ビジネスパーソンインタビュー
菅原健一著『小さく分けて考える』より
「頭のいい人はみんなできている」プロジェクトを成功させる“分解思考”3つのメリット
新R25編集部
今ある仕事を精一杯やっているはずなのに、飛び抜けた成果を出すことができていない。
そんな頑張っているのに報われていない方、もしかしたら“思考法”が足りてないかもしれません。
株式会社Moonshotの代表取締役で、企業にアドバイスを行っている菅原健一さんは、数多くの企業を相手に「壁打ち」をおこなっています。
菅原さんによると、多くの顧客に関わるうちに見えてきた、うまくいくプロジェクトの共通点があるそうです。
今回は『小さく分けて考える』より、“頭のいい人ができている”思考法について抜粋してお届けします。
うまくいく人といかない人は何が違うか?
僕は仕事柄、数多くの企業や個人の方の相談にのってきました。
様々なプロジェクトに携わるうちに、うまくいく時と、うまくいかない時の共通点が見えてきました。
それは何かというと、正しい目的・目標にするために、目的・目標を「分解」しているかどうか、ということです。
「分解」つまり「分ける」というのは、いろいろな部分をそぎ落とし磨く作業です。
ダイヤモンドの原石から不純物をカットしてきれいにしていったり、大きな肉の塊を磨いて(筋や脂などを取り除いたりして)、「本当に価値のある部分だけを取り出す」のと一緒です。
悩んでいるのは、現象が大きすぎたり複雑だから。
「大きい」ということは漠然としているということですし、「複雑」ということは複数の要素が複雑に絡み合っているということです。
それを「分解」すれば、物事が具体的になったり、手をつけやすい内容になったり、より明確になったりします。
そして問題や課題となる要素が見つかったら、あとは優先順位をつけて解決していくだけなのです。
うまくいかない人や組織の多くは、目の前の細かいタスクに追われて目的を見失っています。
頑張っているのに結果が出ない、もしくは、今は結果が出ていても付け焼き刃のように感じる─。
そんな状態になる時は、大抵、適切な分解ができていないのです。
または目的が大きな塊すぎて、みんなの共通認識が持てない、具体案が浮かばないといったこともあります。
今期なんとか目標を達成したのに、「来期は倍の目標を達成しよう」と言われれば、「ついていけない」「もう策がない」と思ってしまうかもしれません。
これは分解がなされていない状態です。
一方で、うまくいっている人や組織は、一つの大きな目標に向かって、それをどうしたら実現できるか、その方法が適切に分解されており、無駄な仕事はしません。
たとえばグーグルはOKR(Objective and Key Results)という目的・目標を分解して管理する仕組みで大きな目標から分解して、個々の目標を決めています。
個人でも、大リーガーとして活躍している大谷翔平さんは、高校1年生の時に、ドラフト1位でプロ野球選手になるという夢を叶えるために、必要なことを分解して一つのシートにまとめ、努力を重ねてきたそうです。
夢のような大きな目標でも、そのためにやるべきことを分解して、一つずつ達成されたのだと思います。
誰でも「こんなふうになりたい」という理想の生活や仕事、イメージがあるかもしれません。
でもそれを「こんなふう」というイメージのままにしていては、なかなか近づくことができません。
一方で、「理想」を分解して「年収1000万円!」「人前で話す仕事がしたい」などと、どんどん「具体的」にすれば、それに近づく方法が見つかります。
分解すれば、物事の見え方が変わって解像度が上がり、それについて明確に達成方法を考えることができるようになります。
頭がいい人、できる人は解像度高く物事を見ている
先ほど「解像度」という言葉を出しました。
近年、聞かれるようになった言葉で、物事について細かくクリアに見えていることについて、使うようになっています。
古いデジタルカメラで撮影した画像は解像度が低く、新しいパソコンで写真を見ると、モザイクのようで、細かい部分が見えなかったりします。
「解像度」が高い人は大抵、物事を大きく俯瞰して、さらにそれを「分解」して見ています。
だからこそ、具体的で詳細に考えることができます。
最初に思いついた案でも、それを「分解された一部」と捉えて、別のもっとよい案を考えることもできます。
あまり分解していないと、ふわふわした考えしか出てこなくて人に伝わらなかったり、抽象的で結局何をしていいのかわからなかったり、逆に「誰かがそう言っていたから」と短絡的に動きはじめたりします。
最悪なのはやみくもに、「人を増やそう」「予算を増やそう」「とにかく頑張ろう!」と考えてしまうことです。
人や予算を増やせば、達成しなければならない利益目標も増えてしまいますし、いつまでたっても「頑張る」だけの個人や組織になってしまえば、将来はおぼつかないでしょう。
「よりよい選択肢を選んで、効率的に価値の高い仕事をするのか」
「頑張り続けて、目の前のことから抜けられなくなるのか」
この差は、「分解して大切なことに取り組むクセがあるか否か」だけです。
今からでも誰でもできる考え方ですので、ぜひ、身につけていただけたらと思います。
小さく分けて考える
分解思考のメリット①曖昧な説明が明確になる・解像度が上がる
たとえば、「この業務がスムーズにいかないんです」と言われても、その業務をどうしてあげればよいかわからないですよね?
