを目指した改革です。

いしかわ

なるほど…勘違いしている人が多そうですけど、私もその…「ラク」に働けるようになるんじゃないかなーって思っていました…

落合弁護士

それは甘いです!!(笑)

ピシャリ

落合弁護士

たしかに、36協定による長時間労働の是正や待遇の改善などは労働者にとってかなりプラスで、働きやすくなるのは事実です。でも、最初に言ったように「選択できる社会」ということは、同時に労働者一人ひとりの自覚も求められるんです。

「法律ができたから自動的にこうなる」というより、どういう仕組みなのか理解したうえで、自分自身で選んでいかなくちゃいけない。だから今回の法案の改正も、おぼろげでも良いから知っておくことが大切なんです。

いしかわ

ということは、今回の記事の内容はかなり重要だということですね…?

落合弁護士

そうですね。新R25読者のみなさんが「選択できる」ようになるために、法案の改正内容を詳しく解説していきます!

「働き方改革」の目的とは? 現在の日本が抱える問題

落合弁護士

まず、「働き方改革」が実施されるのは2019年4月からですけど、構想自体は第二次安倍政権になったときからありました。日本には、少子高齢化に伴う労働人口の減少という大きな問題があります。

今後、働ける人が減っていくなかで、日本が持続的に発展していくには、労働生産性を上げるか、女性や高齢者の活躍を促進するかの二択しかないんですよ。

いしかわ

なるほど。最近、育児休暇や時短勤務など、女性に優しい制度を推進している企業が増えてきてうれしいな、と感じていましたが、そういう背景があったんですね…

落合弁護士

そうです。それを、企業努力で解決するのではなく、国として制度を整えていく方向に舵を切ったわけです。

いしかわ

古い企業だと、まだ男尊女卑的な体質が残ってますもんね…

落合弁護士

今まで男性だけでも仕事が成り立っていたのは、労働力が十分に供給されていたからなんですよ。でも、今は労働力自体も減少していきているし、人手不足のところも多い。それに、人手不足のところって結局長時間労働だったりブラックだったりするんですよね。

だから、36協定で労働時間に制約を設けたりして労働環境を改善することで、人手不足なところにちゃんと人が入っていくような循環をつくっていこう、ということなんですね。

いや〜でも結構頑張ったと思いますよこれ!

いい方向性だよ、日本!

落合弁護士

少子高齢化は止まらない。となると、企業は必然的に意識を変えていかなきゃいけないんですよ。

それに、「働き方改革」は大企業だけじゃなくて、中小企業も基本的には対象です。日本の雇用の7割は中小企業ですから、そこを改善していかないと変わってはいかないので、とても重要な改革だと思います。

「働き方改革」の8つの法改正内容をわかりやすく解説!

いしかわ

では、ここからはいよいよ法案の改正内容について解説していただきたいです!

1. 時間外労働の上限規制の導入
2. 勤務間インターバル制度の普及促進
3. 年次有給休暇取得の一部義務化
4. 割増賃金率の中小企業猶予措置
5. 産業医・産業保健機能の強化
6. フレックスタイム制の見直し
7. 高度プロフェッショナル制度の創設
8. 同一労働同一賃金の推進

最も大きな改正である、残業時間の是正・「36協定」と、年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられた「有給休暇」の改正については以前、詳しく解説していただきました。

ということで、今回はその他の内容について解説していただきます!

「勤務間インターバル」制度の導入

・勤務間インターバル制度の普及促進 事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。

・企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進 企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会 の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとする。

・事業主の責務として、短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう配慮するよう努めるものとする。

厚生労働省HP

いしかわ

ということで、今回は「勤務間インターバル」制度から解説していただきたいです。これはどのような制度なんですか?

落合弁護士

「勤務間インターバル」というのは、ものすごくわかりやすく言うと、「労働者に寝る時間を与えましょう」という制度です。

わかりやすい

落合弁護士

たとえば、業務内容によっては21時に帰ったり、23時に帰ったりと、日によってまちまちになるじゃないですか。でも、そんなときでも始業時間は変わらないですよね。

だから、始業の時間を後ろ倒しにして、寝る時間をきちんと確保しましょう、という制度です。

いしかわ

それはめちゃくちゃうれしい制度ですね! でも、これは自己申告制になるんですか…?

