ビジネスパーソンインタビュー
“意外と楽しめた”を、続けてきた人生。
「アナウンサー目指してなかった。目標は現状維持」それでも弘中綾香アナが躍進するのはなぜ?
新R25編集部
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オリコンによれば3年連続「好きなアナウンサー」1位。これまでの5年を振り返ってみれば、『激レアさん』『あざとくて』、そしてエッセイや写真集の発売。26~31歳までの20代後半、これ以上の“成果”を出しつづけられた方は、テレビ業界を見渡してもほとんどいないのではないでしょうか。
今回は、弘中さんのように結果を残すには? どんな目標を持って働いているの?という質問をぶつけてみたのですが、出てきたのは「未来のカツアゲ」という謎ワード(?)。
「ビジョンや目標を持つのがニガテな人」にぜひ読んでいただきたいリアルなインタビューとなりました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
【弘中綾香(ひろなか・あやか)】2013年、テレビ朝日入社。2013年から『ミュージックステーション』のサブ司会を5年担当。2017年には『激レアさんを連れてきた。』、2019年からは『あざとくて何が悪いの?』などの番組に出演し、人気を博す
天野
今日は弘中さんに、「20代後半での結果の出し方」を聞きたくて…
弘中さん
結果…
天野
仕事でこれだけはやるようにしていたとか、逆にやらないようにしてたルールとかはありますか?
弘中さん
そうですねえ…当たり前のことを当たり前に…メールの返信をちゃんとするとか…
天野
今回のフリーペーパーは「これから5年、どう働くか?」がテーマなんですが、目標はありますか?
弘中さん
具体的に何かをやりたいっていうのはあんまりないかもしれないですね。
天野
(ないんだ)。
弘中さん
私、そういうのがないんですよねえ…。“自分がこうなりたい”という目標があまりない人生。
「アナウンサーも、目指してなかった」弘中アナの“諦観”
天野
昔からそうなんですか?
弘中さん
受験した学校も“入りたくて入ったわけじゃない”って感じだったし。もともとアナウンサーも、目指してたわけじゃないんですよ。
天野
え…そうなんですか!?
弘中さん
採用試験の時期が早かったから、総合職試験にも有利になるかなと思ってアナウンサー試験も受けてみたっていうだけで。
そこで、嘘か本当かわかりませんが、加地さん(加地倫三。『アメトーーク!』など)が「この子は『さんま御殿』に出たらヒット賞を獲りそう」って、なぜか言ってくれたらしいんです。
天野
(新卒の面接時点でそんな見出され方を…)
弘中さん
だから、たとえばアナウンサーと違う仕事をやる可能性もいくらでもあると思います。
天野
どんな仕事を?
弘中さん
プロデューサーとか、やってみたいなとは思います…
天野
おお! 面白い目標じゃないですか。いつぐらいからプロデューサーの道に?
弘中さん
いつ…それはないんですよね…
なんだろう、ムリに引き出そうとしすぎてすごく警戒されているかもしれません
天野
…では、プライベートはどうですか? 「何歳までに結婚」みたいなイメージを持ってる人も多いみたいですが…
弘中さん
ないですねえ。
むしろ、「30歳で結婚して、○歳で子どもを」みたいなことを計画したところで…ねえ?みたいな気持ちが強い。考えたってしょうがなくないですか?
天野
そうですか…
弘中さん
結局、仕事もプライベートも、どこかしらに諦観(あきらめ)みたいな気持ちがあるんだと思います。私が「『報道ステーション』のメインキャスターやりたいです!」って宣言するのも今さら無理があると思いません?
天野
…最近は会社で「目標を宣言しよう」とか「あなたの中長期のビジョンは何ですか?」と言われることが多いじゃないですか。弘中さんも、なんらかの目標を持っていたからここまでの活躍ができたのでは?と思ってしまうんですが…
弘中さん
多分、私は人生観が「運命論」に近いんです。
追い求めてたものとは違う場所に来たけど、「あれ? 意外と楽しめた」を続けてきた人生。というか、それこそが幸せなんじゃないかと思うんですよね。
天野
目標を決める必要はないということですか?
弘中さん
「これを目標にしたい」っていう自分の感覚や判断を信じてないんですよね。それよりは、まわりの人が「こうしてほしい」ということに応えたほうがうまくいく。
「神様が与えてくれる」とまでは言わないけど“自分を幸せにしてくれる仕事は、運命のように降ってくる”と思ってるから…
だから、今求められている仕事にちゃんと応えていれば、プロデューサーの仕事も降ってくると思います(笑)。
若林さんに「大変だね」と言われた“未来のカツアゲ”とは?
