ビジネスパーソンインタビュー

毎日1人で作業。同じミスは二度としない。ヒカキンが「トップでいるための覚悟」(後編)

「頑固じゃないほうが、うまくいく」

毎日1人で作業。同じミスは二度としない。ヒカキンが「トップでいるための覚悟」(後編)

新R25編集部

2018/05/04

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記事提供:FROGGY

動画共有サイトYouTubeに投稿し、広告収入を得る「ユーチューバー」。小中学生のなりたい職業ランキング上位に登場し、いまやタレント並みの人気を誇る存在です。今回は、日本のユーチューバーの第一人者であり、チャンネル総登録者数1100万人を誇るトップユーチューバーのHIKAKINさんに、「プロの仕事とお金」について伺いました。

年収1000万円が喜びのピークだった

――ユーチューバーというと、広告で稼いでいるイメージを持たれがちですよね。HIKAKINさんが出演したテレビ番組で、年収をこっそり聞いた松本人志さんが仰天したというのが、ネットで話題になっていました。みんな、お金の話が大好き。ということで、年収を伺ってもいいですか(笑)?

それはさすがに言えません(笑)。お金に関して思い出に残っているのはやっぱり、4年間勤めた会社を辞めて、YouTubeで収入を得たときです。生まれて初めて好きなことだけでお金を稼げて、サラリーマン時代にもらった初任給の2000万倍、いやそれ以上にうれしかった。

ユーチューバーになったばかりのころは、「月に100万くらい稼げたら超やべえよな」と、ぼんやりした目標を掲げていて。別に計画を立てたわけじゃなく、日々改善しながら動画を上げ続けていました。そうして気がついたら、「あ、いけた…」と。

それからもキリのいい数字を突破するたびに、「よし! がんばったぞ」と励みにしてきました。中でもピークは、年収1000万円を超えたときでしたね。よく言われる、「年収1000万円を越えてからの幸福感は変わらない」というのは、確かにそうだなと思います。そのあとは、デジタルの数字が増えていくのを、現実感なく見ている感じで…。

お金って、何かと交換して初めて価値が生まれるじゃないですか。僕は仕事以外の趣味があまりなくて、欲しいものもそんなにない。芸人の大御所の方から「何のためにやってるの?」「もっと遊び歩いたりすれば?」と言われて、本気で考えたりします。もうちょっと自分のためになる使い方を知って、仕事のモチベーションにつなげたほうがいいのかなあ。

――有名店で食事するとか。

予約制のレストランとか、仕事で行くんですけど気疲れしちゃうんですよね。僕はラーメンがご馳走と思って育ってきたので、今でも感動するのはラーメン屋。だから食事で楽しみといえば、ラーメンですね。あとは、最近は朝ごはんに、あまおう(編集註:イチゴの品種)を買って食べたりしてます。

――確かに、お金が減らなそうな生活ですね(笑)。HIKAKINさんは熊本の震災などで、寄付を積極的にされています。「社会のためになるお金」には、関心があるのではないですか。

結局、そっちかもしれないですね。自分もいい思いを多少はしたいけど、社会貢献をきちんとできたら、死ぬ時にいい人生だったと思える気がします。僕がそういう使い方をしていたほうが、ユーチューバーを目指す子供たちにとっても、夢があるかもしれません。

人前で話すのが苦手でも、大丈夫

――現代において、ユーチューバーが子供に与える影響は大きいですよね。ユーチューバーを目指す子も増えている中で、「こういう職業だよ」というのを、少しお話いただけますか。

ユーチューバーって、いろんな力が求められます。ネタを考える企画力、動画を作り込む編集力、流行っていることを見抜く力、トーク力、声や容姿の魅力。容姿については、すごいイケメンや美女というよりは、親しみやすさがある人が人気ですね。ピカピカの世界はテレビで見られますから。視聴者はYouTubeに、テレビとは違うものを求めているんだと思います

いろんな力が必要とはいえ、突出したものがあれば、他をカバーできます。例えば、「しゃべりがすごく面白いから、編集は他に任せる」とか、「企画と編集がうまいから、多少しゃべりが下手でも大丈夫」とか。

僕の場合はいまも、ネタの企画から撮影、編集、投稿まですべて1人でやっています。昨日も朝撮った動画を5時間くらいかけて編集して、夜にアップしました。動画以外の仕事もある中、毎日のように1人で作業して、投稿するのは正直かなりきついのですが、これは性格というか。どうしても細かい部分が気になって、100%自分が思う通りにしたくなっちゃうんですよね。

さすがにこのままでは仕事が回らなくなるので、最近は編集作業をできる人を育てているところです。本当はずっと、自分で全部やり続けたいんですけど(笑)。

――なんてストイックな生活。トップユーチューバーでいつづけられるのは、こういう努力があるからなんですね。HIKAKINさんはテレビにも出ていますが、自分の場所はあくまでYouTubeだと言っています。

テレビとかステージって、やっぱり緊張するんですよ。大勢の人が関わって作っているから、迷惑をかけずに一発でベストを出さないといけない。それはそれで、プロとして素晴らしいと思いますが、僕は緊張がストレスになってしまう性格なので…。

