ビジネスパーソンインタビュー
カギを握るのは“電線”だ
ドローン飛行のための「空の道」を整備するゼンリンが、東電とタッグを組む理由って?
新R25編集部
新たな産業革命をもたらす可能性を秘めている「ドローン」。本格的な商用利用に向け、各国で実験や開発が進むなか、ついに日本でも本格的プロジェクトが動き出す。
東京電力とカーナビなどの地図で知られるゼンリンがタッグを組み、ドローンの安全飛行のためのインフラ整備を目指す「空の道(ドローンハイウェイ)」構想がそれだ。ゼンリンはなんとなく分かるが、なぜ東電がドローンの「道」に関わるのか…調べてみると、そこには意外な提携のメリットが隠されていた!
23区内や地上150m以上はドローンNG! 自由なドローン利用の壁となる法規制
安価なモデルも購入できることから、誰でも自由に利用できるイメージがあるドローン。だが現在、日本国内でドローンを自由に飛ばすことは、法律で規制されている。2015年12月に施行された「改正航空法」によれば、安全性を重視するため、東京23区のような人口密集地域や、航空機との接触が心配される地上150m以上の空域では、許可を得なければドローンが飛ばせないという。
「こうした規制は日本だけではありません。米アマゾンのドローン配送サービス『プライム・エア』も、米国では規制が厳しすぎるためサービスが開始できず、英国政府と提携して、英国内で試験運用を行っている状況なんです」
と話すのは、国内外のドローン事情に詳しいジャーナリストの塚本直樹氏。どうやらゼンリンと東電が今回のプロジェクトでタッグを組んだのも、その規制が関係しているようなのだ。
ドローンが安全に飛行でき、長距離飛行のための充電が可能なルートが“送電線網”に隠されていた!
政府は2018年をめどに規制緩和を進める方針で、離島や山間部への荷物配送を可能にする無線技術の実用化を前提に、認可の仕組みを設ける。こうした制度改正の流れを見通して、東電とゼンリンはドローンの長距離飛行を支援するインフラの整備に着手した。
「今回の『空の道』構想でもっともユニークな点は、東電が保有する送電線網をドローンの飛行ルートに想定したことでしょう。鉄塔周辺は空き地や駐車場であることが多いので、墜落などのトラブルがあっても、ある程度の安全性が確保できます。また、変電所や各種電力施設にドローンを充電したり、修理することができる“地上基地”を設置することで、長距離飛行が可能になります」
ふだん見慣れている送電線網が、ドローンの飛行ルートに最適だったとは! 東電が持つ電柱、送電線、変電所などのインフラデータと、日本最大手の地図会社であるゼンリンが持つ日本全国の3D地図情報を組み合わせることで、最適なルートを考案することが可能になるわけだ。これぞまさに最強タッグではありませんか!
「この取り組みが標準化すれば、ゼンリンは他の電力会社へも売り込みができる一方、東電側も、3次元データベース化された『空の道』を他社に提供することで、収益を得るチャンスが生まれます。送電線網内でドローンを自由に飛ばせるようになれば、送電線網の点検を無人化することもいずれ可能になるでしょう」
ゼンリンのメイン事業である地図データの“空”への拡充という文脈は当然理解できるが、東電としても、福島原発事故の損害賠償の財源確保のためにもこのドローンハイウェイ構想の実現が重要になってきそうだ。
ドローンの商用利用にむけて整備されるインフラ。アマゾンは30分以内で商品を届ける計画を明らかに
今回の「空の道」構想により、本格的な商用利用の道が大きく拓けた感のあるドローン。塚本氏によれば、
「本格的なビジネス利用をするには、現状のように各々がバラバラに飛行させていては事故が頻発してしまいます。そのため『空の道』のほか、この夏に楽天と米AirMapから発表された、ドローンが衝突を避け安全に飛行するための無人航空機管制(UTM)プラットフォームといったインフラ整備の動きが進んでいます」
とのこと。2020年代に1000億円を超えるといわれているドローン市場。それをメドに、日本政府もドローンによる都市部の荷物配送の実現化を目指している。
もし、この「空の産業」で“ドローン宅配便”などが実現すれば、人件費含む配送コストが大幅に削減され、より早く荷物が届けられるようになるだろう。アマゾンは、なんと注文後30分以内に商品を届ける計画を日本で進めていることを明らかにしている。
オンラインショッピングが常識となった僕らの生活も、さらに便利に変わる日も近そうだ!
〈取材・文/立川眞衣(清談社)〉
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