ビジネスパーソンインタビュー
“1丁目1番地”に掲げたはずなのに…
秘書給与を“のり弁”で公開。都民ファーストのメイン公約「情報公開」の現状は?
新R25編集部
小池百合子都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」。その旗揚げに際し、都政改革の“1丁目1番地”として掲げた公約が「情報公開(透明化)」だった。しかし、一見して公約に反しているような行動も見られるようで…。実際のところ、都民ファーストの会の「情報公開」は進んでいるの?気になる最近の事例をまとめてみた。
「黒塗りをやめます!」と言っていたのに…人件費領収書の8割が“のり弁”状態で公開
「都民ファーストの会」の公約「情報公開」のなかには、具体的に「のり弁をやめる」という表現があった。「のり弁」とは、黒く塗りつぶして隠された部分がある資料のこと こと。まるでのりが敷かれた弁当のようなので、こう呼ばれる。
しかし、7月にフリージャーナリストが「小池知事の特別秘書2人の給与」について情報公開を求めたところ、「のり弁」状態の資料が公開されたのだ。「やめます」といっておきながら!? というツッコミが各方面から入ったため、結局8月23日に、「年額1410万円(手当てを含む)」という金額が公表された。
また、朝日新聞の報道によると、2016年度に交付された都議会の政務活動費の人件費関連の使いみちを示す約2400件の領収書についても、約8割は支出先と金額が黒塗りされて開示されなかったとのこと。
「市場は豊洲へ移転」はどう決まったのか? 小池知事「AIが決めた」
Rodrigo Reyes Marin/アフロ
都知事就任直後の7月3日、小池知事は「都民ファーストの会」の代表を辞任…!
長らく動向が注目されていた豊洲市場移転問題では、「豊洲へ移転・築地は再開発」の方針とした最終判断の記録が残っていないことが発覚。記者から「情報公開という方針に逆行するのでは」と問われた小池知事は「AIだからです」と回答。「人工知能(AI)というのは、つまり政策決定者である私が決めた」という意味だと補足した。
「政策の意思決定における個人的な思考を記録に残すのは難しい」との意見もあるが、大きく注目を集める問題だっただけに、どうしてもモヤモヤの残る対応だった。
「今のお気持ちは」にもマニュアルで答えさせる? 党員への“情報統制”は強いよう
都議選後に初めて開かれた議会では、メディアからの質問に対する「想定問答集」が都民ファーストの所属議員に配布され、“書かれた通りに答えるように”との指示が上層部からあったという。『TOKYO MX NEWS』の記事によると、そのなかには「今のお気持ちは?」など、初歩的な質問も含まれていたというから驚きだ。
そのほかにも、所属議員への取材要請窓口を党本部に一本化したり、ブログやTwitterなどのSNSの発言内容も会の公式見解に基づくよう要請したりするなど、議員の発言を統制しようとする動きもみられる。
Rodrigo Reyes Marin/アフロ
バトンを引き継いで都民ファーストの新代表に就任した野田数氏も、9月11日にわずか2カ月あまりで代表を辞任…
都民ファーストの情報公開への姿勢について、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に話を聞いた。
「情報統制については一般の組織のガバナンスとしてはアリかもしれませんが、議員という公職は有権者との関係において“答える義務”がありますので、透明化の動きとは逆行してるといわれても仕方ないでしょう。情報公開はメインに掲げた公約ですから、『できる、できないの問題』ではなく、絶対に進めなければなりません」
現状に関しては厳しい意見。では、これからの見通しはどうなのでしょう?
「9月20日に、初めて都議会の定例議会があります。都民ファーストの新人議員にも発言する場が与えられると思いますので、そこでいかに情報公開に対して真剣に取り組んでいるかがハッキリするでしょう」
改革の目玉として掲げた「情報公開」が都民に支持されたからこそ、都の第一党になれたともいえる「都民ファーストの会」。その公約が守れなければ、当然、小池都知事にも批判の目は向けられるだろう。都民ならずとも、今後の動向に注目していきたいところだ。
<取材・文=福田晃広(清談社)>
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