教育に使うなら増税じゃなくて借金がいい?

消費税アップに反対の野党…じゃあ財源はどうするの? 各党の政策を徹底リサーチ!

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10月22日投開票の衆議院選挙は、「消費税増税」が大きな争点になっているようだ。

安倍首相は「社会保障・教育の充実」のために、消費税を10%に引き上げると明言。これに対し共産党、希望の党、日本維新の会などの野党は「それ、消費税を引き上げなくてもできる!」と主張しているらしい。

「消費税を上げないなら、どこからそのお金を持ってくるんだ?」と思っちゃうけど…。その場合の“財源”はどうするのか、野党の政策を中心にリサーチしてみた!

300兆円もある企業の「内部留保」に課税する。楽天・三木谷社長は「二重課税」とかなりお怒り…

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つのだよしお/アフロ

街頭演説に立つ小池サン。「小池グリーン」は健在だ
希望の党は「消費増税の2年凍結」を公約に掲げていて、公式サイトには「300兆円もの大企業の内部留保への課税なども検討し、プライマリーバランス(国の財政収支)の改善を図ります」とある。

内部留保とは社内留保とも呼ばれ、企業の純利益から株主へ配当金を払い、さらに税金も払ったあとの残りを蓄えたもの。言葉のイメージとしては「企業が儲けをコッソリ持ってる」みたいな印象があるが、実際には新規事業のための投資資金として活用する重要なモノだ。また、土地や建物などの資産として持っている場合もあるので、「余っている現金」というわけじゃない。希望の党の方針は、それに課税するということ。

楽天の三木谷浩史社長は、
とツイート。

すでに企業の利益に対して課税されているので(法人税)、二回税金を払うことになる…と怒っているのだ。

共産党は「富裕税」や大企業への課税強化を提言。1~2兆円の財源が見込める!?

「安倍政権にさよならを」など、与党との対決姿勢をハッキリ打ち出している共産党(画像は日本共産党公式サイトのスクリーンショット)
共産党はおもに大企業や富裕層への課税を強化するという。

たとえば公式サイトでは、「法人税減税のばらまきを中止」と掲げている。「安倍政権は、法人税率の引き下げなどで、4兆円もの企業減税を実施してきました」「このようなばらまき減税をやめ、中小企業を除いて、税率を安倍政権以前の水準に戻します。(中略)2兆円の財源が生まれます」とのこと。第2次安倍政権のもとで法人税が23.4%まで引き下げられているので、それ以前の30.0%に戻す見込みのようだ。

また、「富裕税」というストレートなネーミングの税金も新設するという…!

高額な株式や不動産などの資産を保有する富裕層に対して、毎年課税する(中略)『富裕税』を創設します。対象となるのは1000人に1人程度の富裕層だけですが、株式資産などが増加しているもとで、1兆円程度の財源が見込めます」

とのこと。5億円を超える不動産などに税金を課す方針らしく、ボクらが課税されることはまずなさそう。

ほかにも、「株式配当に今までより高く課税する」「高所得者の所得税の最高税率を上げる」など、やはり富裕層への負担を大きくする課税制度をいろいろ提案している。

希望の党は国会議員を250人減らすと宣言! 「身を切る改革」で150億円以上を削減!?

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つのだよしお/アフロ

9月28日に解散した衆議院。議員を減らせばその給料が浮く…
上の2項目は、「課税」を財源にするモノ。それ以外にもいろいろと政策はあるようで…。

希望の党の若狭勝氏は、自身のFacebookで「消費税増税の前に、国会議員定数を250人ほど減ら(※原文ママ)方針を打ち出す。(中略)そうした削減によって、国会議員に係る税金も大幅に減らすことができます。それが希望の党の方針です」と投稿。

国会議員は衆議院475人、参議院242人と決まっているので、250人となるとその3分の1近い人数…。国会議員の給与は年間約1500万円。さらに、期末手当というボーナスや秘書給与を含めると、年間「5,967万8,000円~6,567万8,000円といった大きな金額が支給されます」(マイナビニュース「『国会議員』がもらえる“給料以外”のお金って何がある?」より)という試算もあるので、6000万円×250人分カットできれば約150億円の財源になる。

また、日本維新の会も「身を切る改革」をテーマに、議員報酬3割カット、議員定数3割カット、国家公務員の人員削減、人件費2割カットなど人件費削減の公約を掲げている。

経済学者も提唱!「教育は投資だから、教育費のためには国債を発行(借金)すべき」説も

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Rodrigo Reyes Marin/アフロ

党首討論会にのぞむ「日本維新の会」松井代表
また、自民党は増税の目的の1つを教育の充実だとしているが、教育費であれば消費を冷え込ませるような増税ではなく、「国債を発行」(=借金)して捻出すべき!という意見もある。

経済学者の高橋洋一氏は、

教育を投資として捉えると、社会全体が得られる便益もコストより高い。教育によって、知識や技能が身についた国民の将来所得が増え、将来所得が税収増となって政府の財源となるからだ。(中略)国債で財源を賄うのがいい」(ダイヤモンド・オンライン「教育投資の財源は『こども保険』より『教育国債』の筋がいい」より)

と主張。なるほど、教育費は将来回収見込みがある(つまり投資である)という考えには納得感がある…。

日本維新の会の公式サイト内「100本法案提出」では、「文教・科学振興費の財源のための国債発行を可能にする法案」というものを提出するとしている。これまで国債の発行基準は「公共事業費、出資金及び貸付金の財源に充てる場合」とされていたが、「文教・科学振興費の財源に充てる場合にも国債の発行が可能」となるように変更するらしい。

国民の関心事である消費税アップについてはやっぱり各政党もケアしていることがわかった。ただ、10%への消費増税で見込める約5兆円の税収増をほかの方法で補うのはカンタンではなさそう。ボクらの生活に直結する問題だけに、よーく考えて投票に行きます!

〈文=天野俊吉(新R25編集部)〉

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