ビジネスパーソンインタビュー
「バッシングされても、業界のイメージを変える」
性病検査の結果を見せると割引!? 25歳で「レズ風俗」を創業した男の偏見との戦い方
新R25編集部
「レズ風俗」って、知ってますか?
知名度を一気に上げたのが、2016年に発売された『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』という永田カビさんの本。「レズ風俗」は必ずしも性的欲求を満たすためだけでなく、色々なカタチで心の受け皿になっている場所ということを世に広めた一冊です。
とはいえ、まだまだ偏見の目で見られてしまう世界。
そこで今回は、そんなカビさんが実際に利用した風俗店『レズっ娘クラブ』の代表・御坊さんに、日頃どんな目で見られているのか? なぜ創業を決めたのか? など、気になることをズバズバ聞いてみました!
〈聞き手:ライター・星佑貴〉
星
風俗と聞くと性的快楽のためだけのイメージが強いですが、「レズ風俗」は精神的安定や愛情を求めて利用する女性も多いんですよね?
御坊さん
もちろん、基本は性的欲求を満たす場所です。
ですが誰にも言えない性の悩みを打ち明けたり、埋まらない心の寂しさがあったりして、来店してくださる方もいます。お客様によって、キャストとの関係性は本当にさまざまなんです。
レズ風俗とうたっていますが、実はレズビアンのお客様って全体の16%しかいないんですよ。
お客さんへのアンケート調査をまとめた冊子で、解説してくれる御坊さん
星
え!?
御坊さん
彼氏がいる女性の利用も珍しくないです。自分のセクシュアリティがわからないからこそ、来てくれる方もいます。
年齢も、20代~70代ですごく幅広いんですよ。
星
70…!(世界は知らないことばっかりだ)
御坊さん
人には言えないコンプレックスや、性の悩みを抱えている人って本当に多いんですよね。
「予約したいけれど、恥ずかしい人って思われないですか?」「スリムじゃないけど利用できますか?」「性欲強くて引かれませんか?」って、毎日のように相談されます。
御坊さん
それだけ女性は、日頃から年齢や体型に対しての他人の目を気にしているんですよね。
18歳以上であれば、いくつでも、どんな体型の方でも利用していただけます。自分のままでいい」と思える場所でありたいと思ってます。
星
御坊さんはちょうど25歳のときに「レズっ娘クラブ」をオープンさせていますよね。
結構特殊な業界だと思うんですが…どういう経緯でスタートしたんですか?
御坊さん
僕は企業から依頼されたウェブサイトを作る会社に勤めていたので、前職はまったく風俗業界じゃないんですよ。完全に素人でした(笑)。
星
業界の知識が何もないまま、急にお店を立ち上げたんですか?
御坊さん
ですね、ほぼないです。
ただ、風俗店のサイト制作を依頼されることが多くて。ウェブサイトの制作をしていると、お店が開業するまでの過程を細かく知ることができるので、自然と成功する風俗店の傾向がわかるようになったんです。
そこで、自分でやってみようと興味を持ちました。サイト制作の仕事をしながら、副業として。
星
副業ブームですけど、そんな副業始める人初めて見ました。
業界へのイメージを変えたい。「性病検査割引」を導入
星
先ほど解説してくれてるときに、お客さんのデータを見せてくれたこちらの冊子。キャストへのインタビューなどもあって、すごいですね。
御坊さん
どうしても好奇の目で見られがちだから、我々のお店を正しく理解してほしいと思って作りました。
僕は、「風俗業界」へのイメージ、偏見も変えていきたいと思ってるんです。「レズっ娘クラブ」を、業界を変える1つのモデルケースにしたいんですよ。
不当なことをして儲けようと思えば、いくらでも儲けられる業界です。でも、僕は真っ当に戦ってやろうと思う。
星
どんなことをして、イメージを変えようとしてるんでしょうか?
御坊さん
たとえば、「性病検査割引」を導入してます。
星
検査割引…?
御坊さん
「性病が蔓延してる」という業界のイメージを変えたかったんです。
それで近隣のクリニックと連携して、キャストはいつでも検査に行ける環境を整えました。有料オプションで、キャストの検査結果を見せることも可能ですし、お客さまも事前にお伝えいただければ割引価格で検査できるようになっています。
さらに性病検査の結果を開示してくれたら、うちの利用料金も割引することにしたんです。
星
えぇ、そこまでするんですか!?
