本の内容や仕事の知識を覚えたい!
東大クイズ王に“仕事で使える暗記術”を聞く! コツは「タグ付け」と「アウトプット」
新R25編集部
本を読んだり、仕事でいろいろ教えてもらったりしても、すぐに忘れてしまう…。ちゃんと記憶できていれば、仕事でもっと活躍できるはずだし、上司に怒られることもなくなるはずなんだけど…!
効率よく「記憶する術」ってないんでしょうか?
今回は、そんなギモンを解決すべく、「クイズ王」を訪ねました!
【伊沢・拓司(いざわ・たくし)】東京大学大学院在学中。中学時代より開成学園クイズ研究部に所属。開成高校時代には、全国高等学校クイズ選手権史上初の2連覇を達成。2017年『東大王』優勝。林修先生の教え子でもある、東大の知識モンスター。webメディア『QuizKnock』を立ち上げ、編集長も務めている
「全国高校クイズ選手権」で2連覇を達成したという、まさにインプットのプロフェッショナル。私たちにもマネできる「記憶術」を聞いてみました。
〈聞き手:宮内麻希(新R25編集部)〉
宮内
いきなりですが、伊沢さんの実力がどれほどのものか確かめさせてください。読者にもわかりやすい知識自慢をお願いします!
伊沢さん
いいですよ! なにがいいかな、うーん…。「数の単位」とかどうですか?
宮内
一、十、百、千、みたいなことですよね? お願いします!
伊沢さん
では、1から下に行きましょう。
分(ぶ)、厘(りん)、毛(もう)、糸(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、漠(ばく)、模糊(もこ)、逡巡(しゅんじゅん)、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)、刹那(せつな)、六徳(りっとく)、虚空(こくう)、清浄(せいじょう)。
まるで呪文のようです
宮内
…!?生まれて初めて聞いた言葉ばっかり…
伊沢さん
クイズに勝つために効率よく覚えているので、これぐらいなら簡単ですよ。今日はその「術」をお教えします!
そもそもクイズ王って、なんで記憶できるの?
宮内
伊沢さんはなぜそんなに記憶することができるんでしょう? 頭の良さだけでなく、何かヒミツがあるはずだと思ったのですが…
伊沢さん
大切にしているのは、インプットする際にやみくもに覚えるのではなく、情報に対する“タグ付け”も同時に行うことです。
宮内
タグ付けって、どういうことでしょうか?
伊沢さん
例えば、テストに出る単語が“桃太郎”だとします。この時、多くの人は“桃太郎”という単語を繰り返し覚えようとしますよね。
だから、覚えられないんです。桃太郎と聞くと、他にどんなものや人を思い浮かべますか?
宮内
登場する、“鬼”とか“きびだんご”。あとは…同じ昔話で “金太郎”や“一寸法師”とか…?
伊沢さん
それらは本来覚える必要のない周辺知識ですが、あえて“桃太郎”と一緒に頭に入れておく。これを“タグ付け”と呼んでいます。
思い出せなくて悩んでも、周辺知識のどれかを思い出せれば、“桃太郎”を引っ張ってこれる確率が高くなる。だから、最初の段階で色々なタグ付けをしておくといいですね。
宮内
なるほど。タグを増やせば増やすほど、思い出しやすくなるのか!
幅広く情報を収集するコツは「街歩き」にアリ!
宮内
覚えるだけでなく、かなりの量の知識を入れられていると思うのですが、収集方法についてもお伺いしたいです。
伊沢さん
情報収集については、特別なものはないですが、「Twitter」「テレビのワイドショー」「本」の3つが基本です。
ちなみにワイドショーは、家にいるときに無音で垂れ流し状態にしています。
宮内
え! 無音ですか?
伊沢さん
他の作業を行いながら付けっぱなしにしているんです。
“世の中のトレンド”を把握するために、チラチラ見つつ、気になった言葉が見えたときに、テロップを集中して見ます。
宮内
本でいう“拾い読み”みたいなものですね。
伊沢さん
そうですね。あとは街を歩いている時に、電車のつり革広告やポスター、お店の看板などの文字情報を追うようにしています。見ていて気になったものや知らなかった単語を、メールの下書きに保存していますね。
ところどころ「買い物リスト」がまぎれている…
宮内
メモがかなりありますね。街中を歩いていると、どんな言葉が気になるんですか?
伊沢さん
例えば、女性ファッションブランドの「INGNI」の看板を初めて見たときに、読み方がわからなかったんです。知らなかったら絶対、「イングニ」って読みません?
でも、ブランド名にしては語呂が悪いな、とモヤモヤしたのでとっさにメモして帰ってから調べたんですよ。
宮内
正解は「イング」ですね(笑)。
しかし、そんなところまで見ているとは。
インプットした情報は、アウトプットできなければ価値がない
伊沢さん
今回のテーマは「インプットして記憶する術」という話ですが、僕はインプットそのものにはあまり価値がないと思っているんです。
宮内
えっ、どういうことでしょう?
