「ふたりが僕を、”そういうリーダー”にしてるだけ」
「僕が“気づく”まで10年、待ってくれた」豊本・角田が絶賛する東京03飯塚の“リーダーの素質”
新R25編集部
11月23日にNHKで放送される『今日は一日 東京03のラジオコント三昧』。
東京03によるラジオコントを1日中(計8時間半!)流すというチャレンジングな特集番組です。
いまや単独ライブは即日完売、コントを貫いた結果コントの冠番組を持つようになった3人ですが、実は僕らと同じ20代のころは日の目を見ない、鬱々とした日々を過ごしていたのだそう。
このお三方になら、「20代の”仕事のモヤモヤ”をどうやって乗り越えたのか」、実体験にもとづく血の通ったアドバイスがもらえる気がする…!
ということで今回、3人そろったところに相談に行ってきました。笑いあり学びありの人生相談インタビュー、前後編でお届けします。
前編は、「リーダー・飯塚悟志から、20代の若者へ」。
〈聞き手=サノトモキ〉
【東京03・飯塚悟志(いいづか・さとし)/角田晃広(かくた・あきひろ)/豊本明長(とよもと・あきなが)】2003年結成のお笑いユニット。豊本明長と飯塚悟志が結成していたお笑いコンビ「アルファルファ」に、元「プラスドライバー」(お笑いユニット)の角田晃広が加入して誕生。TBS系『キングオブコント200』9で優勝を果たす
うだつが上がらなかった20代。リーダー・飯塚は「ヒモでした」
サノ
『東京03の好きにさせるかッ!』の収録前に、わざわざありがとうございます…!
今回は、20代でうまく成果を発揮できずにモヤモヤしている僕のようなビジネスパーソンに、お三方の経験を活かしたアドバイスをいただきたいという企画です。
というのも、失礼ながらみなさんも20代のときには、僕らのようにくすぶっていたんじゃないかな…と思っており。
角田さん
まあくすぶってましたね、ええ。
飯塚さん
自信持っていうなよ(笑)。
開始10秒で東京03のノリ
飯塚さん
でも角田さんの言うとおり、20代のころはひたすら悶々と過ごしてましたよ。
芸人としてまったく成果を出せなくて。
サノ
以前もおっしゃってましたね。
同世代でライブに出てたおぎやはぎさんやアンタッチャブルがめちゃくちゃウケてて、モヤモヤしていたと。
飯塚さん
そう。どうしたらいいのかわからなくてダラダラと過ごしていたし、「今度はこういう挑戦をしてみよう」とかも一切考えてなかった。
「ホント何やっているんだろう俺」って毎日思ってました。
なんならバイトもろくにしてませんでしたから。
サノ
えっ?
芸人としての稼ぎもなく、バイトもせず…20代どうやって生きてたんですか?
飯塚さん
ヒモ。
えっ?
飯塚さん
なんか…年上の優しい女の人に食べさせてもらってましたね…(笑)。
20代〜30過ぎくらいまではそんな感じでした。
サノ
わりとガチめの「ダメ大人」だ…
飯塚さん
そんな感じだったから、俺から20代の人たちにエラそうにアドバイスなんて…
なんかある?
角田さん
いや飯塚さんはもう、「リーダー」としてのアドバイスでしょ。
リーダーになってつまずいてる若い人には、飯塚さんの言葉は絶対刺さりますよ。
僕ら3人が今でも同じ方向を向けているのは、絶対「リーダー・飯塚悟志」のおかげなんで。
サノ
ほう…!? ぜひ詳しく聞かせてください!
飯塚さんからのアドバイス①「メンバーが気づくまで、リーダーは待つ」
サノ
角田さんから見て、飯塚さんは「リーダー」としてどう優れているんでしょうか?
角田さん
飯塚さんはとにかく、「待ってくれるリーダー」なんです。
「待ってくれる」?
角田さん
飯塚さんって、ネタ合わせのときに「そのボケ面白くない!」ってはっきり言ってくるんですよ。
で、若いころの僕はそれにめちゃめちゃ反発してて。
「全然ウケてなかったじゃん」って言われても、「いや、ウケてたけどね?」みたいな(笑)。
サノ
ああ…年も近いしプライドもあるし、なかなか受け入れられないというか。
角田さん
でも、そこで「こうしろ」とも「じゃあもういいよ」ともならないのがすごいところで。
飯塚さんは、10年待ってくれましたから。
「飯塚さんのアイデアのほうが面白いかもしれない」と僕が自分で気づくまで10年、僕の意見を尊重しつづけてくれた。
10年!?
