ビジネスパーソンインタビュー
麻野耕司著『NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則』より
営業における失注理由は“4つの不”に分類される。失注を事前に防ぐ「シナリオ営業」の秘訣
新R25編集部
無理矢理売り込んだり押し付けたりする営業に、そろそろ限界を感じている…そんな営業担当者もいるのではないでしょうか?
無理に営業しなくても、顧客から「会いたい」「買いたい」と言われて受注率を急伸させる方法があるなら、ぜひ知りたいですよね。
その方法が書かれているのが、株式会社ナレッジワーク代表取締役・麻野耕司(あさの・こうじ)さんの新著『NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則』(ダイヤモンド社)。
同書より、顧客視点に立って購入プロセスをサポートする「シナリオ営業」について一部抜粋します。
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・なかなか受注できない新米の営業担当者
・やり方をアップデートしたいベテラン営業担当者
・営業担当の成果をより上げたい責任者
“押し込む営業”が通用しなくなった理由
インターネットの普及によって、顧客は自分たちで大量の情報にアクセスできるようになりました。
顧客は営業担当者と接点を持つ前に、購買意思決定の約50%を終わらせているというデータもあります(「CEB、MLCCustomerPurchaseResearchSurvey,2011」)。
顧客は自分たちのペースで、いつ、何を、どのように購買するのかを決めています。
それなのに営業担当者が、自分たちの都合で商品やサービスを押し込もうとしても、成果が上がるわけはありません。
顧客の意思決定プロセスを理解し、それに沿って、段階的に顧客の購買意向を高めていくことが重要なのです。
別の動きもあります。
多くの会社では、コンプライアンス(法令遵守)が厳格化される傾向にあります。
それによって、顧客の購買のプロセスも変化しています。
かつては、営業担当者と顧客が、接待などを通して関係性を深めることが一般的でした。
緊密な人間関係を構築した上で、「今月はノルマが厳しいのでこの商品を買ってもらえませんか?」というような「押し込み営業」「お願い営業」が成立していたわけです。
しかし、最近では発注候補の企業から接待を受けること自体を禁止している会社も増えています。
大企業だけでなく、中小企業や中堅企業でも、購買の稟議システムが整備され、明確な理由がなければ、商品やサービスを購買担当者が発注できなくなっています。
担当者の一存で買う・買わないを決めることは、もうできないのです。
そんな時代に、自社の都合で顧客に商品やサービスを「押し込む」営業はもう、通用しません。
そうではなく、顧客の稟議システムなども含めた購買の意思決定プロセスを理解し、並走する営業が求められるのです。
顧客を主役にした「シナリオ(台本)」を用意せよ
営業担当者に「成約までの仕事のプロセスを教えてください」と言うと、多くの人は次のように説明します。
「会社紹介から始まって、顧客の課題をヒアリングし、自分たちの商品やサービスを提案し、そしてクロージングに進みます」
プロセスそのものは、この通りで間違いではありません。
しかし、このアクションはすべて営業担当者が「自分軸」で語ったもの。
「自社視点」での営業です。
これでは、これからの時代は通用しません。
自分たちの都合に顧客を巻き込む「自社視点」の営業スタイルから脱却するには、まず顧客の購買の意思決定プロセスを知る必要があります。
多くの場合、顧客は購買を決めるまでに次のようなプロセスを踏んでいるはずです。
NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則①情報収集
自分の会社や部門の方針に沿って情報を収集する
②課題設定
自社や自部門の解決すべき課題を設定する
③比較検討
課題を解決するために、複数の解決策を比較する
④最終決定
解決策として、商品やサービスを購買しようと決断する
営業担当者が「自社視点」から「顧客視点」に変われば、購買までのプロセスに次のような形で並走するよう進化するはずです。
NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則①情報提供
顧客の方針に関連する情報を提供する
②課題訴求
顧客が解決すべき課題を伝える
③比較訴求
他社の商品・サービスと比較した際、自分たちの商品・サービスが課題解決に貢献できることを伝える
④決定支援
顧客の意思決定を支援する
顧客が情報収集する段階で、営業担当者は必要な情報を提供しましょう。
次に顧客にとって、何が課題になり得るのかを伝えてみましょう。
顧客が課題を理解し、いくつかの商品・サービスを比較検討するプロセスに入ったら、営業担当者は自分たちの商品・サービスが他社と比べて優れているポイントを分かりやすく説明しましょう。
その上で、顧客が購買の稟議を進める段階になったら、営業担当者は稟議が通りやすくなるように支援するのです。
自分の都合ではなく、顧客の購買の意思決定プロセスに合わせて話を進めていく―。
それは言い換えれば、顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスについて、顧客を主役にしたシナリオ(台本)を用意してサポートする営業とも表現できます。
そんな営業スタイルが「シナリオ営業」です。
「4つの不」を潰せば、失注を防げる
営業における失注理由は「4つの不」に分類されると言われています。
NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則①不信顧客の信頼が得られず、商談を始められない(顧客の心理:「あなた、誰?」)
②不要顧客が課題を感じておらず、提案を求めていない(顧客の心理:「そもそも必要?」)
③不適顧客が他社との違いを十分に分かっていない(顧客の心理:「他社でもよくない?」)
④不急顧客が急いで発注をする必要を感じていない(顧客の心理:「今、必要?」)
「シナリオ営業」を実践し、「情報提供」「課題訴求」「比較訴求」「決定支援」を進めていけば、「4つの不」を乗り越えることができます。
「情報提供」は、自分が商談を進める価値のある存在であるということが示され、「不信」を解消します。
「課題訴求」は、顧客の課題を醸成し、「不要」を解消していきます。
「比較訴求」は、他社ではなく自社に発注すべき理由を明確にするため、「不適」を解消できます。
「決定支援」は顧客が今、発注することを決断させるため、「不急」を解消します。
「シナリオ営業」のプロセスを徹底すれば、「4つの不」による失注を防ぐことができます。
自分の営業活動で失注が起こったとき、「4つの不」のどこでそれが発生しているのかを把握できれば、「シナリオ営業」のどのプロセスを強化すべきなのかがクリアに分かります。
“ダサくてウサンくさい営業”から脱却できる一冊
NEWSALES―新時代の営業に必要な7つの原則これまでの営業「OLD SALES」には、「精神論重視でダサい」「お金の話ばかりでキタない」「口八丁手八丁でウサンくさい」といったネガティブなイメージがつきまとっています。
しかし、これからの時代に求められる「NEW SALES」は、こうした既存のイメージとはまったく異なります。
真逆と言ってもいいでしょう。
麻野さんが「企業に成長を、個人にやりがいを届けたい」という想いで書いた同書は、古い価値観から脱却した、これからの時代の営業メソッドを学べる一冊。
成果ややりがいにつながらずモヤモヤしている営業担当者は、ぜひお読みください。
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