上司も相談にのれないはずです。
一方で、「この業務フローについて、ここの部分がどうしても時間がかかりボトルネックになってしまっているので、この順序を変えたほうがいいのではないですか?」と言われたら、相手にも伝わります。
一般的に「仕事ができる」「頭がよい」と思われている人は、要は問題を分解し課題として具体的に話せるのです。
あまり分解しすぎても伝わらなくなりますが、相手にあわせて分解して説明できると、自分は同じことをしているつもりでも、周囲の見方は変わってくると思います。
分解思考のメリット②全体を分解しておくと、相手によって適切な話ができる
全体を分解しておくと、話す相手にあわせて伝えるべき内容がわかるので、会話がスムーズになります。
小さく分けて考える
たとえば、ある飲食店チェーンで「悪化している業績を立て直そう」という目標が全社的にあったとします。
業績悪化の理由を調べてみると、似たような業態の店舗が増え、価格競争に巻き込まれていることがわかり、「価格」以外でお客さんが求めるものを考え、「健康志向」を打ち出そうとしているとします。
その時、社長に「原価は高くなりますが、野菜の量を増やします」「炭水化物がないメニューを増やします」とだけ伝えても、社長としては判断できないでしょう。
一方で、チームメンバーに「悪化している業績を立て直してほしい」と言っても、相手は何をすればよいかさっぱりわからないと思います。
そんな時は、全体を分解しておくと、相手によって何を話せばよいのかがわかりやすくなります。
社長には、「顧客単価の高い健康志向の商品を打ち出すことで、前年比売上200%を目指します」
部長には、「①野菜の豊富なメニューの開発、②健康志向を打ち出したプロモーションを行ない、前年比売上200%を目指します」
チームのメンバーには、「比較的安価につくれて野菜が多くとれるメニューを考えてほしい」「健康志向を打ち出すためのプロモーションとして、どんなものがありえるか考えてほしい」
こんなふうに相手ごとに分けて話をすれば、仕事もスムーズに進みます。
小さく分けて考える
分解思考のメリット③やるべきことのアイデアが広げられる
個人商店の菓子店の例で考えてみましょう。
この場合、全体の売上は、「販売個数×1個あたりの平均単価」で作られています。
単に「売上を上げよう」と言われるよりも、「販売個数×平均単価」に分解すると、何をしなければいけないかが少し見えてきますね。
この「販売個数」は、「人数×購入回数×平均個数」に分解することができます。
そこで「人数」を増やそうと考えて、「SNSで集客しよう」「お試しセールをやってはどうか」と考えがちですが、この「人数」を、もう少し分解して解像度を上げると、さらに状況が見えてきます。
たとえば、「自分用に買う」「誰かのために買う」と分けて考えるとどうでしょうか?
つまり、「菓子×自分用」「菓子×贈答用」です。
お客さんが自分用にしか買わない場合は、毎月1回平均1個しか買わないとします。
これをお土産品として買ってもらえるようにすれば、企業が贈答用に購入するケースも増えるので、月4回(週1回)平均6個買ってくれて24個売れるようなことも起こり得ます。
ここで、販売個数に選択肢が生まれます。
さらに「人数」は「訪問人数×購入率」にも分解できます。
小さく分けて考える
お店に入った人のうち、購入してくれる確率が何%なのか、ということです。
分解した結果、訪問人数が多いのに購入率が低いのであれば、商品や陳列の問題かもしれないですし、訪問人数が少ないのであれば、今度は
「人通りの多い好立地に出店しているけれど、お客さんが入店する確率がものすごく低いので売れない」のか
「そもそも、人がまったく通っていないから売れない」のか、どちらが問題なのか、がわかるかもしれません。
売上という1つの数字だけ見ていると何をしていいのかわかりませんが、売上を販売個数×客単価の2つに分解すれば、「販売個数を増やす」「客単価を上げる」の二方向の打ち手が考えられます。
さらに、販売個数を「訪問人数×購入率×購入回数×平均個数×平均単価」の5つに分解して解像度を上げていけば、
「購入率を上げる必要があるかも」
「そもそもお店の前を人が通らないから、出店場所が悪いのではないか」
「市外から人を呼び寄せる方法を考えないといけないよね」
「立地はよくてお客さんも来ているんだから、自分用だけじゃなくて6個入りのギフト商品を作って売ったほうがいいんじゃないの」
といった議論ができるようになります。
やみくもに、新商品を出したり、SNSの発信を増やしたりするよりも、より具体的で必要なアイデアが出て、そこから必要な打ち手が見つかるわけです。
「分解思考」でより人生の解像度を上げる
どんな仕事も目的・目標を「分解」すれば乗り越えられる。
そのすべては“解像度を高めること”にあると、菅原さんは言います。
分解思考は、仕事以外にも自分の人生を考えるときにも必ず役立つもの。
『小さく分けて考える』を読んで、自分のキャリアを振り返る機会にもぜひ役立ててみてください!
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