
ダルビッシュ投手が一流プレイヤーでありマネージャーな理由とは…
【ガチレス】「プレイヤー評価だけで突き抜けられる?」幅を広げたい中堅社員の悩みを田端信太郎さんに相談した
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」 「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、改めて「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」をしていくことを方針とした新R25編集部。
“ビジパの悩みインサイト”企画をスタートし、読者・視聴者からも「グダグダすぎて共感する」と謎の連帯感を生み出しています。
今回は、副編集長・天野の悩み相談からスタート…したのですが…
それなりにキャリアのある大人としてかなり恥ずかしいし、人に見られたくない内容に仕上がってしまいました。

天野
僕、「さすがって言われたくない」っていうモヤモヤがあって。
ちょっとした仕事をしたときに、「さすがですね」ってお世辞を言ってもらうことがあるじゃないですか。

渡辺
? お世辞っぽいのがイヤってこと?

天野
いや…自分はプレイヤーとして評価してもらうことが多いんですが、そのフェーズの仕事をずっと小さく評価されてるような気がしちゃうんですよ。
「その仕事だけやってればいい」という…

森久保
それは…曲解じゃないですか?(笑)

渡辺
たしかに俺らの悩みよりもねじ曲がってる(笑)。
「さすが」っていうのは、「まあおなじみの…」っていう評価だってことね。
俺も今さら「取材がうまいですね」みたいに言われると、もうちょっと煽ってほしいと思っちゃうかも。

天野
仕事の幅を広げなきゃいけないっていう焦りがあるんですが、「いつもと同じプレイヤーフェーズにいて、成長できてない」ってニュアンスを感じてしまうんですよね…

渡辺
たぶん天野さんは普通にちゃんと出世欲があるんですよ。
そうすると、組織内で本当のプレイングだけで出世することが難しいんじゃないかと。じゃあマネジメント的な部分を伸ばさなきゃいけないかもしれないという焦りなわけですね。
箕輪さんみたいに、プレイヤーで突き抜ける一部の例外はいるけど、それを除くとモデルもいないし。

天野
「自分の強みを伸ばすべき」という話が定着して、“プレイヤーとして生きる”っていう人は増えてると思うんです。
でも、会社にいてそれだけで本当に幸せになれるのか?っていう…

渡辺
日本は「ゼネラリスト」が出世のスタンダードすぎるから、プレイヤーとして企業のなかでキャリアアップしていく道があんまり見えないんでしょうね。
こういう人、けっこういると思うので、面白いテーマかもしれない。
プレイヤーとしてもマネージャーとしても結果を出してきた、田端信太郎さんとかに聞いてみたいですよね。組織の深みを理解してもらったうえで、いろんなモデルケースを教えてくれるんじゃないかな。

「お前はしょせんバントがお似合いなんだよ!!!!!」

田端さん
いや、何よそれ。
じゃあ「さすがって言わなくていいんで給料上げてください」って言えばいいんじゃないの?(笑)

天野
まあまあまあ…

言えない

田端さん
俺から言わせれば、「さすが」って言われてるけど、本当にその仕事が超すごいのか?って思っちゃうけどね。
動画は100万再生、記事は100万PVぐらい行ってんのかと。
誰がどう見てもすごい成果が出てたら、社内でさすがって言われてるレベルじゃないでしょ。

天野
そうですね…

田端さん
せいぜい“期待値に対してミートしました”っていう成果だから、バント職人がサイン通りにバントしたっていう程度の評価なんでしょ。
たまには、バントのサインを無視してでも逆転満塁ホームランを打ってくるような仕事をしたら、「さすがです」なんて評価ではないわけじゃん。

俺の仕事はバント職人だったのか…

田端さん
俺、『R25』のOBだからあえて言わせてもらうけど、今『新R25』の事業が首位を独走してるわけでもないじゃん。
そんなときに、上から言われた通りバントしてて本当にいいの?
サイン無視してホームランを打って、「勝つためにやってるんだから問題ないですよね?」ってベンチに向かって言い放つぐらいのことをやらなきゃいけないんじゃないの?

