ビジネスパーソンインタビュー

「なんでもやる人」の強さ。変化の時代を生きる若者にDEAN FUJIOKAが授ける“自分の変え方”

必要なのは、「蘭のような強さ」。

「なんでもやる人」の強さ。変化の時代を生きる若者にDEAN FUJIOKAが授ける“自分の変え方”

新R25編集部

2021/11/15

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目まぐるしいスピードで変わっていく世の中に対応できる、「変化できる人間」であれ。

そんな言葉をよく耳にします。新しい生き方や働き方が出てきたり、今までの考え方や価値観が通用しなくなってきたり。「ちょっと置いていかれはじめてるかも…?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。

でも…「自分を変える」って、すごく難しいことじゃないですか?今さら簡単に変われない気もするし、いったい何から始めればいいんだろう…?

今回そんな疑問に真っ正面から答えてくれたのが、香港、台湾、中国、インドネシアなどアジア各国・地域でキャリアを重ね、環境の変化に応じて自分を「変化」させつづけてきたミュージシャン・俳優のDEAN FUJIOKAさん。

12月にリリースする最新アルバムタイトルにも『Transmute』(=「変異」「変化の持つ可能性」)を掲げるDEANさんに、「今の日本の若者に必要な変化」を教えてもらいました。

【DEAN FUJIOKA(でぃーん・ふじおか)】歌手 / 俳優 / 作詞・作曲家。2004年に香港で活動をスタート、ライブパフォーマンスや音楽制作を始める。2006年から台湾に拠点を移し歌手デビュー。2009年にジャカルタへ拠点を移し、1stアルバム「Cycle」を自主制作開始。2013年に日本で1stシングル「My Dimension」をリリース。2015年以降は拠点を東京に置き、国内ライブツアーを重ねる。2019年に2ndアルバム「History In The Making」をリリースし、アジアツアーを成功させる。2021年9月より「Musical Transmute Tour 2021」開催。12月8日に3rdアルバム「Transmute」リリース。2022年1月には自身が主演、企画&プロデュースを担当する「Pure Japanese」も公開予定

サノ

今日は20年近いキャリアのなかで様々な環境の変化に対応してきたDEANさんに、「変化できる人間になれるコツ」を教えていただきたいです…!

よろしくお願いします!

DEANさん

「変化できる人間になるコツ」ね。エラそうなことを言える立場では全くないんですけど…

強いて言えば、日本という国には「変化しよう」と思いにくい“ある特徴”があるかもしれないですね。

サノ

ある特徴?

DEANさん

「なんでもやる人」を、ネガティブに評価する空気があることです。

DEANさん

僕は各国で求められるがまま自分を変化させて本当にいろんな仕事をやってきたし、日本でも俳優、ミュージシャン、映画監督、報道番組、絵本作家などさまざまな仕事をやらせていただいているんですが…

それを「一つの職業を極めていく覚悟がないヤツ」のように捉えられる瞬間が、時折あるんですね。

これには非常に驚きました。中華圏で仕事しているときは、「何でもできなきゃ一人前じゃない」と育てられたので。

「契約書や請求書も作って、裏のことも全部自分でやれてはじめて“一人前”という世界でした」

DEANさん

もちろん国や地域ごとに価値観もあると思うのですが、少なくとも僕自身はやっぱり…

環境の変化に対応して求められることをなんでもやってきて、その結果手に入れた「切れるカードの多さ」こそが自分を生き残らせてくれると感じていて。

サノ

切れるカードの多さ、ですか。

DEANさん

この1〜2年、仕事がなくなって家賃も払えなくなったりとか食事がままならなくなるということが、普通に起こる世の中になってしまったじゃないですか。

なかには、自分で死を選んでしまう人もいた。その決断に至るまでの流れを想像したら、本当に悲しかったし、恐ろしかった。

だから、人間には「他に選べる、もっと良い選択肢」が必要で。

DEANさん

コロナ禍になり、「表舞台の仕事」は片っ端から選択肢が消えていった。肝入りだったアジアツアーも、中止の決断をしました。

それでも幸いなことに、企画書を自分で書いて、映画や多種多様なプロジェクトを始める用意をしたり、絵本を作ったり、楽曲を作ったり…「表舞台がなくてもできる仕事」の選択肢が残っていた。

