「山頂に旗を立てる」だけが挑戦じゃない。

渡米から5年…ピース綾部祐二の近況を聞いてみたら、“挑戦”のハードルが爆下がりした

キャリア
このまま同じ仕事を続けるべきか、新しいことを始めるべきか。

年齢を重ね、社会人として順化するにつれ、「挑戦」は難しくなるものです。

どうすれば自分のキャリアを好転させるための、思い切った一歩を踏み出せるのか…。

そんな悩みを、ロサンゼルス在住のお笑い芸人・綾部祐二さんにぶつけてみました。

数多くのレギュラー番組を抱え、芸人として人気の真っ只なかにありながら、突如渡米した綾部さん。

当時39歳、築き上げたキャリアから距離を置き、エンターテイナーとして新たな挑戦に踏み出せた綾部祐二マインドに迫ります。

〈聞き手=磐城文恵(新R25編集部)〉
【綾部祐二(あやべ・ゆうじ)】お笑い芸人。1977年12月13日生まれ、茨城県出身。O型。2003年10月、又吉直樹とともにお笑いコンビ「ピース」を結成。17年10月、ピースを活動休止し、渡米。現在まで1度も帰国せず、ニューヨークを拠点として活動していたが、渡米5周年となる2022年に西海岸のロサンゼルスへ転居。YouTubeチャンネル『YUJI AYABE from AMERICA』をスタートし、7月にはエッセイ集『HI, HOW ARE YOU?』(KADOKAWA)が発売された

「挑戦しようと思わなければいい。何でみんな山頂に登ろうとするの?」

磐城

磐城

お久しぶりに拝見します、綾部さん…

渡米されてから今までの5年間、日本のメディアに対して沈黙を貫いていたそうですが、これは理由があってのことだったんですか?
綾部さん

綾部さん

ボケだったんです
磐城

磐城

え?
綾部さん

綾部さん

5年も姿をくらましてから、突然現れて英語ペラペラになってるというボケを狙ってたんですけど…

びっくりするぐらい英語が話せなくて
大不発だったそうです
磐城

磐城

…でも、5年間もアメリカで生活して、映画やテレビCMに出演もされてましたよね。

キャリア的には大きな変化があったんじゃないですか?
綾部さん

綾部さん

もちろん渡米してから貴重な体験はたくさんありましたが、まだ自分が考えるエンターテイナーの理想像には達していないですね。

むしろそっちは何にも成長してない
【速報】ピース綾部、エンターテイナーとしては成長してなかった
磐城

磐城

いったいどんな5年間だったんでしょう…

今回聞きたかったのが、大人の挑戦なのですが、これまで培ってきた日本の芸能界で築いたポジションから飛び出すことに抵抗はなかったんですか?
綾部さん

綾部さん

ないですね。

自分のなかではもう、大冒険に出たい気持ちでいっぱいで飛び出しました。
磐城

磐城

…すごい思い切りですね。

私も同じ仕事を続けるべきか、安定した生活を手放してでも新しいことに挑戦するべきか、年齢を重ねるにつれ悩むことも多くて…

どうすれば綾部さんのように思い切った一歩を踏み出せるんでしょう?
綾部さん

綾部さん

挑戦しようと思わなければいいんですよ
ほう?
綾部さん

綾部さん

挑戦って、必ずしも大きな夢を一生懸命追うことだけじゃないってことです。

もっと安易な気持ちで始めてもいいと思っていて。

僕が芸人になったのも、「有名人になってきゃーきゃー言われたい」っていう理由だけですから。
磐城

磐城

それを実現できたのもすごいと思いますが…失敗したときのことを考えて動けないんです。
綾部さん

綾部さん

うーん、みんな夢って「山の頂上に旗を立てる」イメージでしょ?

でも僕は「山を登ってる途中で降りていい」と思うんです。
磐城

磐城

夢を諦めてもいいってことですか?
綾部さん

綾部さん

そうではなくて、3合目くらいでおいしい湧き水を飲めたとか、美しい眺めがあったとか、それが自分にとって満足する結果であれば、途中で降りていいんです

最後まで登らなきゃいけないって思うから挑戦しにくくなる

この感覚で山登っちゃだめなんだって誰が決めたんだって話ですよ。
磐城

磐城

勝手に自分で決めてしまってますね…
綾部さん

綾部さん

人それぞれの夢の追いかけ方があっていい。

まあでも、僕の場合は英語力っていう登山靴を用意せず、素足で山に登りはじめちゃったんですけど
今一番欲しいものは「英語が喋れるようになる薬」だそうです

世間からの疑問の声やいじり…綾部さんはどう受け止めた?

