ビジネスパーソンインタビュー
ビジパの悩みインサイト
【兼務で忙しい人へ】仕事を断らないサイバーエージェント専務が実践している「マルチタスクの極意」
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
今回は、新卒2年目、『新R25』の営業からプロダクトまわりなどさまざまな業務に従事する“はらみちゃん”こと原見に、最近の悩みを聞いてみました。
商品部・原見の相談は、「目立ちたい」? 頑張る若手ならではの悩みでした
原見
私、「依頼されたことを断りたくない」ってすごく思ってて。
「全部やります!」って言って受けたものの、いっぱいいっぱいになってるという…
渡辺
本業の広告企画のほかに、採用とかイベント運営とか、組織運営的なこともやってるよね。
断りたくないっていうのは、どういう気持ちなの?
原見
…やれば会社のなかで目立てるかなっていう(笑)。
渡辺
いい欲望(笑)。
盛り上がってる組織によくあるよね。メイン業務のほかに、盛り上げ施策だったり組織運営に関することだったりを「やろう!」って言って、若手が忙殺されるという…
原見
やります!って手をあげるのはいいんですけど、難しいのは、私の業務をすべて把握してる人がいなくて。
「忙しいみたいだけど、こいつ何やってんの?」みたいなのが発生してるんですよね。
渡辺
「これ以上はできません」みたいなことは言いづらい?
原見
絶対に言いたくないんですよ。1回断っちゃうと、そのあともそういう印象が続くじゃないですか。
「忙しいって言ってたから」みたいに、“諦められる”のが嫌で。
渡辺
全部がんばりたい系の、“折り合いの付けかた”か…
飯塚勇太さん(サイバーエージェント専務執行役員)って一時期、3社の代表だったでしょ。飯塚さんも何かの依頼が来たら断らないって決めてるらしくて。3社とも「代表やって」って言われて、何も考えずに「イエス」って言ったんだって。
“全部引き受ける”っていう姿勢はチャンスをつかめるし、いいと思うんだよな。
原見
私は「イエス」って言う能力は身についてるけど、その後が…
渡辺
“仕事を任せやすい”って上司から思われてる若手は、無限に仕事が来ちゃうよね。
被害者意識になったりしないの? 「全部私に来るじゃん」みたいな。
原見
思わないわけじゃないですけど…
それよりも「私って人気者」って…(笑)。
本当に悩んでるか?これ
渡辺
…もうこの回、終わりでいい?
ということで、専務執行役員のこの方のもとを訪れました
渡辺
飯塚さんに、“最強のマルチタスクの人”としてアドバイスをもらいたくてですね…
【飯塚勇太(いいづか・ゆうた)】サイバーエージェント専務執行役員。1990年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年、サイバーエージェントの内定者時代にスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェントの執行役員に就任。2020年、同社専務執行役員に就任
飯塚さん
そうですね~。一つは、本当に無理だと思ったときに“断捨離”できるようにしておくことかな。
たとえば受けるタイミングで、「一度やってみて、その後どうするか考えていいですか?」とか、何かあったときにやめられる枕詞を言っておく。
二つめは、いやらしくなく評価してもらえるよう“上司を握る”こと。たくさん仕事してるのに、評価されなかったら損じゃないですか。
原見
わー、それ聞きたいです。
飯塚さん
組織のための“盛り上げ施策”とかって、上司が把握していないことも多いから「何やってんのか分からないけど忙しそうで、本業がおろそか」みたいに受け取られることが多いじゃないですか。
広告にフリークエンシー(接触頻度)が大切なように、上司への報告も過剰にしたほうがいいと思うんですよね。受けるとき、プロセス、1回終えたあと…とか。
原見
たしかに、「こんなことしてます」とかは上長には言わず、まわりのメンバーと話すだけってことが多かったかも…
飯塚さん
僕は藤田(晋)社長に1カ月に1回、自分の仕事の報告を送るんです、求められてなくても。
「私、こんなことやってるのに」っていうのと、上司の「え、そんなことやってたの?」っていうギャップをなくす努力をするべき。
あと、「これって評価されますか?」って上司に聞いてから仕事を受けたほうがいいと思いますね。
原見
先に!?
渡辺
ちょっと嫌なヤツっぽくなりませんか? 「これ、やって評価されますか」って
飯塚さん
そこを、かわいげをもって言うのがポイント(笑)。
渡辺
いやらしくなく、かわいらしく。原見ちゃんそれはできそうだね。
原見
たしかに、それはちょっと得意かも(笑)。
渡辺
上司への報告も、査定前にまとめるといやらしいかもだけど、都度報告していたらちゃんとしたアピールになっている、と。
さらなるマルチタスクのコツは、賛否両論ありそうな「デュアル作業」
飯塚さん
そして三つめは、“デュアルで処理する”ことに慣れる。
複数のタスクを同時にやって、時間効率を上げていく。僕はレスが早いほうなんですけど、他のことをやりながら返してるからなんです。
いるだけであまり頭を使わなくてもいいようなミーティングでは、頭を使う個人作業をやってます。
ミーティング中に……?
