ビジネスパーソンインタビュー

“努力”という言葉は麻薬のようなもの。挫折経験ゼロの芸人・ホリが語る「合理的成功術」

実はPR会社のサラリーマン出身

“努力”という言葉は麻薬のようなもの。挫折経験ゼロの芸人・ホリが語る「合理的成功術」

新R25編集部

2019/03/27

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木村拓哉さんの「ちょ、まてよ」のネタでもお馴染みのモノマネ芸人・ホリさん。

芸能界に飛び込んでから20年間、ひたすら「モノマネ」だけを追求してきた彼は、実はもともとPR会社で働くサラリーマンでした。

中学時代から広告業界に憧れ、浪人や落第をすることなく、ストレートに進路を決めてきたホリさんは、どのようにして芸人の道を選んだのか。

泥水をすするような努力信仰…と思いきや、めちゃくちゃロジカルな「夢の叶え方」を教えてくれました。

〈聞き手:いしかわゆき〉

【ホリ】ものまね芸人。1977年2月11日生まれ、千葉県白井市出身。B型。木村拓哉、武田鉄矢、出川哲朗、テリー伊藤など多数のものまねレパートリーを持つ。現在はものまねに加え、テレビ東京『激! 今夜もドル箱』のMCや『マツコ会議』のナレーションなど幅広く活躍中。また、白井ふるさと大使として地元で活動するほか、2018年からは法務省 矯正支援官として受刑者らの更生に協力する活動も行なっている

中学生のころから、大学卒業後まで見据えた計画を立てていた

いしかわ

ホリさんは、もともとPR会社でサラリーマンをやられていたそうですが、なぜお笑いの道へ進むことになったんですか?

ホリさん

実は、小学1年生のときにはすでに「漫才師になりたい」という夢を持っていました。当時は漫才ブームで、ビートたけしさんやドリフターズさんが流行っていたので、すごく憧れていたんです。このときからモノマネで家族や友だちをよく笑わせていました(笑)。

でも、これは”あるある”だと思うんですけど、大きくなるにつれて「芸能人になんかなれるわけない」と漠然と思うようになったんです。

切ないですがあるあるです

ホリさん

それで、自分はイラストを描いたり企画をしたりすることが得意だったから、テレビ局や広告代理店で働くことを考えました。

そのために、まずは日本大学の法学部の新聞学科に入ろうと思い、指定校推薦を確実にもらうべくわざとランク2つ下げた高校を受験し、学年で1番になれるようにしました。

高校生って入学してからしばらく経つと勉強しなくなるじゃないですか。自分はそこを見越して、内申点をガンガン上げ、授業に全部出席して1つしかない指定校推薦枠を勝ち取ったんです。

いしかわ

ちょっと待ってください。中学生にして大学卒業後までの人生プランを完璧に引いたってことですか!?

ホリさん

はい、戦略的にやっていましたね。先に手を打っちゃうんですよ。

末恐ろしい中学生

いしかわ

私が中学生のときは「漫画家になりた〜い」と言いつつ、毎日動画を見て遊んで過ごしていましたよ…。それで、大学に入ってからはどうしたんですか?

ホリさん

大学に入ってからは、広告研究会に所属し、会長としてイベントの企画などをしていましたが、「1回くらいモノマネでテレビに出てみたい」という気持ちが心の底にありました。

そんなとき、『笑っていいとも!』(フジテレビ)で「箱のなかに松村邦洋さんと素人モノマネ芸人が入り、どちらが松村さんかを当てる」という企画があって。

「出川さんのモノマネができる人」の募集があったので、ゼミが始まる前にちょっとアルタに行ってオーディションを受けたら、合格してテレビに出られることになったんです。

いきなりの地上波デビュー!?

「一度くらい挫折してもいいか」という気持ちで、会社員を辞めて芸人の道に

ホリさん

そこから隔週で番組に呼ばれるようになり、「プロにならないの?」なんて言われたりもしたんですけど、結局は広告の仕事をすることになりました。

でもそこで、「企業は利益を出してナンボ」という現実を突きつけられました。面白そうな企画を立ててみても、「クライアントは笑いを求めていないから」なんて言われちゃって。

いしかわ

企業は売上重視ですからね…

ホリさん

そんなとき、思ったんです。結局僕は、それまで大した「挫折」をしていないなと。大学も狙った通り入ったし、大学受験も浪人も落第もしていないし、何ひとつ不自由をしていない。

だったら、一度苦労してでもいいから、自分の得意なことを伸ばすだけ伸ばしてみよう。そう思ったのが、入社して1年目の夏のことでした。

いしかわ

入社して1年目の夏…ってまだ新卒から3カ月くらいか…

それで、結局「挫折」はしたんですか?