サノ

環境が変化しても、手札の数が多かったことで「切れるカード」が残っていたと。

DEANさん

今はパンデミックに関わらず、異常なスピードで世の中が変化していく時代ですよね。そんななか、完璧な将来予測や備えをすることなんて不可能。

「安泰」など、存在しないと言っていい

つまり、「時代を先読みする力」以上に「時代の変化に対応して自分を変化させる力」が非常に大事な時代になってきたなと。

DEANさん

言わば、「蘭の花」みたいなものですよね。

蘭って、変異しやすい種だからこそいろんな可能性が生まれたんですよ。土がなくても生きていける。石の上でも育つし、空中でも育つ。植物界の生存競争で淘汰されないよう、「自分を変異させる特性」によって厳しい環境でも結果生き残ってきた。

今はこうした「蘭のような変異能力」が必要になってるとヒシヒシ感じます。

急に例えがオシャレすぎましたが、なんとかついていってます

DEANさん

でも今の日本はまだ、土にも空中にも咲ける「蘭」タイプの人を“奇形”と捉える価値観がやや強い

そういった空気は、少しもったいないなと思います。

自分を変えるための一歩は、「思考OS」のアップデートから

サノ

変化することの重要性はよくわかったんですが…

でも正直、「自分を変えていく」ってすごく難しくないですか…?

DEANさん

かなり難しいです。

なぜならこれはもはや、「OSレベルの問題」なので。

DEANさん

人間は、思考が行動になるわけじゃないですか。

つまり行動を変えるには、行動の規範となる「思考OS」自体をアップデートする必要があるわけで。スマホもOSとアプリって互換性がありますよね。「このアプリはOSを最新バージョンにアップデートしないと使えない」とか。

PCですらアップデートに何時間もかかったりしますが、大人になった僕らが凝り固まった「思考OS」を変えていくのは相当難易度の高い作業です。

サノ

やっぱりそうですよね…何か方法はないのでしょうか?

DEANさん

ありますよ。“強制的”に思考OSを変える方法が

DEANさん

自分を変えるために必要なのは、「自分の視点を疑う力」。

「もっと適切な方法があるかもしれない」と現状を疑う思考回路があってはじめて人は自分を変えていけるわけですが、自分のなかに「ひとつ」しか視点がない人は、そもそも自分を疑うことができない

つまり、自分のなかの「視点の数」を“強制的に”増やすことが、自分を変える柔軟さにつながっていくんですよね。

サノ

なるほど。では、「視点の数」を強制的に増やすにはどうすれば…?

DEANさん

一番手っ取り早く、かつ全ての人にできるのは、「スラッシャーになること」です。

サノ

スラッシャー?

DEANさん

スラッシャーとは、ひとつの分野じゃなく、複数の業界やスキルを横断したキャリアを積んだ人のこと。

多種多様な仕事をするというのは「視点を増やす能力」を得ることに非常に効果的なんですよ。

「僕自身も“強制的に”視点を増やされた経験がありまして…」

DEANさん

僕、日本での初仕事は自身初の “映画監督”だったんですが、これもともとは「殺人犯」役としての役者業のオファーだったんですよ。もともと監督はべつの方で決まっていて。

で、その話が決まってから全然動きがないなと思ってたら、ある日「ちょっと明日東京に来てくれ」と出資者のエラい方から連絡がありまして。

翌日、忘れもしない東京のレトロな喫茶店でね…「監督やらない?」って(笑)。

サノ

ええ〜…

DEANさん

しかも、当時まだ裁判中の殺人犯が獄中で書いた本を元にした、そこそこリスクのある映画だったから、「もし監督までやったら、これが日本での最初で最後の仕事になるかもしれない」と事務所からも言われて。

思わず「そんな仕事を持ってきたんかい!」って。

サノ

え、ええ〜〜…

DEANさん

でも、僕がやらなかったらこのプロジェクト自体が流れてしまうと思って、気づいたら「やります」と言ってました。

当時の日本人スタッフたちは僕のこと「中華圏でエンタメの仕事をやっていた人」くらいの認識だったので「はじめまして」状態で。そのなかで監督として現場の指揮を執るのはまあ…とても過酷な経験でした(笑)

