北野唯我著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』より
夜は経営者に、朝は実行者になれ。誰でも“超集中”できるたったひとつのコツ
新R25編集部
「ビジネスとは精神的な活動ではなく、むしろ、フィジカルな作業の連続」
『転職の思考法』や『天才を殺す凡人』など数々のベストセラーを生みだしてきた作家であり、株式会社ワンキャリア取締役でもある北野唯我(きたの・ゆいが)さんはそう言います。
しかし仕事内容は教えてもらえても、効率よくパフォーマンスをあげる“仕事術”までは、誰にも教えてもらえないもの…。
そこで、北野さんの“仕事術”を惜しげなくまとめた新著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』(日本図書センター)から、「提案力」「文章力」「集中力」を高める仕事術を一部抜粋してご紹介。本日の内容は「集中力」を高める方法です。
仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた
自分の中に「経営者」と「実行者」を共存させる
そもそも、会社は「経営者と実行者」に分かれていることを、あなたは知っているだろうか?
この2つは全然違う脳みそを使う。
名監督と名プレーヤーは違う、という言葉がわかりやすいだろうか。
そして、すぐれた会社はこの「経営者と実行者」のバランスがいい、と言われる。
これは1人の人間の中でも同じだ。
経営者がすべきことは「やるべきことを整理すること」であり、実行者がすべきことは「整理されたことを実行すること」なのである。
経営者が「タグ付け」をして、実行者を“集中ゾーン”に導く
では、「整理すること」とはなんだろうか?
それは、実行する人がやりやすいように、仕事を分解し、タグ付けしてあげることである。
原稿タスクを具体例にして、考えていこう。
「タグ」とは、下の例であれば、「→」で書かれた右側の文字だ。
具体的には、「前日の夜、寝る前にやる」とか「つべこべ言わず、とにかく行く」とかだ。
つまり、タグ付けとは、「いつやるのか?」と、「どのように取り組まないといけない作業なのか?」の目安をざっくり示すことだ。
仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた週末に原稿を書かないといけないときの To Doの管理表(一部のみ再掲)
・すぐに出かけられるように、原稿執筆用のパソコンをカバンに入れておく(1分)→前日の夜、寝る前にやる=タグ
・Wi-Fiの充電をしておく(1分)→前日の夜、寝る前にやる=タグ
・カフェに行く(5分)→つべこべ言わず、とにかく行く=タグ
・原稿をとにかく書く(40〜50分)→目の前に人がいることをイメージして、一気に書き切る=タグ
ポイントは、「実行する人が」やりやすいようにすることにある。
経営者が自分のために分けるのではなく、実行する人のことを思い、整理するのだ。
そのために必要なのが、「タグ付け」なのだ。
じつは、この「タグ付け」が超重要なのだ。
なぜ「タグ」が重要なのかというと、それは、実行者が素早く「集中ゾーン」に自分をもっていくためのヒントが含まれているからだ。
上の例であれば、私にとってもっとも重要なタスクとは、じつは「原稿執筆用のパソコンをカバンに入れておく」なのだ。
「えっ!そんなこと?」と思っただろうか?
意外に思われるのもしょうがない。
ただ、これにはもちろん理由がある。
というのも、私がこの世でもっとも嫌いなことが「カバンを持つこと」だからだ。
これは初めて聞く方にはびっくりされるが、私はとにかくカバンを持つことが大嫌いなのだ。
たとえば、出張で大きなカバンを持たないといけないとき、そのカバンに荷物を詰めることを考えるだけでちょっと憂鬱になる。
それぐらい、カバンを持つのが心の底から嫌いなのだ。
そんな私であるから、原稿執筆用のパソコンをカバンに入れる作業は、前日に済ませておく必要がある。
「前日の夜、寝る前にやる」という、タグ付けが必要なのだ。
このタグ付けの効果はすさまじく、バカにできない。
実行者にとってかなり役に立つ。
あなたも、上司から「これ、急ぎだから最優先でやって」と言われるか、「そんなに急ぎじゃないし重要じゃないから、自分のタイミングでざっくりやって」と言われるかで、取り組み方が変わるだろう。
これが「タグ付け」の効果なのだ。
つまり、タグ付けとは、「いつやるのか」と、「どのように取り組まないといけない作業なのか」の目安を事前に示すことで、実行する側のハードルをぐっと下げる効果があるのだ。
夜は「経営者」になり、朝は「実行者」になれ
さて、私のカバン嫌いの話は、半分冗談みたいなものだが、きわめて重要な真実を含んでいる。
タスク管理においてもっとも重要なのは、「やるべきことを整理する人」と、「整理されたことを実行する人」を分離するということだ。
これができれば、驚異的に強い。
言い換えれば、あなたがタスクを分解して「整理すべき」タイミングと、そのタスクを「実行する」タイミングは、分けたほういい。
結果的には、そのほうが仕事が速くなることが多いのだ。
経営者の時間は、「なにをするのか?」と「なにをすべきではないのか?」を整理し、タグ付けする時間だ。
一方で、実行者の時間は、整理された仕事をひたすらに集中してこなすだけだ。
そして、個人的には、夜は「明日の経営者」であり、朝は「今日の実行者」であることがおすすめだ。
私の場合は、夜に「明日やるべきこと・やらないこと」をすべて紙に書き出し、タグ付けし、1日を終える。
そして、翌日の朝、昨日の自分から受けた指示をひたすらこなし、昼から夕方までは、会議や確認作業、外部の人との打ち合わせに時間を使う。
こういうルーティンをこなしている。
こうすれば、経営者と作家という仕事を両立できる。
というか、こうしないと両立は不可能だ。
ちなみに、こうはいっても、20〜30代の頃は、夜に遊びたい人も多いだろう。
私も20代前半の頃はそうだった。
そういう人は、朝イチで、「自分がやるべきこと・やらないこと」を決めて、紙に書き出してもいいだろう。
そこは柔軟でいいと思う。
ただ、1つたしかに言えるのは、「その日が成功した状態」とは、行き着くところ、「その日の夜に、明日すべきことが明確である状態」のことである。
そもそも、人はなぜ、頭が混乱するのか?
集中して仕事ができないのか?
それはほとんどの場合、自分が「つぎになにをすべきか?」がぼんやりとしていて、不安になるからだ。
あるいは、「やらないこと」を決められずに、すべての仕事を引き受けてしまったり、中途半端にやってしまったりするからである。
では、だれがそれらを判断してくれるのか?
それは、「経営者」の仕事だ。
ぜひあなたの中にいい経営者を育てて、仕事のスピードアップにつなげてほしい。
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