北野唯我著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』より

通る企画書に必ず入っている「ある言葉」とは? 最強の提案資料フォーマット

仕事
ビジネスとは精神的な活動ではなく、むしろ、フィジカルな作業の連続

『転職の思考法』や『天才を殺す凡人』など数々のベストセラーを生みだしてきた作家であり、株式会社ワンキャリア取締役でもある北野唯我(きたの・ゆいが)さんはそう言います。

しかし作業効率をあげる“仕事術”までは、誰にも教えてもらえないもの…。

そこで、北野さんが実践する“仕事術”を惜しげなくまとめた新著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』(日本図書センター)から、「提案力」「文章力」「集中力」を高める仕事術を一部抜粋してご紹介。本日の内容は「提案力」をあげる提案書の書き方です。
出典

仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

仕事の教科書

仕事の教科書

提案書の最強フォーマットは「目的→背景→提案→詳細」

まず、前提として、企業のカルチャーや業態によって、「通りやすい提案書のフォーマット」は、全然違う。

実際に、私もクリエティブな仕事、コンサルティングの仕事、人材の仕事、メディアの仕事などで働いてきたからこそ、その実感がある。

ただ、もし1つだけ、最強のフォーマットを選ぶとしたら、これだと断言できる。

それが、「目的→背景→提案→詳細」という順番でメモをまとめてから、資料に落とす4段フォーマットである

まず、言葉の定義をしたい。
・目的
めざすべきゴールであり、「なんのためにやるのか?」を指す。

・背景
その目的に至った理由であり、「なぜその目的達成が必要なのか?」を指す。

・提案
目的と背景を踏まえたうえで、「こうしたい」「こうあるべき」という案であり、その中で「どれをしたいか?」という優先順位をつけられると、なおよい。

・詳細
スケジュールや担当、リスクなど、補足的な情報である。目的・背景・提案の項目には入らないが、重要な情報を整理して入れる。

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

ただ、当然、このフォーマットに当てはめれば、なんでもいいわけではない。

その「書き方」にはコツがある。具体的には、以下のようになる。
4段フォーマットを使うときのポイント

①「目的」で迷ったときは、セントラルクエスチョン(「どうなったら成功なのか?」)から考えること

②「目的と背景の関係」が論理的につながっていること

③「背景」には、事実と解釈が分けて書かれており、論理的な強さがあること

④「提案」とは、究極的に言うと「意志」であるため、いくつもパターンが考えられることを理解し、そのうえで自分なりの優先順位をつけること

⑤「詳細」の中身を書く際は、「とはいえの法則」を使うこと

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

これは、具体例で説明したほうがいいだろう。

たとえば、この本の企画書を4段フォーマットにまとめると、こうなる。
目的
・すべてのビジネスパーソン(とくに、入社5年目くらいまで)に、「成果をあげる仕事術」を伝える

背景
・若い頃に「成果をあげる仕事術」を体系的に学べるかはキャリアを決めるほどに重要だが、OJTや研修だけで伝えるには限界がある
→ある調査によると、95%以上の企業が「OJTの運用に課題あり」と回答

提案
・「この1冊があれば、きびしいビジネスの世界を生き抜いていける」といえる「仕事術図鑑」をめざす
・本全体を「著者からの手紙」というコンセプトにする
・「著者×体裁×イラスト」で、独自性を出す

詳細
・類書のベストセラーが存在するが、内容的に古く、アップデートが必要なのは明白
・複数の法則が出てくるが、イラストやデザインによって、読み進めたくなるような工夫を凝らしている
・スケジュールイメージは、3/20発売★ ← 2/15見本出来 ←1/20 最終稿FIX