DEANさん

でも、この経験を通して役者としての目線がまったく変わっていったんですよね。

出資者の意見を聞きながら、現場に指示を出していく、中間管理職的な視点。あの目線を知ったことで、いち役者としての想像力も仕事のスタンスも明らかに変わった。

もうひとつ、スラッシャーになる以外だと、異国の言語を学ぶという手段。複数違う言語OSを使って思考するのは一番効果的です。

とにかく、強制的に新しい視点を増やしていくこと。ここが“自分を変えるスタート地点”になると思います。

逃げることはれっきとした変化戦略のひとつ

DEANさん

最後に…念押しでお伝えてしておきたいことがあって。

それは、「“逃げる”というのも、れっきとした戦略の一つだ」ということ。

ちょっと宣伝になっちゃうんですが、いいですか? このことは、7月にリリースした『Runaway』という楽曲にもメッセージを込めているんですが…(笑)

『Runaway』は日本語で「逃げる」の意。ちゃっかり告知して自分で笑っちゃったDEANさんかわいい

DEANさん

逃げるという選択肢は、兵法で言うところの「走為上(そういじょう)

不利な状況で無理して頑張ってクラッシュして消えていくよりは、生存するために本能に任せて逃げるほうがいいときもあるわけですよね。

※「走為上」…「万策尽きたときは逃げるのが最善の策」という意味

DEANさん

これは僕自身、身をもって体感してることで。

僕も香港でそれなりに生活できるようになって、でもその後の情勢を予測して台湾に拠点を変える決断をしたんですけど、それを悪く捉える香港の友人もいたわけです。

サノ

はいはい。

DEANさん

もしかしたら日本にも、「他の国で通用しなかったから日本に逃げてきた」と捉える人がいるかもしれない。

でも、その人から「逃げる」という行為に見えても、自分にとってそれが「自分を救う行為」なら躊躇いなくそれを選ぶべきなんですよね。

僕自身はアジアや北米で生活してきて、根本は「地球上どこでも仕事して生きていける」という思いでやっているわけで。

それを「逃げた」と言ってしまうのは、「ひとつの価値観しか持っていない人」なのかも…?

DEANさん

「逃げる」ことを選んだ自分を、自分さえ許せたらそれでいいわけですよ。

何度でも許せばいいじゃないですか。僕なんか、何回許したんだろうって感じですよ(笑)

サノ

そうなんですか…!?

DEANさん

僕にしたって、もちろん毎回、ものすごい決心をしたうえで新しい土地で挑戦してるわけです。なんとかここで生きていくんだって。その誓いを壊して新しい環境に行くというのは、なかなか自分を許せるものじゃない。

でも、許すんです。その自分を許す

「生き残る」という究極の目標を前に、“周りが自分をどう思うか”とかそんな些細なことはもうどうでもいいんです。

サノ

自分が生き抜くための、当たり前の手段の一つだと。

DEANさん

人生において大切なことは非常にシンプルで、「“自分にとっての前”に進んでいるかどうか」

どちらが“前”かなんて、本人以外に決める権利はない。だから、今日の僕の話も「変わる/変わらない」「逃げる/逃げない」…どっちが正解だとか、そういう話ではないんです。

何が今この瞬間、自分にとって「生き抜く」ことになるのか。それを素直な気持ちで決めることが、一番大切だと僕は思ってます。

真摯で誠実な言葉だ…今日はありがとうございました!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=石川みく(@newfang298)/撮影=長谷英史(@hasehidefphoto)〉

DEANさんの最新デジタルアルバム『Transmute (Trinity)』が絶賛発売中!

DEANさんの最新アルバム『Transmute』が12月8日リリース!(デジタルアルバム『Transmute(Trinity)』は10月29日より絶賛発売中!)

前作から3年振り、通算3枚目のアルバムである本作は、現代の混沌とした世の中で、予測不能な将来を生き抜くために「“変異”していくことが大切である」というメッセージが込められており、まさにDEANさんご自身が“変異”していく」という決意表明の意欲作。

ミュージシャン、俳優、映画製作など様々な顔を持つDEANさんが、アジアの縦軸でワールドワイドに生き抜いて来たからこその想いが詰まったこのアルバムについて、ご本人も下記のようにコメント。

DEANさん

今回の記事はこの曲を聴きながらぜひ読んでいただくと、ビンビンくると思いますよ。

聴いてもらったら、この取材で話してることがよりわかると思う。ぜひ今回はアルバムを聴きながら読んでください!

なお、DEANさんは前回ご登場いただいた記事で、よりご自身のキャリアに迫りつつ「変化」について別角度で解説してくださっています…!

気になった方はぜひアルバムとあわせてチェックしてみてください!

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