飯塚さん
脳みそを使う仕事と使わない仕事がどのくらいあるかを毎日把握するようにしていて。
この打ち合わせの間にこの作業はできそうだな…と組み合わせで処理してますね。
僕、秘書の方もいないんで、会食のお店の予約も全部自分でやってます。ミーティング中に。
原見
自ら!?
飯塚さん
今ってだいたい予約もオンラインだから、それくらいすぐできますよ。だいたい行く店の候補も決まってるし。
渡辺
とはいえ、ミーティングをサボってるみたいに見られちゃうんじゃないかとか考えません?(笑)。PCカタカタしてたら…
飯塚さん
ライフハック的にいうと、横の人から見えないシート貼るとか…
原見
本当にライフハックだった。
渡辺
原見ちゃんみたいな、2年目ぐらいの若手が会議中にデュアルで作業しててもOKですか?
飯塚さん
上司から見て、本当に忙しいって認識ができてたらOKかもしれないですね。そこが不足していると、無駄な反感を食らう。
だからやっぱり、上司に業務を把握してもらう必要があるということ。
上司を握っておいたうえでの、「デュアル」です。
原見
周囲への理解となると、上長だけよりは、全体に自分がやっていることを知ってもらうほうがいいんですかね…?
飯塚さん
僕はslackのtimes(タイムズ=分報)を1日10何回とか書くんだけど、それで自分の仕事のフリークエンシーをつくってるんです。
自分が何をやっているか、何に忙しいかは、みんなに知ってもらったほうが楽なんですよ。
※タイムズ=SlackやTeamsなどのビジネス用メッセージングアプリ内に個人チャンネルを持ち、そこにいま取り組んでいることをリアルタイムに投稿・共有すること
原見
飯塚さんでそうなんだったら、私はもっとやらなきゃ理解してもらえないですね…
「藤田社長の気持ちがわかる」飯塚さんが語る“断らない”メリット
渡辺
ちなみに飯塚さん、「断らない」っていうスタンスで、最大で3社の代表をしてたじゃないですか。
“自分のキャパ”的なことはどう考えてたんですか?
飯塚さん
キャパの限界はもちろんあるんですけど、「受けたあとに考える」で続けてますね。
人に「こういうのやってみない?」って伝えたとき、即答されるのが一番うれしいと思いません?
「一度持ち帰っていいですか」って言われたら、えぇ…ってなる。
渡辺
ですね。ポジティブな気持ちを見せてもらえるとめっちゃうれしいです。
飯塚さん
正直、僕が仕事の依頼をされたときも、毎回できるイメージは湧いてないんですよ。
でも、考えても解決しない。やってみないと結局わからない。なので全部受けます。
飯塚さん
断らない理由でもうひとつ大きいのは、「自分の力を試してみたい」から。
藤田社長が麻雀にハマったのは「1人の実力を試したかったから」って言ってて。めっちゃ気持ち分かるんですよ。新しい仕事に乗り込んだとき、歯が立たないことの方が多くて。
そうすると調子に乗らなくて済むし、すごく人に優しくなれますね。多様性も理解できますし。
渡辺
仕事をたくさん受けることによってそういうメリットがあるんですね。
飯塚さん
逆に、唯一断ると決めているのは「何かをやめて、かわりにこれをやってくれ」というもの。追加されるのはいいけど。
渡辺
え、そうなんですか? 入れ替えるかたちのほうが回るのでは?
飯塚さん
今やってるAと、新しくお願いされるBで、「Aをやめて、B」になる場合、Bのほうが絶対やりたいとか、絶対成功する…って確信できない場合やりたくないじゃないですか。
渡辺
なるほど。そういう考えなんですね。
飯塚さん
あと、単純に“追加”されたほうが、時間を大切にするようになるので、意外と回るんですよ。
「持ち帰る」ということができなくなるので、その場でめっちゃ考えるし。
渡辺
いっぱいいっぱいのとき、逆に新しい仕事を受けたほうが処理能力が上がる、という人は意外と多いのかも。
緊張状態を作ったほうが、効率が上がるのか…
飯塚さん
人間は、自律的に自分をマネジメントするのが難しいんですよね。
渡辺
原見ちゃん、今日のアドバイスをもらって、まずは何をやる?
原見
とりあえず、「自分が今どういうことをやっていて、何を得た」という発信は、絶対定期的にやります。
渡辺
さすが飯塚さんという内容でした。やっぱりマルチタスクの専門家だわ。
飯塚さん
マルチタスクの専門家。なんか……ちょっとダサいけどまあいいか(笑)。
極限まで効率化を図り、デュアル作業もガンガンこなすという飯塚さん。
「仕事を追加されたほうが、時間を大切にできる」
日々忙殺されてキャパオーバーになりそうになったら、“発想の転換”的に思い出したい言葉かもしれません…!
皆さんも、くれぐれも会議中のデュアル作業は「上司の信頼」を得てからにしつつ、マルチタスクに励みましょう!
〈編集=天野俊吉/鳥山可南子/文=吉河未布〉
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