

なぜ批判が殺到しかねないシーンを描いたのか
ただの“奇行”ではない?炎上した「牛乳石鹸」CMの父親の気持ちを解説する
新R25編集部
2017年6月に公開された「牛乳石鹸」のWEBムービー、「与えるもの」篇。公開から数カ月経って、動画のなかで描かれた男性の行動にSNS上で批判が集まった。まずは、改めて2分44秒で描かれる問題の動画を確認しよう。
この動画は「がんばるお父さんたちを応援するムービー」と紹介されており、家庭的な男性の葛藤を描写する意図があったと思われる。しかし、見た人の反応には「子どもがかわいそう」「誰に共感させたいの?」などのネガティブなものが多かった。
ただの“奇行”ではない? 理想の父親像への葛藤をくり返し…ある日「魔が差す条件」が揃ってしまった
感情を失ったような表情や奇行とも思える行動が、その“わかりにくさ”に拍車をかけているように思えるこのCM。そこで、同じように子を持つ父である筆者が、(勝手な解釈かも知れないが)できる限りこの男性の心情を“解説”してみたい。
昔気質で頑固な父親に育てられ、それを反面教師にすることで今の幸せを手にした男性。でも当時を振り返ってみると、そんな父親の背中にどこか憧れを抱いていた自分もいた。
自分は当たり前のように家庭に身を捧げてきたけど、それは本当に正しいのか。いまの自分の姿は、子どもの目にどう映っているのか。“理想の父親像”に対するモヤモヤを抱えながら、日々を過ごすようになっていた。
そんなある朝。いつものようにゴミを持って家を出ようとすると、妻から「帰りにケーキお願い」とひと言。
子どもの誕生日なのに、また“言われたことをやっている”だけの自分に嫌気がさす。こんな気持ちでケーキを買う姿も、外から見たら「素敵なパパ」に見えるのだろう。
「家族思いの優しいパパ」は、形骸化しかけていた。
そんなモヤモヤした気持ちに追い打ちをかけるように、会社でまたも妻からメッセージが届く。
https://www.youtube.com/watch?v=CkYHlvzW3IM「プレゼントもお願い!」
無表情の奥で、静かに感情が噴出しそうになる男性。目の前では、後輩が上司から怒られて落ち込んでいた。
そんな“魔が差す条件”が揃った結果、男性は「子どもの誕生日に会社の後輩を連れて飲みに行く」という行動をとってしまう。
批判覚悟の表現をしなければ、立場の違う人に「父親のリアルな葛藤」は届かなかったのではないか
このように、一見奇行のように思える行動も、そこに至るまでにはボディーブローのようにさまざまな感情が積み重なっていった過程があったのだろうと推測できる。
とはいえ、「たとえ目的が“父親の葛藤”を伝えることだったとしても、このように批判が殺到しかねないシーンを描く必要があったのか」という疑問も残るだろう。
では、たとえば今回のCMが
「買い物を頼まれた夫が、妻に『ケーキくらい自分で買ってよ』と言い返す」
という内容ならどうなっていただろうか? おそらくそれでは、この男性が抱えるリアルで深い葛藤は伝わらず、ここまで大きな議論が生まれることもなかったはずだ。
この男性の行動に共感できる人は少ないかもしれない。ただ、「立場の違う人には理解できない父親の気持ち」に思いを馳せる“きっかけ”をつくったという意味では、意義のあるCMであったと思う。
「自分とは立場が異なる人間の感情を理解するのは簡単ではない」という前提に立ち、批判する前に一歩踏みとどまる。相手に想像力を働かせる。価値観が多様化する現代に閉塞感のない社会をつくるには、そんな受け手のスタンスが求められるのだろう。
〈文=渡辺将基(新R25編集長)〉

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