御坊さん
どうせできないでしょ?って思われてることこそ、完全にクリーンしていくべきなんです。そうしないと、根強いイメージを覆すことはできないので。
「誰でもいい」じゃキャストのモチベーションが上がらない。「必ず指名してください」
星
ほかにも、イメージを変えるためにやっていることはありますか?
御坊さん
風俗って、「女の子がイヤイヤ働いている」っていうイメージがあると思うんですよ。
それを変えたいし、楽しく仕事をしてほしいと思うので、うちは女の子の指名なしでいいというお客さんにも、必ず誰か指名してもらうようにしてるんです。
御坊さん
「誰でもいい」と言われるのと、「あなたがいい」と指名されるのでは、キャストの気持ちが絶対に変わってくると思うんです。
だから、「選べないかもしれないけど、誰かを選んであげてください」ってキャストのページやブログを見てもらうんですよ。
星
たしかに。また「あなたがいい」って言ってもらえるように、頑張ろうって気持ちにもなりますよね。
御坊さん
むしろ今後は「指名しなかったら追加料金取る」ぐらいにしようかなとも思ってます。普通の風俗店の逆で(笑)。
キャストが無理やり働かされているというイメージを覆すために、事務所環境も整えました。この部屋でみんなでよく鍋してます。
…これ本当に風俗店?
御坊さん
時間があるときは、プロジェクターを出して映画を観たり。
普通にうらやましいんですが、このクオリティ…
御坊さん
キャストが楽しんでいないと、レズ風俗なんて成り立たないですからね。
星
すごい…。正直、ここまでとは思ってなかったです。
御坊さん
ほかにも、最初は誹謗中傷ばかりで見たくなかったホームページの掲示板を、こんなサービスがあったらどう?って提案して反応や意見をもらう「お客さま相談室」に変えました。
お客さまとお店にとってメリットがあるリクエストは、これからもどんどん取り入れていきます。
「男が経営するな」バッシングの嵐に「どっちが差別をしてるんだ?」
星
御坊さんは、レズ風俗を経営していることを、最初からまわりの人には言ってたんですか?
御坊さん
今でこそオープンにしてますが…最初はしばらく言えませんでした。
違法な稼ぎ方をしているわけでは決してないのですが、“レズ風俗を経営している男”って、結構好き勝手言われてしまう立場なので。
星
たとえば、どんなふうに言われることがあったんですか?
御坊さん
僕が男なので、女性を搾取している“女の敵”ってバッシングを受けるのはありましたね。
星
男性経営者だからこそ、一部の女性たちから反感を…
御坊さん
そうですね。10年前はLGBTが表立って語られることも少なかったので、今よりずっとセンシティブでした。
いわゆるノンケ(ストレート)の男がそこに飛び込んでいったのも、バッシングされる要因だったのかもしれません。
星
「レズビアンの風俗」とうたうことで、いろいろな人から攻撃されてしまったと。
御坊さん
うちが正当な方法で営業していることなんて何も知らない人たちから、「男だ女だ」と線引きされて叩かれる。
レズ風俗の「レズ」という言葉は差別的だと言われたこともあります。
掲示板やSNSに好き勝手書かれているのを見ながら、「男が経営しちゃいけないのか? 差別をしているのはどっちなんだ?」と思ってました。
星
最初は公表していなかったのに、今では顔を出してメディア露出されていますよね。どういう変化があったんですか?
御坊さん
『さみしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ著)の本の影響ですね。読んだときに衝撃だったんです。
こんなふうに自分の店を必要としてくれる人がいて、発信してくれているのに、自分はこのままでいいのかって。
御坊さん
結局、自分には覚悟がなかったんだって思い知らされました。風俗業への後ろめたさもぬぐえなかった。自信と覚悟がなくて、黒子に徹していたんです。
そう気づいてから、バンバン顔出しして世間に「レズ風俗」を広く伝えようと吹っ切れました。
正直、自分には全然縁のない世界だと思っていました。
でも、女性の性的解放だけでなく、心の癒やしや、悩みの解決のために本気で考えて取り組んでいる御坊さんの姿と、レズ風俗の需要の実態を目の当たりにしたら、「すべての女性にはレズ風俗が必要かもしれない」という言葉にもうなずけたのです。
「次は利用してレポートしてくださいね」という取材後の言葉にドキッとしてしまいましたが、これからも「レズっ娘クラブ」の挑戦を追っていきたいなと思います。
〈取材・文=星佑貴(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)〉
御坊さんの著書はこちら!
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