サノ
「そのボケ面白くない!」と伝えつつ、10年間角田さんのアイデアを採用しつづけたんですか!?
飯塚さん
めちゃめちゃ妥協してましたよ。
やっぱり、ボケの人には機嫌よくボケていただきたいんで。
だからまずは、本人が面白いと思うことをやってもらえればと。まあ内心では「絶対ウケないだろうな」と思ってるワケですけど…
「いつか気づいてくれるはずと」。その状態で10年待つって、すごいな…
角田さん
で、10年尊重してもらった結果、「飯塚さんのほうがたぶん正しいな」と自分で気づくんですよね。お笑いって、「笑い声」という答えが出ちゃうんで。
でも、やりたいようにやって失敗させてもらえたからこそ、僕は今心から飯塚さんと同じ「面白さ」の方向を向けてると思うんですよ。
思ったことは全部言う。でも、腑に落ちるまで待ってくれる。こんなことができるリーダー、なかなかいないと思うんですけどね。
サノ
とのことですが…飯塚さん、これは意識的にやってるんですか?
飯塚さん
これは、コンビ時代に豊本とまったくコミュニケーションを取らなかった反省なんですよ。
飯塚さん
僕は角田さんと組んで3人になる前、豊本とアルファルファというコンビを組んでいたんですが…
ダウンタウンさんの影響で、「普段はバラバラなのに “舞台”で並んだ瞬間最高に面白い話をする」っていう、このカッコよさに憧れていたんですよ(笑)。
けど…そんなことできるのってやっぱり天才だけで。
サノ
(やっぱり「ダウンタウン」ってとんでもないコンビなんだな…)
飯塚さん
凡人ふたりがそれをやって舞台でスパークするわけもなく、むしろ普段離さない分ただただ心の距離が離れていって。
で、「もうコンビ解散しよう」ってとこまでいった。
その話し合いのとき、豊本に「俺は言ってくれなきゃわからない」と言われたんです。
飯塚さん
そこの反省ですね。その反省を糧に、この3人になったときは「もう全部話そう」って決めました。
尊重はするけど、「他の人相手ならこんなこと言わないだろうな」みたいなことも空気悪くなってもいいから言おうと。
ただ、待ってたとはいえ…角田さんがこんなに寄ってくると思わなかったです。あんな反発していたのに、今は何の意見も言わなくなりましたから(笑)。
飯塚さんからのアドバイス②「“粘れるもの”と出会えれば、ブレなくなる」
サノ
ちなみに、豊本さんから見るとどうでしょう?
「飯塚さんから若者へ、アドバイスできそうなこと」。
豊本さん
「“ブレないリーダー”になるにはどうすればいいか」、じゃないですかね。
リーダーって「チームでここに向かうぞ」と決断しなきゃいけない難しさがあると思うんですけど、飯塚さんは本当に「ブレない」。
“僕みたいなメンバー”としては、これほど頼りになるリーダーはいないと思う。
僕みたいなメンバー?
豊本さん
僕は、「ビジョン」を全く描けないタイプの人間なんですよ。
「このキャラを面白く演じろ」みたいに“役割”を与えられれば頑張れるんですけど、「何をすれば面白いか」「チームがどこに向かうべきか」とかは全然わからない。
サノ
実行力はあるけど、何をどう頑張るべきかは描けないと。その悩み、あるな…
豊本さん
でも飯塚さんは常に「東京03らしい面白いことをするためにどうするか」だけを考えて、そこからブレることは絶対しない。そしてその面白さのために異常に粘る。
本当に全ての思考がそこにつながってる人なんですよね。
だから、見えている飯塚さんを信じてついていくっていう。
角田さん
リーダーに「これはやるべき」「これはやっちゃいけない」とか、確実で真っ直ぐな芯がある状態というのは非常に大きいですよ。
メンバーは、安心して前だけ見て突っ走れるので。
「ブレないもの」が間違ってたらヤバイですけど、我々も「この人の言う”面白い”は正しい」って年々思うようになってますからね。
サノ
だ、大絶賛だ…
ただ飯塚さんご自身としては、やっぱり内心ブレちゃいそうになることもあるんですか?
