神戸製鋼、三菱、東レ…大企業が次々と公表

他人事ではないのかも。「素材メーカーのデータ改ざん」が続出しているのはなぜ?

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最近立て続けに目にする「神戸製鋼所の不祥事」関連のニュース。さらに、「三菱マテリアル」「東レ(の子会社、東レハイブリッドコード)」などなど、“素材メーカー”が続々と不祥事を起こしているらしい…。

なぜこの業界の不祥事が、相次いで問題になっているの?

品質を満たしていない「素材の強度」のデータを改ざん! 自動車・航空機関連など約500社に出荷

そもそも、これはどういうニュースなのか?

神戸製鋼は、自社で製造したアルミニウム、銅製品などの検査データを改ざんした。すなわち、顧客となるメーカーに納品していた“素材”の強度や伸び率などのデータを、決まった品質を満たしていないのに、満たしているかのように見せかけていたのだ。

大企業だけに納品先は多く、その数はなんと国内・国外あわせて500社以上! 日本中、世界中の人に影響がおよぶ可能性がある。例えば、自動車や航空機が低い品質の素材で作られていたら、安全性の面で大問題を引き起こしかねない。

この報道を受けて、三菱マテリアルでは、子会社3社でアルミなどの素材データを改ざんしていたと11月24日に発表。東レハイブリッドコードも“繊維素材で同様のデータ改ざんがあった”と発表した。この状況を見ても、同様の不正はまだ業界に“潜んでいる”可能性が高いと言えるだろう。

基準以下でもOKとする「トクサイ」という商習慣が蔓延。そのルーズさが改ざんにつながった?

出典

ロイター/アフロ

神戸製鋼の川崎代表取締役会長兼社長は、謝罪会見で苦悶の表情
では、なぜ「素材メーカー」にこんな問題が頻発しているんだろう? 大きく報じられているのは、業界の「トクサイ=特別採用」というルール。これは、「決められた規格を満たしていないモノだけど、安全ではあるしまあOKにしよう」と双方の合意のもと出荷するという、企業同士の長年の商習慣だ。実際に、
神鋼のアルミ製品を新幹線の台車に使用しているJR西日本の幹部は「設計上、十分な余裕があるので多少の未達でもすぐに安全上の問題は生じない」と語った。

出典https://www.jiji.com

というコメントにもある通り、少しぐらいの“規格外”なら大きな問題にはならないようだけど、この独特の“ルーズさ”は業界に蔓延していたよう。結果として、顧客に“トクサイ”の了解を得ていなかったり、データ自体を偽って顧客に見せたりしていたことが、今回の大問題になってしまった。

企業同士のやりとりがメインのBtoB企業なので、BtoC企業のように消費者の厳しい目にさらされず、このような改ざんが常態化してしまったと指摘する声も多いようだ。

大企業のなかの一部門…。不正につながる下地がありながら、監視の目が行き届かなかった

出典

ロイター/アフロ

大企業・東レの代表取締役が謝罪。「内々に処理するつもりだったが、ネット掲示板の書き込みがあったので公表」と発言し、話題に…
また、これらの企業に共通する特徴として、多くの事業を手がける大企業の一部門であったということも挙げられそう。
神戸製鋼は、傘下にアルミ・銅など7つの事業部門を抱える。三菱マテリアルは事業別に4つの社内カンパニーを設け、権限を大幅に委譲していた。東レも多くの事業を抱え、子会社を含む事業部間の人事交流はあまりない

出典http://www.sankeibiz.jp

神戸製鋼の川崎社長は記者会見で、納期やコスト、生産目標などが現場のプレッシャーになっていた可能性も示唆した。そういった下地がありながら、組織の風通しが悪く、監視の目が行き届いていなかったということであれば、不正が起きるのも無理はない。

いち消費者としては、自動車など生活に直結する部分での安全性が気になるところだけど、「長年の商習慣でルーズさが蔓延」なんて、自分の職場にもないとは言い切れない。いろいろな意味で、日本中の会社がヒヤリとしている事件なのだ。

〈文=天野俊吉(新R25編集部)〉