伊沢さん
すべての情報は、アウトプットできなければ意味がないということです。
言葉や行動として外に出せなければ、インプットできているとは言えません。これはクイズをやっているから特に実感していることかもしれせんね。
宮内
では、インプットした情報をうまく取り出せるようになるには、どうすればいいんでしょう?
伊沢さん
重要なのは、本番のアウトプットの前に小さなアウトプットを繰り返すことです。
宮内
というと…?
伊沢さん
例えば、「プレゼンで使えるテクニック」という本を読んだとします。そこで知ったテクニックを「次に活かそう」と入念に記憶しても、次のプレゼンってもう本番じゃないですか。
そうなると結局、プレゼンの最中には思い出せない=出てこないことも多いでしょうし、いきなりなのでうまく使えないと思うんですよ。
宮内
うわ、その経験あります。本を読んだだけで覚えたと思ってるパターン…
伊沢さん
そうならないために、本を読みきったらすぐに架空のプレゼンを実践するなどしてアウトプットする。本番の前に自分でテクニックを活用する機会をつくるのがいいですね。
ただ本を読み返すだけでは意味がなくて、練習を何度も繰り返すことで、ほぼ無意識にできるようにする。そうして、いざというときにうまく取り出せる状態を整えておくのが大事です。
本で紹介されているようなテクニックは“魔術”ではないので、それを知ったらすぐに解決というワケにはいきません。情報を“知る”ことと、それを“使える”ことは、まったく別物なんですよ。
「なにがおもしろかった?」と、絶えず自分にクイズを出し続ける
宮内
じゃあ、「アウトプット」を上手にするコツとかってありますか…?
伊沢さん
まず、本を読み終わったら「この本のどこを面白いと感じた?」と、自分に問いかけてみるんです。
そして本を目に付くところに置き、翌日タイトルを見た時に、もう一度「なにが面白かったんだっけ?」と自分に聞く。
宮内
なんだか、自分にクイズを出し続けているみたいですね!
伊沢さん
あとには、友人との雑談でその本に関する話になったら「あの本を読んで、ここがおもしろかった」と話してみるとか。
こうして情報をこまめに出し入れすることで、必要になった時にすぐ出せるようにしています。
伊沢さん
ちなみに、僕は単語帳を使って自分に問題を出すんですけど、アウトプット、つまり “どうやって答えるか”も意識して練習してます。
宮内
どういうことでしょう?
伊沢さん
クイズの問題文を自分で読みあげてボイスレコーダーに録音しているんですが、これにもちょっとした秘密があって…
早速聞いてみると…
宮内
あれ、問題文が途中で切れてる…?
伊沢さん
そうなんです。実際の大会で問題を最後まで聞いて考えてから答えているのでは、ライバルに先を越されてしまいます。なので、本番を想定してこのような形にしているんです。
宮内
クイズ番組なんかで、「え? 問題文読み終わってないのにどうして正解がわかるの?」と見ているこちらは驚くやつですね。
伊沢さん
僕も、本番でなかなか答えられないことがあったんですよ。何度も繰り返して覚えてるはずなのにって。
でも、それは繰り返しの段階で本番を想定できていなかったからなんです。この方法を採用してから、アウトプットに詰まることはほとんどなくなりました。
宮内
クイズだとこのように、“どうやって答えるか”で本番を想定した練習ができると思うのですが、私たちが仕事に活かすのには何を意識したらいいんでしょう?
伊沢さん
プレゼンや商談など様々だと思いますが、アウトプットする時のルールを自分の中で作るといいと思います。
例えば、ラグビーの五郎丸選手。少し前に五郎丸ポーズが流行りましたが、あれは本番の時だけでなく練習の時からやっていたんですよね。
宮内
五郎丸選手は、あのポーズをとることで試合に集中できるという“ルール”をつくっていたと。
伊沢さん
そうなんです。実際に僕も練習問題を解く前に「俺はわかる、だからゆっくり答えればいいだけだ」と唱えることをルール化して、それを本番でも実践しています。
言葉の意味以上に、五郎丸選手だったらあのポーズをとることが、僕だったら唱えること自体を体に染み込ませることが大切なんです。
宮内
そういうのって、願掛けかと思っていました…
伊沢さん
あくまで、練習からやらないとダメですよ。本番でいきなりやってもただの神頼みになっちゃいますから(笑)。
宮内
なるほど。私も取材時にテンパって聞きたいことを忘れないように、何かルールを決めておくようにします!
というわけで、大切なのは、インプットアウトプットの間に、いかに小さなアウトプットを繰り返せるか。そしてそこに自分のルールを加えられればなおよし、とのこと。
伊沢さんは、本などで知識をインプットする際に、「これは◯◯に活かせるかも?」と一緒に活用法も考えてみるといい…とも教えてくれました。
山のようにある情報に触れても、「あれ? 何だっけ」と肝心な時に使えないのはもったいないですよね。日々“小さなアウトプット”することを意識して、周りに差をつけていきましょう!
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉
お知らせ
そんな伊沢さんの、クイズの解き方が本になりました。単に「知識」を問うだけのものではなく、解き手の興味の幅を広げ「思考力」を鍛えるクイズが満載! 是非、手に取ってみてください。
QuizKnock
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