弘中さん
オードリーの若林さんに「未来のカツアゲ食らって大変だね」って言われたことがあるんです。
天野
カツアゲ?
弘中さん
目標はなんですか?とか、これからどうするの?って聞かれすぎて何も出てこなくなっちゃうみたいな。
天野
なるほど…正直僕もすっと「自分の目標はこれです!」って言えないタイプなので、共感してしまうかも…
じゃあ弘中さんみたいなタイプは、目標を聞かれたらなんて答えるんですか?
弘中さん
…「現状維持」。
天野
現状維持…! それでいいのかな…
弘中さん
現状維持って悪い言葉じゃないですよ。特に私たちみたいな“運命論”な人には。
現状をやっていくことがいい未来につながるんです。
自分がアナウンサーになることも、『Mステ』に出ることも予期してなかったけど、「やってみな」って言われてやってみたら幸せだった。だから、きっとこれからもそれが続くんだろうと思ってるんです。
「まわりがつくってれたものじゃない、自分の代表作が必要」
天野
なるほどなあ…だいぶ納得しました(汗)。とはいえ、「現状維持」と言いつつも活躍されてる理由があると思うんです。振り返ってみて、“ここが節目だった”と思うポイントはありますか…?
弘中さん
『Mステ』のサブ司会を入社1年目から担当させてもらって、3年目ぐらいのときかな。プロデューサーの方に「『Mステ』がハイライトにならないようにね」って言われたんです。
代々、アナウンサーは5年ごとに交代になっているので「あと2年かあ…」と思って。
そのときに、まわりがつくってくれた成果じゃなくて、自分の代表作をつくらないといけないと、漠然と考えるようになった気がします。
それ以降はどんな番組でも「何かしら起こす」「守りに入らない」という意識は強く持つようにしてましたね。
天野
今日のお話を聞いてきてアレなんですが(笑)、弘中さんが今後どういう方向に進むのかに改めて興味がありまして。たとえばフリーになるとかは考えていないんですか?
弘中さん
どうなんですかね、私たぶん、会社員的要素が強いんだと思います。
天野
会社員、向いてると思いますか?
弘中さん
思いますよ!結局会社ってチームだから、まわりが自分に対して、ちゃんと厳しいことを言ってくれるんですよ。それが好き。
私が“演者さん”だったら、どんな内容でも「いやァ~! 弘中さん今日も最高でしたね!!!」って言われながら、裏では「アイツちょっとアレだな…もう呼ばなくていいよ」って言われたりするんですよ!
そんなことないよ、きっと
弘中さん
会社員だったら失敗しても「こいつを育てなきゃいけない」ってなるじゃないですか。加地さんや、たくさんのプロデューサーさんたちに厳しく言われて成長できる環境が、大好き。
私は「ゼロ→イチ」ができる人間じゃないので、番組の現場をつくってる方たちをリスペクトしてる。そういう人たちと円陣を組んで、食らいついて頑張る感じがたまらないんです。
天野
すごい体育会系だ。
弘中さん
そうですね。チームで与えられた役割を“自分の代表作”にできるよう頑張る。目標を立ててそれをきれいに実現できるタイプの方もいると思うんですけど、それだけが正解じゃないですよ。
未来をカツアゲされそうになっても、現状をちゃんと頑張る。それで振り返ったときに、「全部つながってた」と思える人生にすることが私の幸せだと思いますね。
華々しい目標をそれらしく語る人たち。そんな人たちに比べて、「未来が描けない自分って、つまらない人間なのかも」と思ったことがありました。
しかし、当代イチの人気アナウンサーが語ってくれたのは、「現状維持と運命論の美学」。地に足つかず“未来のカツアゲ”を食らうままにうろたえていた自分に、「そんなタイプじゃないんだから、自分に合ったチームプレーでやっていきましょうよ」と冷静な意見をもらえました。
目標や、未来の追い方は人それぞれ。言葉にすると当たり前ですが…弘中アナが多くの人に支持される理由の一つは、きっとそのあたりにあるのでしょう。
〈取材・執筆=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美〉
弘中綾香ד近未来”
「『あざとくて何が悪いの?』の初回収録があったとき、私はすごく手応えがあったし、きっと私以外の2人も、プロデューサーさんもそうだったはず」。
“代表作をつくる”“守りに入らない”そんな現在の弘中さんのモットーを体現するきっかけにもなった大人気番組は、今クールもパワーアップして放送中!
さらに、9月14日には、新たな著書も発売に! 2年以上にわたる『ダ・ヴィンチ』での連載をまとめた『アンクールな人生』は、多感な半生をつづった“早すぎる回顧録”なのだとか…。
弘中さんの底知れぬ魅力を覗いてみては?
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