飯塚さん
僕ね、正直ブレることあんまりない。
断言
飯塚さん
理論じゃないんです。“自分たちのやりたいこと”とズレてるときは、もう肌で感じる。
「なんかこの話やだな」って。
サノ
へええ…例えばどんなお仕事ですか?
飯塚さん
絶対言わないですよ。
例えられるか(笑)!
飯塚さんにツッコんでもらうとなんか幸せな気持ちになります
サノ
どうしてそこまでブレずに進むべき道を信じられるんでしょうか?
そこまで貫けるリーダーって、なかなかいないと思うんですが…
飯塚さん
いやこれは単純に、ふたりが僕をそういうリーダーにしているって話だと思うんですよ。
飯塚さん
さっきも言った通り、僕はもともと芯があったり、「もっと面白くしたい」って粘ったりできるような人間じゃないんです。
僕は明らかに、「東京03になって粘るようになった」んですよ。1本のネタを作るのに、もう細かくずーっと「ここ直したい、あそこも直したい」って。
それってやっぱり、3人でネタをやるようになって「これ面白いじゃん」って感覚が自分のなかに生まれたからなんですよ。
飯塚さん
結局、“愛情がないもの”って粘りようがないんですよね。
「これは面白いぞ」「うまくいきそうだぞ」、自分のなかにそういうワクワク感、期待感が多少なりともないと、頑張れない。育てようとも思えない。
この3人になって、「これは絶対面白い」という気持ちがどんどん強くなっていった。だから頑張れたって感じ。僕自身がすごい人だったとかでは全くない。
サノ
「この人たちとなら面白いものを作れる」と思えるからこそ、ブレないリーダーに“なれた”と。
飯塚さん
ってことなんだと思いますけどね。
だから僕に言えるとしたら、「“粘れるもの”に、チャンスがあるかもよ」って話なのかなあ。
粘れるなら、続けられるなら、どっかで流れが変わるかもしれないっていう。
サノ
たしかに飯塚さん、「粘り勝ちした人」って印象が強いかもしれません。
コント一筋で突き詰めつづけた結果、今年はついにキングオブコントで松本人志さんと並んで審査する側になったわけで…!
飯塚さん
まあまあまあ...ね?
まんざらでもなさそうでした。後編「角田さん・豊本さんが若者にアドバイスできること」に続きます!
絶対的に頼られるリーダーでありながら、「そのリーダーを作っているのはメンバーだ」と語る飯塚さんのリーダー論。
全然「謙虚」とかじゃなく、心底そう仰ってる感じがとてもかっこよかったです。こんな大人になりたいな。
後編「角田さん・豊本さんが若者にアドバイスできそうなこと」も公開中!こちらもぜひお楽しみください!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
11月23日、「今日は一日 東京03のラジオコント三昧」が放送予定!
radiko | 「今日は一日 東京03のラジオコント三昧」
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NHK-FMが展開する、特定のジャンルを1日がかりで特集する「今日は一日○○三昧」シリーズ。音楽がテーマになることも多い本シリーズに、東京03が登場!
「東京03の好きにさせるかッ!」(NHKラジオ第1)でこれまでに披露された135本のコントの中から25本程度が届けられ、東京03とゲスト(バカリズム 、空気階段、佐藤栞里ほか)とのトークも披露されます。
11月23日(火・祝)12:15~18:50、19:20~21:15
「今日は一日 東京03のラジオコント三昧」
本生放送番組について、飯塚さんはこのようにコメント。気になった方は、ぜひ聴いてみてください!
飯塚さん
ラジオコントって、情報は“声”だけで、あとは全部想像で補うじゃないですか。「オフィスがこんな感じ」とか、シチュエーションも。
だから、舞台だったら物理的に表現できないコントを実現できちゃうんです。その自由度が、めちゃくちゃ楽しい。
しかも、台本を作ってくれる脚本家さんたちが、かもめんたるとか、ゾフィーとかやさしいズとか…現役のコント師なので本当に豪華で。
若手の人たちだけじゃなく、シティボーイズ(大竹まこと、きたろう、斎木しげるの3人からなるお笑いユニット)のきたろうさんも来てくれて。お歳も召してるのに、一切噛まない。めちゃくちゃカッコよかったんですよね。
普段の僕らだけじゃできないような面白いコントが盛り沢山なので、ぜひ聴いてみてください!
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