ホリさん

いや、それが、一度も挫折をしなかったんですよ。

たしかに、一時期「芸人」というだけでバイトも雇ってもらえず、不動産屋さんからもバカにした目線で「芸人なんでしょ? 本当に払えるの?」なんて言われて悔しい思いはしましたが、僕は絶対に売れるという手応えを感じていました。

ホリさん

僕の人生って、ぜんぶ「合理的」なんです。はじめから勝算のあることしかやらないし、確実に勝ち戦にするために全部逆算して考えます。

芸人は、「マーケティング」と「正しい努力の方向」をちゃんと意識すれば、誰でも売れると思っています。

いしかわ

まさかホリさんの口からそんな言葉が出てくるとは…

ホリさん

正直、僕より面白い人なんてごまんといるんですよ。だから、僕は面白くない人間でもなんとか勝てる方法を考えました。

いしかわ

なるほど。そんな“ホリメソッド”をぜひ教えてください!

ホリ流・売れるための思考法① 将来「ラク」をするために、今苦労する

ホリさん

まず、僕の行動の原動力はすべて「ラク」をしたいという気持ちなんです。「ラク」ってすごく悪いことのように思うかもしれませんけど、僕は「ラク」を全力で肯定しますよ。

いしかわ

「ラク」はなんとなく悪だとされている風潮があるので、その言葉はありがたいですね。

ホリさん

ただ、大切なのが、あくまで「未来」でラクをすることを考えることです。若いときって「今」が楽しければいいと思うじゃないですか。でも、僕はそうは思わないんです。

だって、未来に嫌なことが待っている状態って嫌じゃないですか?

いしかわ

まあたしかに…

ホリさん

僕は、「あとで苦労する」っていうのがイヤなんですよ。人は、どんどん歳を取っていきますからね。何も考えずにボケッと過ごしていたら、何の成長もしないままおじさんになってしまう。

おじさんになってからの苦労のほうが何十倍もツラいですからね!

いしかわ

とはいえ、「今」苦労するって、意図的にやるのは難しくないですか?

ホリさん

僕がずっとやっているのが、「リミットを決めること」です。僕は、デビューから「3年」以内にライブのレギュラーになると決めていました。そのタイムリミットを過ぎてもなれていなかったら、スッパリ辞めてしまおうと。

ホリさん

それで、意図的に自分を追い込んだ結果、僕は3年で結果を出すことができました。

今でもリミットを「50歳まで」と決めているんですよ。そうすると、あとちょっとしかできないなら一生懸命やろう、と自分に負荷をかけることができます。人は、ある程度負荷がかからないと死ぬ気で行動しないんですよ。

いしかわ

なんか、四半期目標みたいですね…

ホリさん

そう。自分自身の経営目標を決める、と考えると良いですね。将来的に「ラク」をするためには、今どんな経験を積むことが必要で、どんなポジションに着いておくと有利になるのか。将来の「ラク」をイメージして、今やるべきことを逆算しています。

これは、生き残るための「戦略」なんですよ。

ホリ流・売れるための思考法② 市場を見て、努力の「方向」を考える

ホリさん

次に、「努力の方向」についてです。分がちゃんと得意なことをやっているかどうか。苦手なことを頑張って伸ばすよりも、得意なことをより極めていったほうが明らかに伸びシロがありますよね?

僕がモノマネを選んだのも、実は自分自身が笑いを取るのにもっとも効率が良かったからなんですよ。

いしかわ

笑いでも「効率」を考えているとは…

ホリさん

なぜなら、自分が面白くないという自覚があるからです。

会社員のときは、会社のなかでは自分は面白いと思っていたけれど、いざネタ見せに言ったときにまわりの芸人さんを見て、「あれ、俺あんま面白くねぇな…」と愕然としました。大喜利もできないし、センスもないし。

でも、だからこそ切り取る部分を「得意なこと」だけに絞るのが重要なんです。オファーがあったからといって苦手なことをやって、「できない」って思われるほうがリスキーですからね!

