
「ありのまま」をさらけだせない…
「あなたの演技、みんなにバレてます」東洋哲学のプロに人間関係の悩みを相談したら“本当の自然体”にたどりついた
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
“ビジパの悩みインサイト”企画、第6回は、編集部の森久保が「自然体でいられない」という悩みを話し始めます。
森久保の悩み「無理して明るく振る舞うのをやめたい」

森久保
僕の悩みは、人と話すときに、「元気スイッチ」を「バコーン!」って入れることに慣れちゃって、自然体でいられなくなったというものでして…
「明るいね」って言われる一方で、「なんか嘘っぽい」「無理してそう」とかってよく言われるんですよ。

渡辺
たしかに、森久保は無理して明るく振る舞ってるように見えるな(笑)。

天野
なんで元気スイッチを入れるようになったの?

森久保
ありのままに振る舞うと、低体温すぎて失礼になっちゃうというか。
昔から先輩に嫌われることが多々あったので…

天野
何をしたらそんな嫌われるの?

森久保
先輩とご飯を食べているときに、トイレに行くふりをして急に帰っちゃうとか。

渡辺
怖いな(笑)。


森久保
自分の中で何かがプツンと切れて、失礼な行動をしてしまうことがたくさんありました。
でも、社会人の場に、こんなヤツ出しちゃダメに決まってる。
だから、社会に迷惑をかけない自分でいるために、スイッチを入れるようになったんです。

渡辺
それが抜けなくなっちゃった感じか。

森久保
そうなんです。
ただ、周囲にとって「気持ちのいいやつ」でいようと思って元気スイッチを入れたのに、今度は「なんか嘘っぽい」「無理してそう」と言われるようになってしまった。
だから、自然体で人の懐にスッと入って、すぐに仲良くなれる人のことがうらやましくて。

渡辺
ちょうどこの前、しんめいPさんの本『自分とか、ないから。』(サンクチュアリ出版)の出版記念イベントに行ってきたんだけどね。
東洋哲学を信じられないくらいポップにまとめた本だったから、自然体になったら人生うまくいくよっていう話が現代人に刺さっているの。
だから、しんめいPさんに話を聞いたら、スイッチを入れないためのヒントが何かもらえるかも。

「自分」を探し続けた東大卒ニート、しんめいPに聞いてみました
【しんめいP】東大卒、大手IT企業を経て「無職」に。note「東洋哲学本50冊よんだら『本当の自分』とかどうでもよくなった話」が話題となり、1000冊以上の東洋哲学にまつわる書物を読んだ内容を『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学 』(サンクチュアリ出版)として上梓

森久保
僕は人と喋るとき、元気スイッチを入れてテンションを上げて話すんですけど、「無理してそう」「嘘っぽい」と言われることがあって…
実際無理してるから疲れるし、自然体でいたいけど、どうしたら自然体でいられるのかが、もはやわかんなくなっちゃってて…

しんめいP
そう言ってる顔が、すでにちょっと怖いですもんね。


森久保
しんめいPさんの書籍では、東洋哲学では自分が空っぽでいいんだ、みたいな話が印象的で、今日は、僕が自然体でいられる方法やそのアプローチをお聞きできればいいなと思ってます。

しんめいP
僕、森久保さんが新卒時に出ていた動画をみたんですが、当時からウソっぽかったと思います(笑)。

森久保
お見通しなんですね…

しんめいP
お見通しというか、たぶんみんなにバレてるんじゃないですか?
そのうえでみんな付き合ってくれてる。


しんめいP
実は僕も会社員時代にスイッチを入れていたタイプです。
でも年齢を重ねると、自然に「そんな無理せんでええか」と思えるようになったので、その悩みは時間とともになくなりますよ。

森久保
そうなのかな…

しんめいP
森久保さんにとってはすごく切実な問題かもしれないけど、今は新卒時より自然体な印象ですから。この3、4年だけでも変化しているはずです。

森久保
僕は、これまで人と接するなかで、相手に嫌な思いをさせてしまうことがあるのを自覚していて。
その防衛本能で、とにかく明るく振る舞うクセがついてしまっているという経緯があるので、「時間とともに悩みがなくなる」というイメージが持てないです。

しんめいP
森久保さんのお話を聞いていて、僕も思い出したことがあります。
自分の過去の話、してもいいですか?

「協調性がない」からわかったこと

しんめいP
自然体でいると絶対やらかすから、スイッチをONにした自分で振る舞う、といった感覚は僕にもあって。
実際、僕は会社員時代、チームプレイがすごく苦手でした。
人とうまくやっていけない自分に鬱々とする毎日。だけど、バレたらヤバいと思って、スイッチを自分で入れて…

森久保
そうなんですか?

しんめいP
そうそう。でもときを経て、そもそも子供の頃から協調性がなかったことに気づいたんですよね。
本にも書いたんだけど、僕は一人っ子で、親も忙しかったので、ずっと一人で遊んでて。
すると親が「こいつ陰キャすぎてヤバい」と思ったらしく、小学生のときにミニバスケに連れて行かれて… そこで僕は、初日の紅白戦で敵にパスし続けたんですよ。
ヤバい人だ

しんめいP
ルールはわかってたんだけど、敵がボールを欲しそうな顔をしているのを見て、「じゃあやるよ」みたいな感じで。
今思えば、当時いろいろな感情があったんだと思います。やりたくもないのに連れて行かれて、ムカつくからぶっ壊してやろうと思っていたのかもしれないし…

森久保
だいぶ協調性が…

しんめいP
ないですよね(笑)
監督にブチ切れられて「もう二度と来るな」と言われて、それ以降ミニバスはもちろん、部活もやらずに生きてきました。


しんめいP
ただ、その“協調性がない”というレッテルを剥がしてみると、今自分の身の回りにいる人って、自分のヤバさも含めて付き合ってくれてるんだなという気づきもあって。

森久保
なるほど。

しんめいP
森久保さんも、自分で思っている以上に本当の姿もバレていて、バレたうえでみんな接してくれているんだから、それでいいんじゃない? という。

森久保
急に恥ずかしくなってきました。


森久保
ヤバい自分を出してしまうと、相手に失礼だと思ってしまうんですが、それでもフルオープンにして大丈夫なんですかね?

