ビジネスパーソンインタビュー
片山 義丈著『実務家ブランド論』より
無駄なブランド広告はなぜ生まれるのか?多くの企業がAppleやスタバになれない理由
新R25編集部
「あなたは、“ブランドとは何か”をきちんと答えられますか?」
…こう問うのは、世界ナンバーワンのエアコンメーカー・ダイキン工業で、ルームエアコン「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」の誕生など、企業ブランドの構築に携わってきた片山義丈(かたやま・よしたけ)さん。
33年間ブランドと向き合ってきた片山さんがたどり着いた“ブランド論”が、ギュッと凝縮された新著『実務家ブランド論』から、ブランディングの極意を一部抜粋してお届けします。
ブランディングの間違い① Appleやスタバのようなスーパースターブランドをお手本にしている
世の中のブランド広告が自己満足で役に立たない理由は、Apple、NIKE、スターバックスだけをお手本にしてブランディングに取り組もうとするからです。
だから、ブランド広告とは「おしゃれで、商品のことをくどくど説明しない、かっこいいイメージ広告」だと誤解してしまう人が多いのです。
「大リーグのイチロー選手を育てた教育論」とか「フィギュアスケートの羽生結弦選手のやってきた練習方法」などを読んでも、我が子は大リーグ選手にはなれないし、自分には四回転ジャンプはできない。
そんなことはみんなわかっているはずなのですが、なぜかブランドの場合、天才の方法論を真に受けてしまい、表面的になぞって、そのままやろうとしています。
このやり方は、Appleのような天才、ナンバーワンブランドだからできる方法であることを忘れてはいけません。
実は多くの商品が最初に目指すべきは、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」のブランドなのです。
例えば、「次世代のデジタルカメラ」と銘打った広告。
美しい写真とシンプルなコピーで構成されていて、タグラインには「人と地球が大好きで未来にチャレンジする企業」とあります。
一見アップルの広告を思わせる体裁で、誰が見てもかっこいいと思うイメージ広告ですが、あなたが初めて目にするブランド名です。
あなたはその広告に、どこまで興味をもったり共感できますか?
オンリーワンのブランディングは、天才のナンバーワンブランディングとは違うやり方をしないといけないのに、ナンバーワンをお手本にしたブランド広告をそのままやってしまう。
それは企業にとっての自己満足に過ぎず、結果として機能しない、無駄な広告になるのです。
ブランディングの間違い② ブランドに取り組む目的が不明瞭
そもそも間違ってナンバーワンを目指してしまう理由は、「ブランドに取り組む目的を間違えている」からです。
日本では、ブランドという言葉をうさんくさく思っている人も多いのですが、一方で万能な魔法の杖のように考えてしまいがち。
非常に定義があいまいな言葉であるにもかかわらず、とても価値のあるもののように見えるのが「ブランド」なのです。
だから、かっこよく「この商品に足りないのはブランド力」と言ってみたり、日本経済新聞に出てくるような「情報化が進み、モノからコトへと変化する時代においては、機能的価値よりも情緒的価値が重要となり、ブランド戦略こそが企業の命運を分けることになるのである」という文章に、「なるほど!」「とても素晴らしい」と思ってしまう。
さらには会社の偉い人たちも「これからはブランドの時代だから、ブランドをやれ!」などと言い出して、それをきっかけにブランドへの取り組みがスタートしている場合も多いと聞きます。
ですが、そこに「目的」はありますか?
なぜ「ブランドを何とかしないといけない」のでしょうか?
会社の偉い人たちは、なぜ「ブランド力を高めろ」と言っているのでしょうか?
本来は、「ある目的を達成する」ために「ブランドを何とかしないといけない」はずなのです。
「ブランドを何とかする」のは「目的達成のための手段」でしかありません。
でも一番重要であるはずの、ブランドに取り組む本当の目的があいまいで、「ブランドをつくる」ことが目的になってしまう。
つまりは、手段と目的が入れ替わっているのです。
「ブランドを何とかする」「何のためにブランドをつくるか」という目的をはっきりさせることが絶対に必要になります。
そもそもブランディングの本来の目的は、企業の事業活動に貢献すること、シンプルに言えばお金を儲けるためです。
だからブランド広告の正しい目的は、広告によって生活者の頭の中に「お金を儲けることにつながる『ブランド』をつくる」こと。
でも実際は「ブランド広告をつくる」ことが目的になってしまう。
そうなると当然のことながら、無駄なブランド広告をつくっていることにまったく気づかないのです。
ブランディングの間違い③ 「ブランド」の定義があいまい、あるいは間違っている
あなたのおじいちゃんやおばあちゃんからから「ブランドとは何なの?」と聞かれたら、わかるように説明できますか?
つまりブランドの定義を答えられますか?
ブランディングというのは、いいかえると「ブランド」をつくることです。
つくろうとする「ブランド」がしっかりと定義できていないと「何を」つくるのかがあいまいになってしまいます。
だからブランディングがうまくいかないのです。
ご承知のとおり、世の中の「ブランド」の定義は、「約束」「差別化」とされていることが多いのです。
「約束」や「差別化」などはよく使われていて一見わかりやすそうに見えますが、やはりスーパースターブランド、ナンバーワンブランドだけにあてはまる定義で、オンリーワンブランドをつくるときには使えません。
スーパースターほどの独自性や差別化を持っていない一般企業や普通の商品が目指すのはオンリーワンブランドであり、オンリーワンブランドの定義は「約束」「差別化」ではないからです。
実務家が33年かかってたどり着いた、ブランドづくりの教科書
片山さんの実体験に基づいて書かれた『実務家ブランド論』は、凝り固まったブランドの固定概念をほぐす、ブランディングの教科書です。
「あなたの企業・商品・サービスは凡人です!」「SDGsで、ブランドなんかつくれません!」…このように、目次にはやや辛辣な見出しも並んでいますが、平凡な企業・商品であっても愛されるブランドづくりのノウハウが詰まっています。
世の中の多くのブランドの本を読んでも、その人がそれぞれに考えたり、誰かの考えをベースにして進化させたりした結果、いろいろな主張や定義があってどれも正しいのだけれどどれも今一つ自分の仕事には役にたたないことがあるのではないでしょうか。
しかしこの本は、それぞれの主張に奥底にある一番大事であり、普遍的な部分が書かれています。
実務家ブランド論・あの人の言う「ブランド」と私が言う「ブランド」ってなんか噛み合っていない気がする
・うちのブランドもAppleやスタバみたいになりたい!
・そもそも何のためにブランドっているんだっけ?
・何から手を付けていいかわからない…。今やってることが正しいのかもわからない…
ブランディングをこれから実践する人や、実践してみてはいるもののブランディングに悩んでいる人は、「じゃあどうすればいいのか」がていねいに解説されている同書を読んでみてはいかがでしょうか?
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