落合弁護士

実際にどういう運用にしていくかの判断は企業の判断に委ねられています。だから、この制度は義務ではなく、「努力義務」とされているんですよ。

いしかわ

努力義務…?

落合弁護士

企業側としては、労働者の労働時間の管理が大変なので、そこの仕組みも含めて努力義務としてこういうふうにしていくのが望ましい、ということです。

あくまで必須ではなく、推奨なんですよね。

いしかわ

なるほど、ではこの「一定時間」の休息における「時間」もどのくらいかは企業によって違ってくるんですね。でも、義務じゃないとなると…実際にちゃんと導入されるんですかね…?

落合弁護士

一律にやるのは難しそうですよね。ただ、実際にこの「勤務間インターバル」を実施する企業があればモデルケースとして取り上げられることになるので、それによって人材が採用できるというメリットが期待できます。

落合弁護士

国としては、最終的には、「働き方改革」の理念に合致した企業に人が流れていくような仕組みを作ることが狙いなので、導入したほうが双方にとってプラスになることのほうが多いんですよ。

割増賃金率(残業)の中小企業猶予措置

・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。

厚生労働省

落合弁護士

「割増賃金」というのはいわゆる「残業代」のことです。現在大企業だと、これが60時間を超えると、61時間目から基本給×50%増しの賃金がもらえる決まりになっています。

(残業代ってそうやって決めていたんだ…)

落合弁護士

でも、中小企業は今までこの割増賃金率が50%ではなくて25%だったんです。

本来は割増賃金なんて払わなくてもいいように人を新しく入れるのが本筋なんですけど、現在の労働市場ではなかなか中小企業に人が集まりにくい。だからと言って大企業と同じ割増賃金率を導入すれば、経営基盤が脆弱な中小企業は大きな影響を受ける。そのため2010年4月1日の労働基準法の改正では割増賃金率の改訂が猶予されていました。

ただ、先ほども言ったように日本の雇用の7割が中小企業なので、ここを改善しないと本当の意味での働き方改革にはならないということで今回改正され、大企業と同じく50%まで引き上げられました。

いしかわ

割増賃金率が上がれば、会社的には残業をさせたくないので不当な残業も減りそうですよね。

落合弁護士

「決められた業務は決められた時間にこなす」というのが生産性につながっていくのに、日本ではなぜか遅くまで残って働き続ける、というのが文化として根付いてしまっていたんですよね。それを変えていこう、という仕組みです。

いしかわ

なるほど。残業への意識は高まりそうですね。

産業医・産業保健機能の強化

・事業者は、衛生委員会に対し、産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならないこととする。 (産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場) 等

・事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないこととする。(産業医の選任義務 のある労働者数50人以上の事業場) 等

厚生労働省HP

いしかわ

この、「産業医」ってなんですか?

落合弁護士

労働の状況などをヒアリングし、心身のケアをしてくれる医者のことです。普段は普通に風邪などを診療しているお医者さんですが、「産業医」という名称で呼ばれています。彼らは労働者50人以上の事業場に専任が義務づけられています。

たとえば、従業員がカウンセリングを受けたければ、お抱えの産業医の方が来て面接をしてくれるんです。

いしかわ

どの会社にもお抱えの産業医がいるんですね。

落合弁護士

ただ、産業医というのは、今までは、面談して指導をし、社内で組織される衛生委員会に助言する役割だったんですけど、それが、今回の改正で産業医のほうから、その人の労働時間などのデータの開示を事業者側に要求することが可能となりました。

産業医と衛生委員会がより密に手を組んで、健康管理の観点から会社内の労働者たちの状況を管理できるようになった、ということです。

いしかわ

なるほど、不当な労働を強いられている人にとって、より産業医という存在が心強い味方になった、ということなんですね!