天野
おっしゃる通りすぎて何も言えないです。

田端さん
あるいは、自分なら何ができるかを提案する。
「僕をこう使ってくれれば勝てますよ」と、その勝ち方までセットで言わないかぎり、使われ方なんて変わらないですよ。
「バントばっかりやらされて、そろそろ飽きてきたんですけど…」とか言ってても、首脳陣からしたら、「うるせえバカ! お前はしょせんバントがお似合いなんだよ!」「お前に打たせて、それで負けたら責任取れんのかよ!?」って思ってますよ。


田端さん
そのときに、「ダメだったらクビでいいんで、3試合だけバント職人じゃなくて、先発で使ってもらえませんか?」って啖呵切るぐらいじゃないとダメ。
30代でバント職人枠から脱皮したいんだったら、リスクを取って成果を出しにいかないと厳しいと思いますね。

天野
啖呵切るかあ~、した記憶ないですね。

田端さん
勝利という“本当の目的”を達成するためだったら、プレイヤーとかマネージャーとか、どっちだっていいじゃんと思うけどね。
俺、WBCのときにすごいなと思ったことがあって…日本代表の選手たちに、ダルビッシュが変化球の投げ方を教えたんだと。
それって、勝利のという目標のために、プレーヤーとしての自分の強みを生かしてチーム全体に還元しようとしたわけじゃん。

天野
ありましたね。めちゃくちゃカッコいい話。

田端さん
そのときに、教えるやつがダルビッシュだからみんな「教えてください」って耳を傾けたわけよ。
よく分からないやつがいきなり「ツーシームの握り方は…」とか言っても「知らねえよ」って感じじゃん。
何が言いたいかというと、プレイヤーとマネージャーの能力がゼロサムということは全然ないんですよ。プレイヤーとして一流だからこそ、全体への影響力を持てる。


田端さん
ダルビッシュに対して、監督はそれを期待してなかったかもしれない。
単にいちピッチャーとして呼んだのかもしれないけど、「まわりにいい影響を与える」のを勝手にやるぶんにはウェルカムでしょう。それは立派なマネージャーですよ。
なのに、なんか、お役所のキャリア制度とか昔の門閥制度みたいに「この枠にハメられたら抜け出せない」とか言ってて…
勝手にやればいいのにと思っちゃうけど。
「人に興味ない」「給料上げてくれと言ったことない」田端さんが、常に引き上げられた理由は“モノ申す技術”

田端さん
俺、20代のとき、自分はプレイヤーとしてイケてるっていう自負はあったけど、マネージャーに向いてるとも、やりたいとも思ってなかった。
そもそも人に興味がないからね。
誰と誰が揉めてますとか、人間関係の悩みに関わるのが面倒くさいから、常に“少数精鋭”でいたいと思ってたんですよ。

天野
それはけっこう共感します。

田端さん
少数精鋭でいるためには、「この事業は何のためにやっているか」という本質を押さえて最短距離を突いていく必要がある。
「面倒くさがり」だから、ムダに努力したくないわけ。
だから、「本質的にこのビジネスって何のためにやってるんだろう」っていうことをずっと考えてた。今風にカッコよく言えばパーパスというのかな。


田端さん
「昇進させてくれ」とも「給料上げてくれ」とも、1回も言ったことない。
いつも上司に、「目的のためにはこういうふうにやったほうがいいと思います」って言ってた。
俺、最近自分のオンラインサロンとかでいろんなサラリーマンと面談するんだけど、みんな真面目で能力も低くないんです。
ただ、よく言えば素直、悪く言うと「従順」なんですよ。

天野
「従順」はよくない言葉なんですね…

田端さん
今どき従順でいたって、会社の上司が一生涯キャリアに責任を持ってくれるわけじゃないじゃないですか。
従順で仕事をこなしてたって、履歴書を見たときに、「この人って結局何をやれる人なんだっけ?」ってなっちゃうんですよ。
「はみ出すのが怖いんじゃないですか?」会社と社員の適切な関係とは

田端さん
転職を重ねて3社目、4社目ぐらいから、「田端みたいなめんどくさいやつは、ある程度主張に耳を傾けないとまたすぐ転職するんじゃないか」って思われてたんじゃないかと思う。
だから、何も言わなくてもどんどん立場が広がるようなオファーがきたり、給料も上がったりするみたいなところはあったわなと。

天野
田端さんの場合、「いつ転職したっていいんだ」っていう感覚がすごくキャリアを大きくしてるじゃないですか。

田端さん
結果的にね。それがあると「僕は僕なりの正論を言わせてもらいます」っていうことができるわけですよ。
「それなりに聞かないと、あいつ辞めちゃうかもな」と、ある種の迫力が出てくる。

天野
わかるんですけど、「辞めちゃうかもな」って匂わせる人ってあんまり健全じゃないって思っちゃうんですよ。

田端さん
なんでよ?
ずっとその会社にいたからって会社が人生に責任取ってくれるわけじゃないでしょ。

天野
そうですけど、ちょっとズルい態度だし、信頼されないんじゃないかって。

田端さん
それは、俺から言わせると、個人のブランド力が足りない。
仮に俺が今からどこかの会社に転職して、3カ月とか半年で辞めたとするじゃないですか。そしたら、それはその会社がイケてなかったのか? 田端がイケてなかったのか?って話じゃん。

天野
それはそうですね…

田端さん
思考停止で“常に会社が正しい”と思ってるから、そういう発想になってくるんじゃないの?

