

伊藤穰一著『テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる』より
チケット転売は、もうできなくなる。ジャニーズも挑戦する“コンサートチケットNFT化”の影響
新R25編集部
web3、メタバース、NFT…
そろそろ耳慣れてきたこれらの最先端テクノロジーですが、結局のところ、私たちの生活や働き方にどのような変革をもたらすのでしょうか…?
元MITメディアラボ所長・伊藤穰一(いとう・じょういち)さんの新著『テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる』(SB新書)によると、経済・働き方・文化・教育など、あらゆることが激変する未来が待っているのだそう。
すべてが大転換する前に“心の準備”として読んでおきたい同書より、「NFTのユニークな使い方」について一部抜粋してお届けします。
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・NFTの概念を整理したい
・今おこなわれている“NFTの活用法”を知りたい
・今後の“NFTの可能性”を知りたい

ジャニーズのコンサートチケットを“NFT化”する理由
2021年ごろから急に流行りだしたNFT(代替できない価値を持つトークン)は、購入して価値が上がったら転売するという投機対象として見られているところが大きいようです。
しかし今後、大事になってくるのは、むしろ所有者が転売せずに持ち続ける、長期的な価値を持つNFTです。
たとえば僕はジャニーズ事務所の顧問を務めているのですが、2022年、ジャニーズ事務所は、コンサートチケットの一部をNFT化する挑戦をはじめます。
ジャニーズは、もともとファンコミュニティとの結束が強い事務所です。
ファンには支払ったお金以上の価値を常に感じてもらうことが理念です。
ファンコミュニティはどことなくDAO(組織に属さず自分の能力やスキルを発揮する分散型自律組織)っぽい雰囲気もあります。
チケットのNFT化は、利便性などにおいて、よりファンに喜んでもらえるのではないかということでトライすることになりました。
ジャニーズのコンサートは非常に人気があるため、チケット販売は抽選です。
しかし不当に転売されたり、転売防止のために家族や友人の間ですら譲渡できなかったりと、人気が高いがゆえに、チケットの管理は、実は常に頭の痛い問題でした。
そこでチケットのNFT化の初期段階としてジャニーズ事務所は、ジャニーズの出演する5月の公演において「ジャニーズジュニア情報局」に入会している家族や友人の範囲ならばチケットの譲渡をOKとしました。
NFTチケットならば、譲渡OKとしても転売目的の人に不当利用される心配はありません。
NFTチケットはブロックチェーンに紐づいているため、「誰が入手し、誰に譲渡されたのか」が記録されます。
ただし本物のファンなら、たとえ譲渡することがあっても、万が一のことが起こったときだけでしょう。
となると「よくチケットを買うが、毎回、譲渡している」という明らかに怪しい履歴を残している人は転売目的、つまり「偽物のファン」と見なすようにあらかじめプログラムをして対策を施すことができるのです。
そう考えると、NFTチケットとは、「ファンの真贋」を証明するもの、といってもいいかもしれません。
また、チケットは、ファンにとってはかけがえのない「思い出の品」です。
大好きなアーティストのコンサートに行ったときのチケットの半券を、大事にとってあるという人は多いのです。
実際、有名アーティストのコンサートチケットの半券が、オークションにおいて高値で取引されるケースも見られる。
ジャニーズのアイドルは大人気ですから、コンサートが終わった後にも、おそらくNFTチケットの価値は上がります。
しかし、そんな大事な思い出の品を転売したい本物のファンは稀でしょうから、実際には転売せずに、ずっと持ち続けるケースが大半になるはずです。
つまりNFTチケットは、ブロックチェーンによって信用と安心が担保された入場券であると同時に、「思い出」という代替不可能な長期的価値を持つものでもある、というわけです。
チケットのNFT化は、いわば仲介的なプラットフォームを経ずにファンと直に結びつく「DtoF(ダイレクト・トゥ・ファン)」のビジネスです。
これにより、ジャニーズ事務所とファンコミュニティの関係性は、よりいっそう強くなっていくでしょう。
ジャニーズ事務所のみならず、日本のコンテンツビジネスは、もともとファンコミュニティとの結びつきが強く、ファンの心理もよくわかるという特徴があります。
そこを、うまくweb3(「ブロックチェーン」をインフラとする、非中央集権的なウェブの世界)のトークノミクスを取り入れることで押し上げていけば、日本のコンテンツビジネスの価値もよりいっそう知れわたると思います。

何をNFT化したらおもしろいか
NFTとは何かと問われて、現時点で明確に答えられるのは、文字どおり「ノン・ファンジブル、つまり代替不可能なトークンである」ということくらいです。
要するに、NFTは、まだ概念が定まっていないほど新しいテクノロジーなのです。
需要が多様であるほどマーケットも豊かになりますから、今後、ウォレットを持つ人が増えるにしたがって、「どんなものをNFT化したら人はほしがるか」というアイデアも多様になり、さまざまなNFTが誕生していくでしょう。
すでにあるNFTを分類して、「NFTとはこういうもの」と示すことは簡単です。
しかしNFTはまだ誕生して間もないものであり、その可能性は未知数です。
いかにいままでは見過ごされていた価値とNFTを結びつけていくかは、人々の目的意識やアイデアにかかっています。
いくつか、僕の頭に浮かんでいるアイデアをシェアしましょう。
テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる・アバター用のデジタルファッション
映画制作のスタッフジャンパーのようにコミュニティメンバーにだけ付与される、転売不可なデジタルファッション。
これを自分のアバター(メタバース内の自分の分身)が身につければ、そのコミュニティのメンバーであることを示すことができる。
・ありがとうNFT
コミュニティに貢献した人に付与される、転売不可の「ありがとうNFT」。
このNFTを持っているとコミュニティのイベントに参加できたり、コミュニティのデジタルプロダクトなどが贈られてきたりする。
・上客NFT
レストランで「よい振る舞い」をしたお客に付与される、転売不可の「上客NFT」。
このNFTを持っていると「一見さんお断り」のレストランでも予約がとれる。
「転売不可」「譲渡不可」とは「お金に換算できない価値」を資産として扱うということです。
幅広いジャンルに応用できます。
僕のポッドキャスト番組でも、番組内で読み上げる相談メールを寄せてくれた方に番組オリジナルNFTをさしあげる、という試みをしています。
いずれ、そのNFTを持っている人が参加できるイベントを開催するなど、コミュニティを盛り上げていきたいと考えています。
読んで備える“破壊的ゲームチェンジ”
インターネットが誕生し、世の中に普及してから約20年。
「『インターネットがない時代があったなんて信じられない』『スマホを使いこなせない人は困る』というほどの劇的な変化が、いま、新たに起ころうとしている」と伊藤さんはいいます。
同書は、最新テクノロジーに詳しくなくても「概念」や「全体像」、「何が起こりうるのか」を整理するのに役立ちます。
誰もが不可避な“破壊的ゲームチェンジ”に、読んで備えましょう。

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