そこに対する努力ってムダでしかないですよ。できることを確実にやリましょう。

いしかわ

たしかに、「苦手」なものって克服しなきゃ、と思いがちだけど、その時点で努力の方向性を間違えているのか…

ホリさん

あとは、現在市場で求められているものが何なのかを考えることですね。

僕が出はじめた当時、モノマネ芸人はショーパブにはいたけれど、お笑いライブにはいなかった。だから、絶対にポジションを取れる確証があったんです。

そうやって、確実に自分が「得意」なもので「勝てる」方法は何なのか、自分を「商品」と考えたとき、どうすればより売りやすい商品になるかを考えてみてください。

ホリさん

特に、新人芸人はネタ見せに追われて「自分のやりたいこと」を押し出しがちですけど、まずは世間が何を求めているかを見るべきだと思います。

僕はモノマネの対象を選ぶときも、「世間に求められている人は誰なのか」を考えることが多いですね。

いしかわ

自分の得意なことと、世間が求めることの両方を考えるのが重要なんですね。

ホリさん

はい。残念ながら、努力は必ず報われるものではないんですよ。

明石家さんまさんも仰っていましたが、「努力」という言葉はある種「麻薬」のようなものなんですよね。

「続けていれば、いつかは叶う」という言葉を信じてみんながむしゃらに頑張りますけど、それはあくまで成功者のポジショントークでしかないですから。

ホリさん

成功した人は、「努力したもんね!」なんて言われて賞賛されますけど、一生懸命努力をしたにもかかわらず成功しなかった人が「精一杯やったんですけど…」なんて言えば、「そうですか、それで?」となる社会なんです。

だから、大事なのは「努力の量」ではなく、「努力の方向性」です。

ホリ流・売れるための思考法③ 走りながら考える

いしかわ

ホリさんは、入社して10カ月で向いていないことに気付き、舵を切ることができましたけど、今の仕事にモヤモヤしつつも踏み出せないようなR25世代はどうすればいいんでしょう?

ホリさん

それは「仕事」の問題じゃなくて、「楽しみ」の見出し方の問題だと思いますね。

金持ちも貧乏も関係なく、みんな悩みはあるんです。それなのに、みんな今の自分が楽しくないのがすべて「仕事」のせいだと思っている。

ぶっちゃけ、「やりたい仕事」なんてそうそうないじゃないですか。それで結局、どんなに夢を描いていても「何だかんだ言って大企業入っちゃった〜」なんて言ってるでしょ?

ギクッ

ホリさん

それはしょうがないことだと思うんです。だから、モヤモヤしているけど明確に「やりたいこと」がないうちは、与えられた目の前のことをひたすらやる。とにかくやる!!

幸せを見つけるタイミングは人それぞれですけど、何かに本気で取り組んでないうちは、やりがいを見出しにくいのは当たり前なんですよ。

それでちゃんと働いてみて、本当に合わなかったら辞めればいいんです。だって、僕なんかやりたかった広告の仕事に就いたのに結局辞めてるわけだから(笑)。

まだ何も成し遂げてないうちに、正解は決める必要はないと思います。そんなことを考えるヒマがあったら、とりあえず手を動かしてください。

「売れているものには必ず『理由』があると思い込んでいる」

いしかわ

本日お話を聞いて、なんだかホリさんの印象がガラリと変わったと言うか…

ホリさん

わかります。おそらく「努力論」とか「エモい話」を期待されていたと思いますが、僕ってすごく理屈っぽいんですよ。世の中で売れているものには、なんでも理由があると思い込んでいるんです。

たとえば、「ピコ太郎」が売れたのはペン、パイナッポー、ピコ太郎、みたいな「Pの法則」(パ行は響きが面白い)なんじゃないかとか。

いしかわ

そんなことまで考えているんですね。

ホリさん

みんな気付かないかもしれないけど、実は偶然ヒットするような商品って少なくて、商品を売るためにはマーケターが市場調査をし、データを取り、戦略立ててPR方法を考えているわけです。

もちろん理論だけでなく、感覚的な要素もあるかもしれませんが。

ホリさん

お笑い芸人でこういう思考を持っている人って珍しいかもしれないし、賛否両論あるかもしれません。でも僕は、これで20年間、好きなモノマネだけをやり続けることができました。

だから、「努力をしたものだけが報われる」なんて不確かな信仰は捨てて、確実に夢を叶える努力をしたほうが、みんなきっと幸せになれるはずです。

人生において大事なのは、泥水をすするような努力の過程じゃなくて、「やりたいことを確実にやれる」環境を作り上げていくことですからね!

最後はサンシャイン池崎さんの顔マネをしてくれました(笑)

「若いうちに挫折をするべきだ」なんて言われている世の中で、「挫折がなくても大丈夫」な思考法を教えてくれたホリさん。

一見現実的すぎて「夢がない」なんて思われそうですが、すべては彼が積み重ねてきた20年間のキャリアが物語っています。

努力を続けているにもかかわらず、成果が出ずに苦しんでいる人は、ぜひホリさんの思考法を思い出してみてください。夢を叶える突破口が見えてくるかもしれません。

〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/撮影=長谷英史〉

ホリさんからのお知らせ

今年20周年を迎えるホリさんが自身の原点となる「東京・そっくり館キサラ」でライブを開催。来場者には記念グッズも贈呈予定です。ビュッフェ料理を食べながら彼の集大成となるモノマネライブを満喫しましょう!

『ホリものまねライブ☆おかげさまで20周年☆』

日時:2019年4月20日(土)

13:00開場(ショータイム:14:30~15:50)

17:30開場(ショータイム:19:00~20:20)

会場:東京・そっくり館キサラ

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