しんめいP
これは僕の主観でしかないけど、どっちでもいいと思うんですよ。
だって、周囲の人は森久保さんがフルオープンにしようがしまいが関係なく、すでに付き合ってくれているんだから。
逆にフルオープンにしようと意識すると、今度はフルオープンスイッチをオンするだけになっちゃうんじゃないですか?

森久保
それはそれで、自然体じゃないウソの姿になりますもんね…

しんめいP
そうなんです。
そもそも、スイッチを入れないで生きるなんて無理だと思っていい。僕だって今スイッチを入れて話しているわけだし。
「自然体な人」の“意外な正体”

森久保
でも、すごく自然体な人っているじゃないですか。
人の懐にスッと入って、一瞬で仲良くなる人に憧れていて… 僕がそういう人になるのは難しいですかね?

しんめいP
僕自身、“自然体”については結構研究してるんですけど、自然体の人って、案外技術でやってるんですよね。
たとえばジャズピアノで、めちゃくちゃアドリブを効かせた演奏を聴くと、「うわ、自然体で自由自在に弾いて、楽しそうだな〜」って思うけど、その裏には練習と計算と経験がある。
もちろん本当にナチュラルにできる人もいるかもしれないけど、多くの場合、“自然体”に裏打ちされている研鑽が半端ないと思うんです。


しんめいP
本当に無邪気な人って、逆に子供のまんますぎて怖くないですか? そういう人と長く付き合うのはしんどい気がする。

森久保
それはそうかも。

しんめいP
人と接するときに自然体に見える人も、距離感の押し引きを経験で身につけているだけな気がしますけどね。なので、意外と本人にとっては“自然体”でもないと思いますよ。

森久保
僕は自然体でいられないがゆえに、すごく機会損失している気がするんです。
もっと仲良くなりたいと思うのに、スイッチを入れれば入れるほど“無理してる感”が露呈するのか、お近づきになれないことが多くて。


しんめいP
でも今、勝手ながら、僕は森久保さんと少し仲良くなった気がしていますよ。
なぜかというと、今日の話はつくりようがない。自然でしかありえないじゃないですか。

森久保
悩みもオープンに吐露してしまえば仲良くなれるということでしょうか。
とはいえ、自然体で人付き合いができる人への憧れは消えないな…

しんめいP
ある意味、残酷な事実なんですけど…
まわりの人にとっては、森久保さんが自然体であろうがなかろうが、どっちでもいいと思うんです。

森久保
…と言いますと?

しんめいP
自然体に憧れながらも、無理して明るく振る舞ってる森久保さんと、みんな一緒にいてくれるわけじゃないですか。
裏を返せば、自然体に振る舞えるようになったところで、まわりからの反応は大きく変わらないと思いますよ。
自分にとっては切実な悩みでも、まわりにとっては、意外とどうでもいい話だったりするんですよね。
「成長しなければならない」は本当か?

森久保
悩みを相談していて気づいたんですが…
僕の悩みの根底には、「成長しなければならない」という強迫観念があるかもしれません。


森久保
周りの人が「ありのままの僕でいい」と思ってくれている…というお話にはすごく救われます。
一方で、「自分はもっとこうなりたい」という成長欲、謎の焦りが消えることもない。
こういうモヤモヤに対してどう向き合っていけばいいですかね?

しんめいP
大丈夫になる瞬間がきます。
ただし、向き合ったから大丈夫になるわけでもない。もがいていたら、いつの間にか大丈夫になっていた、という感覚に近いと思います。

森久保
いつの間に…ですか。

しんめいP
その“いつの間にか”のために必要なものは、人と人との出会いだと思っていて。
たとえば、コンプレックスだと思っていたことが、意外な人の一言で解消するということは多くの人が経験する“あるある”なんですね。
キャリアでも出世でも、悩んで努力するうちに大事な出会いが起こる。そういう出会いがあるまでは多分悩みつづけるんですよね。


森久保
「無理して努力しなくてもいい」ということでしょうか?

しんめいP
努力してもしなくても、どちらでもいいと思います。
努力したことによって出会える人もいる。
努力しなくても、意外な人の一言で、コンプレックスが解消することもある。
つまるところ、その出会いが起こるまでは何も起きない…って諦めておくくらいがいいかもしれないですね。


森久保
今、めっちゃ不思議な感覚です。
いつもは悩みの解決策をいただいて、最後に「いやーすっきりしました!」っていう感じなんですけど、正直今回、何にも解決はしてない(笑)。
だけど、「ぼちぼちやっていきますか」っていう楽な気持ちにはなりました。

しんめいP
まあ、徐々にですね。
みんな、頭隠して尻隠さずみたいな感じで生きてるんだと思いますよ。

森久保
言われてみれば、自分も他人に対して思うことがありますね。「無理してる」とか、「本当はこういうヤツなんだろうな」とか…

しんめいP
そうですよね。でも、みんなそれを受け入れ合って生きてる。
だから、世の中って意外と懐が広いし、優しいなって思います。
頭で分かっても、また悩んじゃうのが人間という生き物なんですけど(笑)。

森久保
まだ頭でしか分かってないですけど、気長に自分と向き合っていきます!


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