銀行が共同開発したアプリが決済インフラに

現金使用率は1.7%!? スウェーデンで進むキャッシュレス化がもたらす意外なメリット

お金
いまだに現金主義が根深い日本。一方で世界を見渡すと、以前紹介した中国のほかにも、北欧諸国でキャッシュレス化がどんどん進んでいるよう。いったいどのような様子なのだろう? 特に顕著なスウェーデンから見てみたい!

現金の流通はGDPのたった1.7%。日本の11倍も「キャッシュレス化」が進んでいる

国際決済銀行のデータを日本銀行が分析した資料によると、2015年時点でスウェーデンに流通する現金はGDP(国内総生産)の1.7%。残りの98.3%は現金以外での支払いがおこなわれていることになる。

これはキャッシュレス化がなかなか進まない日本の約11倍だ。現時点ではさらにキャッシュレス化が進んでいるだろう。

19〜23歳の利用率は95%。大手銀行が共同開発したスマホアプリが同国の決済インフラになっている

急速にキャッシュレス化した背景には「Swish(スウィッシュ)」というスマホアプリの存在がある。

大手11銀行が2012年に共同開発したこのアプリには、スマホの電話番号と銀行口座が紐づけられ、QRコードなどを利用して即時決済ができる。しかも利用者には手数料がかからないため、ATMから現金を下ろすよりおトクなのだ。
出典Youtube
Swishのホームページによると、2017年8月末時点で人口約990万人のうちの約570万人、実に半数以上が同アプリを利用しているらしい。

さらには毎日新聞によると「若年層(19~23歳)の利用率は95%に達する」という情報も。もはやスウェーデンを代表する決済インフラといっても過言ではない。

最近は「うちは現金お断り」なんて店や、お祭りの屋台での支払いもSwishが主流。教会の献金でさえ、Swishを使っておこなわれるんだとか!

銀行強盗が3年で110件→16件に! 犯罪抑止、衛生面、確定申告…キャッシュレス社会にはさまざまなメリットが

こんなふうにキャッシュレス化が進むと、意外な面でもメリットがある。

たとえばお金まわりの犯罪の抑止。CBSNEWSによると、2008年に110件あった銀行強盗が2011年にはわずか16件まで減少したらしい。

また、現金を使わない決済は取引記録が残るため、脱税などを減らすことにも繋がる。
出典

ロイター/アフロ

スウェーデンのNordea(ノルデア)銀行
店舗では、キャッシュレス化によるスムーズな会計が行列を減らし、客のストレスを軽減。また、店員が貨幣を触ることがなくなるので、特に飲食店では衛生面でもメリットがある。

さらに、日本でいうマイナンバーである「Mobile Bank ID」に収入などが記録されているため、確定申告は5分で完了! 申告すべき数字が書かれた必要書類が送られてくるので、アプリを使って承認するだけで済むのだ。
Bank IDのスクリーンショット

決済の現金比率はデンマーク20%、ノルウェー6%…ほかの北欧諸国でも急速に進行するキャッシュレス化

こうしたキャッシュレス化の流れはスウェーデンだけにとどまらず、北欧諸国へと広がっている。

国立銀行のデータによると、デンマークは2000年代に入ってカードでの支払いが現金払いを上回った。2013年に登場したスマホ決済サービス「Mobile Pay」の後押しもあり、2016年には小売店での支払いの約8割がキャッシュレス決済に。
出典

Danmarks Nationalbank 2017 “Danes are Front-Runners in Electronic Payments”

※1 :MobilePayでの支払い(2013年以降)もcard paymentsにカウントされている。
また、現金での決済比率がたった6%のノルウェーでは、大手銀行が全店舗での現金の受け渡しを停止すると発表。2020年までには、現金を完全になくすべきなんて話もあるという。 

北欧諸国のキャッシュレス社会の現状を知ってしまったら、日本はかなり遅れている気がしてきた…もう“日本が最先端”なんてことはないのかも。