ビジネスパーソンインタビュー

本もスマホひとつで、3日で書く。激動の新人時代に磨かれた西野亮廣の「書く力」

ブログは毎朝のランニング中に一筆書き

本もスマホひとつで、3日で書く。激動の新人時代に磨かれた西野亮廣の「書く力」

新R25編集部

2018/10/15

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ベストセラーとなった『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』『えんとつ町のプペル』『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』の累計は60万部を突破。

自身が運営する日本最大のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は会員数が1万人を突破するなど、さまざまな形で「エンタメ」を発信しつづけている西野亮廣さん。

そんな西野さんの躍進の起点になっているのが、“多産力”ともいうべき圧倒的な「書く力」。

芸人でありながら、日々ブログやオンラインサロンに文章を書きつづけられる秘訣を、本人に直接聞いてきました。

〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)/文=宅美浩太郎〉

スマホ × 一筆書きで養われた「ごまかし力」

渡辺

西野さんって、普段どうやって文章書いてるんですか?

西野さん

毎朝ジョギングしてるんで、そのときに走りながら書いてます

全部スマホで、こうやって

渡辺

え、走りながらですか?

西野さん

そうです。誰もいない公園を走ったり、歩いたりしながらずーっと書いてます(笑)。

渡辺

それはすごいな…

ちなみに、こういう流れにしようとか、事前に構成を練ってから書いてるんですか?

西野さん

それはやってないですね。

基本は一筆書きで、最後に読み返してタイトルだけつけてます。

渡辺

それであんな文章が書けるものなんですか?

西野さん

一筆書きだと、途中で問題にぶち当たるじゃないですか。「あれ、こっからどうやって着地させるの?」って。

そういうことを繰り返していると、だんだん「ごまかし力」みたいな技術が身につくんですよ。うまく落としているように見せる力というか(笑)。

渡辺

なるほど、「ごまかし力」。

西野さん

書く前に設計図を書いてしまうと、この「ごまかし力」を発動する機会がないので鍛えられないんですよ。

だから僕は、いつも一筆書きです。

渡辺

それなのに、西野さんって宣伝もめちゃくちゃうまいですよね。

普通のタレントさんだと、「●月●日にこんなことやります」みたいなザ・宣伝ブログを書きがちだと思うんですが、西野さんの記事は読み物としての面白さがありつつ、そこからキレイに宣伝まで落ちてます。

渡辺

個人でサラっとあのレベルの記事を書かれてしまうと、こっち(メディア)は商売あがったりですよ(笑)。

西野さん

ありがとうございます(笑)。

スマホ世代に刺さる文章は、スマホで作る

渡辺

最近はたくさん書籍も出されてますが、本はどういう風に書いてるんですか?

西野さん

本もスマホで書きますね3日くらいあれば1冊書けます

渡辺

…すごすぎます。全部自分で書いてるんですか?

西野さん

ですね。編集担当の人が直すのはホントに誤字脱字くらいです。

渡辺

そこまで書けるのは、芸人さんでは相当珍しいタイプじゃないですかね。

本の作り方は堀江さんとは大違い(笑)。

西野さん

あれ(自分で書かない)がやれちゃうのは逆にすごいですけどね(笑)。

ちなみに今朝も、こんな感じで今度堀江さんと出す本(『バカとつき合うな』)のあとがきを書いてました。

西野さん

いつもこれをコピペしてマネージャーに送ってるんですけど、受け取る側は大変だと思います。LINEで何万文字もの文章が送られてくるんで(笑)

渡辺

しかし、スマホで本を書くのは相当面倒くさそうですが…なぜパソコンを使わないんですか?

西野さん

最近はみんなスマホに慣れちゃってるじゃないですか。そうなると、本も一行の文字数をスマホ基準にした方が読みやすく感じるんですよ。

だから一行の文字数はなるべく30文字以下にしてます。

渡辺

なるほど。最近はビジネス書の文字もどんどん大きくなってますもんね。

西野さん

ですね。だから、いまは書く方もパソコンじゃなくてスマホで書いた方が、自然と若い世代に刺さる文章が書けるんじゃないかって思っていて。

渡辺

なるほど。マネするのはなかなか難しそうですけど、すごい納得感があります。

ブログは目先の利益を追わずに「貯信」に使う

渡辺

西野さんはほぼ毎日ブログも書かれてますが、なぜTwitterじゃなくてブログなんですか?

西野さん

そもそも長文を書くのが得意とか、Twitterよりもブログのほうが(勘違いされずに)ちゃんと真意を伝えられるってのもありますけど、ブログは信用を稼ぐのにいいんですよね。

渡辺

信用を稼ぐ?

西野さん

僕、たぶん自分のブログにバナーを貼ったら、なんとかギリギリ食っていけるぐらいには儲かると思うんですよ。

でも、あえて広告を外してるんです。どんだけバズっても1円も入りません。

渡辺

そうなんですね。

西野さん

でもこれが逆にいい効果を生んでいて、「西野は稼ぎ目的でブログをやってないから、本当にいいと思ったモノしか紹介しない」っていうブランドが読者の間にできてくるんです。

渡辺

なるほど、「稼げる場所であえて稼がない」という戦略ですね。

直接お金を稼げない設計のTwitterだと、そういう差別化はできないですもんね。

西野さん

そうです。そこで目先の収入を得るよりは、信用度を上げた方が最終的な取り分もデカくなるんじゃないかって考えてて。

その結果、いまは自分がブログの中で「この本ホントに面白いですよ!」って紹介すると、だいたいアマゾンで1位になります(笑)

渡辺

とんでもない宣伝効果ですね…恐れ入ります。

“デビュー前”にいきなり売れたことで、毎日大量にネタを書く日々

渡辺

そもそも西野さんって、なんでそんなに文章をたくさん書けるんですか? 昔から得意だったんですかね?