磐城

磐城

綾部さんの渡米に関して、日本ではさまざまな意見が飛び交ったと思うんですが、どう受け止めていたんですか?
綾部さん

綾部さん

簡単です。

知らない人の意見なんて気にしなくていい。
かっこよくてもう「YUJI AYABE」って呼びたくなってきた
綾部さん

綾部さん

みんな、「自分のやってることを認めて欲しい」と思いすぎじゃないでしょうか。
磐城

磐城

たしかに…
綾部さん

綾部さん

そんなことで疲弊するのはもったいない。SNS上での心ない言葉もそう。

たとえば路上ライブしていて「あんたの歌、パクリだし全然よくないよ」って面と向かって言ってくるやつがいたら、そいつ相当やばいですよね。
磐城

磐城

めちゃくちゃ怖いですね。
綾部さん

綾部さん

みんな面と向かっては言わないのに、SNSだと言ってしまう。バレないと思って言うやつも十分やばいですよね。

僕の渡米生活に対しても、あることないこと言われましたが、自分で納得してやっていることだから何を言われても気にならない。
磐城

磐城

自分の決断に覚悟を持てないから、他人の目を気にしちゃうってことか…
綾部さん

綾部さん

そう。そもそも夢って、誰のためでもなく自分のためだと思うんです。

おしゃれなインテリアとかファッションとか、人に見せるためじゃなくて、ただただ自分のハッピーのために買うことってありますよね。
その感覚で渡米できるのがすごいのよ
磐城

磐城

「自分のため」であることが決断の軸にあれば、他人の目も気にならなくなると。
綾部さん

綾部さん

そう。もちろん、批判をすべて無視しろという話ではないですよ。

グサッとくる言葉でも「確かにこいつの言ってることは理にかなってる」と思ったら参考にします。

批判が的を射ていて、自分のよくないところを正せるんだから、それはもうラッキーですよ。
YUJI AYABE「批判にも、Thank you so muchと返す」

ポジティブに諦める。“身の丈”を受け入れる無敵の思考

磐城

磐城

ここまで話を聞いていると、綾部さんのメンタルの強さが光りますね…
綾部さん

綾部さん

いやいや、僕だって自己嫌悪になることはたくさんありますよ。

このまえも、家で映画を見たとき「うわ…また日本語字幕をつけて見ちゃったな…」って思いましたし。
自己嫌悪のスケールは小さい
綾部さん

綾部さん

でも、それが身の丈なんですよ。

変にかっこつけてもしょうがないので、真正面から向き合わないといけない。
磐城

磐城

だめな自分を受け入れるということですね。
綾部さん

綾部さん

そう。ダメな自分もしっかりと見つめてこそ、次のアクションができるということ

体もそうじゃないですか、健康診断で太り気味って指摘されたら、意識しはじめる。

それと同じぐらい自分の性格や能力に向き合えばいいのにって思ってます。
磐城

磐城

健康のことだと数値を見てやばいな、明日から食事変えようって思うけど、自分の能力にかかわることは目を背けがちかも。
綾部さん

綾部さん

でもこの話を聞いて「このままで自分は大丈夫かな」って考えてる時点で、自分と向き合おうとする感覚を持ち合わせてるんですよ。

だから、その時点であなたは大丈夫です。
お墨付きをいただきました
磐城

磐城

ちなみに、アメリカ生活を諦める瞬間って来るんですか?
綾部さん

綾部さん

ないですね。本当にもうだめだと思ったらすぐに帰国しますよ。

一番やっちゃいけないのは、「無理だな」って思ったまま、挑戦をやめられずに時間を過ごすこと

これほど無駄なことはないから、ちゃんと損切りはしないと。
磐城

磐城

そこは意外とドライなんですね。
綾部さん

綾部さん

諦めるって、必ずしもネガティブなことじゃないと思うんです。

諦めたらそれで終わりではないので。また次の夢を追いかけてもいいし、人生一度きりだけどワンチャンスではないので。
5年のNY生活で人間力は8000倍になったそうです
綾部さん

綾部さん

損切りしてまた挑戦して、その繰り返しが楽しく人生を回すコツ。

僕もNYからLAに拠点を移しましたが、それもまた新しい挑戦なんです。

「NYから逃げた」なんて見られるかもしれませんが…山ってひとつじゃないですから、また別の山に登ったっていいんです
YUJI AYABE「ロッキー山脈を諦めた翌日に、次の山に登っててもいいじゃない」
「40〜60代を無茶して過ごしたい」

そんな挑戦のさなかにいる綾部さん。オトナの挑戦に期限はなく、ただ自分をハッピーにするための決断ができるかどうかなのかもしれません。

新R25は、綾部さんのアメリカでの「ハリウッドスターになる」という夢の続報を楽しみにお待ちしております!

〈取材=磐城文恵(@fumie_iwaki)/取材・編集=福田啄也(@fkd1111)/文=ケイ・ライターズクラブ/撮影=YUJI AYABE〉

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綾部さんが沈黙を保っていた、渡米からの5年間について語るエッセイ『HI, HOW ARE YOU?』が絶賛発売中!

渡米してから1カ月で舞い込んできた大きな仕事で、何もできなかったという綾部さん。同書のなかでは、当時のことを「ハリウッドの光り輝くセットで、日本の小刀を振り下ろしたら、『キンッ』と一瞬で刃が折れてしまった」と語っています。

そこから5年。英語力は上達しなかったと言うものの、人間力は8000倍に成長したという綾部さんの渡米生活を振り返った一冊。

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