それよりは家でリラックスした状態で、満足いくまで撮影して、自分で編集する。どれだけ時間をかけてもいいし、内容を決めるのも自分。そういうやり方が向いているみたいです。

そもそも僕は、人前で話すのが苦手なんです。ビデオに向かってしゃべるのは、毎日やってもう7年目なので、慣れました。自然と、ここでオチをつけようとかわかるんですけど、100人の前でスピーチとか、まず無理ですね。そんな僕でも緊張せず、100%思い通りの動画を作り込んでみんなに見てもらえる。それが、YouTubeの魅力だと思います。

僕がテレビに出るのは、ユーチューバーの可能性をもっと追求したいから。そのために、露出も必要だと思って、出させていただいてます。子供のなりたい職業上位といっても、まだまだ親の世代からしたら、ユーチューバーって怪しい職業だと思うんです。そのイメージを変えて、サッカー選手やタレントを目指すのと同じように、子供がユーチューバーになりたいと言った時、親に応援してもらえる職業になってほしい。今のユーチューバーの限界を、超えていきたいですね。

頑固じゃないほうが、うまくいく

――ユーチューバーってたくさんいますが、人気が出てから長く残っていく人と、すぐ消えちゃう人の違いってなんでしょう。

残るのは、研究熱心な人ですね。いまはどういう時代で何が流行っているか、ファンが見たいのは何か。そういうことを常に研究して、視聴者のニーズと動画が、ちゃんと噛み合っている人。別に、毎日動画をアップする必要はないんです。週に1本でも、ニーズを外さずにコツコツ投稿して、うまくいっている人もいます。

ニーズを研究した上で、時代に合わせて自分をアップデートできる人が、何より強い

――変なこだわりとか、プライドを持たないのが大事?

その通りですね。味を変えない頑固なラーメン屋タイプだと、厳しいと思います。まあ、ラーメン屋だったら僕は断然、頑固なのが好きですけど(笑)。

――HIKAKINさんがラーメン屋を開くとしたら、どんなお店にしますか。

それ聞きます? 動画と関係ない話、語っちゃいますよ(笑)。まず、派手な外装はダメです。看板がちっちゃくて地味〜なのれんがかかってるだけで、「これ、本当にラーメン屋?」って思うような店構え。

メニューは絞り込んで、たくさん置かない。ラーメン屋に行ってメニューに味噌、醤油、塩とか並んでたら、がっかりしますよね。どれかに絞って味を極めて、それだけを出します。

味を決めるまでに、めっちゃ時間かかるだろうなあ。スープを魚介系にするのか、豚骨にするのか。勝負できるラーメンができたら店を開いて、あとはずっと変えない。そんな店に憧れます。

でも、僕はユーチューバーになったので(笑)。理想のラーメン屋とまるっきり逆のことをしています。ユーチューバーは、一度上がった数字を落とすことができない仕事。チャンネルの登録者数、再生回数、高評価の数。それらが日々、可視化されるハードな世界です。数字が落ちて困ったなんていうのは、許されない。一度人気が落ちたら、上げるのは至難の技ですから。

――数字は特に何を見ていますか。

再生回数です。アップして1時間後、24時間後にどれくらい伸びるか。365日、テストを繰り返しているようなものです。一切、気を抜けません。僕ができる限り人に任せず、自分の手で100%納得できる動画を作りたいのは、視聴者にがっかりされたくないから。

研究を怠ったり、トレンドを無視してこだわりを貫いたりして落ちぶれて、それでも「これが自分。悪い?」と言えるならいい。でも僕は、絶対に後悔する。「あのとき、もっとチャレンジすればよかった」と思うのは嫌なので、その前に全力を出し切っておく。「やばい」という兆候が出る前に、次の可能性を考えて、常に自分を変え続けていかないと

それくらい努力しても、月に1回くらいは、予想を外して再生回数が全然伸びないことがあります。そうなった時には原因を考えて、同じミスは二度としない。動画がヒットするかどうかの予想は、いまは95%くらいの精度で当たります

ただ、どこまで数字を追求するかというのは、難しい面もあります。例えば、僕が歌のお兄さんみたいになれば、未就学児にまでファンが広がって、数字は一気に上がるでしょう。でもそうしたら僕は、本来の性格と全然違うものになりきらないといけない。そこまでやるべきかどうかは、悩ましいところです。

このあたりのバランスは難しいですが、自分の気持ちを消して人気を取るというのは、やっぱり長続きしない気がします。だから現時点では、商品紹介でも、自分でもどこか面白いと思えるものを選んでいます。好き・嫌いという気持ちを、できるだけ切り捨てずにやっていきたいですね。

――トップユーチューバーとしての地位を確立しましたが、今後の目標はありますか。

目標? うーん。継続…しかないですね。

日々、ベストを尽くしていると、誰かが見ていて、あるときすごいチャンスを与えてくれる。それをつかんで、ここまで来ました。これからも同じで、自分ができることを全力でやり続けることが、次の展開につながると思っています。

だから目標は、勢いを下げないで継続する。それだけです

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