「自分の強みの見つけ方・活かし方」がわかる
なぜ“意思表明”が大事なの? 人材育成のプロが語る「会社で活躍する人のセオリー」
新R25編集部
記事提供:20's type
20’s typeの姉妹媒体『typeメンバーズパーク』が主催する、20代の若手ビジネスマン向けイベント「キャリアサークル」。
第3回のテーマは『「活躍する人」が実践している強みの見つけ方・活かし方』。
著書『活躍する人のセオリー 強みを活かす』(PHP研究所)など、人材育成・才能開花のプロとして活躍する株式会社サイバーエージェントの取締役 人事統括・曽山哲人さんをゲストに迎え、「強み」と向き合うワークショップを実施した。
活躍できる人・できない人の差は「●●経験」から生まれる
まずはイベントのテーマにもなっている「強みの見つけ方」に関するワークショップに取り組んだ。
価値観9ブロック
【1】白紙のプリントに大きな正方形を描き、それを9分割する
【2】9つのブロックの真ん中に、自分の名前を記入する
【3】残りの8つのブロックに、自分が大切にしている「価値観」を記入する
【4】書き出した言葉の周りに、どんなときに覚えた言葉なのか、誰から言われた言葉なのか、といったその価値観に関する説明を細かく列記する
【5】自分の書いた価値観について、どういう意味や目的があって選んだのか、簡単にプレゼンを行う
【6】残りのチームメンバーが、気になることを発表者に質問する
【7】【5】~【6】をチーム全員が終わるまで繰り返す
このワークで挙げられた価値観こそが、自分自身の「強みの源泉」である。大切にしている価値観を言語化することで、それが自身の「強み」であるという実感へと繋がっていくのだという。
さらに、実際にワークショップに参加した方からは「他の人との違いが知れて勉強になった」との声も挙ったが、その言葉通り他者との違いに気づくことも重要だと曽山氏は語った。
「リーダーになると、つい自分の成功パターンをメンバーに押しつけてしまいがち。ですが、その手法では自分と相性の良い人には効果があっても、異なる価値観の相手には成果が出せません。まずはお互いの『違い』を理解し、相手に敬意を持つことが、人と協働する上では大事です」
次に、8つのブロックに書かれた価値観の中から、最も力を入れていきたいものをひとつ選ぶ。ここで選んだ価値観を活かしながら仕事に取り組んでいくこと。曽山氏はそれを「才能投資」と呼んだ。
「最初のワークでわかった通り、ブロックに書き込んだ価値観はひとつひとつが自身の強み、つまり才能です。その中からひとつ選んで、仕事に投資する。この『意志決定』がとても重要です。自身の才能を投資して仕事に取り組めば、何かしらかの結果が出ます。その結果が良くても悪くても、人はそこから学習することができる。その学びを活かして再チャレンジする…というサイクルを回していくことで、どんどん強くなっていくのです」
ここでもうひとつ曽山氏が語ったのが、活躍する人とそうでない人の違いだ。双方の間には、先の話にあった意志決定、つまりは「決断経験」という差があるのだという。
「他社からヘッドハンティングを受けるような、いわゆる市場価値が高い人には、決断経験が豊富です。例えば『商品Aと商品Bのどちらをクライアントに提案するか』を決めることも決断ですし、『上司に組織課題の解決策を提案してみよう』と踏み出すのも決断です。このように決断を繰り返していくと、決断経験が増えて慣れへと繋がっていきます。すると今度はより難易度の高い決断ができるようになっていく。この積み重ねこそが、市場価値を高めていくのです」
これからは「違い」で戦う時代。弱みではなく強みに特化しよう
前半のワークショップでは、自分自身の価値観を言語化することで強みを見つけていった。後半は、第三者から見える自身の強みを見つけることを目的にしたワークショップを実施した。
キャリアライン(自分を客観視する)
【1】白紙のプリントの真ん中に一本の横線を引く※この線は時間軸を表わし、左端が幼少期、右側へ行くほどに現在に近づいていく
【2】時間軸にそって、各タイミングで何があったのかをベースに考えながら、人生のアップダウンを曲線で表現。ターニングポイントとなった出来事は詳細も記載する
【3】自分のキャリアについて、チームメンバーに対して簡単にプレゼンを行う
【4】発表者のプレゼンを聞いた上で、残りのチームメンバーがその人の強みはどこか挙げていく。発表者は挙げられた強みをすべてメモする
【5】【2】~【3】をチーム全員が終わるまで繰り返す
曲線が大きく上昇/下降しているところに「その人の強みが出てくる」と曽山氏は言う。上昇しているところは、もちろん自身の強みを活かしているからこその飛躍だろう。しかし下降しているところに関しても、自身の強みを武器にあがいている様子が表われるのだ。他者からフィードバックを得ることで、客観的に見た自分の強みを認知できるのも、今後のキャリアを考える上で有益なヒントとなるだろう。
さらに、お互いの曲線を見比べた後で、曽山氏はここでも「他者との『違い』を知ること」の大切さを説明した。
「これからの時代は『違い』で戦うことが重要です。つい同期と自分を比べてしまって『なぜ自分にはできないのだろう』と悩み、自分の弱みが目についてしまうこともあるかもしれません。私はこれを『卑下の罠』と呼んでいるのですが、弱みばかりを見つめていても前進はしません。他者がまだ手をつけていないところで、自分なりの強みを活かすことでこそ、あなたの存在感が発揮されるのです。『違い』は『個性』、そして『個性』は『武器』です。自分はいったい他の人と何が違うのか。積み重ねてきた経験を武器に戦ってもらえたらと思います」
さらに、質疑応答で「弱みを理解することも必要では?」という質問があがる。「弱みの扱い方については2つ考え方があります」とした上で、次のように回答した。
「ひとつは、危険をコントロールするために必要です。自分の弱みを事前に埋めておくことで、起こりうるトラブルを回避できます。そしてもうひとつは相手の共感を得るため。弱みをさらけ出すことで、人は相手に親近感を抱きます」
その上で、「弱みばかりを深掘りする必要はない」とアドバイスを重ねた。
「いくら弱みに投資したところで人並み程度にしかならず、それを強みとしている人にはかないません。であれば、弱みよりも強みに特化した方が賢明です。人と違うあなたの強みを見つけて、そこで勝負してください」
意思表明した人だけに与えられる「特権」を活かそう
もうひとつ、活躍する人材になるために大切なポイントとして、曽山氏は「意志表明」について、自身の経験を交えつつ解説した。
「自分以外の同僚が社長に抜擢されたのを見て、『なぜ彼が抜擢されたのだろう』と気になって本人に聞いてみたことがあります。すると彼は、『社長になりたいと上司に言っていた』と言うのです。もちろん、なりたいと言ったから抜擢されたわけではありません。では、なぜ意思表明することが大事なのか。答えは、意思表明をすると必ずフィードバックがもらえるからです。
『社長になりたいのであれば、こういうところを伸ばすと良い』などのフィードバックがもらえる。これは、黙っていたら絶対得られない、意思表明した人だけに与えられる特権です。活躍している人は、どんなことがやりたいのか必ず意思表明しています。言ったらバカにされるとか恥ずかしいとか、そんな気持ちは捨てて意思表明をした方が、きっとチャンスに近づけるはずです」
曽山氏はそう力強くエールを送った。
20代のうちは、自分の強みが何かわからないという人も多いだろう。そんな人は、こうしたワークを通じて、自分自身を客観視してみるのがオススメ。きっと他の人にはない自分だけの「違い」が浮き彫りになってくるはずだ。
〈文=横川良明/撮影=typeメンバーズパーク編集部〉
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