天野
はい…

田端さん
会社と社員ってしょせん契約の関係でしょ。
たとえば、今ブライトンにいる三笘が別のチームに移籍したからって、それって三笘がめんどくさいダメな人なの?

違います

田端さん
逆に言うと、怖いんじゃないですか?
今のままでも、一定の評価は確立してるわけじゃないですか。
会社という枠組みや、組織で正しいとされてることからはみ出たときに、成果が出せなかったとなるのが怖いんだと思う。

天野
それは…そうですね…

田端さん
そういう気持ちはわかるよ。“めちゃくちゃ人間くさい、30代っぽい悩みだな”と思う。

天野
はみ出したりすることも大事だとわかってるんですけど、一方で、いろんな人がいろんな意見を言うなかで、「とにかく前に進めなきゃいけない」という気持ちが強くて。
“いったん思考停止してでも推進させよう”っていう。それが役割だし、仕事なんじゃないかって思っている節が結構強くて。

田端さん
そういう立場の人もいないと組織としてはダメだっていうのもめちゃくちゃわかるよ。
そういう人がいてもいいんだけど、そうだとしたら、トヨタみたいなしっかりした大企業で時速100kmの車をつくろうというんじゃなくて、まったくのドベンチャーとかに行ったほうが、天野さんの“なんとしてでも風呂敷を畳む”能力っていうのは生きると思う。

天野
あ~…なるほど。

田端さん
血気盛んな若者が立ち上げたスタートアップなんだけど、会社としてのテイをなしていないみたいなところがあるじゃないですか。
そういう会社に、「管理本部長」みたいなかたちで入るおじさんって、めちゃくちゃ大事なんですよ。
“ムチャ振りに何としてでも耐える”って言うんだったら、もっともっと意味不明な豪速球を投げてくれるところにいかないと、ストレッチがかからないんじゃないかな。

「だんだん転職をそそのかしてるみたいになってきてるけど(笑)」
「いい人なんだと思うけど…」30代、突き詰めて考えるべきことがある。

田端さん
なんか、ずっと聞いてると「まわりからどう思われるか」っていうことばかり気にしてるよね。


天野
…正直、それはあるかもしれません。

田端さん
それよりも自分は何のために仕事してるのかってことを突き詰めるべきなんじゃないの?
「編集人として世の中をこう変えたい」とかそういう思いがあって仕事してたら、まわりの評価なんてどうでもよくない?って思うけど。
ましてや、社内で横の人にどう思われてるかとか、俺はあんまり興味ないですね。

天野
そうですよね。

田端さん
たぶん、いい人なんだと思うんですよ。
組織のなかでクッションみたいにいろんなやり取りの間で仕事をしてるっていうのは、人柄も含めてめちゃくちゃ伝わりますよ。
でも、たまにこういうふうに「俺は俺なりにエゴがあるんだぞ」って気持ちもにじみ出てしまう。

天野
お話を聞いてて、自分のなかで矛盾してるところがあるんだなと思って…
チームプレーでやっていくところに快感があると言いながら、自分もちょっと目立ちたいみたいな。

田端さん
人間だからそんなもんだけど、俺からしたら、チームプレーだろうがスタンドプレーだろうが、勝つためにやってるんじゃないんですか?と思う。
勝てばいいのか、お客さんを喜ばせればいいのか、観客が増えればいいのか…そもそもどうなればいいのかをぼんやりさせたままだから、なんとな~く「身のまわりの人に嫌われたくない」「だからといってリスクも取りたくない」「でも評価もしてほしい」「感謝もしてほしい」…
うわー、めっちゃわかるな(笑)っていう。


田端さん
経営陣の皆さんだって、絶対いろんなことで悩んでいるはずだから、そういうときに、現場から建設的に意見を打ち明けたらいいじゃないですか。
そして、「ただの絵空事じゃなくて、僕だったらちゃんと畳めますよ」と。

天野
ちょっとマジレスを食らいすぎて限界が……
今日のお話を踏まえて、自分の進むべき方向が二つ見えたなと思うので、またご指導いただければ…

田端さん
はい(笑)。これボツにならないよね?(笑)


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