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

背景には「ペイン」と「事実」を入れる

「背景」で重要なのは、目的と背景が論理的につながっていることである。

簡単に言うと、「目的→なぜ?→背景」と、背景が目的をサポートする情報になっているべきである、ということだ。

そのためには、きちんと「ペイン(悩み・痛み・不満・不安・非効率などの苦痛)」を入れることだ。

提案の本質とは、相手のペインを解決するものだからだ。

加えて、もう1つ「背景」をつくるうえでの重要な点は、論理的な強さにある。

具体的には、ペインをサポートする根拠(=事実)をつけ加えるべきなのだ。

ほとんどのケースにおいて、ペインは「解釈=事実に基づく、あなたなりの意味づけがある情報」でできている。

だとしたら、その解釈の前提となる「事実」が存在しているはずだ。

先に挙げた、この本の企画書の例であれば、「ある調査によると、95%以上の企業が『OJTの運用に課題あり』と回答」という部分だ。

つまり、背景には、解釈と、その解釈をサポートする事実まで入れておくのだ。

提案は数パターン出して、優先順位をつける

「提案」は、あなたが考えた「こうすべき」という方向性を述べる部分だ。

提案とは、目的を達成するための手段であり、意志が込められている。

そして、意志に絶対的な答えはない。

つまり、数パターン書いてもよい。

いや、正確に言うならば、ここでの案は、むしろ数パターンあったほうがいいだろう。

迷ったなら、2パターン以上、平均的には3パターン出すのが安全だろう

並列して企画を書くのだ。

なぜか?

その理由は、多くの人は、1つの選択肢しかない状態で、「その1つを選ぶこと」に抵抗があるからだ。

あなたも、レストランで1種類しかないメニューから、その1種類を選ぶより、いくつかの種類があったほうがいいだろう。

これと同じように、2〜4パターンの案を出すことで、相手が受け入れてくれる可能性はぐっと上がる

言うならば、「相手に選んでもらう余地」を残しておくのだ。

ただし、大切なのは、その中でも「あなたなりの優先順位」をもっておくことだ。

その理由は、提案とは「意志」であり、物事の成功確率は、提案の質以上に「意志の強さ」が決めることも多いからだ。

詳細には「とはいえの法則」を使う

最後は「詳細」だが、たとえば、スケジュールや予算、担当メンバーなどだ。

そして、「詳細」で私がおすすめするのは、「とはいえの法則」を使って、提案の強度を上げることだ。

人が「やらない理由」を話すとき、よく口にする言葉が「とはいえ」だから、「とはいえの法則」と呼んでいる。

具体的には、この「とはいえ」を使って、「やらない理由」を1つずつ、徹底的に潰していくことである。

この本の企画書の例であれば、「(とはいえ)類書が存在するのでは?」や、「(とはいえ)法則が多すぎるのでは?」という反論を潰していくのだ。

これに対して、前者(=類書があること)の反論には、「類書のベストセラーが存在するが、内容的に古く、アップデートが必要なのは明白」と説明している。

また、後者(=法則が多いこと)の反論には、「複数の法則が出てくるが、イラストやデザインによって、読み進めたくなるような工夫を凝らしている」と、企画書の中で、自分たちの考えを明確にしている。

これが提案を強化するポイントだ。

この「とはいえの法則」の破壊力をもっとも感じられるのは、じつはテレビの通販番組だ。

こういった番組では、カリスマセールスパーソンが商品を売っている。

ついつい、見入ってしまうぐらい面白いが、ほとんどが「ペイン→買うべき理由→視聴者の『とはいえ』を潰す」という構造でできているのだ。

たとえば、羽毛布団をイメージしてみてほしい。

まず、「寒い夜は腰が痛みますよね?」というペインがある。

そして、買うべき理由が挙げられる。

「この布団は高品質で温かい。しかも、軽くて長持ちします。国内生産なので、安全ですよ」

そして、すかさず、視聴者の「買わない理由(=とはいえ)」を、先まわりして潰す。
「とはいえ、値段は高いですよね?」→なんとお手頃な価格です

「とはいえ、いまは忙しいから、あとで買ってもいいですよね?」→いま買うと、送料が無料になります

「とはいえ、買ってダメだったら困りますよね?」→気に入らなければ、返品を受けつけます

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

このとき、なによりも重要なのは、視聴者の「とはいえ」を、先まわりして潰していることである。

視聴者が番組を見終わってから感じるであろう疑問に、「後から答える」ではなく、「先まわりして潰す」ことにこそ、価値がある

だから、強い。

まさにこれが「とはいえの法則」の破壊力なのだ。

ここで学んだことは、ビジネスの世界で生きていくうえでの肝になる。

ぜひ、自分のものにして、どんどん使っていってほしい。応援している。

実践すれば誰でもレベルアップできる『仕事の教科書』

仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

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