フレックスタイム制(裁量労働制)の見直し

・フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長する。

厚生労働省HP

落合弁護士

フレックスタイム制(裁量労働制)とは、1ヶ月単位で働く時間を決められる制度のことです。たとえば、月の前半を休み、月の後半は2倍の時間働く、という働き方もできます。

落合弁護士

ただ、これは1ヶ月単位での清算になるので、所定労働時間を超えれば割増賃金を払わなければならなかったり、逆に足りなければ欠勤扱いとなってしまっていました。

それが、今回の改正で3ヶ月単位で清算できるようになったので、調整がしやすくなりました。

たとえばお子さんがいるご家庭であれば、6月と7月に多めに働き、子どもが夏休みである8月は仕事をセーブして子どもと一緒に過ごす、というような働き方ができるようになります。

いしかわ

それはすごくいい制度ですね!

落合弁護士

子育てや介護といった生活上のニーズに合わせて労働時間が決められるので、柔軟な働き方を可能とする、かなり使い勝手が良い制度だと思いますよ。

高度プロフェッショナル制度の創設

• 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、 労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。

• また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせ なければならないこととする。

・ 対象労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とする。

・健康確保措置として、年間104日の休日確保措置を義務化。加えて、①インターバル措置、②1月又は3月の在社時間等の上限措置、 ③2週間連続の休日確保措置、④臨時の健康診断のいずれかの措置の実施を義務化(選択的措置)。

厚生労働省

落合弁護士

続いて、「高度プロフェッショナル制度」。略して「高プロ」ですね。

何それかっこいい

落合弁護士

高プロの対象になる人材というのは、かなり限定されます。

1. 対象は専門職のみ

高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連が高くない業務

例:金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務など

2. 対象は希望する方のみ

職務を明確に定める「職務記述書」等により同意している方

3. 対象は高所得者のみ

年収が「労働者の平均給与額の3倍」を「相当程度上回る水準」以上の方=交渉力のある労働者…具体額は「1075万円」を想定

厚生労働省HP

落合弁護士

一般的な労働者は働いた時間で成果を見られますよね。でも、彼らは高度な専門知識を使って仕事をやっているので、時間で成果が測れない側面があります。

たとえば、これまでは労働時間の概念に縛られて、本来なら2時間でできていたような仕事でも8時間かけてやっていた、なんてこともありました。

そういう部分で生産性のマイナスになっていた部分もあるんです。そこを取っ払って、もっと自由に働けるようにしていくという施策です。

いしかわ

なるほど。でも、一方でいくら働いても給料は変わらなくなるということですよね?

落合弁護士

はい。今回の改正で賃金と時間のリンクを断ち切ることになるので、残業時間に対しての割増賃金は発生しなくなります。

ただ、その代わりに、休日をしっかり確保することが義務付けられます。

具体的には、下記のような措置が付いています。

・年間104日間以上、かつ4週4日以上の休日確保の義務

・加えて、以下のいずれかの措置を義務づけ(※どの措置を講じるかは労使委員会の5分の4の多数で決議)

① インターバル規制(終業・始業時刻の間に一定時間を確保)+深夜業(22時〜5時)の回数を制限

② 在社時間等の上限の設定(1ヶ月または3ヶ月あたり)

③ 1年につき、2週間連続の休暇取得

④ 臨時の健康診断の実施(在社時間等が一定時間を超えた場合、または本人の申出があった場合)

厚生労働省HP

落合弁護士

彼らは下手をすると24時間365日ぶっ通しで働けてしまうから、そうならないためにこうした措置を付けているわけです。

休日の義務化によってメリハリがつき、クリエイティブな発想が生まれる、ということもあるかもしれません。

いしかわ

この規定を破るとどうなるんですか?

落合弁護士

在社時間の上限を超えてしまうと、医師による面接指導と罰金などの罰則が付いてしまいます。

いしかわ

なるほど。時間に守られないことを嫌がる人もいれば、「残業時間を気にしなくてもいいんだ」とポジティブにとらえる人もいるでしょうね。

落合弁護士

そうですね。ただ、現時点では「必須義務」ではないですし、導入の要件も厳格ですので、本人が希望していないのに強制的に高プロの対象になることはありません。

なので、高プロに関してはそこまで警戒する必要はないとは思います。

同一労働同一賃金の推進

・短時間・有期雇用労働者に関する同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、 当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。

・有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の 確保を義務化。

・派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と 同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化。

・また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。

厚生労働省HP

落合弁護士

最後に、この改正に関しては名前だけが一人歩きしてしまって、1番勘違いされていると思うんですけど、業務内容が同じであれば、アルバイトでも正社員でも同じ給料になるんじゃないか、なんて思っていません?

