国連の制裁もどこ吹く風?

北朝鮮に「経済制裁」が効かないのはなぜ? “原油ストップ”には踏み込めない事情が…

  • 社会・政治
  • 2017.11.07
  • by 石原たきび

国連安全保障理事会は、北朝鮮に対する「制裁決議」を何度も採択している。しかし、こうした経済制裁もどこ吹く風、ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮…。圧力や制裁ってホントに効果があるの?

9月に決まった制裁で北朝鮮の輸出の3分の1を制限。さらに強い制裁は中国やロシアが反対

出典

ロイター/アフロ

「全会一致」で決まった経済制裁

2017年9月に決まった「制裁」の内容は、北朝鮮から他国への「石炭、鉛、海産物の輸出禁止」というもので、これは同国の輸出量の3分の1を占める。一方で、他国から「北朝鮮への原油の輸出」に関しては、中国やロシアの意向によって現状レベルの規制にとどまり、金正恩の個人資産凍結も見送られた。

北朝鮮への圧力強化を進めたいアメリカと日本。北朝鮮の友好国といわれており、あくまでも対話路線にこだわる中国とロシア。足並みがそろっているとはいえないが、経済制裁の内容は徐々にシビアなものとなってきた、というのが現在だ。

致命的なダメージを与える「原油ストップ」「暗殺計画」は暴発のリスクがあってキビしい

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さて、このような経済制裁ってホントに効果があるの? 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によれば、北朝鮮政府への決定的なダメージにはならないという。

「これぐらいの経済制裁では北朝鮮の姿勢は変わりません。ですが、国連が北朝鮮への原油輸出を全面的に禁止したら万事休すでしょう。電気、ガス、水道などのインフラの崩壊はもちろん、燃料不足となれば農業にも多大な影響をおよぼすため、国民による大暴動につながる可能性が大きい。そこで起きるかもしれないのは、金正恩が“ヤケになって暴発する”という事態。これは困るので中国は反対しているのです」

抜本的な経済制裁が難しいのなら、たまに冗談として聞くこともある“金正恩暗殺”なんてことは可能なのだろうか…。なんと韓国の国防相は、金正恩と首脳部を暗殺する「斬首部隊」を12月1日に創設するとしているのだ。2018年末には殺害作戦を実行できるレベルにするとのことだが、そんな作戦は実行できるのだろうか?

やらないでしょうね。要するに1000人から2000人規模の『特殊任務旅団』と呼ばれる韓国軍の特殊部隊なんですが、計画を察知したら司令部に逃げ込むだろうから暗殺は難しい。殺される直前に核ミサイルのボタンを押すこともできる。リスクが高すぎるんです」

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韓国のムン・ジェイン大統領は11月1日、「いかなる場合であれ、朝鮮半島で武力衝突があってはならない」と発言した

制裁が効かない原因は、北朝鮮が「密輸入」をしてるから!? 北朝鮮沖の海上警備が有効か

このにっちもさっちも行かない状態、どうやって解決すればいいんでしょう?

「すでに戦争が起きるリスクが高まっています。これを回避するためには、現状の経済制裁にくわえ、アメリカ軍を中心に北朝鮮沖に警備艇を派遣し、海上で検査をおこなうことで密貿易を阻止する方法も有効です」

経済制裁にイマイチ効果がないのは、「禁止されていながら、北朝鮮政府が主導して、こっそり輸出入をしている」からなのだという。

ロイターの記事「ロシアから燃料密輸か、北朝鮮船『疑惑の航路』」によると、「ロシアから燃料を積んで出港した北朝鮮籍の船舶のうち少なくとも8隻が、違う行き先を申告しながら北朝鮮に航行していた」「航行中の行き先変更は、核開発を巡り国連安全保障理事会が課した制裁措置を回避するために北朝鮮政府が使う典型的な手段」とも…。

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たびたび報道される北朝鮮の「核実験」などのニュース…解決策は?

最後に黒井氏は、対北朝鮮の現実解についてこう話した。

経済制裁とこのような海上封鎖などを織り交ぜながら、暴発しないようにじわじわとプレッシャーをかけるべき。そのうえで緊張を収める方法を探すしかないでしょうね。アメリカもここに向かっていると思います」

日に日に緊迫感を増す北朝鮮を巡る情勢。衆院選が終わり新内閣が発足したけど、いずれにせよボクたちとっては政情を見守りながら平和を祈るしかないようだ。

〈取材・文=石原たきび〉