西野さん

それは明確な理由があって、キングコングってデビューしてから売れるまでの期間がめっちゃ短かったんですよ。

吉本の中でも一番早く売れたんじゃないかな。

渡辺

20歳ぐらいのときですか?

西野さん

ですね。デビュー前、それこそ養成所にいるときにNHKの漫才コンクールで大賞を獲っちゃったんですよ。

だから本格的にデビューする前に、僕らはもうテレビに出ていて。

渡辺

異例のスピード出世ですよね。

西野さん

でも、普通デビューしたあと5年くらいって、劇場でやるためのネタを作って試す期間なんです。

そして鉄板ネタが何個か溜まったタイミングで、漫才コンクールとか、M-1とか、キングオブコントでネタを披露する。

でも、僕らの場合は最初に作ったネタでいきなり売れちゃったんで、次の漫才番組の収録で披露するネタがないんですよ(笑)

渡辺

なるほど(笑)。

西野さん

また同じネタをやるわけにもいかないんで、そりゃあもう必死に新しいネタを作りますよね。

当時は数日とか、下手すりゃ1日で新しいネタを作って、それがすぐに消費されて、また翌日の番組のために急いでネタを作る、というのを繰り返してました

だから、そもそも昔からゆっくり文章を書く時間がなかったんです。

そういう経験があるんで、1日に何万文字書いても苦じゃないんですよね。

「わかりやすい」ってカッコいい。衝撃を受けた立川志の輔の落語

渡辺

ちなみに、西野さんがこれまでに影響を受けた作家や、書き手の方っているんでしょうか?

西野さん

作家さんだと、森見登美彦さんがすごく好きですね。当時、それはもうドキドキしながら読んでました。

あとは本ではないですけど、立川志の輔師匠の落語がもうホントに大好きで。

好きすぎて、ずっと聞いてましたもん。

渡辺

どういうところが好きなんですか?

西野さん

本当にすごいなって思ったのは、僕がギャルと一緒に落語を見に行ったときなんですけど。アホなギャルと(笑)。

渡辺

それはまた落語を楽しめなさそうな…(笑)。

西野さん

なんですけど、行ったら彼女、めちゃくちゃ笑ってて(笑)。あれ!?って思って周りを見たら、子どもたちも楽しんでるんですよね。これはヤバイなって。

だって、落語なんて子どもが見に行くイメージないじゃないですか? 30分以上もおっさんがひとりでしゃべって子どもを笑わせるって、普通できないですよ。

渡辺

僕ならもう、あらゆる角度からウ●コの話をしつづけるしか手段がないですね…

西野さん

(笑)。30分も子どもに黙って話を聞かせて、ついにはアホのギャルをあんだけ笑わせるって半端ねえなって感動しましたね。

この人のこの“聞かせる技”はなんなんだろうって。

西野さん

それでいて、ちゃんと落語好きの玄人にも刺さってるわけだし。それを見て、志の輔師匠のキャッチーさとか、全世代に刺さる「わかりやすさ」ってめっちゃかっこいいなって思ったんですよね。

だから僕も、文を書くときに「わかりやすさ」は意識してます。

多くの挑戦や失敗が、読者を“駆り立てる”文章を生み出す

渡辺

たしかに西野さんのブログは間口が広くてわかりやすいと思うんですが、それ以上になんかこう…駆り立てられるんですよね。

西野さん

駆り立てられる…?(笑)

渡辺

はい。俗に言う“エモい文章”というか。

昔からそういう文章が書けたんですか?

西野さん

まあ僕、いろんな経験や失敗をしてますからね。とにかく昔から人がいないところに踏み込みまくってきたんで(笑)。

「テレビに出ない」っていったらどうなるんだろうとか、芸人が絵本を書きはじめたらどうなるんだろうとか。

渡辺

それが「書ける」ということに。

西野さん

つながってますね。

そのなかでうまくいったこともあれば、うまくいかないこともあって。

悩んだこともいっぱいありますから、その分だけネタはあります

西野さん

あとは最近、僕のオンラインサロンで女子からアドバイスを受けて。

渡辺

何があったんですか?

西野さん

サロンメンバー限定で、次に出す本『新世界』の原稿を公開したんです。

それを見た女の子から、「ロジカルに『こうなった』とか『こう決めた』とかって話は男性には好まれるかもしれないですけど、女子には響かないです。たとえば『この過程でこんな悩みがあった』とか、そういう背景やストーリーを書いてほしいんです」って言われたんですよ。

それで、当時の気持ちを思い出しながら赤裸々に書いたのがこの文章ですね。

渡辺

いや〜、この記事にもかなり駆り立てられました(笑)。

やっぱり西野さんは苦しんだ過去がある分、文章に自身の原体験やストーリーが反映されていて、それが見る人を引き寄せるんだと思います。

西野さん

文章に限らずですけど、僕が徹底してるルールは、「声の小さい人を応援する」ってことなんですよね。それは自分が作るサービスもそうだし、本もそうだし、ブログもそう。

「勝ってる人をさらに勝たせること」じゃなくて、声が小さい人、弱い立場の人をとにかく応援したい。

新刊の『新世界』もそういう人たちに向けて書いた本なので、発売されたらぜひ読んでみてほしいです。

日々、息を吐くように自分の思いや考えを発信しつづける西野さん。

今回取材して再確認できたのは、その「書く力」のウラにあるものはテクニックではなく、自身の生き様や人生そのものだということでした。

西野さんいわく、「次は寝癖を直す力を身につけたい」とのこと

〈取材・編集=渡辺将基(@mw19830720)/文=宅美浩太郎(@kotaro53)/撮影=長谷英史〉

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