思っていました

落合弁護士

たしかに、立場の違いはどうであれ、業務内容で見ていくことになるので「不合理な待遇差」というのはなくなっていくかと思います。

たとえば、ライターの仕事をA・B・Cの3人がしていたとします。Aは正社員、Bはアルバイト、Cは契約社員で、みんな立場は違うけど仕事内容は一緒。基本的には理由がなければお給料は一緒にしなければいけませんよね。

でも、不合理かどうかを見るときには、職務内容(業務+責任)という観点からも見るわけですよ。

いしかわ

なるほど。でも、責任ってどう測るんですか?

落合弁護士

たとえば、記事は3人とも書いているけど、1人だけ編集管理も行っていた場合、それは責任が伴っているので給料が高くても不合理とは言えないよね、ということになります。

だから、今回で言う「不合理な待遇」というのはものすごくわかりやすく言うと、同じ内容の仕事なのに正社員は交通費が支給されて、契約社員は交通費が支給されていないとか、そういった条件面での明らかな不合理のことを指します。

業務内容が同じに見えるからと言って必ずしも給料も同じになる、というわけではないんですよね。

落合弁護士

それに、「待遇を同一にする」と聞くと、みんな当たり前のように低い方を高くする、と思っているかもしれないけれど、裏を返せば正社員に適応されていた待遇が排除になる可能性もあるんです。

なので、必ずしも全員がハッピーになるとは言えないかもしれません。

いしかわ

たしかに、優遇されていた側としては、不満な事態になる可能性もはらんでいるんですね。

「働き方改革」のデメリットや問題点は?

いしかわ

ちなみに、「働き方改革」のデメリットってあるんでしょうか?

落合弁護士

長時間労働から強制的に解放される余地が出てくるので、一般的な労働者にしてみればメリットの方が大きいです。

一方で、すべてにおいて大変なのが、会社側の従業員の労働管理ですね。今までは当たり前のように月単位で管理できていたものができなくなったりするので、会社の労務の負担がかなり大きくなると思います。

落合弁護士

これからは、ワークライフバランスが破綻している企業がメディアに取り上げられたときの企業のデメリットは計り知れません。

イメージダウンを避けるためにも、企業側は多少負担が大きくなってもしっかりとケアすることが重要ですね。

いしかわ

なるほど、現在は「ブラック企業」と烙印を押されたりしますからね…

落合弁護士

今は長時間労働問題があっても、従業員が声をあげられる時代なので、昔みたいに文句を言えないまま黙認する必要がなくなりました。たとえば、不当な状況を動画に撮って、「この会社ブラックです」なんてSNSに上げられたときの会社のダメージは大きいですよね。

ただ、根拠もなく声をあげることは名誉毀損にもなりかねないので、前提としてどういう権利があるのか把握しておくことも重要です。

いしかわ

働き方が自由に選択できるようになったからこそ、しっかり情報を握っておくのが重要なんですね。

落合弁護士

これからは、みんなが一緒の働き方ではなくなります。かなり大掛かりな改革なので、いつ会社の制度がガラリと変わって、「働き方改革」の影響を受けるかわかりません。

だから、「自分は関係ないんだ」って思うんじゃなくて、制度についてしっかり理解し、自分なりの働き方を模索していってください。

「働き方改革」概要まとめ

働き方改革
とは、一億総活躍社会の実現に向けて、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための改革のこと

1. 時間外労働の上限規制の導入…
残業時間の上限が原則月45時間、年360日間に規制する

2. 勤務間インターバル制度の普及促進…
前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保する

3. 年次有給休暇取得の一部義務化…
10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日間の消化を義務とする

4. 割増賃金率の中小企業猶予措置…
中小企業における月60時間超の残業割増賃金率を25%から50%に引き上げ

5. 産業医・産業保健機能の強化…
事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供する

6. フレックスタイム制の見直し…
フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する

7. 高度プロフェッショナル制度の創設…
職務の範囲が明確で1,000万円以上の年収を有する労働者が、本人の同意のもと、 労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする

8. 同一労働同一賃金の推進…
短時間・有期雇用労働者と正規雇用労働者との不合理な待遇を禁止する

〈取材・文章・撮影=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

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